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Game*Sparkレビュー:『KARMA: The Dark World』美麗グラフィック×重厚ストーリー×犯罪調査が生む圧倒的没入感

ジョージ・オーウェル的監視社会で思想犯罪調査官となり、真実を暴き出せ。

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Game*Sparkレビュー:『KARMA: The Dark World』美麗グラフィック×重厚ストーリー×犯罪調査が生む圧倒的没入感
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作家/ジャーナリストでもあるジョージ・オーウェルは、ベストセラーSF小説「1984」で、“近未来における全体主義国家と監視社会の恐怖”を描いて絶賛され、今なお文学から社会思想に至るまで多大な影響を与えています。

海外時間2025年3月27日、PC(Epic GamesストアGOGSteam)/および国内PS5向けに発売の新作サイコスリラーゲーム『KARMA: The Dark World(カルマ:ダーク・ワールド)』は、そんなオーウェルの世界観にインスパイアされた、ディストピアな1980年代東ドイツが舞台のサイコスリラーゲームです。

今回、幸いにもWired Productionsから提供されたコードでSteam版先行プレイの機会を得たので、その実内容についてレビューしていきます。

小島秀夫、デイヴィッド・リンチに影響を受けたAAA級タイトル

絶望のディストピア世界を描くサスペンス・ホラー

本作は、一人称視点を採用したストーリー重視のホラーアドベンチャー。巨大企業によって社会階級の規制や大衆監視など、徹底的に管理統制された1984年の東ドイツを舞台に、プレイヤーは「リヴァイアサン」の思想局に属する調査官ダニエル・マクガヴァーンとなって、先進技術で容疑者の脳内記憶に入り込み、犯罪証拠を調査して真実を解き明かしていくことになります。

上海を拠点とするPOLLARD STUDIOが開発を手がけており、これがデビュー作となります。またパブリッシャーは、ナラティブホラー『Martha Is Dead』やアーケードシム『Arcade Paradise』など、多くの作品を世に送り出しているWired ProductionsとGamera Gamesが共同で行っています。

また本作は、ゲームクリエイター小島秀夫監督の映画的演出や、映画「ツイン・ピークス」「イレイザー・ヘッド」等で著名なデイヴィッド・リンチ監督の、超現実的で抽象的な物語手法からインスピレーションを受けているとのことです。

圧倒的没入感のハイエンドなゲーム体験

本作の特徴は、大きく分けて3つあります。まず1つ目は「次世代のグラフィック」で、LumenやNaniteを含む最先端のUnreal Engine 5で製作されており、ディストピア世界の細部まで作り込まれたビジュアル、映画さながらの本格的なモーションキャプチャー演技とリップシンクが組み合わせることで、高品質なゲーム体験を生み出しています。

2つ目は、プレイヤーの感情を揺さぶる「重厚なストーリーテリング」です。本作は主に家族、愛、喪失、支配といった普遍的なテーマを探求する複雑な物語が展開されますが、加えて「極限のディストピア社会における人間同士のきずな」という心の葛藤をも描き出しています。ただ恐ろしいだけでなく、深みのある哀切に満ちたストーリーに筆者は打ち震えました。

そして最後は、実際のゲームプレイにあたる「探索、調査、謎解き」です。まず他人の精神世界を探索する、という奇妙な設定はとても狂気的で恐ろしい体験でしたが、ジャンプスケアなどは少なく派手なホラーというより、ディストピア探偵ADV『Nobody Wants to Die(2024年発売)』に近しい、徐々に蝕まれていくような感覚でしょうか。

また、犯罪調査と謎解きに関しては、エリア内をインタラクトしてさまざまな証拠を集め、暗証番号のパズルを解いたり物語の断片を紐解きながら進めます。オーソドックスであるものの、しっかりとした作りで非常にやりがいと手応えを感じました。

以上の三要素がゲーム全体に上手く落とし込まれており、総じてスタジオの初作とは思えないほどハイエンドなプレイフィールで、圧倒的な没入感があったのは間違いありません。さらに個人的には「AAA級タイトル」と判断しても良いクオリティだと思いました。


操作/言語/グラフィック設定について

日本語字幕に対応

本作は、日本語インターフェース/字幕表記に対応してますが、それはもう見事なローカライズ。もちろん機械翻訳なんかではなく、人の手によって(おそらく日本語話者)丁寧に翻訳されており、流暢な表現と違和感のない会話シーンなど好印象でした。ストーリーを重視する作品の場合、雑なローカライズだとどうしても物語に感情移入しづらいし、せっかくの没入感が台無しになります。その点、本作は明らかに基準値を超えている素晴らしい翻訳でした。

