【特集】フロム・ソフトウェア宮崎社長が語るゲーム作り | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

ハードコアゲーマーのためのWebメディア

【特集】フロム・ソフトウェア宮崎社長が語るゲーム作り

現在フロム・ソフトウェアは精力的にスタッフ採用を行っており、転職組という社長としては異色の経歴を持つ宮崎氏に、同社が求める人材像について詳しい話を訊きました。

ニュース ゲーム業界
PR

全世界累計出荷本数が300万本を突破した『DARK SOULS III』を筆頭に、今やハイエンドな家庭用ゲームを作り続ける数少ない日本の開発スタジオとなったフロム・ソフトウェア。そこでディレクター兼社長業という二刀流にチャレンジしているのが、2014年5月から取締役社長に就任した宮崎英高氏です。現在フロム・ソフトウェアは精力的にスタッフ採用を行っており、転職組という社長としては異色の経歴を持つ宮崎氏に、同社が求める人材像について詳しい話を訊きました。

===== ===== =====

■業界未経験の中途採用から、社長に

――これまで2回にわたって、中堅社員の方々を取材し、フロム・ソフトウェアのゲーム作りに対する姿勢や考え方を語ってもらいました。いよいよ宮崎社長本人にお話を訊きます。

宮崎英高氏(以下 宮崎): よろしくお願いします。こういう流れのインタビューは初めてですが、何を言われていたのか気になるものですね(笑)

――おかげさまで、いろいろ興味深いお話をいただきました。とはいえ、一番驚かされたのは、宮崎社長自身が中途入社の転職組ということですよね。そこが一番御社を象徴しているかもしれません。

宮崎: そうですね。中途であるとか、社歴であるとか、そういったことを気にしない社風だとは思います。あまりにも気にしないので、私自身、入社後に色々と驚かされました。

――そもそも、どうしてフロム・ソフトウェアの門を叩かれたのですか?

宮崎: 大袈裟な話でなくて申し訳ないのですが、単純にゲームが作りたかったんですよ。私は当時、30歳直前でゲーム制作未経験という状態でしたから、そういった人間を企画職として採用してくれる会社はごく少なくて、その内の1つがフロム・ソフトウェアだったんです。私自身『キングスフィールド』のファンだったこともあって、ダメ元で受けてみようと。

――業界未経験の人間を企画職で中途採用するというのは、業界でも非常に珍しいと思いますし、今でもそれを続けられているというのが、正直いって驚きです。

宮崎: それは、前社長の神の頃からの方針でして、現在もそれを引き継いでいます。モノ作りの現場には、刺激が必要だと思うんですよね。多様な感性、経験が共存していた方がいい。だから我々は、採用の前提にゲーム制作経験を置くことはしていませんし、また逆に、ゲーム制作経験を軽視するつもりもないんです。

――フロム・ソフトウェアでは、どういう社員を求められているのですか?

宮崎: とても難しい質問ですし、立場によって異なる答えがあると思いますが、私は最近「共感力」という言葉を使っています。我々のモノ作りはチームで行うものですから、誰かのビジョンなり成果なりに共感し、それを自らの糧としてクオリティを高め、また誰かが共感できるようなビジョンなり成果なりを提示できることは、とても重要だと思うんですね。そうした共感の連鎖が、結局は作り上げるモノの価値を高めていくのだと思いますし、そうしたチームで、そうした人たちと一緒にモノ作りに従事したいと思っています。実際、先にインタビューを受けてくれた彼らは、そうした人材ですね。

――世界中にファンがいて、世界に通用するゲームを作っている会社だと周りからは見られていると思いますが、宮崎社長はどのように思われていますか? ちなみに社員の方はあまり意識されていなかったようですが……。

宮崎: 現場としては、彼らの言うとおりだと思いますよ。売上であるとか、世界で通用するだとか、そういった言葉がモノ作りの目標として提示されることはありません。我々は、元々市場性を考慮したモノ作りを得意としていませんし、今更そうしたものを意識しても、あまりよい結果にはならないでしょうから。ただ一方で、我々のゲームが世界中の皆さんに遊んでもらえて、なんとか期待してももらっているという現状は、とても貴重なものなんです。だからユーザーさんにはとても感謝していますし、その感謝を忘れず、裏切らないよう努力していきたいですね。よいモノを作れば、しっかりと受け容れてもらえる、そうした状況を継続するためにも、よいモノを作り続けていく必要があるんです。とても難しく、それだけにやりがいもあることです。

