
説明不要の傑作『Hollow Knight』から8年……ついに『Hollow Knight: Silksong』が発売されました。
発売前からリリース日の近い他のゲームが延期を発表し、発売直後はさまざまなオンラインストアで購入ができなくなるほどアクセスが集中、そしてSteam版の同時接続者数は連日50万人オーバーを記録するなど、とんでもない大人気ぶりを見せております。

前作のファンだった筆者も早速購入し、12時間ほどプレイしてみました。
今作でもメトロイドヴァニアとしての確かな手ごたえを感じられ、特徴的なアートやサウンドは相変わらず素晴らしいの一言に尽きます。加えて、細かいアクションやタスクと呼ばれるクエスト機能などがアップデートされました。
一方で、前作にあった問題点も引き継いでおり、良くも悪くも8年前の傑作がまたしてもそっくりそのまま再登場したという印象を受けました。
ハロウネストからファールームへ……信仰の道を往くホーネットの旅路
今回の舞台は崩壊した王国ファールームです。いくつものエリアに分かれたこの地では、正気を失った虫や獣たちがはびこっているため、まともな虫たちは脅威にさらされないよう寄り集まって暮らしています。
主人公のホーネットは前作にも登場したキャラクターですが、今作は前作のハロウネストとは別の土地が舞台なので、前作のシナリオをしっかり頭に入れておかないと話に着いていけない……ということはありません。彼女はファールームの頂にあるシタデルを目指し、冒険を開始します。

前作で確立したメトロイドヴァニアの探索要素と、ソウルライク的な高難易度アクションは今作でも健在です。というか、ほぼ同じゲームです。
最初はジャンプ・通常攻撃・自己回復くらいしかできませんが、クレストやアミュレット(装備品)、その他のアップグレードを手に入れることで、徐々にやれることが増えていきます。

ホーネットは前作の主人公と異なり、ちょっと動きにクセがあります。前作の主人公はジャンプ中に↓キーを入れながら敵やオブジェクトを攻撃することで、もう一度ジャンプできましたが、ホーネットは斜めにダイブします。これがなんとも当てづらく、彼女らしいかっこよさはありますが、なかなか慣れません。
その代わりといってはなんですが、ホーネットはぺらぺらと喋ります。彼女は常に気高く、場合によっては不遜な態度も取りますが、なんだかんだ言って弱者を守ってあげるかっこいい存在です。
そもそも崩壊した王国にしては正気のNPCが多く、悲観的なキャラクターもあんまりいないので、ソウルライクのエッセンスがあるゲームにしては、一般的なRPGらしい多彩なキャラとの会話が楽しめる作品でした。ソウルライクにありがちな、陰鬱としているうえにどれも似通った世界観に飽きを感じていた筆者としては嬉しかったポイントです。

これらの会話劇を支えるように、今作では「タスク」という概念が追加されました。これはRPGによくあるクエスト機能に該当するもので、各地でNPCから物集めや敵の討伐を頼まれ、達成すると報酬がもらえるというものです。
メトロイドヴァニアは行ったり来たりを強いられるものですが、このタスク機能によって元に戻る理由が生まれ、ついでに稼ぎや隠し要素探しをするといった好循環が生まれました。もちろん、腕に覚えのある人はズンズン先へ行っても構いません。

また、前作同様に、敵に近接攻撃をして「シルク」というゲージを溜めなければ特殊攻撃や回復が行えないというデザインが、今作でもゲーム体験の根幹を支えているように感じました。単純ながら完璧なリスクリターンの設計になっており、手に汗握る死闘を繰り広げることができます。アートやサウンド、レベルデザインも素晴らしいですが、実は本シリーズのゲームとしての白眉はここなのではないでしょうか。

ボス戦も面白く、しかもワンサカ登場します。ほとんど予兆もなく現れるので、ハプニングに遭遇した驚きもあります。一度や二度の攻略では倒せないくらいには歯応えがありますが、とんでもなく理不尽というわけではなく、動きをしっかり覚えれば攻略できるバランスでした。

反面、道中の探索はかなりオールドスクールな味わいがします。
今作でも、倒れたらその場に通貨であるロザリーをすべて落とします。店売りのものを買うにも、ステージの奥にある駅(ファストトラベルポイント)やベンチ(回復地点)をアンロックするにもロザリーが要るので、常に多少は持っておく必要があります。
『デモンズソウル』の頃から流行りだしたシステムではありますが、今回は道中のザコ敵の火力が上がり、攻撃パターンも増えたことで、そう簡単には拾わせてくれなくなりました。
たしかに緊張感はありますが、筆者としてはいい加減見飽きたシステムであるし、せっかく戻されたんだから別の場所にも行ってみたいという気持ちにもなるので、このシステムを未だに採用するのはどうなのかなと思ってしまいます。

また、今作でも地図上に自分の位置を記載する「コンパス」というアイテムで装備枠がひとつ削れたり、ベンチからボス部屋までの道中が長かったりと、面倒なポイントも8年前と同じです。これらのストレスがあるからこそ、ボスを倒したときの達成感にもつながっているとは思いますが。

今のところ、前作同様、高水準なソウルライク・メトロイドヴァニアという印象を受けています。そもそもインディーゲーム界においてそのブームを作り出した立役者が前作『Hollow Knight』で、本作はそのもっとも優秀なフォロワー作品のひとつという感じでしょうか。
ジャンルに風穴を開けたり、誰も見たことのない革新的なアイデアがあったりするわけではありませんが、レベルデザイン・アクション・アート・サウンドとおよそ2Dプラットフォーマーに必要なほぼすべての要素が高水準なため、ついつい進めてしまう魔力がありました。特にNPCたちとの会話が楽しくなったおかげで「次はどんな虫と会えるんだろう?」というモチベーションが保てたのがうれしかったです。
タイトル:『Hollow Knight: Silksong』
対応機種:PC(Steam/Microsoft Store/GOG.com)/Nintendo Switch/Nintendo Switch 2/PlayStation 4/PlayStation 5/Xbox One/Xbox Series X/S
記事におけるプレイ機種:Nintendo Switch 2
発売日:2025年9月4日
著者プレイ時間:12時間
サブスク配信有無:Xbox Game Pass/PC Game Pass
価格:2300円
※製品情報は記事執筆時点のもの
良くも悪くも前作と変わらないけど、今回も高水準のメトロイドヴァニアを楽しめるスパ!
¥53,980
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)













