『ニディガ』から影響を受けたクセつよ地雷系少女たちを攻略する恋愛ADV『中国式地雷女』開発インタビュー!Game*Sparkが日本展開のきっかけ...!? | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『ニディガ』から影響を受けたクセつよ地雷系少女たちを攻略する恋愛ADV『中国式地雷女』開発インタビュー!Game*Sparkが日本展開のきっかけ...!?

「WePlay Expo 2025」で『NEEDY GIRL OVERDOSE』を受けたビジュアルノベル『中国式地雷女』のプロデューサーにお話を伺いました。日本版、出るってよ!

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中国・上海で実施された「WePlay Expo 2025」では、実にさまざまな出会いがありました。

その中でもパズルゲーム『CATO(キャトー)』を開発するTeam WollのFrank He氏にインタビューを実施する機会を用意し、さらに通訳まで協力してくれた“とあるゲームクリエイター”には感謝せざるを得ません。

彼は会場に出展されていた、『魔法少女ノ魔女裁判』グッズを目当てに現地へ訪れていたのですが、色々とご縁があって直接知り合うことができました。


その人物とは、Chronosys Games(钟夏游戏)のCEOであり、ビジュアルノベルゲーム『中国式地雷女』のプロデューサーを務めているZone氏です。ひょんなことからたまたまの巡り合わせで氏と出会うことができた筆者。

何を隠そう、『中国式地雷女』は以前よりひっそりとウィッシュリストに入れて発売を心待ちにしているゲームでもあるのです。

今回はそんな奇跡のような巡り合わせから波及し、Zone氏に直接インタビューを実施することができました。現在、開発中の『中国式地雷女』について根掘り葉掘り、あれこれとお話を伺っています。

メッセージでは自分たちの作品のキャラクターでリアクションを返してくれました。

残業社会をどう物語に落とし込んだか?三者三様の“地雷系ヒロイン”を攻略するビジュアルノベル

――まずお聞きしたいのですが……なぜ「地雷女」をテーマとした恋愛ADVを制作しようと思ったのでしょうか?インスピレーションの原点が気になります。

Zone二次元コンテンツが溢れる現代では、美少女キャラクターの属性はほぼ掘り尽くされ、キャラクターデザインの多くが既存の属性の組み合わせに留まっていると感じていました

そんな中、2025年3月頃に私たちは「地雷女」が三次元社会で流行している現象として、二次元コンテンツにも影響を与え始めていることに気づきました。実際、開発チームの周囲でも「自分は地雷女だ」と自認する女性の友人が増え始めたのです。

何気ない会話の中で、「地雷女」は従来のキャラクター属性と比べても新鮮で、今後さらに多くの二次元ゲームで採用されていくだろうなと確信しました。また、ギャルゲーは私たちのような小規模なインディーチームにとって取り組みやすいジャンルです。限られた予算の中で、より豊かで深みのあるストーリーと感情表現に挑戦できると考えました。

――ゲーム内では中国のゲーム会社文化(残業、社内政治など)がリアルに描かれているそうですね。こうした「現実の苦労」を作品に取り入れる際、現実とフィクションのバランスはどのように調整しているのでしょうか?

Zoneタイトルが『中国式地雷女』である以上、物語の舞台は社会人男性の人生に設定する必要がありました。……というのも、中国ではこの年代の男性が、過酷な職場環境から難しい恋愛・結婚問題まで、さまざまな試練に直面します。こうした現実問題は、私たちが“中国式”のストーリーを描くうえで最適な土台だと考えています。

ただ、現実主義に厳密に従うと一つの問題が出てきます。

本当に残業の多い人には、そもそも恋愛する時間がないのです(笑)。

中国のゲーム会社ではこんなことがよく言われます。

もし、とある社員が恋愛をしているのなら、その人の仕事量はまだ飽和状態ではない。もし、恋愛している社員が何人もいるのなら、他部署の社員たちはそのプロジェクトのために異動を考える。

仮に残業が多い社員をそのままリアルに描けば、週の最初の6日間は21時以降まで残業し、残りの日曜は15時まで12時間爆睡……といった生活になってしまい、恋愛イベントを経験する余白は残りません。彼らに必要なのはどう見ても恋愛じゃなくて十分な睡眠だからです。たとえ恋愛していたとしても、せいぜいSNSに簡単なのろけ話を投稿できるかどうかくらいのものでしょう(笑)。