■なぜ、社長業とディレクターを両立し続けるのか



――開発の最前線で、プレイングマネージャとして働いている経営者は珍しいですね。

宮崎: 元々ディレクター志望ですからね(笑)。そうした条件でなければ、社長の話を受けていなかったと思います。

――そうだったんですか。

宮崎: ただ、神のビジョンというか、いちディレクターを社長に指名した意図自体には、賛成だったんです。フロム・ソフトウェアをモノ作りのスタジオとして明確に位置付けたい、ということですね。ですから、そのために私が役に立つのであれば、という気持ちで話を受けました。少なくとも記号としては分かりやすいだろうと。

――宮崎さんにとってのモノ作りとは何ですか?

宮崎: うーん、それは分かりませんね。私にとって、何かを作りたい、というのはただ衝動であって、そこを掘り下げたいとはあまり思っていないんですよ。きっとつまらないものが埋まっていて、私はそれに幻滅してしまうでしょうから。あるいは、単にカッコいい答えが見つかっていないのかもしれませんが(笑)。


――最近は『DARK SOULS』シリーズをはじめ、ダークファンタジーRPGを作るスタジオというイメージが広がっていますが、それ以外のゲームについてはどうですか?

宮崎: もちろん作っていきますよ。直近でも、『DARK SOULS III』をシリーズの大きな区切りとする判断をしたのは、我々がソウルシリーズなり、ダークファンタジーなりだけの会社になることを避けたい意志があるからです。勿論、いわゆるコアゲームへの拘りを変えることはありませんし、金輪際ダークファンタジーをやらない、ということでもありませんが。これから先、新しい体制になった後のタイトルが順次発表されていくと思いますが、そこで伝わるものがあれば嬉しいですね。

――逆にゲーム以外で何か作りたいという衝動はありませんか?

宮崎: 少なくとも、今の私はあまり考えていません。というのも、現状のゲームというか、インタラクティブなデジタルコンテンツは、すごく面白いんですよ。新しい技術と可能性が次々と出てきて、それらに対してゲーム的アプローチも大きな力を持っていますから、今はどっぷりとそこに浸かっていたいですね。勿論、ゲーム以外を忌避している、ということでもありません。我々にとって重要なのは、価値あるモノ、面白いモノを作ることであり、それを作りたいと思えることです。今はそれが圧倒的にゲームである、というだけですね。

■モノ作りに集中できる環境を提供したい



――フロム・ソフトウェアに入社してから今までを振り返ってみて、いかがですか?

宮崎: 楽しかったですね。辛いことも多くありましたが、それでも素晴らしい10年間でした。共にモノ作りに従事した仲間と、サポートしてくれた皆様と、チャンスをくれた会社には感謝しています。意欲があれば様々な分野に関わることができ、率直に評価してくれる、そうした環境がなければ、今の自分はありませんでした。

――開発が大規模になるにつれて、縦割り化や効率化が求められるようにもなっています。

宮崎: はい。それ自体は当然に必要なことですが、それだけではつまらないとも思っています。先ほどお話ししたように、モノ作りには、刺激なり共感の連鎖なり、そうしたものがあって欲しいんですね。だから私は、基本的に「立場とか職種とか関係なく、意見があれば言って欲しい」と言っています。勿論何でもありではなくて、「ポジティブな意見として言うこと」「意見が受け容れられないことも許容すること」という条件はありますけどね。

――社員に対して会社が提供できる物はなんですか?

