ネットカフェでオンラインゲームの『Prius Online』に没頭したあまり、3ヶ月になる赤ちゃんが栄養失調で衰弱、両親の育児放棄により亡くなったという痛ましい事件が2010年に韓国で起こりました。
今週に米ケーブルテレビHBOでは、2010年に起きたこの事件と、その背景を追ったドキュメンタリー番組「Love Child」が放送。2007年にYouTubeで一躍有名となったクリス・クロッカーを追った2012年のドキュメンタリー「ME @the Zoo」のディレクターで知られるValerie Veatch氏が製作を進めていたこのドキュメンタリーは、ゲームは中毒になるのか、ゲームの開発者は倫理的責任を問われるかなど、心理学者やメディア専門家でさえその答えを未だ導いていない難しい問題に切り込んだ内容となっています。
番組の製作を手掛けたディレクターのVeatch氏は、このドキュメンタリーはゲーム業界に打撃を与える内容ではなく、重要な問題提起を投げかける内容であるとしており、実際に今年の6月に韓国内でも放送され、若年層の視聴者から大きな反響があり議論の場が生まれている事を伝えています。
同ドキュメンタリーにて、ビラノバ大学で「ビデオゲームが人間の行動と係わり合いにどの様な影響を及ぼすか」を心理学の観点から研究しているPatrick Markey準教授は、ゲームへと過剰にのめり込む人々の一部は、それによって否定的な結果を引き起こす事は明白であると説明。しかしながら、実生活に起きている問題やストレスの気晴らしを提供してくれるものであるならば、人々はゲームに限らずあらゆる活動に過剰にのめり込む可能性があるとして、過度のゲームプレイが実際の原因というよりも、根本的な問題が起因しているとも論じています。
またMarkey準教授は、現時点でビデオゲームがドラッグやギャンブルと同様の中毒性があると認めた主要機関は存在していないとして、ゲームは人と高いレベルの係わり合いを促すかもしれないものの、中毒性を生むという考えには否定的であるようです。
デポー大学Janet Prindle Institute for Ethics(倫理研究所)の責任者であり、余暇にはゲームの開発も行っているというAndrew Cullison氏は、ゲームの開発者には道徳的責任があると語り、近年の事件を考慮し、常習性などの面でゲームデザインを考える必要があるとゲーム開発者の観点から意見。近年のゲームのビジネスモデルが心を大きく動かすものや中毒的なものを開発する方向へと変化している事を危惧しているようです。
最後に同番組で語ったVeatch氏は、人を夢中にさせる要素が事件が起きた理由の1つであると考えられるも、ゲームそのものに中毒性があるとは思わないと主張。また、多くの人々はゲームユーザーの心理を理解せずにゲームが原因という意見に飲み込まれているとも感じているとして、このような悲劇は人生への興味を失った際に起こりうることであるとしています。
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