アスキー最後の『Wiz』、快作 『ウィザードリィ~DIMGUIL~』を20周年最後に振り返る―RPG史最強と呼ばれた裏ボスなど……開発インタビューも!そして「あの作品」が2021年に蘇る?【年末企画】【UPDATE】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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アスキー最後の『Wiz』、快作 『ウィザードリィ~DIMGUIL~』を20周年最後に振り返る―RPG史最強と呼ばれた裏ボスなど……開発インタビューも!そして「あの作品」が2021年に蘇る?【年末企画】【UPDATE】

和製『ウィザードリィ』の一つの完成形、『DIMGUIL』にスポットライトを当てる!

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アスキー最後の『Wiz』、快作 『ウィザードリィ~DIMGUIL~』を20周年最後に振り返る―RPG史最強と呼ばれた裏ボスなど……開発インタビューも!そして「あの作品」が2021年に蘇る?【年末企画】【UPDATE】
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ドリコムが『ウィザードリィ』の商標権を購入し、シリーズ新作の開発が発表されました。ゲーム業界に久々に飛び込んできた『ウィザードリィ』新作情報。個人的に、非常に胸躍るニュースとなりました。

『ウィザードリィ』といえば、『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』にも影響を与えたRPGの古典。いまだに根強いファンも多く、『世界樹の迷宮』や、先日発売された『ガレリアの迷宮と魔女の旅団』なども、この作品の影響下にあると言えます。

そんなこんなで、久しぶりに『ウィザードリィ』シリーズに思いを馳せ、古いゲーム機を引っ張りだしていたところ、今年2020年は『ウィザードリィ~DIMGUIL~』発売20年目であったことを思い出しました。和製『ウィザードリィ』の集大成と言ってほぼ間違いない『DIMGUIL』。この作品の20周年を記念する意味も込めて、ここでその魅力を探っていきたいと思います。

『ウィザードリィ~DIMGUIL~』とは?

ウィザードリィ~DIMGUIL~』は『ウィザードリィ外伝』シリーズの5作目にあたり、アスキーが発売した最後の『ウィザードリィ』でもあります。『外伝』シリーズは原作の『ウィザードリィV』までのシステムを踏襲しつつ、『ウィザードリィVI』以降に登場した種族や職業、呪文などの要素をブレンドし、日本独自の進化を遂げたシリーズです。

本作『DIMGUIL』は種族も職業も過去最大級の品ぞろえ。従来の『ウィザードリィ』に登場する人間、エルフ、ドワーフ、ホビットはもちろん、ラウルフ(犬人間)、フェルパー(猫人間)、リズマン(トカゲ人間)、フェアリーなどといった種族が存在。職業もファイター、メイジなどだけでなく、モンク、レンジャー、アルケミストなど複合的な技能を持ったものが多数登場します。キャラメイクの幅が広がっており、過去作以上に多彩な遊び方が可能となっています。

UI面も過去作より使いやすく進化。ウィザードリィらしい雰囲気を崩すことなく、プレイヤーに優しいつくりになっています。武器の性能を比較する機能や、呪文などの説明文の表示、さらにはミニマップなどなど。近年のRPGでは実装されて当然のシステムばかりですが、当時のファンは『ウィザードリィ』の進化を強く感じたのではないでしょうか。

コミカルなNPCとの交流が冒険に彩を加える

『ウィザードリィ』は硬派で暗めなゲームという印象もあるでしょうが、コミカルな一面も持っています。特に『DIMGUIL』はNPCとのおもしろおかしい交流が豊富。ダンジョン内では他の冒険者パーティと何度も遭遇し、情報交換したり、協力したり、戦うこともできるようになっています。

自分のことを「勇者」と名乗るちょっと間抜けな男や、明らかに桃太郎のような風体のキャラクターなど突っ込みどころ満載。会話の中にはウィザードリィフリークなら思わずニヤリとさせられる小ネタがちりばめられているところも好印象。

ゲームを進めるにつれてダンジョン攻略だけでなく、NPCとのやり取りを待ち遠しく思ってしまうことでしょう。もちろん、楽しいやり取りばかりではなく、悲劇に見舞われてしまうNPCも。ダンジョンの過酷さが上手く表現されており、その点は『ウィザードリィ』らしいダークな要素を損なわない演出がなされています。

シビアさを残しつつ ストレス少な目の絶妙なバランス

『ウィザードリィ』はシンプルなゲーム性ゆえ、ゲームバランスが命と言っても過言ではありません。その点、本作『DIMGUIL』はよく計算された難易度調整がなされているように思います。

