新スタジオで再始動のCliffy Bをインタビュー、ゲーム業界のアベンジャーズが目指す未来 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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新スタジオで再始動のCliffy Bをインタビュー、ゲーム業界のアベンジャーズが目指す未来

Boss Key Productionsの設立と新作『BlueStreak』の発表でますます注目を集めるクリエイター、Cliff Bleszinski氏。今回、ネクソンの日本本社にて電話インタビューを行い、新たな挑戦へ向かって再始動したCliffy Bのこれまでとこれからを語ってもらいました。

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新スタジオ、Boss Key Productionsを立ち上げ、新IPとしてPC向けF2Pシューター『BlueStreak』を目下開発中のゲームクリエイター、Cliff Bleszinski氏。コンセプトアートや参加スタッフなど、新作に関する情報が次々と発表される中、同スタジオで開発を担当する中心メンバーが先日明らかにされました。

今回、パブリッシャーを務めるネクソンの日本本社にて電話インタビューを実施し、E3で見られたゲーム業界の動向に関する所感から、Boss Key Productionsの設立やネクソンを選んだ経緯、e-SportsコミュニティーやFPSにかける想いまで、新たな挑戦へ向かって再始動したクリエイター、Cliffy Bのこれまでとこれからを語ってもらいました。

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■ゲーム業界の動向に対する所見と開発スタジオ設立の経緯

――今年のE3には行きましたか?

Cliff Bleszinski:もちろん。ただ、私にとってE3は20年以上の付き合いがあるデベロッパーたちとの親睦を深めるための場所なんだ。ゲームのためというよりもね。

――ファーストパーティーからサードパーティーまで、新規IPやAAAタイトル、デバイスにいたるまで大きな動きがありましたが、今後のゲーム業界にかける期待を具体的に教えてください。

Cliff Bleszinski:私はボールの現在地ではなく、これから飛んでいく場所へ向かいたいんだ。ブロードバンドはまだ世界的なネット接続を要するレベルにない気がする。それでも、全てのゲームがデジタル配信されるような、そんな世界の到来を私は信じている。E3は大量のゲームに盛り上がる大手小売業者を集めるイベントだけど、ディスク出荷なんて2001年みたいじゃないか。

成功して何度も登場するフランチャイズは6つから8つで、残りはその影で目立たなくなってしまう。『Assassin’s Creed』や『Battlefield』、『Call of Duty』の価値は認めるが、それらは既知の定数に過ぎない。私が期待しているのは新たな世界やゲームプレイなんだ。一般大衆から盛り上がるのは大抵そういうものだ。小さく始まって大きく育つのがPCゲーム、それこそ私の見据えるターゲットなんだよ。イベントの音響照明や情報交換は楽しいものだけど、同時にほとんどのゲームにとってE3はとんでもなく金の無駄に感じるね。

――Epic Gamesを去るという選択にはどういった経緯があったのでしょうか。辛い決断だったのか、それとも以前から計画していた選択肢の一つだったのか。当時の心境を教えてください。

Cliff Bleszinski:いつかEpicと袂を分かつ日が来ることは分かっていた。もちろん、彼らは過去20年の間とてもよくしてくれたよ。私はゲーム開発者として自身を可視化したかった。しかし、パブリッシャーはデベロッパーが表に出ないことを第一に望んでいる。必要に応じて代わりが用意できるからね。分かるよ。それでもEpicを去ってもっと世間に自身を晒せば、Boss Key Productionsの企業資金を得る機会が増えることは明白だったんだ。

――Boss Key Productionsには現在何名のスタッフが在籍しているのでしょうか。スタジオの規模を教えてください。

Cliff Bleszinski:たったの12人さ。最初は少ないほうがいい。ゲームがどれだけウケるか様子を見るのに100人もいらないだろ。各部署に1人ずつ、20くらいで丁度いい。ゲームのアイデアが固まり次第、60人から70人体制へ持っていく予定だ。1年以内が望ましいかな。外部委託を多く活用することで、スタジオ規模はその程度を維持したい。みんなの名前を覚えたいし、良好な社風を保ちたいんだ。会社を急速に大きくし過ぎた結果、社内で誰かとすれ違ったときに「あいつ誰だよ」なんてことにはなりたくないからね。

――先日、プロジェクト『BlueStreak』の主要メンバーが明らかにされましたね。彼らは長く共に仕事をしてきたかつての同僚なのでしょうか。あなたとの関係についてもう少し詳しく教えてください。