そのため本作では、少しロマンチックな生活に脚色し、現実のストレス要因は想起させつつも、恋愛イベントが成立する時間と空間を確保しました。主人公が休日にイベントへ行ったり、地下アイドルのライブを観に行ったり、友人の誕生日を祝ったりできるのもそのためです。

こうした調整によって、主人公以上に忙しいプレイヤーでも自然に感情移入しやすくなると考えました。作中ではほかにも恋愛に関する現実的な問題を多数描いているのですが、これ以上はネタバレが多くなりそうなので、ぜひ正式版でお楽しみください。

――主人公・夏宅(28歳)を「ゲーム運営職」に設定した理由はなんでしょうか? この職業ならではのドラマ性があるのでしょうか。

Zoneその通りです。

ゲームの運営はさまざまな職種と関わる機会が多く、異なるバックグラウンドのキャラクターを登場させやすい仕事でした。さらに仕事内容も比較的イメージしやすく、多くのプレイヤーが関心を持っている分野でもあると思います。

もし主人公をプログラマーにしていたら、無意識のうちに技術議論や社内調整の話が中心になり、多くの方には少し難しい物語になっていたかもしれません。たとえば、2つのアーキテクチャを巡って激しい論争を繰り広げ、最終的にストレージ容量を85%削減することに成功した……なんてストーリー展開になったことでしょう。これでは大半のプレイヤーには理解しづらいはずです。

ですので、「運営」という視点から職場の空気や価値判断を描くことで、物語にもう一段“中国式”の味わいを加えるつもりです。

――今作のテキスト総量は“30万字規模”とのことですが、その見どころについてお聞かせください。

Zone物語を構想する際には、「観客に何を伝えたいのか」「どんな感情を抱いてほしいのか」というテーマを必ず定めています。ただしそれは教訓めいた一般論ではなく、理屈より先に心へ届く感情だと考えています

たとえば、川端康成の「雪国」の最後の一文、「踏みこたえて目を上げた途端、さあと音を立てて天の河が島村のなかへ流れ落ちるようであった」という表現。

あるいは岩井俊二監督の映画「四月物語」では、松たか子の美しさ、特に彼女が服を揺らして桜の花びらが服からこぼれ落ちるシーンなどが印象的ですが、この物語の結末は2人が直接結ばれるのではなく、田辺誠一が松たか子に赤い傘を贈るという控えめな演出で終わります。

実際、2人は作中で結ばれないのに、このさりげない演出にで観客はヒロインの片思いが報われた喜びに共感できるのです。

中国の文化もまた、言葉にせずとも伝わる繊細な表現を好みます。私たちは物語の結末で教訓をあからさまに述べるようなことはしません。これも一種の繊細な感情表現です。

夏宅と由奈、秀華、愛香がそれぞれの結末に向かう過程で、プレイヤーたちはそれぞれ異なる感情を抱くことになるでしょう。私はこうした感情を伝えたかったのであって、プレイヤーに何かメッセージを伝える意図はないのです。

――由奈・秀華・愛香は、まったく異なるタイプの「地雷系」ヒロインですよね。キャラクターづくりで特に苦労した点はありますか?

Zone実際、これら3人のヒロインは完全に異なるタイプの地雷系女子ですので、キャラクター設定にはかなり苦労しました。特にキャラクターが画一的にならないよう注意しています。

地雷系の特徴として顕著なのは情緒不安定さです。この物語が地雷系女子との恋愛を描くものである以上、当然彼女の情緒不安定さをうまくケアする必要があります

キャラクター設定の難しさについて言えば、例えば現実では地雷系女子が怒るのに理由が必要ないかもしれませんが、ギャルゲーの世界ではそうはいきません。キャラクターの性格、動機、論理性、リアリティ、そして魅力を同時に持たせる必要があります(日本のプレイヤーに比べて国内のプレイヤーはリアリティや没入感をより重視する傾向があり、それが私たちが職場要素を取り入れた理由の一つでもあります)。

