【俺の電子遊戯】第18回 『シェンムー』のドブ板に見えた未来 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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【俺の電子遊戯】第18回 『シェンムー』のドブ板に見えた未来

横須賀ドブ板に私はいた。少女がかわいがる猫の名前をつけたり、ホットドッグ屋のトムと話したり、気づけばドブ板の華僑コミュニティにクビを突っ込んだり、外国人船員と喧嘩をする日々。

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    73年生まれ。インベーダーが日本中を侵略した頃、小学生だった筆者の目に映ったビデオゲームは間違いなく「未来へのパスポート」だった。その魅力に取り憑かれ、気づけば不惑の40代となったオッサンが、ビデオゲームと共に過ごした30年を語る連載。前回の記事はこちら

バーチャルドブ板 in 1986

横須賀ドブ板に私はいた。少女がかわいがる猫に名前をつけたり、ホットドッグ屋のトムと話したり、気づけばドブ板の華僑コミュニティにクビを突っ込んだり、外国人船員と喧嘩をする日々。心のオアシスは、商店街にあるゲーセンで『ハングオン』(デラックスタイプ)と『スペースハリアー』(シットダウンタイプ)を1日500円のおこづかいからプレイすることぐらいだ……。

無論、これは現実の話ではなくセガのドリームキャストで発売された『シェンムー 第一章 横須賀』での話だ。1999年暮れ、私は『シェンムー』に夢中になっていた。『バーチャファイター』のRPG版を鈴木裕氏が制作をしている。ゲーム雑誌で得た情報に格闘ゲームのRPG化ってどうなるんだ? と疑問に思っていたが、その後はタイトルを『シェンムー』と変え、壮大なストーリー、FREEという新ジャンルの提唱、制作費70億というキャッチコピーで派手に宣伝され発売された。

ゲームの中でゲームをプレイする俺


作り込まれた街並みや登場人物たち。ストーリー進行とはなんら関係もないのに、街中ですれ違った女子高生をずっとつけ回してその行動を観察してみたり、何の役にも立たないのにガチャガチャを夢中でまわしてみたり、ゲーセンに通い詰めて『スペースハリアー』のクリア認定証をもらう、挙句の果てにはコンビニのシェンムーくじで当たったサターン版『スペースハリアー』をゲーム内自宅のサターンで起動させてプレイするなど『シェンムー』をプレイしているのか『スペースハリアー』をプレイしているのかがわからないぐらい、この仮想空間を満喫した。

ミュージシャンへの道を絶ち選んだ先は…

『シェンムー』が発売された1999年、私はアダルトゲームを紹介する雑誌の編集部でアルバイトをはじめていた。交通事故にあったあと、ミュージシャンへの道をあきらめ「じゃ、なにして生きていくの?」と自分に問いかけた時、私にはビデオゲームしか頼れるところがなかった。そうと決まれば行動に移すのみと、ゲーム雑誌のスタッフ募集や求人情報誌にあるゲーム関連の編集部へ片っ端から履歴書を送り、アダルトゲームの編集部に潜り込むことに成功したのであった。

アルバイトとしてゲーム雑誌の編集部で働いていると周りは当然ゲーム好きばかりなので、ゲームトークをするのにはうってつけの環境であった。初代プレイステーション円熟期となっていたこの時代は『どこでもいっしょ』『バイオハザード3』『グランツーリスモ2』『ダンスダンスレボリューション』など充実したラインアップで家庭用ゲームと言えばプレステだった。編集部に出入りするフリーのライターとも雑談で「ひとり暮らしのアパートじゃ『ダンレボ』はうるさくてあの専用コントローラーじゃやれないよね、『ファミリートレーナー』のマットじゃないんだから」なんて話がリアルに出来る環境が毎日楽しかった。

『シェンムー』とシンクロする記憶

ゲーム好きが集う職場で『シェンムー』の評判といえば、やりたいことはよくわかるし作り込みもすごいけどハマれなかった。という層と、『スペハリ』『ハングオン』あとフォークリフトのレースに夢中になってさー。と、箱庭の作り込みやミニゲームなどがムダに盛り込まれたポテンシャルの高さに驚きハマった層に分かれた。私は後者だったので『スペースハリアー』や『ハングオン』の移植具合やガチャガチャの景品、ミュージックテープの種類、フォークリフトレースの攻略など夢中になって編集部で『シェンムー』の話をした。

デザイン会社、写植屋、印刷所と原稿やレイアウトを片手におつかいの日々。終電で帰宅するのが当たり前になっていたが、帰宅後は毎日ドブ板や新横須賀港に通っていた。『シェンムー』のことを思い出すと、セットで雑誌編集のアルバイトとして駆け出しだったことも思い出す。カナダに行った原崎のことと、香港に渡ることになった涼のことと共に。
《DOG COMIC》
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  • スパくんのお友達 2017-05-17 3:51:12
    「3」製作決定が発表されてから、かろうじて動くDCを引っ張り出して酷使してますが、一章は宣伝の割に期待外れ感を与えすぎてしまったんだろうなぁ。
    最初は電柱と電柱をつなぐ、もしくは電柱からウサギ小屋みたいなNPCの家家に繋がる電線がちゃんと表現されていたことに、すごく感動した。

