紀藤弁護士から見た『ファークライ5』のカルト教団―果たして「エデンズ・ゲート」は存在しうるのか? | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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紀藤弁護士から見た『ファークライ5』のカルト教団―果たして「エデンズ・ゲート」は存在しうるのか?

2018年3月29日に、ユービーアイソフトよりPC/PS4/Xbox One向けタイトル『ファークライ5』が発売。本作が扱うテーマは“カルト”ということで、これまで数々のカルト宗教やマインドコントロール関連の問題に取り組んできた紀藤正樹氏にゲームをプレイしてもらいました。

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信じよ。崇めよ。服従せよ。

いよいよ2018年3月29日に、ユービーアイソフトよりPC/PS4/Xbox One向けタイトル『ファークライ5』が発売されます。大人気オープンワールドFPS『ファークライ』シリーズの最新作が扱うテーマは“カルト”。狂信的なカルト教団「エデンズ・ゲート」の拠点であるアメリカ・モンタナ州「ホープカウンティ」を舞台に、預言者ジョセフ・シードとその兄弟、信者たちの狂気に満ちた世界を描き出します。

ところで、この“カルト”というテーマ。単にエンターテインメントでは片付けられない、私たちが生きる現在社会の身近に潜んでいる脅威でもあります。そこで今回編集部は、リンク総合法律事務所の所長を務める紀藤正樹弁護士をお招きし、これまで数々のカルト宗教やマインドコントロール関連の問題に取り組んできた同氏にお話を伺いました。今回のインタビューを通して本作が扱うテーマの重さを改めて認識し、その上でストーリーの完成度・ゲーム性の高さを実際にプレイして感じていただければ幸いです。



【紀藤正樹】
1960年11月21日、山口県宇部市生まれ。弁護士(第二東京弁護士会所属)。リンク総合法律事務所所長。大阪大学法学部卒。同大学院博士前期課程(憲法専攻‐修士論文のテーマは「陪審選任手続における無条件忌避の差別的行使と平等保護条項‐最近のアメリカ合衆国の判例を素材として‐」)修了。法学修士。

『決定版 マインドコントロール』(アスコム)、『大阪弁訳 あたらしい憲法のはなし』(データハウス)など、消費者問題、インターネット問題、宗教問題などの著作も多数あり、マスコミからの取材依頼も多い。

一貫して、市民の立場から、一般の消費者被害はもちろんのこと、宗教やインターネットにまつわる消費者問題、被害者の人権問題、児童虐待問題などに、精力的に取り組んでいる。

弁護士紀藤正樹の経歴より引用


――紀藤さんは数多くのメディアでカルト集団や霊感商法の危うさを説かれてきた、言うなれば“カルトの専門家”として非常に著名ですが、本日(取材日:3月20日)インタビューを受けていただけた意味合いについて教えていただけますか?

紀藤正樹氏(以下、紀藤氏):カルトをテーマにしたゲームだと伺っていましたから。3月20日は1995年に地下鉄サリン事件が発生した日ですし、オウム真理教はカルトと言って良い団体ですので、いくつかの候補日の中から、この日に取材を受けることにしました。

――早速ゲームから外れてしまいますが……、先日オウム真理教の死刑囚7人が東京拘置所から移送されたというニュースが話題を集めていました。

紀藤氏:オウム真理教の死刑囚は13人います。死刑は、共犯関係にある者を同じ日に執行するという実務があり、13人を一日で1つの拘置所で死刑執行することはできませんから、死刑の準備行為として、分散処遇という形で、まずは7人を東京拘置所から移動させたということになります。


――ということは、死刑執行の日は近いと?

紀藤氏:まだ6人が東京拘置所に残っていますので、その6人をどうするのかという部分が残っているのと、あと札幌拘置所だけには移送されていないのも気になりますね。札幌拘置所にも死刑を執行できる刑場があるので、そこにも2人程度、移送する可能性は残っています。いずれにせよ2018年1月に、教祖である松本智津夫死刑囚と共犯関係にある事件が全て確定したことで、いつでも死刑執行が可能な状態にあると言えますね。

◆アメリカは武装する大規模カルトに対して非常に悩んでいる


――なるほど。日本ではカルトと聞くとどうしてもオウム真理教事件を連想してしまうので、そちらの方も非常に気になりますが、それでは『ファークライ5』に絡めた質問に移らせていただきます。本作は“カルト宗教”という難しい問題を扱っていますが、そちらについてどう思いますか?

