抗日戦争をテーマにしたパズルアクション死にゲー『余燼(Ashes of war)』【中華ゲーム見聞録】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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抗日戦争をテーマにしたパズルアクション死にゲー『余燼(Ashes of war)』【中華ゲーム見聞録】

「中華ゲーム見聞録」第73回目は、抗日戦争をテーマにした横スクロールのプラットフォーム型パズルアクション死にゲー『余燼(Ashes of war)』をお届けします。『LIMBO』や『INSIDE』からの影響も感じられる作品です。

連載・特集 プレイレポート
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中華ゲーム見聞録」第73回目は、抗日戦争をテーマにした横スクロールのプラットフォーム型パズルアクション死にゲー『余燼(Ashes of war)』をお届けします。

本作は寧夏華夏西部影視城有限公司によって、2020年10月4日にSteamで配信されました。デベロッパー兼パブリッシャーの寧夏華夏西部影視城有限公司(長い)ですが、寧夏回族自治区銀川市にある会社です。メインの業務は映画の背景や道具、衣装、交通、宿泊などの準備サポートで、映画業界の会社のようですね。他業種からのゲーム開発参戦は、以前「中華ゲーム見聞録」で、台湾の不動産会社が開発した武侠アクションゲーム『天命奇御 Fate Seeker』を紹介したことがあります。最近はゲームの開発環境が容易に手に入れられるようになりましたので、様々な業界が参戦してきているのかもしれません。


本作はパズル要素のある横スクロールのパズルアクションゲームで、抗日戦争をテーマにしているとのこと。一般的に中国で言われる「抗日戦争」とは、日本で言う「日中戦争」を指しています。日中戦争の発端となったのは、1937年7月7日に北京郊外の盧溝橋で日本軍と中国軍(中華民国軍)が衝突した、いわゆる「盧溝橋事件」です。中国軍の発砲をきっかけに戦闘が始まったと言われていますが、これについては様々な見解があります。本作では日中戦争時のどの時期なのかが明示されていませんが、舞台は中国西部。いったいどんな内容なのか、さっそくプレイしていきましょう。

日本軍の侵攻と少女



ゲームが始まると、いきなり日本軍のトラックやらサイドカーが走っていくシーンが映し出されます。本作はゲーム中にテキストが表示されない非言語ゲームなので、中国語ができなくてもプレイすることは可能です。

当時の日本軍のサイドカー(97式側車付自動二輪車)は、側車部分がバイクの左側に付いていたと思うのですが、ゲームだと右側になっていますね。中国は左ハンドルなので、日本関連の作品でこの手のミスはよくあったりします。ちなみに日本が左側通行になったのは、武士同士が刀をぶつけないようにするためと、近代化の時期にイギリスを手本にしたからだと言われています。


指揮官に率いられた日本軍の兵士たち。みんなひげ面で、頭に巻いているのは鉢巻きでしょうか。グラフィックがデフォルメされたものになっているので、悲壮さはあまりなく、どちらかといえばコミカルな感じです。



村(?)への攻撃命令を出す指揮官。兵士たちが突撃し、あちこちで火の手が上がります。前述したように、本作にはテキストがほとんどありませんので、状況で何が起こっているのかを判断する必要があります。やがて銃声や悲鳴が聞こえ、画面が暗転します。



急にシーンが変わり、どこかの川辺になりました。赤い服を着た少女が、岩に寄りかかっています。地響きと共に、遠くで爆発が起こりました。少女はその衝撃で地面に倒れ、周りにいたヤギたちは逃げていきます。


少女は立ち上がり、ここからゲームスタートです。本作は横スクロールアクションで、現在のところキーボードでしか操作できません。チュートリアルなど一切無いので操作方法が分からなかったのですが、適当に押してみたところ、A,Dキーで左右の移動、スペースキーでジャンプでした。



崖をジャンプで越えていく少女。思ったよりもジャンプ力がありますね。そのまま崖を下っていきます。グラフィックはなかなかよく、背景ではススキが風に揺れています。取っ付きやすいデザインである一方、中国っぽさがあまり無いかなという気もします。


