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薬物乱用、デスマーチ、そしてチームの崩壊…『ディスコ・エリジウム』生みの苦しみ語った制作秘話公開

当初の仮タイトルは『No Truce with the Furies』だったとも語られています。

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薬物乱用、デスマーチ、そしてチームの崩壊…『ディスコ・エリジウム』生みの苦しみ語った制作秘話公開
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Noclipは、『ディスコ・エリジウム(Disco Elysium)』の制作秘話シリーズ「The Making of Disco Elysium」のエピソード5「Collapse」を公開しました。


エストニア発のインディースタジオZA/UMが生み出した『ディスコ・エリジウム』は、2019年のリリース直後からMetacriticで90点以上を記録し、ゲームアワードでも複数の賞を受賞しました。しかしその裏側では、締め切りの延長、チームの分断、そして最終的な大量解雇という、苦い現実が展開されていました。

ゲーム開発ドキュメンタリーで知られるYouTubeチャンネル「Noclip」が公開した「The Making of Disco Elysium」のエピソード5「Collapse」では、開発者たちの証言をもとに、あの傑作がどのように生まれ、何が失われたのかが赤裸々に語られています。

タイトル「Disco Elysium」誕生の裏側

クリエイティブ・ディレクターのRobert Kurvitzは、当初の仮タイトルは『No Truce with the Furies』だったと語っています。しかし、「エンターテインメント商品として成り立たない」とイギリスのジャーナリストたちに指摘され却下。2年間にわたって言葉を探し続けた末、かつて作ったプレイリスト名『Disco Elysium』を採用したといいます。しかしこれも周囲からは猛反発を食らったとのこと。広告代理店の友人からは「恥ずかしい」と言われ、北米のパブリッシング関係者からは「アメリカではディスコは死んでいる」とまで言われましたが、それでもRobertは押し通したそうです。「アニメのタイトルと同じ論理だと思っていた。Googleで検索しやすいし、"エリジウム"という言葉が持つ力もある。あの名前を考えることが、開発全体で一番難しいクリエイティブの仕事だった」。

制作を蝕んだ薬物問題

ナレーションを担当するDannyは、「薬物乱用という影が多くのメンバーの上に漂っていた」と言及。娯楽として使用されるケースだけでなく、過酷な制作を乗り切るための手段として薬物に頼ったメンバーもいたとされ、今も完全には回復していない人がいると言います。「この要素に触れないことは、制作に実質的な影響を与えたものを無視することになる」とダニーは語っています。

チームの分断―タリンとブライトン

開発が進むにつれ、投資家や経営陣の圧力も高まるように。Robertのリーダーシップへの不満や、ライティングの遅延が下流の作業全体に波及する問題を受け、経営陣はライティングチームをエストニア・タリンから英国へ移す決断を下します。Robert、Argo、Helenはサウンドトラックのバンド「ブリティッシュ・シー・パワー」の地元でもあるブライトンへ移住し、ロンドンのオフィスとは別に、アパートのリビングルームで執筆を続けることになったとのこと。

Helen Hindpereは「寝室からリビングに移動して仕事するだけの毎日。新しい国で友人もいない。かなり疲弊しました」と語っています。また、タリンに一人残ったライターのOlga Moskvinaは、「チームがあのように分断されたのは良い状況ではなかった」と語り、孤立した連絡役として苦境に立たされた経験を証言しています。

一方のArgoは、当初「3週間で終わるはずの編集」が結局4~5ヶ月に及んだことを明かし、プログラマーのJaagupは「ロンドンへ行ったときも、エンドゲームはなかった。プログラマーの部屋の床に"エンドゲーム"と書いた紙を置いていた」と、終盤の混乱ぶりを語っています。

「デスマーチ」―逃げられない最後の9ヶ月

2019年2月のリリースが不可能だと判明すると、Kaurが投資家に追加資金を要請。それが下りた瞬間、全員が悟ったといいます。「これが最後。次はない。」

Robertはこの段階を「デスマーチ」と呼んでいます。「もう時間を稼ぐ言い訳は尽きた。バグのあるものはリリースしたくなかったが、今度こそ達成しなければならなかった」。Argoは、それでも外部からクランチを強いられた記憶はないと語っています。「内側から自然とそうなっていった。『ディスコ・エリジウム』の執筆は、今日まで生きてきた中で一番楽しいことだったから。どんなゲームをプレイするよりも楽しかった」。

突然の大量解雇と外注化

経営陣はリリース5ヶ月前、プログラミングチームのほぼ全員を契約終了とともに解雇。ポーランドのホワイトラベル会社「Knights of Unity」が残りの開発を引き継ぎ、残ったのはエンジニアのMarkus Rondoただ一人でした。その後、プロデューサーのKosmosとLempsも解雇されています。

プログラマーのJaagupは「経営陣は資金を継続させるために"生贄”を必要としていた。開発チームがその役を担わされた」と証言。Robertは解雇のされ方に衝撃を受けたとしていますが、ドキュメンタリーはそれに対する異論の存在も記録しています。

「『ディスコ・エリジウム』の内部崩壊は、一発の凶弾によるものではなく、かつて多くの人々を結びつけていた信頼と信念が、じわじわと蝕まれていったことによるものだった」とDannyは総括しています。

世界的成功と、実感のない勝利

2019年10月のリリース後、口コミで評判は広がることに。しかし作った当事者たちが実感を持てたのは、ずっと後のことだったといいます。Argoは「好意的なレビューや受賞のニュースを見ながら、どこかの架空のキャラクターに起きていることのように感じられた。YouTubeのエッセイ動画を見て、ようやく勝利を実感できるようになっていった」と語っています。

RobertはMetacriticのスコアを確認したときの心境をこう振り返る。「90点以上だったのに、喜びは一欠片も感じなかった。安堵感すらなかった。投資家に"90点以上を取る"と約束していたのに」。

ゲームアワードの授賞式でようやく「本当に大きなものになった」と気づいたというHelenは、「スピーチも全然準備していなかった」と苦笑します。プログラマーのSiimは、開発中の希望をこう語っています。「商業的成功は求めていなかった。リンチの『デューン』みたいな、カルト的な文化的転換点になってくれれば良かった。でも結果は……いつかもう一度プレイして、何がそんなに良かったのか確かめてみないといけませんね」。


ライター/編集:H.Laameche
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