最序盤は非常にシビア。特に冒険の最初に登場する柱のボスは、ダンジョンに入ってすぐに戦えるのに、レベル3以上でないと敵わない強さ。初見プレイヤーの多くがうっかりこのボスに戦いを挑んで、涙を流したことでしょう。

途中に出てくる「ファイヤーゴーレム」もまた、代表的な初見殺しの一体。割と序盤のフロアで、プレイヤー側のレベルが7前後の頃に出会うことができます。仰々しいCGムービーの後に画面からはみ出すほどの巨体で襲い掛かってくるこのボス。こちらのHPが2ケタしかないのに、250以上のダメージを与えてくるからもうビックリ。

ファイヤーゴーレムに戦いを挑んだプレイヤーは総じてその強さに呆然とさせられることでしょう。このレベル7というのは、ちょっと冒険に慣れて余裕が出てきたころ。ついつい気が緩みがちになっていたプレイヤーに対して、再度襟を正すように厳しく指導してくれるのが、このファイヤーゴーレムさんなのです。

一方で、このファイヤーゴーレム以降、初見殺し的な仕掛けはなりを潜めます。ボスもそこまで苦戦することはなくなり、こちらが強くなっていくにつれて難易度は緩やかに下がっていくといった印象です。つまり全体を通して見ると、序盤はウィザードリィらしい強力なボスの洗礼がありつつ、中盤後半はそれほどストレス無く楽しむことができるという作り。2000年代という時代に合わせた難易度調整が施されていると言えるのではないでしょうか。

バランス度外視 最強の裏ボス「ダイアモンドドレイク」

『DIMGUIL』を語るうえで外せないのは、シナリオクリア後の裏ダンジョン「ドラゴンの洞窟」とその最奥部に待ち受ける「ダイアモンドドレイク」の存在。シナリオ本編は緩やかに難易度が下がっていた反面、この裏ダンジョンは異常なほどの強さのインフレが起こります。ダンジョン内を闊歩する雑魚たちは、ラスボスをはるかにしのぐ強さの者ばかり。そして裏ボス「ダイアモンドドレイク」は、ネット界隈でRPG界隈最強のボスキャラの一つとして語り継がれる強さとなっています。

このダイアモンドドレイクは、「マハマン」という『ドラクエ』の「パルプンテ」のような呪文で倒すことが定石。つまり敵の攻撃をひたすら耐えて、運に任せて倒してしまうということです。しかし、世の中にはマハマンを使わずに倒す猛者もいる模様。「ウィザードリィ」をこよなく愛するゲーマーたちの中には、ダイアモンドドレイクを超えるほどの人物がいるようです。

ちなみに筆者もドラゴンの洞窟に足を踏み入れたことはあるものの、雑魚相手ですら全く歯が立たず、そのあと二の足を踏むばかり。ダイアモンドドレイクをこの手で倒すことが、ゲーマー人生の中の一つの目標となっております。

ウィザードリィ×中森明菜がもたらすマジック

本作が他の『ウィザードリィ』作品と比べて異色である点は、日本を代表する歌姫である中森明菜さんが主題歌を歌っているというところ。そもそも、『ウィザードリィ』と「日本のポップス」というだけで疑問符が湧いてくるのに、中森明菜さんとのコラボを取り付けるという展開は、当時のファンにはどのように映ったのでしょうか。

明菜さんのファンに『ウィザードリィ』を普及していくことにどれほど意味があるのかよくわからない上、『ウィザードリィ』ファンを明菜さんサイドに引き込むことのメリットも不明。それぞれがどんなWINとWINを求めてこのコラボを実現させたのか、一見ただただ疑問に思うばかり。

しかし、実際にゲーム中で歌を聴くとそんなモヤモヤも消え失せます。酒場で聴ける主題歌「月の微笑み」はイントロから非常に美しく、一気に曲の世界に引き込まれます。そこに明菜さんの歌声が加わると、この異様なファンタジーの世界が途端に現実味を帯び、冒険者の集う酒場で生歌を聞いているかのような感覚を覚えることでしょう。彼女の歌声の持つ説得力に驚かされます。筆者は、この曲を聴いて以降、『ウィザードリィ』に歌を提供できる人間は中森明菜さん以外にいないと今も強く確信しています。