蓮の葉が浮かぶ浅瀬を進んでいきます。特に敵が出てくる様子もなく、美しい背景を楽しみながらひたすら前進する少女。先程まで日本軍の攻撃があったとは思えない、のどかな風景が続きます。


何の障害物もない道をしばらく進んでいくと、前方の道を箱が塞いでいました。ジャンプすると、箱の縁につかまって自動的に登ってくれます。この先の橋は、途中で途切れてしまっていますね。


跳び越えるしかないようですが、向こうまで結構距離があります。しかし少女の圧倒的ジャンプ力ならば、これぐらい届くかもしれません。助走を付けて一気にジャンプ!


……と思ったら、届きませんでした。下から突き出ている木の枝に突き刺さって死亡。ゲームオーバーです。これは、同様のパズルアクションゲーム『LIMBO』や『INSIDE』と同じ匂いがしますね。



ゲームオーバー画面は極めてシンプルで、Rキーを押してすぐにコンティニューができます。この辺りのリプレイ性の高さも、死ぬことを前提に作られている感じがあります。再開場所は、先程の箱の側。次は死なないようにしましょう。

死にゲーの始まり



今度は飛距離を少しでも伸ばすため、橋のギリギリからジャンプ!先程よりは遠くへ跳べましたが、やはり届かずに落ちて、木の枝の餌食に。この後、何度もジャンプを繰り返しますが、やはり届きません。コンティニューが速いのが救いでしょうか。


箱の上からジャンプしたらどうだ……と思いましたが、それでもやはり届きません。箱も動かせませんし、どうしたらいいのか分からなくなる筆者。これはいきなり詰んだか?


箱の上からのジャンプで、途中に引っかかる所があるのに気付きました。よく見れば、穴の途中の、背景だと思っていた細い棒の上に、衝突判定があります。箱の上からジャンプし、棒に着地したと同時にすぐまたジャンプすることで、棒を蹴って飛距離を伸ばすことができました。見事、向こう岸に着地。やっと突破出来ました。



またしばらく、特に何の障害物もない道を進んでいきます。坂を上っていく途中、背景の遠くで爆弾が落ち、火の手が上がりました。日本軍による空爆でしょうか。日中戦争時の空爆と言えば、「重慶爆撃」が有名ですね。都市への無差別爆撃は200回以上も行われ、1万人以上の民間人が死傷したとも言われています。

「中国側は兵器を市街地に配置していたことから空爆した」というのもありますが、当時爆撃を指揮した遠藤三郎陸軍少将は「蒋介石にとどめを刺せる地域も、重要軍事施設もどこにあるかまったく分からない。漫然と市街地を爆撃することは無意味であり、また非戦闘員にまで被害を加えることは、いくら戦争と言っても好ましいことではない。国際法でも、非武装都市への爆撃は禁じ手である」として、爆撃中止の意見書(重慶爆撃無用論)を陸軍中央部に提出。これが採用され、陸軍は爆撃から手を引きました。



背景では日本軍による爆撃が続いています。勾配の急な坂があり、そこを滑り降りていくと、その先はトゲのある穴。ジャンプのタイミングを逃してしまい、そのまま穴に落下してまたもや死亡です。この後、2度ほどトライして跳び越すことができました。


さらに進むと、垂直に切り立った崖がありました。ジャンプしても届きません。近くに木箱があるのですが、押しても動かない。どうしていいのか分からず、ここでまた「詰んだ?」と思い始めました。



何か特殊な操作が必要ではないかと思い立ち、「考えてみれば、キーコンフィグを見れば操作方法分かるな」ということに今更気付きます。Escキーを押してメニューを呼び出し、キーコンフィグを見たところ、Jキーがインタラクティブキーになっていることを発見。本作ではゲーム中にテキストが出ないため、操作方法の説明がありません。いろいろと理不尽さを感じながらも、箱を崖に押していきます。

日本兵の登場




箱を足場にして崖の上に登ると、背景の奥の方に光が見えました。いくつかの人影が動いています。それからズームされ、日本兵の姿が映し出されました。デフォルメされているので、何だか可愛い感じもします。