紀藤氏:フランスの会社が作ったゲームと聞いてなるほどと思ったんですが、アメリカ国内でこういったものを制作すると物議を醸す可能性が非常に高いですね。というのも、アメリカはカルトに対して非常に悩んでいるんです。そもそも銃が入手しやすいアメリカでは、カルト集団が武装することもあり、警察の力を持ってしても、武力を持ったカルト集団に解体を迫れないという状況になってしまっています。反人権団体が国内に存在するというのは、アメリカ最大の恥部の一つとも言われていますね。例えば、1万人ほどの信者が住むコミューンなんてものも存在するのですが、銃で武装した集団を解体させようとすると、もはや戦争になってしまうのです。

本作に登場する「エデンズ・ゲート」も強大な武力を持ち、果てには航空兵器まで保有している

――アメリカには1万人規模の集団が存在するのですか……!ちなみに市民の武器保有が認められているアメリカでは、そういったカルトのどういうところが問題になっているのでしょう?

紀藤氏:一番は一夫多妻近親相姦児童虐待ですね。コミューンの存続のためには子どもが必要であり、そのために一夫多妻がOKになり、女性が足りないという理由から、自分の家族や子どもまで奥さんになっていくわけですが、そうなるとアメリカの国内法に抵触しますし、児童虐待も疑われます。しかし先ほども言いましたが、無理に解体を迫ると戦争になる可能性があり、生来的被害者と言える子どもまで巻き込んでしまう恐れがあるので手が出せないんです。うかつに手を出せないという意味では、ゲームに登場する「エデンズ・ゲート」のようなカルトは存在しうると思います。


――本作の舞台である架空の田舎町「ホープカウンティ」は、外界から隔絶された「エデンズ・ゲート」の実質的な支配地域となっているのですが、これを聞くと日本人ならば、かつての“上九一色村”(*)を連想する方も多いと思います。カルト集団の多くは、それらのような僻地を拠点にしたり、もしくは発生したりするものなのでしょうか?
(*)2006年以前まで山梨県西八代郡にあった村。「サティアン」と呼ばれるオウム真理教の教団施設が存在していた場所として有名

紀藤氏:人を支配するためには自分達の行政施設を持つ必要があるので、権力欲が強いカルトは、こういう辺鄙なところにコミューンを作りたがる傾向があります。それがオウム真理教であれば上九一色村でした。ちなみに、社会的に問題を起こすカルトを一般的なカルトと区別して“破壊的カルト”と呼ぶことがあります。また、カルトという言葉にはネガティブな要素がありますので、僕自身は相当な裏付けが無い限り、特定の集団をカルトと呼ぶことはしません。

――現代の日本でも破壊的カルトまでとは言わずとも、カルト集団は存在するのでしょうか?

紀藤氏:存在はしていますが、オウム真理教事件以降は社会的な目も厳しくなり、小粒になってきています。オウム真理教事件以後に結成された集団では、信者を1,000人以上抱え、かつカルトと呼べる集団は存在しないといっていいでしょう。せいぜい数十人、多くても100人くらいの規模ですね。ただオウム真理教事件が起こる前からある団体では、なお数万人単位の信者を抱えるカルト集団が残っていますので、注意と警戒は必要です。実はそれはアメリカも同じで、武装して解体できないようなカルトはいまだ存在しているものの、全体的に小粒にはなってきています。児童虐待や薬物、銃器関連の容疑で摘発される例も増えていますね。

◆ジョセフ・シードを含めカルト教祖は総合芸術的なもの。表面部分を信じてはいけない



教父(ファーザー)と呼ばれるジョセフ・シード。その掴みどころのなさ、全てを見通すような眼差しが不気味

――本作のカギとなるキャラクター、ジョセフ・シード。カルト集団を率いる彼の第一印象を教えてください。

紀藤氏:教祖はああいうタイプですよね。独善的であり断定的、支配性が強い。またカリスマ性があります。ただ、カリスマ性があるからと言って人間性が良いかは完全に別です。マインドコントロールの技術に長け、言葉遣いやトーン、声の質とか顔の相とか、そういったものを全て含め、カルトの教祖になるような人間には他人を惹きつける強い吸引力がありますので、ジョセフ・シードもそういうのを持っていると思いますね。いわばカルトの教祖は総合芸術的なものなんですよ。そういう表面的なところを信じてしまうと非常に危険です。

――「エデンズ・ゲート」はそのジョセフ・シードと、彼の兄弟たちを中心に構成しているカルト集団ですが、こういった特定の親族による支配構造を持つカルト集団は実在するのでしょうか?

「エデンズ・ゲート」中心人物のシード家4兄弟、画像左から次男ジョセフ(教祖)、長男ジェイコブ、三男ジョン、長女フェイスが信者を取りまとめる

紀藤氏:親子や夫婦といった例はいくつもありますが、兄弟というのは珍しいと思います。カルトの教祖が亡くなった後のカルト2世の集団で兄弟の例があるくらいです。カルトの信者も被害者であるという側面がありますので、実例が無い設定を選んだのでしょう。「エデンズ・ゲート」という名前から「ヘヴンズ・ゲート」をモデルにしているのは間違いありませんが。

――その「ヘヴンズ・ゲート」というのは、どういった組織なのですか?