快適なコントローラー操作

操作方法はキーボードおよびゲームパッドに対応します。筆者はXboxコントローラーを使用しましたが、操作ボタンの配置、操作感ともにおおむね良好で快適なプレイに興じました。ただ、ひとつだけ気になったのは、調査するときにオブジェクトの選択がしづらかったこと。「こっちの机を調べたいのに」と思っても近くのドアを開いてしまったり、少々ストレスを感じました。

キメ細かいグラフィック設定

先にも述べたように、本作は精緻なグラフィックも魅力のひとつ。表示モード、VSYNC、明るさ調整などの基本的なものから、DLSSなどのフレーム生成、アンチエイリアス、シェーディング、ポストプロセスにいたるテクスチャ品質まで事細かく設定可能で、没入感を向上することができます。筆者は最高画質でプレイしたのですが、圧倒的に美しく確かな描写力に感動しました。そのうえ、PCへの最適化もちゃんとされていて動作も軽く、クラッシュやフリーズが一切起きなかったのも良かった点です。

異なる時間軸を行き来する、恐怖と愛の物語

複雑で壮大なストーリーラインを体験

ここからは、本編の序盤である第一章(チャプター1)から見ていきましょう。なおネタバレが激しくなるので注意してください。本作は章立ての構成になっていて、チャプターごとに物語が展開していきます。基本的には、カットシーン(物語の大筋)→ゲームプレイ→イベントシーンの順番で進行しますが、それらの要素がシームレスに繋がっているおかげで没入感を損なっておらず、つい先のストーリーが知りたくなって夢中でプレイしていました。

ある建物の一室で目を覚ました主人公は、この場所がどこなのか、自分は何者なのか、一切の記憶を失った状態。分かっているのは、自分がひどく憔悴しているのと、腕に奇妙な装置を身に着けていることだけ。助けを求めるため施設のなかを進んでいくと――。

何かの培養実験を行っている研究室にたどり着きます。しかし、そこに散乱していたのは大量の「人間の死体」で、一様に黒焦げになっている恐ろしい光景が広がっています。そして奥の部屋に行くと見知らぬ老人の姿が。彼いわく、「緊急に」「ここから外へ出ないと」「永遠に閉じ込められてしまう」らしく、それを阻止するためには、どうやら主人公の記憶を取り戻し、「向こう側」へ行く必要があるとのこと。

そしてわけもわからず強制的に装置に座らせ、主人公が転送された先はーー、というのが序盤の大筋です。導入としては謎が謎を呼ぶ怒涛の展開で、ともすれば話についていけずプレイヤーを置きざりにしそうですが、リアルなグラフィック、俳優の高い演技力、完璧なリップシンクも相まってストーリーに引き込まれてしまいます。

思想犯罪調査と監視社会の恐怖

本作は、主人公「ダニエル・マクガバン」の記憶を取り戻し彼がいったい何者なのかを探る縦軸のライン、そして1984年の東ドイツで思想局に勤務し、思想犯罪を取り締まる「ロームエージェント」として数々の犯罪調査を行っていく横軸のラインが交差し、ときに時間軸さえ入れ替わる複雑かつ壮大なストーリー構成となっています。まさに小島秀夫監督のような映画的手法を取り入れ、効果的に用いているようでした。

ロームエージェントは、巨大企業「リヴァイアサン」に属する調査官であり、市民の生活を監視統制し、ありとあらゆる規律違反や犯罪を取り締まることが職務です。その風貌は、頭の部分に古いブラウン管テレビを乗せ、液晶画面には個々の顔が映し出されている異様なもの。こういった演出も、「1984」で描かれる監視社会の恐怖と全体主義の狂気的側面を見事に具現化しているような独特のデザインで、とても秀逸だと感じました。

また個人的に興味深かったのは、「1984」と同様に当初は主人公が体制側の組織に属していること。あえて抑制する側の視点から物語が進行していくのは、より生々しくより深く「監視社会の恐怖」を描き出す素晴らしいプロットであると思うのです。それを実際にゲームとして体験できるのはプレイヤーにとって新鮮なのではないでしょうか。

ブレインダイブと家族愛

ダニエルは犯罪容疑者の尋問を行うため、先端テクノロジーである「ブレインダイブ」を使います。互いに装置を装着すれば、相手の脳内に直接侵入することが可能になり、記憶をたどって精神世界を探索し、何が起こったのかを調査していきます。

この一見独特のシステムは、2010年公開の映画「インセプション」のように(こちらは“夢”に入り込める)SFモノでは珍しいものではないですが、本作における精神世界の描写はとても奇妙かつグロテスクで個人的にはたまりませんでした。