さらに重要なのは、プレイヤーがこの女の子たちを攻略しなければならないという点です。

どのように攻略すべきか、あるいはどのようにケアすべきかを考えると、プレイヤーも作り手である私たちも頭が痛くなります(笑)。

――50枚以上のCGや豊富な表情差分が用意されているとのことですが、美術面で「これは妥協できない」というこだわりがあればお聞かせください。

Zone私たちは小規模なスタートアップチームですので、大型のプロジェクトと同じレベルで予算を競うことはできません。それでもやはり美術はギャルゲーの要です。物語の空気や感情の起伏、繊細な関係性は、相応のビジュアルがあって初めてプレイヤーに届くと考えています。

ですので、私たちの作品には繊細な感情表現が数多く含まれています。地雷系ヒロインの独特な魅力と矛盾に満ちた内面、複雑で微妙な人間関係の描写など、これらを表現するには美術面でもある程度の水準が求められてきますよね。美術部分の予算を過度に制限してしまうと、グラフィックと繊細な文章表現の雰囲気も一致しなくなる可能性があります。

中国市場の環境に影響され、CGの総枚数を強調した宣伝文句だというのは認めます。ただし、ここでの本質は「競合他社が40枚のCGを使用しているなら、私たちも商業ゲームとして50枚以上のCGが必要だ」という論理ではありません。

むしろ、私たちの物語を十分に魅力的に伝えるためには、それだけ美術リソースが必要だということです。言い換えれば、私たちはこの物語を書いたからこそ、それにふさわしい高品質な美術制作を行う必要があったというだけなのです。

――今年公開したデモ版について、プレイヤーから寄せられたフィードバックの中で、特に印象に残った声はありますか?

Zone「ギャルゲーって要するに美少女と恋愛するゲームでしょ?」と、最初はシンプルな意見を想定していたのですが、実際は予想していたものとは全く異なるフィードバックが数多く寄せられました。中国のギャルゲー市場では現在、ある種の“流行ミーム”が形成されていて、これまでとは異なる嗜好を持つユーザーが急増しているんです。

たとえば、本作の冒頭では、主人公と2人の美少女がデートするシーンがありますが、「なぜ主人公がこれほどモテるのか?」と疑問を抱くプレイヤーがいました。“この疑問を抱く”という反応自体が、私にとってはとても意外でした。

私の認識だと、ギャルゲーでは美少女と恋愛するのが当然の流れだと思っていたのですが、中国では実際に、軽い気持ちでギャルゲーをプレイするユーザーの多くが、映画を観るような感覚でストーリーのリアリティを重視する傾向があるのです

デモ版の第2幕でエアフライヤーから油が飛び散る描写について気にするプレイヤーがいたり、「なぜ女キャラが黒髪じゃないのか」と疑問を投げかける投稿もたくさんありました(笑)。

さらには、女性配信者がデモ版をプレイして、「主人公の描き方がゆずソフト(※1)の主人公よりも“ゆず主人公”っぽい」と言ってくれたこともありましたね(笑)。

中国ギャルゲー界の良いところは、流行ミームになったことで多くのライト層がこのジャンルに興味を持ってくれる点です。ただ同時に、彼らのニーズにも応える必要が出てきます。そのため、作品の核となる売りを改めて見直し、明確にすることが求められていくので、創作にとっては決して小さくない挑戦になっています。
※1ユノスが展開する成人向けゲームブランド

Steam「成人向け」タグをめぐる誤解と開発側の立場を改めて訊く

――Steamの「成人向けタグ」について、公式からは「本作はR18作品ではない」と繰り返し説明されています。本作の表現の境界線を設定する際、どのような基準で線引きを行ったのでしょうか?

Zoneこの件については、中国のインターネットコミュニティで大きな誤解が生じました。

Steamのコンテンツ審査モジュールの定義において、「成人向けコンテンツ」=「R18」ではなく、「成人限定の性的コンテンツ」だけがR18に該当するとされています。一方、成人向けコンテンツが全く含まれない場合……分かりやすくいえば『スーパーマリオブラザーズ』のような厳格な全年齢対象ゲームに分類されることになります。

タグを選択する際、「サンプル製品」として『Dota2』『Clair Obscur: Expedition 33』、さらには『デジモンストーリー タイムストレンジャー』まで入っているのを見て、私たちのゲームもだいたいこのカテゴリーに該当するだろうと判断しました。これらのタグをチェックしないと、審査を通過する可能性が極めて低いと考えたためにチェックを入れたのです。

