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記野直子の『最新北米市場分析』2015年4月号―『Mortal Kombat X』を日本でも!

2015年4月の北米の市場総額は前年2014年4月と比較して3%アップの5億9,570万ドル(約715億円)。好調そのものです。

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記野直子の『最新北米市場分析』2015年4月号―『Mortal Kombat X』を日本でも!
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こんにちは。昨日アメリカ出張から帰ってきました。帰国後すぐに4月のNPDレポート発表がありましたので頑張って書きますのでご一読を。

■市場全体動向:前年比アップの好況!

2015年4月の北米の市場総額は前年2014年4月と比較して3%アップの5億9,570万ドル(約715億円)。好調そのものです。

ハードウェア売上は4%ダウンの1億8,390万ドル(約220億円)。ただし、金額がダウンだからと言って「陰りがある」というのはせっかちな話で、前年のこの時期にはまだXbox Oneの値下げはされていなかったのだから、台数が売れていないということにはならないのです。むしろ引き続き好調に売れているというべきでしょう。

ソフトウェア売上を見ると前年の2億2,760万ドル(約273億円)と比較して13%アップの2億5,670万ドル(約308億円)。旧ハード(PS3、Xbox 360)向けソフト売上が前年比62%ダウン、携帯ゲーム機向けのソフト売上が前年比32%ダウンとのレポートがあるので、現ハード向け(PS4、Xbox One)向けのソフトの売上がこれらのダウンも吸収した上、前年比アップまで押し上げる強力なセールスであったことを物語っています。実際に現ハード向けだけで見てみれば前年比200%アップということなので、現ハードに向けたソフトの売上は絶好調と言えるでしょう。

■ハード動向:ハード売上は引き続き順調!

北米に出張してきた際に「PlayStation 4好調!」と聞いていたので、また水をあけたのかなと思っていたところ、4月のハードウェアのベストセラーはXbox Oneだったとのレポートがありました。マイクロソフトの発表によると同ハードの4月売上台数は前年比63%アップとのこと、値下げしてよかったってことですね!

ソニーの発表によると、PlayStation 4は依然として現世代ハードとして北米のインストールベース(累計販売台数)でナンバーワンであり、4月においてもハードの販売台数は一番ではなかったものの、ソフト売上に関してはPlayStation 4向けがその他を凌駕したとのことです。

PlayStation 4が好調と聞くとXbox Oneも好調、Xbox Oneが好調と聞くとPlayStation 4も好調!という流れ、日本には見られないとてもいい競争状態です。PlayStation 4とXbox Oneは発売から18カ月が経過、PlayStation 3 とXbox 360時代の発売後18カ月と比べると50%以上上回るスピードで普及しているとNPDはレポートしています。


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Wii Uと3DSに関しては任天堂から特に発表がありません。任天堂の「4年ぶりの営業黒字」というプレスリリースを見れば決して悪くはないのでしょうが、WiiほどのブームにはならなかったWii Uをこれからどう立て直すのか、また、DeNAとの提携のもと作られるNXはどのようなプラットフォームになるのか将来の発表を待ちましょう。

■ソフト動向: グロを許さない日本とエロを許さない欧米

2015年3月度のソフトウェアランキングです。

    1. Mortal Kombat X (PS4/XBO) - Warner Bros. Interactive
    2. Grand Theft Auto V (PS3/PS4/X360/X1/PC) - Take 2/Rockstar
    3. Battlefield Hardline (PS3/PS4/360/X1/PC) - Electronic Arts
    4. MLB 15: The Show (PS3/PS4) - Sony Computer Entertainment
    5. Minecraft (PS3/PS4/X360/X1) - Microsoft/ Sony Computer Entertainment
    6. NBA 2K15 (PS3/PS4/X360/X1/PC) - Take 2/2K Games
    7. Call of Duty: Advanced Warfare (PS3/PS4/X360/X1/PC) - Activision Blizzard
    8. Dark Souls II: Scholar of the First Sin (PS3/PS4/X360/X1) - Bandai Namco Entertainment
    9. Super Smash Bros. (Wii U/3DS) - Nintendo
    10. Borderlands: The Handsome Collection (PS4/X1) - Take 2/2K Games