宮崎: シンプルに言えば「モノ作りに集中できる環境」ですね。いいモノを作るための環境があり、いいモノを作っていれば、黙っていてもしっかりと評価されて、経済的にも報いられる。そして皆が自分たちが作っているものに誇りを持つ事ができる、そんな環境を提供したい。前者は社長として、後者はディレクターとしての責務だと思っています。

――開発スタジオとして基礎体力を高めていくという話にもつながりますね。

宮崎: そうですね。私自身本質はディレクターなので、モノ作りに都合のいい環境が欲しいんですよ(笑)。それは私だけでなく、モノ作りに携わる皆にとって。結局はそれが、弊社の価値を高めてくれると信じています。

■特別な世界を作り、その世界で特別な体験を作る楽しさ。それに共感できる人に来てほしい



――御社では「設計」という独特なセクションがありますよね。

宮崎: はい。そこは独特ですよね。弊社のおける「設計」とは、一言で言えば、プログラマと企画の橋渡しを担う職種です。特にハイエンドゲームの開発では、プログラムの専門性も、企画の複雑さも、どんどんと増してきていますから、その両方を理解できる「設計」は、とても重要になってきていますし、とても遣り甲斐のある職種であると思いますね。

――主に国内のゲームファンに支持されていたのが、『Demon's Souls』を契機に世界中で支持される企業に変わりました。いま、日本から世界市場で売れるゲームがなかなか作れないのも事実です。会社として、何か意識された点はありますか?

宮崎: うーん、我々としては、そういったところはあまり意識していません。これは、お話に出た『Demon's Souls』の以前から変わっていないのですが、特定の地域であれ世界であれ、市場を意識したモノ作りをすることはないんです。強いて言うのであれば、我々のターゲットは「ゲームが好きな人たち」です。彼らは日本にも、あるいは海外の色々な市場にも存在し、そうした人たちの間で共有できる価値があると思っているんです。実際私も海外出張などするようになり、そうした思いを強くしましたね。

――スマホゲームをはじめとして、カジュアルなゲーム開発が大勢を占める中で、家庭用のハイエンドゲームを作る楽しさとは、なんでしょうか?

宮崎: まず誤解を解いておきたいのですが、弊社として、スマートフォンのゲームなり、小規模なゲームなりを作らないと決めている訳ではありません。というか、そうした幅はむしろ必要であると思っています。スマートフォンについて言えば、実際、『meet-me』ではスマートフォンアプリをリリースしていますし、スマートフォンアプリを研究、開発する部署もあります。私個人としても、ゲームデバイスとしてのスマートフォンには、面白さと可能性を感じてもいるんです。で、それを前提として、ハイエンドゲームを作る楽しさというのは、やはり独特なものがあります。それは、特別な世界を作り、その世界で特別な体験を作る楽しさですね。我ながらまったく上手く言えてないのですが(笑)、それでもここに共感してくれる人がいれば、是非一緒にモノ作りをしたいですね。

===== ===== =====

これまで3回の特集取材記事を通して、代表の宮崎英高氏や現場の開発者たちに、フロム・ソフトウェアのスタジオカルチャーや「ゲーム作りに対する思い」を訊いてきました。『Bloodborne』や『DARK SOULS III』の大ヒットで、日本から世界に向けてさらに快進撃を続ける同社から、次は一体どのような作品が飛び出すのか、ゲームファンだけでなく業界中から熱い視線が注がれています。同社は現在、気になる新プロジェクトの開発メンバーを積極的に募集しているので、気になる方は詳細をチェックしてみましょう。

