まずは、うちのネコを見てください。茶トラがソイくんで三毛猫がふくちゃんです。

ソイくんは元々青砥駅周辺の地面に転がっていた、歌舞伎町のデカすぎるネズミよりも小さな小さな生まれたての子猫でした。まん丸お目目のふかふかくねくねボディ。そして家族以外の人間が家に来ると一切姿を見せない、かなりの小心者。
ところが家族しかいないとなると態度が一変し、すぐにお腹を見せて撫でさせてくる。しかも家の中で歩いているとずーっと着いてきて、おでこをスネに一生ぶつけてくる、ぶつかりおじさんっぷり(10歳=人間でいうと約56歳)を発揮。とにかく私のスネとご飯が大好きなだけのキュートなネコちゃんです。
ふくちゃんはうちに来る前は人間の家を転々とし、歯周病で毛並みもあまりよろしくない状態でした。今ではすっかり健康になって、ソイくんとは違って誰にでも尻尾を振ってゴロゴロと喉を鳴らす甘えん坊です。チャームポイントはザンギエフの胸毛みたいなマークの毛。
ソファに座って自分のお腹を2回叩くと、どこからともなくやってきて膝の上に飛び乗ってくる。ただし抱っこだけは大嫌いで、抱き上げると「ムームー」って鳴いて抗議してきます。

ネコという生き物は、昔から「気まぐれ」「懐かない」「孤独を好む」「家の中では自分が家主のような顔をしている」というステレオタイプがつきまとっています。犬には「飼い主」がいるが、ネコには「使用人」がいるだけだ、という有名な皮肉もあるくらいですよね。
飼ってみるとさっき説明したようにそのイメージは全く払拭されます。気まぐれで予測不能かと思いきや、あらゆる行動を予測できるし、孤独は好まず起きてるときも寝るときもべったり。家に帰ると100%玄関まで迎えに来てくれるため、家主だとは自分で思っていないでしょう。
あはは、ネコって簡単にコントロールできるじゃん。もっとも、それは私がそう"信じたい"だけなのかもしれませんが。
ついに日本語化!ネコが砕け散るSRPG『Mewgenics』
さて、前置きが長くなりましたね。この記事は晴れて公式日本語対応し、海外コンソール向けにも配信が開始したネコSRPG『Mewgenics』を紹介する記事です。

本作の開発はEdmund McMillenとTyler Glaielの二人。Edmund McMillenは『The Binding of Isaac: Rebirth』『Super Meat Boy』のクリエイターとしても知られる人物で、以前私は『The Binding of Isaac: Rebirth』をEdmund McMillenの生い立ちや思想から語る紹介記事を書きました。もちろんそこで解き明かした思想が大いに『Mewgenics』にも反映されているので、合わせて読んでいただけると作品の魅力がより詳細に理解できるはずです。
舞台は寂れたアメリカの田舎町・ブウーン群(Boon County)。プレイヤーは、ネコに取り憑かれた(?)マッドサイエンティストであるトーマス・A・ビーニーズによって蘇生させられた「キャットレディ」となり、彼の実験のために大量のネコを集め、育て、戦わせていくことになります。
何と言ってもあまりにも冒涜的な導入部が印象的です。トーマス・A・ビーニーズはまずプレイヤーに3匹中2匹のネコを選んでくれと言います。なんだかよく分からないけど、とりあえず自分好みの変な顔の2匹を選択。すると「○○の何が悪いというんだね?!」というセリフの直後、残ったネコはチェーンソーの音とともにどこかへ処分されてしまいます。焼却処分する前に血と汗なら採取できるという謎のフォローと共に……。

さて、そんな冒頭が終わったら早速チュートリアルへ。ガラの悪いけど比較的まともな考えを持っているブッチに導かれ、メインの雑魚敵となるネズミを駆除していきます。操作はいたってシンプルで、複雑な操作を求められることはありません。よくあるSRPGのグリッド上を移動しながら、ターンごとに基本攻撃とマナを使うスキルを駆使して戦っていくだけです。
ただし、一切単調になることのない自由度を持っている作品です。なんていったって、10種類以上のキャラクタークラスに、クラスごとの75種類のユニークな能力。さらに900種類以上のアイテムが存在し、一回のランごとに全く違う体験と戦術、シナジーが生まれるんでね。

何より嬉しいのが、「こうしたらズルできるんじゃないか?」という想像が、かなりの確率で実現してしまう懐の深さです。例えばタンクというクラスのネコは、フィールド上に落ちている石や岩を効果的に使うスキルを中心にビルドを組むことができるのです。これは意思を持たないただの石だけでなく、意思を持つ敵キャラクターとしての"石"に対しても、絶大な効果を発揮することがあります。
あ、ネコが戦闘中にHPが0になって倒されたらどうなるか気になりますよね?安心してください、ぐったりした身体はフィールド上に残り、再び何かしらの衝撃が与えられて肉体が砕け散らない限り次の戦闘では復帰します。ただし、ケガをしてしまって一部のステータスが永続的に下がってしまいます。