前進しようとした途端、何の前触れも無しに、いきなり背景奥の日本兵に発砲されて死亡。ゲームオーバーでやり直しです。何度やっても、前進しただけで殺されてしまいますね。キーコンフィグを調べたところ、Ctrlキーでしゃがめることが分かりました。試しにしゃがみながら進んで見ると、射殺されずに済みました。もはやメタゲームみたいな遊び方になっています。


しばらく進んで、また日本兵がこちらにライトを向けてきました。しゃがんで進むも、射殺されてゲームオーバー。先程は草むらがあったので、しゃがんだ状態だと隠れられたのですが、今回はそれが無いので、発見されてしまったのでしょう。どうしたものか……。


同じ所で何度か死んだ後、日本兵がライトを向けたときに、木の陰に隠れてしばらく待っていると、日本兵がどこかへ行ってしまうことに気付きました。その間に走り抜け、何とか突破です。


さらに進むと、川辺に出ました。川に入ろうとしたとき、水中にいた日本兵に射殺されてまたもやゲームオーバー(上の画像のどこに日本兵がいるかわかるでしょうか?)。しかも日本兵初登場のシーンまで戻されました。結構きつい。先程と違って、川のそばには隠れる場所もありません。川を渡ろうとするたびに殺されてしまいます。


6回ほどトライしては殺されてで、心が折れてきたときに、木の幹に隠れるようにしてロープが垂れているのを発見。この一つ前の画像を見れば分かると思いますが、角度によっては暗くてロープが見えないため、まったく気付きませんでした。


ロープを登っていくと、木々の間にロープが張っていました。これで横移動すれば、川にいる日本兵に見つからずに済みます。このゲーム、注意力がかなり必要ですね。



お次はトロッコがありましたが、押しても線路に横木があるので動かせません。トロッコを放っておいて奥の方へ行くと、線路を木々が塞いでいて通ることができません。その側にレバーがあるので、これを操作すればトロッコを押すことができそうですね。


レバーを動かし、木々の壁の前までトロッコを押していきましたが、何も起こりません。この後、レバーのそばにトロッコを停め、レバーの操作をしたところ、トロッコを押すことができなくなりました(トロッコを押そうとすると、レバーを操作してしまう)。システム的に詰んでいるため、いったんゲームを終了してやり直しです。


どうやら行き止まりの木々の壁はひっかけのようで、トロッコを足場に、トンネルの手前から上へ登ることができるようになっていました。これで先に進めます。


トンネルの上を通って線路の端にたどり着きましたが、高い崖が道を塞いでいて進むことができません。やはり足場となるトロッコをここまで運んでこないといけないようです。そのためには、あの木々の壁を何とかしなければなりません。どうするかは考えてみてください。

相棒とのコンビプレイ



高い崖を越えて道を進んでいくと、背景の奥の方でサイドカーに乗っている日本兵たちが発砲してきました。止まると撃たれますので(撃たれて何度か死にましたので)、急いで走り抜けていきましょう。


日本兵の攻撃をかいくぐって、川へとダイブ!そのまま泳いで、橋の下を進んでいきます。橋の下から出たところで、突然スポットライトが照射されました。この中に入ると撃たれるので(撃たれたので)、消えるまで待ってから先に進んでいきます。



川から上がってしばらく進むと、死体の山がありました。その死体の山の中から、小さな男の子が這い出してきました。主人公の少女はすぐさま駆け付け、泣いている男の子を慰めます。放っていくわけにもいかないので、連れていきましょう。


ここから操作キャラが2人になり、操作方法も一気に増えます。操作キャラはタブキーで切り替えが可能。また少女を操作キャラにした時にKキーを押すことで、男の子を背負うことができます。Hキーは、操作していないキャラを呼び寄せる(もしくはその場に立ち止まらせる)のに使います。ちなみにこれら操作方法の説明は、ゲーム中には無いため、キーコンフィグ頼りです。

背景の方では、日本兵たちが民を殺していたり、蹴りつけていたりと悪逆非道を働いています。しかしひげ面に鉢巻きのせいか、正直なところ工事現場にいる作業着姿のおっさんにしか見えないのがすごく気になります。軍帽やヘルメットを被せるなど、もう少し兵士っぽくした方がいいような……。