【特集連載】
1. フロム・ソフトウェアの中堅開発者が明かす、スタジオカルチャー
2. 宮崎社長と現場の距離感は?―フロム・ソフトウェア開発者座談会

【関連ページ】
フロム・ソフトウェア採用サイト



《Game*Spark》
【注目の記事】[PR]
コメント欄を非表示
※一度コメントを投稿した後は約120秒間投稿することができません
※コメントを投稿する際は「利用規約」を必ずご確認ください
  • スパくんのお友達 2016-06-15 1:24:46
    古き良き職人気質って感じだな。次の作品にも期待したい。
    1 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-06-07 5:29:11
    面白い事以外は何でも出来るゲームの話題が出てて草
    2 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-06-06 21:46:44
    >22書き忘れ
    フロムにAC6作れーじゃなくてカプコンと鉄騎の続編
    orバンナムとガンダム戦記VRが現実的だと思われ
    0 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-06-06 21:41:43
    今のフロムにロボゲーは無理ゲーだと思ってる!
    AC開発コアメンバーがどれ位残ってるんだろう?って話からよね・・・
    表面なぞったロボヲタが好みそうな「こんな感じ?」みたいの作るくらいなら
    フロムは新規IPで戦い続けて欲しいと思う
    0 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-06-06 12:40:30
    ハイエンドゲーは全体的に映画的なゲームが求められている
    風潮を感じるからACみたいな少しロボットアニメ的な要素がある
    ゲームはかなり開発のかじ取りが難しそうだなあ
    フロムの開発者ならそこを何とか出来る能力があると思いたいが
    5 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-06-06 11:21:47
    毎回いい話が聞けてフロムファンとしてはすごく嬉しいんだけど
    そろそろ誰かダクソの話じゃなくてACの話を聞いてきてくれよ…
    このままじゃ干物になっちゃう…
    3 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-06-06 10:44:48
    社長の神って文字列が出るたびに一瞬驚く…長年フロムファンだけど慣れない
    いつか神さんのインタビューも聞きたいなぁ…割と前線にも関わってらしたし創業社長としての考えも聞きたい
    今まであんまり神さんは表に出てこないんだよね
    7 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-06-06 9:02:41
    アーマードコア6はないっすか( ´・ω・`)
    6 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-06-06 8:50:34
    ダークソウル系しか作れない(作らせてもらえない)メーカーになっちゃっているので、
    今後は是非別タイトルも期待したい。
    3 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-06-06 7:59:51
    社長インタビューシリーズのトイロジックの
    コアゲーマーが長く遊べる新作を一緒に作りたい
    って記事が見れなくなってない?
    0 Good
    返信

編集部おすすめの記事

特集

ニュース アクセスランキング

  1. XboxとAMDが“次世代Xbox”のためのパートナーシップ締結を発表―互換性を持ちつつ、よりクオリティの高いゲームプレイを提供

    XboxとAMDが“次世代Xbox”のためのパートナーシップ締結を発表―互換性を持ちつつ、よりクオリティの高いゲームプレイを提供

  2. 『ステラーブレイド』続編ではより物語の深い部分が語られる!キム・ヒョンテ氏、カットされたイヴの衣装チェンジに関する詳細設定等の存在を明言

    『ステラーブレイド』続編ではより物語の深い部分が語られる!キム・ヒョンテ氏、カットされたイヴの衣装チェンジに関する詳細設定等の存在を明言

  3. 釣りゲー大集結のセール「Steam 釣りフェス」開催中!“圧倒的に好評”『DREDGE』『デイヴ・ザ・ダイバー』など対象

    釣りゲー大集結のセール「Steam 釣りフェス」開催中!“圧倒的に好評”『DREDGE』『デイヴ・ザ・ダイバー』など対象

  4. 任天堂、Discordに対し裁判所に召喚状を提出。「テラリーク」と呼ばれるポケモンの大量情報流出の犯人を特定するためか

  5. 沈黙長いリメイク版『プリンス オブ ペルシャ 時間の砂』開発は順調に進行中!重なる延期や周辺事情から公式Xが“重みのある進捗報告”

  6. 『原神』リーク情報めぐる法廷闘争―X社は「言論の自由」を盾にリーカーの開示請求を拒むも、裁判所は却下

  7. 全て最安値更新!高難易度『Lies of P』が半額、2作品入りの『仁王 Collection』は65%OFF─『トゥームレイダー』3部作は1作あたり440円と破格【PS Storeのお勧めセール】

  8. アセット流用疑惑の『Dark and Darker』著作権侵害は認められずも営業秘密侵害に約9億円の損害賠償判決―刑事事件としても未だ争い続く

  9. スキマ時間にもハマっちゃう!スイッチ版『Hades』『Slay the Spire』など高評価インディーが多数セール中、オススメをご紹介

  10. 「消費者がSteamを使用する理由を過小評価していた…」Amazon元重役、Prime GamingがSteamに勝てなかった理由語る。重要な視点逃した結果の高すぎる勉強料【UPDATE】

アクセスランキングをもっと見る

page top
Game*Spark
ユーザー登録
ログイン
こんにちは、ゲストさん
Avatar
メディアメンバーシステム