Game*Sparkレビュー:『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム』【年末年始特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム』【年末年始特集】

『ライフ イズ ストレンジ』前日譚となる本作の「変えられない未来」と「あらかじめ約束されている悲劇」そしてその物語がいかに描かれているかをGame*Sparkオリジナルレビュー。プレイ環境はPCで執筆にあたり40時間のプレイを行っております。

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ゲーム業界も大賑わいとなった2018年。皆さんはこの年に、何本のAAAゲームや注目のインディー作品などをプレイしてきたでしょうか。今年からオリジナルレビューを掲載し始めたGame*Sparkでは、「2018年の話題作」を振り返るゲームレビューを集中連載として年末までお届けします。第5本目は、『ライフ イズ ストレンジ』の前日譚を描くADV『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム』です。




思われない、分かってもらえない、親とうまくいかなくて家では窒息しそうな空気が流れている、心を許せるクラスメートなんていないし、学校なんてくだらない……10代、あるいは反抗期、読者のあなたはどのように過ごしたでしょうか。今書いたような心情に囚われているのが本作『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム』の主人公「クロエ」です。


彼女は幼い頃、実父を事故で亡くしました。16歳になった今は母親に新しい恋人、つまり義父のような振る舞いをする男が現れ、それを憎んでいます。家庭の中へ新たにやってきた男は、クロエにとっては闖入者であり、実父には釣り合わないし、そんな男を選んだ母親にも失望しています。


ある夜、クロエは家を抜け出しバンドのライブに訪れ、その場で不良に絡まれたところ、若い女性に窮地を救われます。その者こそ本作のヒロインであり、クロエと共にドラマを繰り広げる「レイチェル」です。

彼女はクロエと同級生であり、学園で1番の人気者、才色兼備の女性として扱われています。前述の一件が縁となって、クロエはレイチェルと友情の(あるいはより親密な)関係を築いていく、その中で家族、父親という存在が焦点となって物語が紡がれてゆく、というのが本作におけるテーマです。

あらかじめ約束されている悲劇、だからこそ手放しがたく感情を揺さぶる


本作は前作『ライフ イズ ストレンジ』の3年前を描くプリクエル(前日譚)であり、基本的には前作のプレイヤーを対象とした作品です。前日譚だからといって今作からプレイするのはおすすめできません。本作には前作のネタバレが含まれているからです。その上で、ネタバレにあたらない事前情報を記すと、前作のストアページや公式ホームページの紹介文に「レイチェル・アンバーの失踪事件を調べ始めます」という一節が含まれています。

レイチェルと心を通わせる青春の物語を示唆している一方、今作の3年後にはレイチェルは行方不明になっているのです。プレイ前にわかる情報だけで、変化や悲しみの予兆が存在しているのです。つまり、今作は悲劇――少なくともレイチェルと別離することが――あらかじめ約束されているのです。だからこそ、描かれるクロエとレイチェルの交流は儚く、手放しがたいものとして感じられます。


本作をプレイすることによって、前作からのプレイヤーはクロエをより愛おしく思うことでしょう。前作では必ずしもつまびらかではなかった彼女の内心や心性が、プレイアブルキャラクターという立場を与えられたことにより、プレイヤーへ肉薄するからです。あるいは前作からのプレイヤーでなくとも(16歳のティーンエイジャーとして)初めてぶつかる問題と葛藤に、たとえ投影はできなくても、現実味のあるトピックに感情移入や親近感を抱き、“他人事ではないような感覚”を呼び起こされるのです。

物語への没入感は深いが、同時にそれを妨げる構成


“他人事ではないような感覚”とはつまり、作品への没入感を意味します。それを実現している一例が優れたボイスアクト。台詞のみならず、クロエの心の声や思考にも音声がついていて、たとえばポスターや写真など、ゲームプレイで触れられるものに対する豊富な反応が得られます。それによりゲームへの没入が促されています。

これは前作にも共通していますし、饒舌なインタラクションによってプレイヤーの気を引く特徴はシリーズ共通のものともいえるでしょう。プレイアブルかつ反応を示してくれる、だからこそ親近感を覚えたり共感しうる機会やきっかけが多く、ドラマ、ゲーム内世界へ関心を向け続けられるのです。


しかし、惜しくは、その機序が前作と比べて弱いという点。比較してインタラクトできるオブジェクトは減少はしており、物語の背景を想像させる刺激が物足りないものとなっています。そして展開は常に性急で、重要な場面がカットシーンとして描かれ、プレイヤーの介入を許さないという状況がたびたび起こります。これらが作品世界への没入を(あくまで前作と比べ)弱めています。中だるみがない一方、性急な点があるといえるでしょう。