紀藤氏:カリフォルニア州を拠点にしていた100人規模の団体で、1997年に集団自殺、僕から言わせれば集団無理心中事件を起こしたことで有名です。“肉体は乗り物であり魂が重要である”という、言い換えれば“肉体が滅んでも魂が生き残れる”といった思想のもと、40人ぐらいが亡くなりました。現在はもう、集団としての「ヘヴンズ・ゲート」は存在していません。「エデンズ・ゲート」はこの事件にインスパイアされつつも、露骨に似すぎないよう設定をモンタナ州のコミューンにしたのだと思います。

――非常にデリケートなテーマなので、そこは色々と配慮されているようですね。

紀藤氏:モンタナ州にもカルトが存在しないわけではないですが、カルト問題が報道されることはあまりありません。ただ、一つ気になったのは冒頭の教会へと立ち入るシーン。演出なのでしょうけど、教会を汚くする理由はあまりないですよね。大規模なコミューンを作ると世界中から信者が集まってくるのですが、ああいう雰囲気にすると、そもそも信者が近寄りづらくなってしまうのではと思います。

ジョセフ・シードを拘束するために主人公たちが「ホープカウンティ」の教会へ訪れるゲーム冒頭シーン

――言われてみると確かに(笑)。私は緊張感があってすごく良いと思いましたが、現実で立ち入り調査を受けるときは、むしろ門戸の広さを見せつけて、清廉潔白をアピールするかもしれませんね。

紀藤氏:視察に来た国会議員を殺してしまった「人民寺院(*)」でさえそうだったと思いますよ。逆に危険性を感じさせない雰囲気を演出していたはずです。ゲームですので、そこはエンタメ性を出しているところなのでしょう。
(*)1955年から1978年の間、アメリカに存在していたキリスト教系新宗教(カルト)。ジョーンズタウンというコミューンを設立し、末期に同コミューンで計918人の集団自殺(集団無理心中)を決行した

◆身を守る対応策は“カルト側の手口を正しく知っておくこと”


――逆に言うと、現実のカルト集団はゲームよりも実態が分かりづらいということですね。では、そういった集団やマインドコントロールから自分の身を守るための方法などはあるのでしょうか?

紀藤氏:基本的にはマインドコントロールの手口を知るのが大切です。人間というのは何かの事象に対して評価をしないと動けない生き物。そして評価を下すために、その前提になる基準というものを持っています。逆に言えば、その前提になる基準が変われば同じ事象を見ても善悪の評価も変わってしまうということ。これがマインドコントロールの基本ですが、それをちゃんと理解しておかなければなりません。とにかく、カルト側の手段を覚えておけば正しく防御できます。


――自分はなく周囲の人間が染まってしまった場合はどうすればよいのでしょうか?

紀藤氏:いったんマインドコントロールにかかってしまった人間を元に戻すのは非常に難しいですね。唯一の解決方法といえば、カルトから教えられたことと、自分の行動の結果生じた事実が違っているということを本人に認識させること。ただし単に「間違っている」などと、我々の社会の側との「評価の違い」を説明しても効果的ではありません。本人の評価の元になっている前提基準がおかしくなってしまっているので、基準そのものを動かし、現実に起きた事実に目を向かせることが重要になります。何より大事なのは、普段から自分だけがカルトについて知る努力をするのではなく、家族など、みんなで知る努力をすること。大きく言えば、国や自治体などでも、カルト問題の深刻さを啓発するのも効果的だと思います。

――ありがとうございました。最後に、実際に『ファークライ5』をプレイしてみていかがでしたでしょうか?そのご感想をお願いします。


紀藤氏:私自身、『インベーダーゲーム』第1世代で『ゼビウス』などで遊んできた元シューティングゲーム好きだということもあって、率直に言ってすごく面白かったです。映画のようなリアリティもありますし、時間があればもっと遊んでみたいですね。ぜひプレイしてカルト問題の深刻さを知ってもらえるといいなと。個人的には、カルトの信者も被害者だという認識で遊んでもらったらいいのかなとも思いますね。




アメリカにおけるカルト問題の根深さ、そして日本の現状などを『ファークライ5』の設定と絡めながら真摯に語ってくれた紀藤正樹氏。映像美のほか、様々な臨界点を突破している本作のゲーム内容に驚かれてもいました。最後に同氏が「カルトの信者も被害者である」と話していたように、本作に登場するキャラクター一人一人のバックボーンを考えながらプレイしてみると、今なお続く“カルト問題”に対する考え方がまた変わるかもしれませんね。


『ファークライ5』はPC/PS4/Xbox Oneにて3月29日より発売。アメリカ・モンタナ州の片田舎で展開される狂い切った世界を、ぜひとも味わってみてください。
《矢尾新之介》

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