これは「(審査側としては)あなたの作品にまだ成人向けコンテンツが残っているかどうか確認できない」という意味で、私は当時それを正しく理解していました。初回審査で落ちるというのもよくある話ですしね。

そんな時に私はユーザーへの報告の手間を省こうと、その差し戻し理由のスクリーンショットをそのまま公式アカウントに投稿したのですが、これが結果として中国のネット上で「作品をR18として設定した」と解釈されてしまいました。

この一連の経緯をまず中国のゲームメディアがコメント欄の誤った憶測を含めて記事化し、さらにその後、誰かが断定的な文言と私たちのゲーム画像を合成して、あたかもメディア報道のスクリーンショットのように偽装した画像が拡散されてしまったのです。

bilibiliで投稿されたアダルトゲームではないことを告知する公式の投稿

しかも、その偽装された“メディア報道スクショ”が、なんと数百のQQ(※2)グループ内に拡散されてしまい、私たち宛に膨大な数の誹謗中傷が寄せられることになったのです。ゲーム開発委員会からも「一体何が起きたのか」と問い合わせが来るほどの事態になりましたが、幸いなことにデモ版が審査を通過して配信が開始されると、この誤解はすぐに収束しました。
※2 中国で広く普及しているテンセントのメッセンジャーアプリ。

中国のローカル開発会社として、私たちは中国国内のゲーム審査基準に沿って表現の線引きをしていますしたがって「成人限定のポルノコンテンツ」は絶対にありません

Steamにおいては、年齢レーティングが高すぎることはむしろ大きな欠点になり得ます。現在の体験版は「14+ 」のレーティングですが、これが「16+」まで上がると検索結果でカバー画像がぼかされ、プラットフォーム内での露出が減ります。「R18」であれば、そもそも多くのユーザーに表示されなくなってしまいますしね。

なので理屈の上では、わざわざ年齢レーティングを不必要に高く付ける人はいないはずです。ただし、もし正式版が「16+」相当の内容と判定されたとしても、レーティングを下げるためにゲームを削除・改変することはしません。現状、私たちがはっきりしているのはR18の内容は作らないというスタンスです

ギャルゲーについて言えば、「ああいう内容がないとギャルゲーじゃない」と考えるユーザーが少なくありません。しかし私の思うギャルゲーの核心とは「美少女と共に経験する物語」だと思うのです。ゲーム内の“ああいう内容”だけに注目してしまうと、美少女の真摯な感情や、心を打つシーンを見逃してしまうはずです。

R18ができない言い訳に聞こえるかもしれませんが、私は本心からギャルゲーが持つ“美少女との恋愛”の部分が何よりも好きです。そうでなければ、わざわざお金を出してR18ではないギャルゲーを作ろうとはしなかったでしょう。R18ではない私たちの美少女ゲーム作品を、ぜひ応援していただけたら幸いです。

――2026年リリース予定の正式版に向けて、現在特に重点的に強化したい部分はどこですか?UI、演出、シナリオなど、優先順位が高く、特に磨き上げたい要素はありますか?

Zone現在のベータ版と比較して、正式版ではシナリオの演出効果を特に強化する予定です。シナリオに関しては、シナリオライターの仕上げてくるクオリティが開発当初から高く、字数も約25万字に達しました。終盤に差し掛かっている状況ですので、現在は主にグラフィックと演出部分の制作に注力しています。

今後は、キャラクターの表情差分やポーズ差分の種類を増やし、さらに多様な演出テクニックやインタラクティブ要素を取り入れていく予定です。既に豊富なグラフィック素材や音楽素材を制作していますので、プレイヤーの皆様の期待に応えられると確信しています!

――中国国内のSteamウィッシュリストにはすでに5,000件以上の登録があると聞いています。ファンから届いたコメントの中で嬉しかったり、印象に残ったものはありましたか?