私も特別このジャンルのゲームが得意というわけではないのですが、なんとなく英語を読みながら200時間プレイして全てのボスを倒すことができました。きっと日本語に対応した以後の世界に生きる皆さんなら操作の煩雑さに困ることはあまりないでしょう。
最強のネコをコントロールして作ろう
簡単にゲームの概要を説明したところで、ランダム性とコントロールという最大の魅力について掘り下げていきましょう。基本的な流れは、「家での繁殖・準備フェーズ」と「マップを進む冒険フェーズ」の繰り返しです。基本的にそれを最後の最後まで繰り返していきます。そして、とにかく最初はランダム要素にあたふたすることになります。
まずは、「家での繁殖・準備フェーズ」について解説していきましょう。
家のフェーズでは、ネコ同士を同じ部屋に置いて「1日を終える(End Day)」を選択すると、その日の結果が一気に処理されます。ネコの性別はいろいろありますが基本的には同性のネコ同士なら喧嘩の可能性、異性のネコ同士なら交尾の可能性がそれぞれ発生します。交尾に成功したら新しい赤ちゃんネコが生まれ戦力になってくれます。

それに加えて家の前には毎日必ず1匹、野良ネコがやってきます。ある日突然家の近くに転がっていたソイのように向こうから勝手にやってくる存在であるため、プレイヤーは選ぶことができず、ステータスはランダムです。ただ、家の「魅力」という数値が高ければ質の良い個体が来る可能性も大きくなります。
当たり前ですが、最初のうちは繁殖すらもプレイヤーの思い通りにはいきません。ネコは交配において"指示"を聞いてくれるわけではありませんから。子どもは親のスキルとステータスを継承する可能性はありますが、それらは限定的かつランダムです。また、厄介なことに、親の悪いステータスも継承してしまう可能性があるのです。
ケガをして下がってしまったステータスを継承してしまう場合もあるし、「障害」というパッシブスキルのような、一見マイナス効果を与えるスキルが継承されることもあります(詳しくは後述します)。
しかし、それらを乗りこなして気まぐれなネコたちを骨の髄までコントロールしていくのが本作の魅力なのです。まさに、ふくちゃんがお腹を2回叩くだけで飛んでくるように、ネコの行動は環境と積み重ねでコントロールできる存在だと、このゲームは教えてくれます。
これらの要素は部屋の環境を整えることによってコントロールすることができます。最初はひとつの部屋しか用意されていませんが、フランクという下水道に住むおっさんに(不要になった)ネコを譲ることによって、段々と部屋の数が増えていきます。

部屋には「魅力」の他に「快適さ」「刺激」といったステータスが存在し、それらはゲーム中に手に入れることのできる家具を配置することでコントロールできます。快適さが高い部屋ではネコは穏やかに過ごして繁殖しやすくなり、逆に低いと喧嘩を始めてしまいます。喧嘩をしてしまうと負けたネコがケガをしたり死んでしまったりするのでデメリットがありますが、勝ったネコはステータスが上昇します。
その仕様を生かして、わざと部屋の環境を悪くすることによって喧嘩を誘発する「ファイトクラブ」のような部屋を作ることも可能です。微妙なステータスのネコを一つの部屋に集めて、ステータスを底上げし、ケガをして(戦闘や繁殖では)使い物にならなくなったネコは、よそにあげたり、捨てたりしましょう。
なお、冒険に送り出したネコが無事に生きて帰ってきても、同じ冒険に二度と出すことはできません。しかしその代わり、家に戻せば普通に繁殖に使うことができます。つまり冒険の中で強いスキルを覚えたネコは、二度と戦力としては使えない代わりに、その資質を次の世代に引き継ぐための"種"として、繁殖の場に回してやるという選択肢が生まれるわけです。
より重要なのが「変異」という要素です。変異というのはネコが様々な手段で獲得できる身体的な変化(要するに奇形)であり、繁殖によって世代から世代へと受け継がれます。少々ややこしい仕様ですが、家具の変異ステータスが高ければネコが突然変異し、体のパーツごとにステータスのボーナスが付与されるといった具合です。

なんとこの変異は合計で700種類近くあると言われており、毎日毎日知らない変異が発生し、知らない形のネコが生まれてくるのでぶったまげます。このシステムを乗りこなせば、単純にステータスの高いネコを作り続けることができるので、攻略が軌道に乗ること間違いなしでしょう。
先天性障害は、デメリットだけじゃない
着実にステータスやスキル、アイテムの仕様を理解したら、次は「障害」というデメリット効果をうまく使うことによって強いネコを作っていきましょう。
本作の繁殖では血の近いネコ同士をあえて交配させる、いわゆる「近親交配」も選択肢として明確に用意されており、ハイリスク・ハイリターンな戦略として扱われています。世代を重ねるごとに、この近親交配によって発生しやすくなるのが「先天性障害」です。