『Mortal Kombat X』がナンバーワンに輝きました。これに関してはまた後ほど触れたいと思いますが、2位の『Grand Theft Auto V』はユーザー待望のPC版が発売されたので再ブレイク!というところです。強いですね、GTAシリーズ。

3月の『Bloodborne』に続きフロムソフトウェア開発の『Dark Souls II』がランクイン。Metacriticでも90点前後のハイスコアを獲得しており、今やフロムソフトウェアなしでは日本発のタイトルは語れませんが、『Dark Souls』シリーズを手塩にかけてアメリカでプッシュし続けるバンダイナムコのパブリッシャーとしての力も光ります。

さて、話は『Mortal Kombat X』に戻ります。北米で4月にトップ1に輝いたタイトルは日本では発売されません。あまりのバイオレンスにレーティング上大きな修正を要求されるからでしょう。

日本ではグロ、つまり暴力表現に非常に敏感です。一方欧米ではある程度のバイオレンスに寛容(細かく言うとドイツは日本並みにバイオレンスに厳しかったりします)で、ゲームソフトウェアに暴力表現が含まれていることはある意味当たり前で、ESRB(Entertainment Software Rating Board)上で「M:MATURE(17歳以上)」とレーティングすればある程度の範囲内で発売されることになります。

しかし、文化の違いというべきか許容範囲の違いというべきか、北米でMレーティングで発売されている『Mortal Kombat X』は日本ではレーティングがつかないくらい暴力的で発売不可能なものということなのでしょう。全くもって残念です。


また、真逆の話もあります。日本はエロ(特に若年層の肌の露出)に寛容と言われています。日本で許されている十代の女性のパンチラや肌の露出は欧米では「ロリータ」とみなされ異常性愛者的な見方をされます。したがって日本で好評を得ているアイドル系のソフトや中高生との恋愛を舞台にしたものはなかなか欧米では発売できないのです。

「グロを許さない日本とエロを許さない欧米」または、「日本はエロOKグロNG、欧米はグロOKエロNG」と言われるような文化の違いを呼んでいるのです。両サイドで相互にゲームを供給するには文化やレーティングに合わせたカスタマイズをしない限り難しい状況が長い間続いています。

それには莫大な投資がかかったり、ゲーム性自体を損ねたり、いろいろな問題があって発売をしない決定をするのですが、ゲームがエンターテインメントである限り、ある程度の許容性をもってユーザーがあらゆるソフトに触れる機会を作ってほしいなと思ってやみません。

■ E3(Electronic Entertainment Expo)2015が6月に開催されます!

世界最大のゲーム見本市E3 2015がアメリカのロサンゼルス市(LAコンベンションセンター(LACC))において6月16日~18日に行われます。例年通り北米のメディア、小売店のバイヤーに向けて行う展示会で、年末商戦に向けてどのような戦略やラインナップで勝負をしていくのか披露する場となっています。

北米の最新のソフトが見られるだけでなく、ハードメーカーの今後のプラットフォーム戦略もここで語られることが多いため、北米の人たちだけでなく世界各国から業界関係者が集まるエキサイティングなイベントです。

私も参加予定ですので、来月はきっとアメリカからレポートということになるかと。E3情報が絡められるかは微妙ですが、また来月お会いしましょう!

    ■著者紹介
    記野直子
    カイオス株式会社 代表取締役
    青山学院大学文学部卒業。日産自動車株式会社を経て、ゲーム好きが高じゲーム業界へ転身。コナミ株式会社、株式会社バンダイ、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントにてゲームソフトの海外展開、ゲームソフト発キャラクター展開などに従事。2007年よりカイオス株式会社代表。
 
《記野直子》
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