Zoneとあるファンの方がこう書いていました。

「以前、地雷女と2回付き合って、どちらもあまりうまくいかず、想像していたのと全然違いました。ゲームの中で自分の願望を実現できたらいいなと思っています」

これは面白いと思いました。ちなみにこのファンの友人は、本当に「地雷女と付き合う」という目標に執着しているようです(笑)。

――開発過程で裏話やちょっとしたエピソードがあれば、ぜひ教えてください。

Zoneデモ版にボイスを入れた時のことです。

プレイヤーの皆さんにより良い体験をお届けするため、私とシナリオ担当は上海の収録スタジオまで足を運び、初めてオフラインのボイス収録に立ち会いました。

このゲームでは中国国内でもプロフェッショナルな声優さんたちを起用しています。彼女たちは多くの中国産アニメ作品の収録に参加してきた方々なのですが、ギャルゲーの収録に関しては今回が初めてとのことでした。

ですが話をしてみると、声優さんたちがそもそも「地雷女」という概念をあまりよく知らなかったんですね。ネット検索と私たちの解説を経て、「なるほど、世の中にはこういう女の子もいるんだね」と、その時になってようやく理解してくれたのが今でも印象に残っています。

あとは、秀華と由奈の担当声優さんがオーディションの時にお互い「自分のほうが相手の役に合ってると思う(笑)」と言っていたのが印象的でした。お二人とも本当に全力で収録中に臨んでくれたのですが、地雷女特有の情緒不安定さと感情が爆発する演技に際しては、秀華の声優さんが収録中に声を枯らしてしまったなんてこともありました。

それでも幸いなことに、最終的な仕上がり方も非常に満足できるもので、声優さんたちも「すごく気持ちよく演じられた」と言ってくださいました。私たちにとっては最高の評価ですね。

今回は、声優さんがリラックスして役に入りやすいように、私たちはギャルゲーにおける“定番の可愛い決め台詞”のようなものをいくつか教えました。たとえば、「呀吼(※3)」「ciallo(※4)」の二つの言葉を教えたのですが、音響監督まで影響されて「呀吼」を覚えてしまいましたね(笑)。
※3 日本語における「やっほー!」のような軽い挨拶
※4 ゆずソフトのアダルトゲーム『サノバウィッチ』に登場するヒロイン「因幡めぐる」の挨拶「ちゃろー」が中国でインターネットスラング化したもの

そんな声優さんにまつわるエピソードを紹介しましたが、実は現在、日本語ボイスについても計画を進めています。日本語収録の際に、声優さんたちとどんな化学反応を起こせるのかが我々としても非常に楽しみです。もちろん、この分野に詳しい方々からのご連絡も大歓迎です!

――これまでに大きな影響を受けた作品や最近特に注目しているゲームはありますか?

Zoneやはり『NEEDY GIRL OVERDOSE』ですね。このゲームは「あめちゃん」という、リアルでありながら独特の魅力を持つ地雷女像を見事に作り上げました。中国でも非常に大きな影響力があって、体感としては日本以上なのではないかとすら感じています

実際、私が漫展(アニメ・漫画・ゲーム系の大型イベント)やアニメショップ街に行くたびに、あめちゃんと超てんちゃんのコスプレをしている女の子たちをたくさん見かけます。ネット上にいる地雷系女子たちも、私に「『NEEDY GIRL OVERDOSE』が好き!」と強調してくることが多いです。そうした反応は、私たちの創作にもいくつかのインスピレーションを与えてくれました。

写真は上海に出展している『ニディガ』のポップアップストア。WePlayの会場でもブースが設営され人気を博していた。

――先ほど日本ボイスの話がありましたが、今後、日本語を含む多言語対応の予定はありますか……?

Zoneはい、多言語版は制作する予定です。Steamのストアページも既に日本語対応しています。

実は数か月前まで、海外展開のことはまったく考えていませんでした。というのも、ゲームタイトルからして『中国式地雷女』ですし、内容も極めてローカライズ色が強いなと。海外展開の話題になると「別の外国語タイトルに変えたほうがいいのでは?」と勧められることもよくあります。

経験則の観点から見るに、これまで中国国内で優れた実績を出してきた中国産のギャルゲーは、海外での売上が中国本土と比べてかなり差があるように思えます。たとえば、嵇零氏の『飢えた子羊』、そして数年前に古落氏と片岡とも氏が手がけた『Christmas Tina ‐泡沫冬景‐』などです。

なぜこれらの作品の海外売上が中国と大きく差が出ているかまでは分からないのですが、最近Game*Sparkが私たちのゲームを報じてくれたのを見て、『中国式地雷女』の題材に関心を示してくれる日本ユーザーをの存在を知りました。

しかも、公式QQグループにこのゲームに興味を持った外国人ユーザーがたくさん入ってきています。時々 QQグループを開いてみると、皆、英語でチャットをしているんですね。これを見て、次は海外展開に向けてしっかり挑戦してみようと決心しました