物語の精神に貢献している「バックトーク」は悩ましい不協和を抱える


本作では、前作にあった「時間の巻き戻し」というフィーチャーの代わりに「バックトーク」というものが存在しています。これはいくつかの場面で“選択肢として登場”し、プレイヤーが選ぶことによって発生します。具体的な内容は、「相手の放った言葉に応じて3つ提示される返答を選び、言いくるめる」というものです。時間制限も設けられています。

真ん中の縁取られた選択肢がバックトークへ入る選択肢

負けん気の強いクロエによる反論や挑発、揚げ足を取る言葉は胸がすく思いになるほど気持ちがよく、クロエ自身の反骨精神や性格を克明に描きます。つまり、バックトークはおもしろい、だからこそ悩ましいのです。

せっかくの要素なのだから、大抵のプレイヤーはバックトーク突入の選択肢を選ぶでしょうし、バックトークではない選択肢が魅力的に思えないために「バックトークを行わず別の選択肢を選ぶこと」がしづらくなっています。


本シリーズは選択による分岐を楽しむ作品だと前作で示唆したのだから、バックトークを選ぶか選ばないか、勝つか負けるかで明確に分岐が行われるべきです。しかし、実際にはわかりやすい分岐が生じませんし、そもそもバックトーク以外の選択肢を選んでも結局バックトークを行わないと先に進まない場面すらあります。

こういった点から、バックトークは強制イベントでも成立するのではないか、といった疑いの眼差しを向けてしまいます。それを踏まえて「バックトークの意義とは何なのか」と考えると、クロエの人物描写のために用いられている、といったところが実態でしょう。よって、やはり強制イベントでよかったはずだと思わせられます。システム的にもユニークなアドベンチャーゲームだった前作と比べ、こういったゲームプレイの面では一歩後退した印象を受けます。

クロエとレイチェルの物語につきまとう、本作のもうひとつのテーマ


本作は、クロエとレイチェルがいかに出会って親密さを増していったのかを語ることに加え、もうひとつのテーマがあります。それは「家族」であり、また、コンセプトは「別れ」です。前作ではどちらかというと大人として、若さというものを俯瞰し、青春を終えなければならないというメッセージを強調するように「Obstacles」(Syd Matters)という楽曲が使用されていました。この曲には「私たちは壁にぶつかるだろう、自分たちの制服を捨て共に生きよう。私たちは若かった、若かったんだ」といった歌詞があり、「青春は終わってしまうのだ」という宣告でもあります。

今作では「クロエ個人の内心」のようなものを「No Below」(Speedy Ortiz)などの楽曲で表しています。「死んだ方がまだマシ、なんでそんなこと言ったんだろう、あなたをまだ知らなかったからかな。あなたもひょっとしたら死んだ方がマシだって言ってたかも知れない。でも見守っている、私がそばにいるから」というような歌詞で表現しているものが多く、クロエに寄り添う形で、あまり俯瞰的な視線はありません。


学生時代、若い時分。その頃の同年代の人たちと友好を築いたり、あるいは摩擦が起きたりする都度、悩み、人との関わりを学ぶはず。本作では、親との関係、反発によって、家族というものを改めて捉え直す時期を描いています。そして、それは家族再生の物語ではなく、家族が壊れていく物語です。

クロエと寄り添うレイチェルもまた、家族に対して負の感情を持ちます。家族が壊れることで成長するという、痛ましい親離れを描いています。自我の独立を求める過程で起こる反抗は、親や大人に支配される過程からの脱却ですが、クロエは離れるための親、父親を亡くしています。それとクロエはどう向き合うのか、レイチェルはどう接してくれるのか、また、レイチェルが持つ家族の問題にどうアプローチするのか、というのが本作で描かれている物語の核心です。


“若さ”というものに特別な視線を向ける作品は少なくありませんが、それは本当に貴重なものなのだということを改めて示す格好になっています。若さとは不可逆性のもので、絶対に若返ることはできない。その期間は必ず過ぎて終わる、その成長痛を描く。これは無料配信中の『The Awesome Adventures of Captain Spirit』でも同じく、人間の若さというよりもっと曖昧で儚い幼年期を描いているので、『ライフ イズ ストレンジ』とは、個人に属する私的な時代、歴史、期間を(本稿執筆時におけるシリーズの共通項としては)描いているものといえます。それは実に鮮やかで、心の揺れ方などが真に迫る説得力があります。

不器用な別れ言葉と“ゲーム的感動”