Cliff Bleszinski:Epicからの採用は2人に留めたんだ。彼らは私が有能な社員を根こそぎ引き抜くんじゃないかってピリピリしてると思うからね。Boss KeyをEpicからの難民キャンプにはしたくないってジョークにしているように、あらゆるところから人を集めた。『The Division』や『Far Cry 4』、『Call of Duty』を手掛けた開発者たちだ。西海岸で働く者の中には、子育てするには物価が高すぎるという理由からカリフォルニアを脱したいという人もいるんだ。私はドリームチームを作っているのさ。私のアベンジャーズをね。私がトニー・スターク、アイアンマンね。

――スタジオ内でのあなたは何をしているのですか。主な役割を教えてください。

Cliff Bleszinski:肩書きは共同設立者および最高経営責任者だが、スタジオが小規模だから基本何でも屋さ。同時にクリエイティブな時間も必要なんだ。『BlueStreak』は私のかわいいベイビーだ。キャラクターや武器の詳細を私自ら考えてコンセプトアーティストに送ったりしている。

――Boss Keyというスタジオ名に秘められた意味は何でしょうか。

Cliff Bleszinski:80年代後半から90年代前半のゲームに由来している。たとえば、『ゼルダの伝説』にはボスに挑む前に必要とされる鍵があって、ボスキーと呼ばれていたんだ。最近は何故かビッグキーと呼ばれているけどね。この名称は、私が子供時代に大好きだったNintendo作品への懐古心からきているんだ。それ以外にも、旧時代のPCゲームに多く搭載されていた“ボスが来た”という機能もあったね。それに、Bossって言ったら強そうに聞こえるだろ。Keyが何だかミステリアスなのもいいね。

――過去にKickstarterプロジェクトとして新規IPを打ち出す可能性がささやかれていましたが、クラウドファンディングではなく、パブリッシャーとしてネクソンを迎えた理由を教えてください。

Cliff Bleszinski:ランボルギーニの写真を定期的にツイートしてるやつがKickstarterでの集金を正当化できるとは到底思えなかったんだ。確かに、Kickstarterのサクセスストーリーはたくさんある。一方で、頓挫したプロジェクトに多額の寄付金だけが残ったという負の一面もある。私はあくまでも安全策を取りたかった。パブリッシャーにはサーバーやQA機能によるアシストがあるし、彼らがついていれば、ボールがどこへ向かっているのか分かるからね。

昔ながらのパブリッシャーに何社か会ったし、どこも手厚いオファーばかりだったけど、トラッドなところと組んで怖い思いをした開発者の話は多いんだ。そんな中、ここ数年でネクソンと仕事をした知り合いからはいい評判しか聞かなかった。Owen Mahoneyは実にしっかりしたCEOだ。ネクソンは東で成功を収めているし、西でもそれを望んでいる。私は世界を巻き込むようなゲームを創造したいと思っている。

――Steamを中心に普及している早期アクセスという開発モデルについてどう考えているのでしょうか。過去にRedditで同モデルの採用を検討していると発言していましたが。

Cliff Bleszinski:輝かしい発明だと思うよ。しかし、正しく利用する人と同じだけ使い方を誤っている人がいるのは事実だ。個人的には気に入っている。Boss Keyでも同様のものを検討しているんだ。何にお金をつぎ込むかはユーザーの自由だからね。強力なツールだよ。

――モバイルゲームが広く普及した昨今のゲーム業界ですが、あなたもプレイしますか。また、将来的に進出を考えているフィールドなのでしょうか。モバイルゲーム文化に対するあなたの所感を聞かせてください。

Cliff Bleszinski:あまりやらないかな。『Flappy Bird』みたいなゲームが席巻した時は面白いと思ったけどね。カワイイし中毒になるし。モバイル市場を予想するのは10倍難しいんだ。ちょっとしたゲームを作っただけでも、ウケれば即クローンが生まれる。それが改善されて、あっという間に消費者を奪われる。私がコアゲーマー向けのPCにこだわるのはそういう理由だ。モバイルは今狂気の渦にある。舞い上がった塵が収まるまでは近づきたくはないね。将来的に『BlueStreak』を拡張するためにモバイルアプリを利用した試みは可能かもしれないけど、今のところモバイル主体の開発は一切考えていないよ。