ただ、具体的にプロジェクトチームが直接担当するのか、それとも海外パブリッシャーに任せるのかについては、まだ決まっていない状況です。日本語について言えば、私自身が日本の慶應義塾大学を卒業しており、うちのプログラマーの1人も東京科学大学を卒業しているので、日本語ローカライズの監修に関しては情報面でのハードルがありません

翻訳作業は日本語ネイティブの方を募集して翻訳してもらう形になるとは思いますが、品質には当然高い基準を求めることになります。ですので、“地雷女”題材の翻訳をやってみたい方がいればぜひ連絡してくれると嬉しいです(笑)

――最後になりますが、『中国式地雷女』を今後どのような作品に発展させていきたいとお考えですか?理想とする未来像についてお聞かせください。

Zone『中国式地雷女』は私たちの第1作目となるゲームです。第1作目がこれほど高い注目を得られたのは運でもありますが、立ち上げ当初から、的確なターゲット層を見つけられていたことも大きいと思っています。

プロダクトにとって最も重要なのは、市場の受け手に向けた「直感」です。なぜなら、あらゆる資産は正しい方向性の上に築かなければならないからです。

私たちにとって第1作目である以上、開発パイプラインを構築する初期段階では、どうしてもいくつかの遠回りをしてしまいました。ですが幸いにも、内容の方向性については一貫して揺るがず、チームメンバーも常に創作への熱意を保ち続けてくれています。

私たちのチームは、美少女ゲームの受け手そのものです。インディーゲーム制作はしばしば「背水の陣」だと言われます。なぜならインディー開発者は、自分の好みに基づいて創作せざるを得ないことが多いからです

幸運なことに、私たちの好みはまさにギャルゲープレイヤーの好みでした。私たちは、自分たちの平凡でごく普通の嗜好をむしろ幸運だと感じています。そのおかげで、私たちのプロジェクトは多くのプレイヤーの関心を引くことができたのだと思います。

私たちは美少女ゲームが好きです。そして、リアリティと魅力を兼ね備えた女の子のキャラクターを作りたい。

昨今はジャンルを複合する、「拡圈(界隈・コミュニティの拡大)」や「収益拡大」を狙う作品が好まれがちですが、私たちは比較的純粋な、“本当に美少女と恋愛するゲーム”を作るつもりです。もし、もう少しだけ欲張りな願いを言えのならば、プレイヤーが物語の中の誰か1人の女の子を覚えていてくれたら嬉しいです。彼女たちは本当に可愛いんです

「未来像」とまで問われると、答えるのは難しいですが、私たちにとってはプレイヤーに認めてもらえることが何より大切です。もし、物語を読み終えたプレイヤーが心を大きく揺さぶられるような感情を抱き、ゲーム内の女の子たちと「恋」をしたいと思ってくれたのだとしたら――きっとそれが私たちの究極の願いだと思います。

――ありがとうございました!


ライター:そりす,編集:宮崎 紘輔

ライター/ そりす

東京都福生市生まれのゲームライター。そしてお酒と革靴が好物でソロキャンプが趣味のミニマリスト気質おじさん。サ終ゲームのヒロインをAIで復活させてニヤニヤしたり、国語辞典を持ち歩いて山中フラフラしたりしています。ULキャンプに傾倒しているためSNSは大体キャンプの話題が多め。

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編集/タンクトップおじさん 宮崎 紘輔

Game*Spark、インサイドを運営するイードのゲームメディア及びアニメメディアの事業責任者でもあるただのニンゲン。 日本の新卒一括採用システムに反旗を翻すべく、一日18時間くらいゲームをしてアニメを見るというささやかな抵抗を6年続けていたが、親には勘当されそうになるし、バイト先の社長は逮捕されるしでインサイド編集部に無気力バイトとして転がり込む。 偶然も重なって2017年にゲームメディアの統括となり、ポジションが空位になっていたGame*Sparkの編集長的ポジションに就くも、ちょっとしたハプニングもあって2022年7月をもって編集長の席を譲る。 夢はイードのゲームメディア群を日本のゲーム業界で一目置かれる存在にすること、ゲームやアニメを自分達で出すこと(ウィザードリィでちょっと実現)、日本武道館でライブすること、グラストンベリーのヘッドライナーになること……など。

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