    「誰がこんなところまで見るんだ?」って。

    今でこそ既出の通り、やりたいことが分からなくなるくらい自由度の高いゲームが標準化しているが、やらない屁理屈をこねずにやり遂げた(未完ですが)!というところを、当時は評価されなさ過ぎたと思いますね。

    もっとも今の「人気連作ゲームはさっさとクリアして中古屋に売りに出して出費を抑える!」というライトゲーマーが増えている中、そこに気が付かせるくらいの作りこみゲーは、早すぎた。

    でもそんなセガだから、ソニーが嫌いだけどPS4を買ってやろうと思う。
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  • スパくんのお友達 2015-06-29 7:15:22
    自分は当時の思い出だけだとQTEが苦痛だった思い出しかない。
    あんまり自由だった記憶もないんだ・・・

    記憶ってあいまいだし、最近DCで遊んでるから、またシェンムーやってみようって思ってるよ。
    当時はおもしろさを見いだせなかったけど、おっさんになった今、いろいろ楽しい部分が見つけられそうな気がする。
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  • スパくんのお友達 2015-06-28 17:47:28
    線香を灯したり仏壇に手を合わせたり、庭の池のコイを見たりと不思議だった。
    それよりも不思議だったのはお手伝いさんを雇ったり内弟子を取れる程に稼ぎのある道場だったのか??という不思議。
    お小遣いも1日500円だけど月に換算すると15000円だからバブル期の高校生とはいえ貰いすぎな気がする。。。
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  • スパくんのお友達 2015-06-28 11:59:51
    DC持ってたけどそもそもバーチャに興味なかったから
    シェンムーにも興味は無かったなあ。70億? 金あるなあってだけだった
    でも後々AZELがサターン版シェンムーの流用とか
    サターン版シェンムーの動画がシェンムー2に入ってるとか聞いて
    ちょっと興味は出たもののついぞ手を出すことは無かった
    Xboxの2が日本でも出てたら買ってただろうけど出なかったんだよなあ
    1も2もやってないし、多分3が出てもやらないだろうなあ
    鈴木裕がどれだけの物を出してくるかにだけ興味があるわ
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  • スパくんのお友達 2015-06-28 6:50:08
    ミュージシャンからの転向が随分アッサリしてるけれど、まぁ意外とそんなものだよなぁ…

    ドリームキャストは下火になってから購入したのでシェンムーは遊んだこと無いや。
    でも「ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で」は感動すら憶えた。
    それ以降、コレジャナイ感に悩まされるづけてる…
    0 Good
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  • スパくんのお友達 2015-06-28 2:01:29
    シェンムーは今でこそ当たり前のあの密度での箱庭をいち早くやった所に魅力があったんだよね。
    今同じ様なものを出しても、相当凄いものを作らない限り単純に「期待はずれ」で終わってしまう。普通にみたら良く出来ていたとしても「シェンムー」という異常にデカ過ぎるネームバリューのせいでね。
    だから今はただ「鈴木裕」という男の才能に全てを委ねるのみ。

    期待しています。
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  • スパくんのお友達 2015-06-27 15:52:45
    シェンムーは時代の徒花。自分は当時パシフィコ横浜発表の「プロジェクトバークレイ〜シェンムー発表会」に行ったくちだから現代ゲーム業界におけるシェンムー3の立ち位置にフラットな判断は出来ないけれど、続編を「ゲーム」って媒体で発表してくれたことに感謝以外無いのです。KSでファインディングして文章媒体でも良いから完結してくれないかなぁと夢想しましたよ!それぐらいがシェンムーの世間様一般の商品価値かなぁとw

    2から14年ですよ!?そりゃこっちも年もとりますよwクソゲーでもなんでも良いのです出てくれるだけで感謝!

    カナダに行った原崎元気かなぁ・・・
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  • スパくんのお友達 2015-06-27 11:17:45
    私も最初シェンムーに興味なかった派。でも友人がもってて貸してもらったらハマッた。
    最初の段階で投げ出す人には「自分合わないな」ではなく、どっしり構えて挫折してもやり遂げたら良さがわかるよ。
    私も隠れて移動のときは何回も見つかって挫折しかけたことあるけど、先が気になるゲームはシェンムーをおいてほかにはないかな。
    人によっては一生モノの名作なのは間違いない。
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  • スパくんのお友達 2015-06-27 11:12:17
    「PS1&2、SS、DC時代からPS時代へ」

    俺でもPS時代だったと書くよ事実なんだから。
    DC独占だった「パンツァーフロント」の続編が
    PSで劣化版が発売された時にDCが終わった(悲

    シェンムーは買わなかったな、なんか違うなって
    今の和ゲーのコレジャナイ感&今に繋がるSEGA臭でw
    AC時代の80sなSEGAこそ至高って人ですな
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  • スパくんのお友達 2015-06-27 9:56:01
    シェンムーははまれなかったなぁ
    シェンムーの魅力は>>7で書いてある通りだと思うけど、ゲームでやらなくてもって当時はやりながら思ってしまってた。
    でも、それ以降箱庭ゲーを色々やっていくうちに、もっとダラダラと生活感が感じられるようなのがほしいんだよなぁなんて・・・

    いま思うと、ほんと早すぎたゲームって感じますが、結局僕みたいなユーザーは無い物ねだりの、わがままなんですよ。
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