■ゲームの競技性にかける想いとコミュニティーへの貢献

――次にe-Sportsについてお聞きします。同業界における昨今の盛り上がりについてあなたの所見を聞かせてください。

Cliff Bleszinski:私を含め、みんな大好きだね。どんなスポーツも最初は他と比べられてジョーク扱いされる。スノーボードだって最初はスキーヤーに笑われていたのが、今ではれっきとしたスポーツだ。ESPN(Entertainment and Sports Programming Network)をつければポーカーが観られる。ポーカーも今はスポーツだ。一定水準のトレーニングと献身を要すれば、それはもうスポーツなのさ。

若者たちはMOBAをプレイして何百万ドルと稼いでいる。私も一枚噛みたいと思っているけど、一歩ずつだ。e-Sportsで何か作ると言ったところで、コミュニティーがそれを受け入れなければダメだからね。ゲームはディープでスキル重視、そして付け入る隙がないくらい完璧でなくっちゃいけない。私の最初の目標は楽しくてスキル重視のFPSを作ることだ。5対5のゲーム。スナイパー重視にはしたくないね。

――ゲームデザインと経験曲線(Learning Curve)の関係についてどのような認識をお持ちでしょうか。たとえば、『Dota』のようなMOBAタイトルや『ストリートファイター』をはじめとした格闘ゲームの多くは、習熟したゲームプレイを実現するまでに多くの時間を要しますが、経験効率は急勾配な変化をみせる傾向にあります。ゲームコンテンツを築きあげる上で、経験曲線をどの程度意識しているのか教えてください。

Cliff Bleszinski:誰だって『ストリートファイター』を始められるし、快感を覚えることだってできる。誰だって私のデザインした武器を取ってラッキーキルができるだろう。ゲームデザインのゴールは、覚えるのは簡単だがマスターするには一生かかるような形だ。習熟度に関して言えば、カジュアルプレイヤーとエキスパートの間にできる壁は途方もなく高い。『BlueStreak』にも経験曲線は必然と形成されるだろうし、急勾配になるかもしれない。しかし、チュートリアルやAI相手のシングルプレイを通して格差を埋める方法はいくらでもあると思う。

――Modのようなユーザー制作コンテンツの展開にはどの程度関心があるのでしょうか。たとえば、『Dota 2』や『Team Fortress 2』ではユーザー制作コンテンツの有料販売を行っています。『BlueStreak』でも同様のサービスの導入を考えていますか。

Cliff Bleszinski:興味あるね。だけどその前にゲームがどんなものになるのかを把握する必要があるんだ。数年後のアイデアとして、みんながアリーナ等をアップロードできてファンが投票するような環境を考えている。クラウドソーシングを通したゲーム制作は十分あり得るよ。そこまでもっていくにはしばらくかかるだろうけどね。

――以前、近頃の子供は正しいアリーナシューターが何たるか分かっていないと発言されていましたが、アリーナタイプのFPSのどのような点が人々を夢中にさせると考えますか。また、伝統的シューターの魅力をどのような形で若いユーザーに伝えようとしているのか、あなたのビジョンを聞かせてください。

Cliff Bleszinski:動きだよ。アリーナFPSの半分はどう立ち回るかに懸かっている。近年、多くのFPSがうつ伏せ姿勢とジャンプを取り入れているよね。『Titanfall』にいたってはさらに進化して壁走りや2段ジャンプまで可能にした。『Tribes』は地形を滑るというアクションを可能にした。FPSには動きを向上させる余地がまだまだあるさ。

伝統的シューターでは、プレイヤーがマップを走り回っていろんなものを集められたんだ。『Halo』にはその名残があるね。マップを走る動機は何なのか。何の音が自分の位置を敵に知らせてしまうきっかけになるのか。マップコントロールとそこに点在する強化アイテムはワクワクさせる要素だ。それを伝える上で、自由度の高いSFというジャンルはうってつけなのさ。

■読者質問への回答とファンへのメッセージ
※ここからは、少し本筋から外れた質問や、Game*Sparkの読者から寄せられた質問をいくつかぶつけてみました。

――Oculus Riftがお気に入りだそうですね。初期段階で開発に投資していたと記憶していますが、クリエイターとしてVRデバイスの発展をどのように捉えているのでしょうか。同分野にかけるあなたの期待を語ってください。

Cliff Bleszinski:Comic-ConのLegendary Picturesブースでは映画「Pacific Rim」に登場するJaegerを操縦できたんだ! 最高にクールだったよ。私はテクノロジー信者だ。初期の投資は正解だったと実感したよ。VRにはぜひ発展して欲しい。Oculusは環視という面では成功したが、動作やインプット、エコシステム、自分の身体を可視化するという面では課題が多く残っている。Boss Keyでのゲーム対応を検討するまでにはあと数年はかかるだろうね。