本作のコンセプトは「別れ」にあります。たとえば、予期されるレイチェルとの別れ。あるいはボーナスエピソード「FAREWELL(さよなら)」という題名が表すもの、描かれるできごと。それらが示すのは作品の舞台である「アルカディア・ベイ」との別れです。

ただ、本作の「別れ」の描き方は、不器用なのです。なぜ大切な場面を駆け足なカットシーンにするのか? どうしてプレイヤーがあずかり知らぬうちに物事が動くのか? ことあるごとに性急すぎる描写、「ご想像にお任せする」にしては足らない想像力への刺激、掘り下げて描くべき事件をあっさりと終わらせてしまう点。本作は鮮やかに人の心や若さを描き、それに対する没入も促せるはずなのに、性急さや雑な部分があまりに惜しく感じられます。


しかし、そういった点に目をつぶれば間違いなくプレイすべき、特に前作のプレイヤーがプレイすべき作品であることは断言できます。本作はゲームにおいてよく使われる“映画的感動”というものでは表せない感情を揺さぶられる作品です。

それは“ゲーム的感動”であり、ゲームでなければ心を揺さぶられることはないはず、そういった作品です。つぶさにシナリオを俯瞰すると、陳腐でさえあるかもしれません。しかし、ゲームであるがゆえに、心を動かされる、それがゲームであり、本作なのです。よって作品の持つ没入感やトピックを評価できる反面、万全に活かすことができていなく、別れを告げるにしては不器用に感じられるのが悔やまれるのです。

ジェンダーセンシティブなゲーマーとして、本作において重要な一面


本作は初作からの連作ですが、この2つにおいて、ジェンダーの取り扱いに関しては私にとって非常に感銘を受ける作風といえます。同性同士でと親しくすること、さらに踏み込んで友情となって愛情、恋慕とない交ぜになることに、作中では誰も気にとめないのです。つまり、特別なこととして描いていない、ということが、ジェンダーセンシティブなゲーマーとしては、かえって特別に感じられるのです。


『ライフイズストレンジ』シリーズ2作品には、同性愛のエッセンスはあるが、それが主題ではないため、かえって身近に感じられます。この2作品において、ポリティカルコレクトネス(ジェンダーや民族や宗教などで人を差別することを是正しようという考え、政治的妥当性)を、特にジェンダーについて露骨に啓蒙しようとしたり、配慮のための描写としては用いていませんし、描いていません。本作の世界はある種、あるべき形で瑞々しく形作られています。私はその点において賛辞を送りたいと思います。

たとえばクロエの友人でありキーパーソンであるステフ

最も重要なのは、2作品において主人公の振る舞いをプレイヤーが選択できるという点です。親密になるため、親密さを表すため、レイチェルにキスをしてもいいし、ただ身につけている物をもらうだけでもいいのです。クロエとレイチェルと、そしてマックスとの物語において、その人間関係において、手を繋ぐことにおいて、抱擁において、仲違いにおいて、相手の涙を払う仕草によって、友情なのか愛情なのかわからない描写をわからないままで済ませることによって、心を動かされた人は少なくないはず。その証左が『ライフ イズ ストレンジ 2』または『The Awesome Adventures of Captain Spirit』の登場を許す、私を含むゲーマーたちの許容にあらわれているのです。



総評


アルカディア・ベイからの別れを入念に告げる語り口はスマートではないですが、嵐の前の不穏な静けさが全編を覆っており、本作は悲劇なのだとプレイヤーに伝え、悲しみに暮れさせる力がある一方、一部のメカニクスがゲームデザインとかみ合っておらずぎこちない。別れを告げるのは本当に難しいことなのだと私たちに示しています。

初代『ライフイズストレンジ』をプレイした方は絶対にプレイすべき作品であることは間違いありません。よって、前作のプレイヤーであれば総評点数ポイントは★★★といえます。

総合評価: ★★☆

良い点
・悲しすぎる物語
・相変わらず好調な人物描写
・クロエとレイチェルが共に過ごす、わずかだからこそ尊い時間

悪い点
・悲しすぎる物語
・前作の良さだった丁寧なインタラクションが失われている
・テーマに対する描写が不十分かつ性急



「Game*Sparkレビュー」では、読者の皆さまのゲームの感想も募集しています。下記リンクにて質問にお答えください。回答期間は2018年12月31日から2019年1月7日まで。また、集計終了後には「Game*Spark読者レビュー」として記事を公開し、回答やコメントを取り上げる場合があります。

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《SHINJI-coo-K(池田伸次)》

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