先天性障害は基本的にデメリットとして機能します。たとえば「ナルコレプシー」を患ったネコは、ターン終了時に強制的に眠ってしまい、1ターンおきにしか行動できなくなります。「原始的小人症」に至っては、筋力・器用さ・耐久力・知力・速さ・魅力がまとめて下がる代わりに、幸運だけが大きく上昇するという、極端なパラメータ構成です。
しかし、稀にこの弱点そのものを強みに変えられる場合があります。ナルコレプシーは「Dream Catcher」という装身具を持たせておくと、眠りに落ちるたびに全ステータス上昇・マナ全回復・怪我の治療という効果に化けます。
原始的小人症も、上昇した幸運を回避率やクリティカル率に依存するビルド(特にシーフのクラスで作りやすい)に組み込めば、一転して強力な個性になります。つまり近親交配は、単にリスクを積み上げるだけのギャンブルではなく、"欠陥込みで使いこなす"という、もう一段深いビルドの可能性も同時に開いてくれる仕組みになっています。それに、凄まじいところまで作りこまれている作品なので、近親相姦の果ての果てには凄まじいステータスボーナスが付与されることもあるので、目指してみるのもいいかもしれません。
ネコの性格や行動は、決して制御不能な神秘などではなく、環境や積み重ねでかなりの部分まで作り込めるものです。『Mewgenics』は、その身も蓋もない現実を、かなり露悪的な形でゲームシステムに変換してみせた作品だと言えます。

露悪的なゲームシステムとキャラクターはプレイヤーに跳ね返ってくる
『Mewgenics』の露悪性は、あの冒頭のシーンやゲームシステムだけで終わりません。よく見ると、この作品に登場する人間キャラクターは、ネコに対する身勝手な向き合い方を、それぞれ一人ずつ体現するように配置されています。
マッドサイエンティストのビーニーズは「科学」の名のもとにネコを実験材料として扱い、地元のネコ喧嘩屋ブッチは「強さ」の名のもとにネコを賭けの道具として扱い、若干小児性愛の気を感じるティンクは「美」の名のもとにネコを品評会の商品として扱う。それぞれ言い分は違えど、やっていることは"ネコを自分の欲望のために利用する"という一点で共通しています。

そして何より露悪的なのは、この構図がプレイヤー自身の行動とまったく同じ形をしているということです。ステータスの良いネコを選んで残し、悪いネコは他人に譲るか処分する。血統を最適化するために、時にはリスクを承知で近親交配に手を出す。ケガをして使い物にならなくなったネコは部隊から外す。障害という(ゲームのステータスにおいての)デメリットを上手に利用して、戦いで使えるようにするという行為……。
これは、ビーニーズの「科学」やブッチの「強さ」を追い求めるエゴイスティックな姿勢と、何が違うのでしょうか。
我々はネコとコミュニケーションを取ることができない
私は冒頭で自分の飼っているネコをコントロールできると高らかに謳いましたが、人間は(実在の)ネコと会話することができないので実際の所どうかは分かりません。
本作は冒涜的で一方的にネコへの暴力を楽しむような露悪的な作品のように見えるかもしれません。いや、露悪的であることには間違いありません。しかしどうでしょう。我々人間も普段から飼っているネコに対して一方的な態度を取っている可能性の方が高いですよね。
本当に今遊びたいのか?本当に今眠たいのか?本当に意思を持ってぶつかってきているのか?撫でてもらうのは嬉しいのか?本当にCIAOちゅ~るは好きなのか?

動物実験や殺処分、悪徳ブリーダーに対する皮肉が随所に込められているこの作品。はじめのうちは、そういう皮肉に対して笑っていられるかもしれません。しかし、我々のようにネコを愛する存在も、このような嘲笑の対象のように一方的な考えでネコと接しているのかもしれません。
少なくとも私は、そのような一方的であることの虚しさと、そこから生まれる残酷さ──環境整備や繁殖の操作によってゲームをクリアしていくという行為そのもの──を素晴らしく面白いものだと感じています。
この皮肉の視線は、あからさまな悪人だけでなく、善人のように振る舞うネコ好きにも向けられているのかもしれません。『Mewgenics』は単に中毒性の高いSRPGではなく、そのようなところまで接近してしまう作品でもあるのです。

『Mewgenics』は、PC(Steam)/海外コンソールに配信中。価格は3,400円、ネコカフェなんかに行くくらいならこれを買った方がいいですよ。