――これまでの人生で最も強く影響を受けたクリエイターは誰ですか。また、現在特に熱い視線を送っているデベロッパーがいたら教えてください。

Cliff Bleszinski:映画の見地ではギレルモ・デル・トロを尊敬しているよ。彼はモンスターやロボットを愛しているという点で、自分に近いものを感じるんだ。ゲームでは宮本茂だね。自分の世界を創造する上で自身の経験を基にすることはとても重要なんだ。

最近注目しているデベロッパーはRespawn Entertainmentかな。Activisionとの訴訟を乗り切ったばかりだったことを鑑みれば、『Titanfall』で成し遂げたものは賞賛に値するよ。『Medal of Honor』を開発して『Call of Duty』へと繋がった。そして『Titanfall』だ。彼らは偉大なシューターの作り方を心得ているとてつもないクリエイター集団だよ。

――今年リリースされたゲームであなたの一押しは何ですか。Cliffy大賞を教えてください。また、日本のゲームはプレイしますか。最近プレイしたタイトルでお気に入りがあれば教えてください。

Cliff Bleszinski:『Wolfenstein: The New Order』だね。『Half-Life 2』以来、最高のシングルプレイFPSだと思う。日本のゲームもプレイするよ。妻は日本版のDSを持ってる。「進撃の巨人」のソフトを注文したんだ。今年のベストは『マリオカート8』かな。古いやつだと『スーパーマリオランド3 ワリオランド』。最初から最後までワクワクだったよ。日本のゲームデザインとゲームプレイは世界屈指だ。いつも真似しようと試みてるよ。

――奥さんと一緒にゲームするのですか。

Cliff Bleszinski:妻はたいそうなゲーマーでね。うちにはデカいゲーム専用部屋があって、スクリーンが2つあるんだ。

愛犬のTeddy(左)とEevee(右)

――過去のゲーム制作過程でクレイジー過ぎてボツにしたアイデアはありますでしょうか。笑える話を聞かせてください。

Cliff Bleszinski:実行していないけど、ずっと作ってみたかったのは迷子になった犬のゲームかな。私は愛犬にくびったけなんだ。昔のディズニー映画であったよね。グランドキャニオンに置き去りにされた犬が帰り道を捜す話。犬を題材にするとしたら、くんかくんかしたり、ほえたり、口を使ったりと、ゲームメカニックスにおいて興味深い点がたくさんある。いつか作るかどうかは何とも言えない。

――今までであなたが最もキュートだと思うゲームキャラクターを教えてください。

Cliff Bleszinski:『ストリートファイター』シリーズに登場する春麗とキャミーの間で揺れてる。

――あなたが恋愛ゲームを作ることになったとしましょう。どんなシステムを導入したいですか。斬新なアイデアがあれば聞かせてください。

Cliff Bleszinski:そうなったら笑っちゃうね。東の方では流行ってるんでしょ。キャラクターへ干渉するタイミングやプレイヤーの発言内容がメカニックスの鍵になるんじゃないかな。タッチスクリーンによるインタラクションが使えるWii Uでやるのがよさそうだ。

――あなたの遺作となるタイトルはどんなゲームにしたいですか。変なことを聞いてごめんなさい。

Cliff Bleszinski:ちょっとよく分からない。たぶん、プレイヤーが私となって人生を辿るゲームかなあ。ゲーム開発を夢見る子供から始まって、そしてビジネスへと繋がっていくんだ。その中に恋愛ゲームの要素も入れるといいかもね。

――それでは最後に、日本にいるあなたのファンにメッセージをお願いします。

Cliff Bleszinski:長年にわたるみんなの支持に心から感謝しているよ。トランスフォーマーや宇宙戦艦ヤマト、任天堂にゴジラ、私の大好きなものは全て日本のものなんだ。近いうちにまた来日できる日を楽しみにしているよ。

――本日は貴重なお時間と素晴らしい機会をありがとうございました。

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Boss Key Productionsというアベンジャーズを率いて開発舞台に復帰した、ゲーム業界のトニー・スタークことCliff Bleszinski氏。ネクソンとタッグを組み心機一転。新たな門出となる新規IP『BlueStreak』でアリーナシューターの原点回帰とFPSの進化を目指します。彼の再始動はオンラインゲームとe-Sportsに更なる活気をもたらす大きな波となるのでしょうか。新世界のゲーム体験を求めるクリエイター、Cliffy Bが語る未来像からは尽きない可能性が伝わってきます。
《河合 律子》
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