たとえば、序盤で体験できるのはウィストン研究所に勤務する「ショーン」という男の記憶。彼はある機密文書を持ち出してしまった容疑で尋問されているのですが、なぜそのような行動をとったのか紐解いていくと……。ブラック企業も真っ青の超激務で疲弊して向精神剤に手を出してみたり、化け物の幻覚を見たり、一人の人間が壊れていく恐ろしさと狂気が精神世界に反映されていました。

ここで注目したいのが、本作はホラー的な恐怖だけではなく、「家族愛」や「心の葛藤」など人間が持つ普遍的な感情も描き出しており、物語にとてつもない深みと重厚さを与えています。ただの窃盗犯だと思っていたショーンには暗い過去やさまざまな事情があり、「ブレインダイブ」は人々の隠された記憶の真実をも暴いていく、というメタ的に設計されているのだと気づいたときは鳥肌が立ちました。

やりごたえ抜群の調査と謎解きパズル

密度の濃い探索要素

ストーリーやグラフィック以外にも、本作で魅力的だったのは「インタラクティブな探索と調査」。ダニエルは、容疑者を尋問するまえに犯罪現場に赴いて調査し、さまざまな証拠を集めなければなりません。

周辺のエリアを探索し、落ちている日記を読んだり、壁にある意味ありげな落書きを見つけたり、ヒントを集めて自分なりに解決していく工程がとても楽しい。しかも色々なオブジェクトを調べられるので、インタラクティブ性が非常に高く密度の濃いゲームデザインになっていました。

また調査方法も、「1984」に登場する同名の「テレスクリーン」と呼ばれる監視カメラにアクセスし、犯行現場の画像を解析してヒントを探し出すという、ディストピアな世界観にあったギミックも用意されていて臨場感がありました。

手応えありまくりの謎解き

もうひとつの探索要素は、難易度の高い歯ごたえのある「謎解きパズル」です。本作の謎解きは、シンボルに対応する数字を組み合わせる比較的簡単なものから、プレイヤーの頭を悩ますものまでバラエティ豊か。上手く解けたときはとても快感でした。

たとえば、このパズルは一見しただけでは中々難しいですが、実は上段左側2列の漢字を組み合わせると、一番右側の漢字になるのです。そしてその漢字に対応する数字を順番どおりに入力すると成功。報酬はゲーム内のコレクティブアイテムで、とてもやりがいのある楽しい要素でした。

プレイする価値のある本格サイコスリラーゲーム

以上駆け足ですが、おおまかにプレイ内容を見てきました。本作の良かった点は、ストーリー、グラフィック、探索や謎解きなどのゲーム性がどれも高品質であり、非常に満足感があったこと。加えて、ゲーム全体で言えば何十時間も遊べるのでプレイボリュームも充分です。期待のサイコスリラー作品としてプレイする価値のある、とても素晴らしいゲームだと感じました

一方で、インタラクトするときの操作感の若干の悪さや、内容は良いもののカットシーンで冗長な部分があり、ゲームプレイとのバランスにやや疑問を感じましたが、誤差の範囲だと思います。


KARMA: The Dark World(カルマ:ダーク・ワールド)』は、海外時間3月27日PC(Epic GamesストアGOGSteam)/および国内PS5向けに発売予定。Xbox Series X|S向けにも今後発売される予定です。


Game*Spark レビュー 『KARMA: The Dark World(カルマ:ダークワールド)』 PC(Epic Games Store/GOG/Steam)国内PS5 2025年03月27日リリース

ストーリー、グラフィック、ゲーム性、三拍子揃ったサイコスリラー大作

GOOD

  • 高品質で美麗なグラフィック
  • 東欧を舞台にしたディストピアな世界観
  • 探索・調査・謎解きが楽しい

BAD

  • 操作性がやや悪い部分もある


ライター:DOOMKID,編集:TAKAJO

ライター/心霊系雑食ゲーマー DOOMKID

1986年1月、広島県生まれ。「怖いもの」の原体験は小学生の時に見ていた「あなたの知らない世界」や当時盛んに放映されていた心霊系番組。小学生時に「バイオハザード」「Dの食卓」、中学生時に「サイレントヒル」でホラーゲームの洗礼を受け、以後このジャンルの虜となる。京都の某大学に入学後、坂口安吾や中島らもにどっぷり影響を受け、無頼派作家を志し退廃的生活(ゲーム三昧)を送る。その後紆余曲折を経て地元にて就職し、積みゲーを崩したり映像制作、ビートメイクなど様々な活動を展開中。HIPHOPとローポリをこよなく愛する。

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編集/いつも腹ペコです TAKAJO

Game*Spark編集部員。『Crusader Kings III』と『Mount & Blade II: Bannerlord』に生活リズムを狂わされ続けています。好きな映画は「ダイ・ハード」、好きなアメコミヒーローは「ナイトウィング」です。

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