兵士たちに見つからないよう、男の子を背負いながらしゃがみ移動で少しずつ進んでいきます。途中、兵士がこちらに向かってきました。壁の後ろで止まり、兵士の視線が画面奥に向くまで待機しましょう。


兵士たちがたむろしている地帯を抜けると、死体が吊り下げられているのに出くわしました。ここを突破しなければならないのですが、ロープの側でインタラクティブキー(Jキー)を押しても反応がありません。何か別の方法が必要ですね。


段差のあるところですが、男の子のジャンプ力では届きません。操作キャラを少女にしてUキーを押すことにより、男の子を押し上げて高くジャンプさせることができます。息の合った連係プレイは、昔フレンドとプレイしたCo-opアクション『Army of Two』を思い出しました。


そして進もうとしたところで、巨大な岩が転がってきました。あえなく潰されてゲームオーバー。唐突だったので、ちょっと笑ってしまいました。本当によく死ぬゲームです。初見殺しは当たり前なので、ゲーム実況向きなのではないかという気がしてきました。


進んだ先には激流が!橋がありますが、シーソーのように少女たちの重さで傾いてしまいます。ここは男の子との連係プレイで切り抜けるしかありません。



筏に乗って激流の中を進んでいく少女たち。何とか岸辺にたどり着き、そこでしばらく休むことになりました。しかし翌日少女が目を覚ますと、男の子の姿が見当たりません。どこかへ行ってしまったようです。


男の子を探しに向かう少女。この先の町は日本軍に占領されているようで、そのまま突入すると撃たれて死にます(死にました)。あと、この辺りの住人はちょっとしたセリフがありますね。ここまでノーテキストだったので、新鮮な感じです。


まともに町に入ろうとすると殺されるので、日本軍のトラックの荷台に忍び込んで検問を突破。気分は『メタルギア』シリーズのスネークです。


日本軍の占領する街中を、少女を載せたトラックが進んでいきます。これまで中国っぽさや戦時中っぽさが感じられるステージが少なかったのですが、この辺りはそれっぽいです。


2番目の検問ですが、ここでトラックの荷台を調べられ、撃ち殺されてしまいました。町の中で荷台から降りないといけないようですね。果たして男の子を見つけられるのか、そして少女の運命はいかに?続きはぜひとも自身の手でプレイしてみてください。

初見殺しのパズルアクション死にゲー


とにかく初見殺しが多く、よく死にました。また謎解きもあるので、どうやって進むかを考える必要のある場面も多いです。系統的には『LIMBO』や『INSIDE』の影響を受けたパズルアクションゲームと言えるでしょう。

遊んでいて不便だと感じたのは、やはり操作に関する説明が無いことですね。これはキーコンフィグで確認しながら、プレイヤー自身で調べていくしかありません。この辺りはチュートリアルがあったら分かりやすかったかなと思います。

謎解きにはコードを入力するものも。

それと「抗日戦争をテーマにした作品」とのことでしたが、その辺りの歴史的背景がゲームにあまり絡んでいないように思われます。登場する日本兵や世界設定は、ドイツ軍やモンスターなど別の設定に置き換えてもそのまま成り立ってしまうため、歴史的な雰囲気などが希薄な気がしました(中国では「日本兵=絶対悪」なので、悪役キャラとして使いやすいというのはありますが)。ただその辺りを抜きにすれば、パズルアクションとしては、広いユーザー層が楽しむことのできる作品になっています。

本作は日本語サポートはされていませんが、前述したように基本的には非言語ゲームなので、どの国籍の方ではプレイできるとは思います(ただ操作方法の説明が無いので、その辺りは難点ですが)。グラフィックも悪くありませんので、ゲーム実況用としてや、「謎解き死にゲー」をプレイした方は試してみるのもいいとは思います。

製品情報



※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字を日本の漢字に置き換えています。

■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。著者Twitter「マイナーゲーム.com」Twitter
《渡辺仙州》

歴史・シミュ・ボドゲ好き 渡辺仙州

主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。

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