この主題歌は、酒場ではアコースティックバージョン、エンディングではオーケストラバージョンが流れます。同じメロディなのにアレンジで全く異なる印象に仕立て上げる作曲者の腕もさることながら、中森明菜さんの絶妙な歌い分けには舌を巻くばかり。この2曲を聞くだけでも、彼女の「歌姫」たる由縁がわかるような気がします。音楽の面でも魅力あふれる本作。耳でもこの世界を楽しむことができること請け合いです。


過去作と比較して、新しい要素をいくつも盛り込んでいるため、異質な面も目立つ『DIMGUIL』。しかし、日本に『ウィザードリィ』を広め、本国アメリカからも高い評価を受けたアスキーの経験と技術の粋を集めた作品であることも事実。

今まで当シリーズに触れたことが無い人ならば、この作品を最初の『ウィザードリィ』体験としても良いでしょう。豊富なキャラメイクの選択肢、ユーザーフレンドリーなUIに、難し過ぎない難易度。それでいて、このシリーズ特有の硬派な雰囲気も味わえる。初体験としてはこの上無い作品に仕上がっています。

『ウィザードリィ』の復活の狼煙が上がった2020年末。この機会にRPGの原点となった世界に足を踏み入れてはいかがでしょうか。


開発の徳永剛氏インタビュー!

ここまでお送りした本記事ですが、今回開発の徳永剛氏にインタビューする機会をいただき、RPG界に残る強さの裏ボスや、中森明菜さんとのコラボレーションまで、作品の裏話をお聞きすることができました。ファンの皆様は当時を思い返しながら、ご覧いただければと思います。

―― 『ウィザードリィ~DIMGUIL~』発売から20年おめでとうございます。ウィザードリィ外伝のシリーズはゲームボーイで『I』~『III』が、スーパーファミコンで『IV』がそれぞれ発売され、その後プレイステーションで、この『DIMGUIL』が発売されました。『外伝IV』は和の世界を舞台にした作品でしたが、『DIMGUIL』はまた異なる切り口の作品となっています。開発の始まった経緯についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

有限会社59 徳永剛氏(以下、徳永)オリジナルの『ウィザードリィ』が西洋の舞台であり、その固定観念から脱却したくてゲームボーイの『外伝』の頃から仕込みをしていました。東洋の文化が混じる世界や、日本そのもののような和の世界で様々なモンスターを登場させ、どのような見せ方ができるのか。徐々に可能性を広げていく挑戦の繰り返しでした。『DIMGUIL』もその挑戦の延長線上に生まれました。

――モンスターの名前や、ダンジョンのデザインなど中南米の文化で構成された設定も魅力的でした。アイデアの出どころ、世界観構築の裏話などありますでしょうか。

徳永マヤ文明、アステカ文明を元に西洋のモンスター名を無理やり合わせたような構図を繰り出せないかと苦心した思い出があります。最後までプレイされた方はご存じだと思いますが、本作は落下した宇宙船が舞台となっています。中南米の文化と西洋のモンスター、そして他の惑星の生物との融合を取り入れた形になっています。原画の諏訪原さんのお力もあって、和でも洋でもない異文化の世界観を作れたと思います。

――『ウィザードリィ』はシンプルなゲーム性故、バランス調整が命というイメージがあるのですが、このあたりで苦労された点などありますでしょうか。

徳永同じ名前の武器でも強さが異なっているという要素を入れたくて、隠しパラメータ作りに苦労した思い出があります。

戦闘面で言うと、パーティ戦闘の要素を盛り込んだことがポイントです。本作は時々パーティを組んだ敵との戦闘が発生するようにしました。対パーティ戦では、「当然こちらと同じような構図になるかな」、「見せ方も変わるよね」、「普通の群れの敵とは戦い方も変わるはず」などと、そんな話を延々としていた記憶があります。パーティの配置からバトルシステムを構築していったという経緯があります。

「モンスターにも知能はある」という観点から行動パターンを作っていったのも挑戦でした。あきらかに弱点を狙ってくる敵とか、力任せの攻撃をしてくる者や、いやらしい攻撃をする奴、などいろんなバリエーションを設定しつつ、戦略性も損なわないようにと考えていきました。すこしやりすぎてしまった面もあり、そこは反省点です。

後は、呪文がレベルごとに3つずつになってしまった点は心残りですね。『ウィザードリィ』の呪文はレベルごとにいくつかの呪文が用意されています。過去作ではレベルごとに3つだったり、2つだったり、5つだったりとそれぞれ異なっていたのですが、本作では全てのレベルで3つずつになってしまいました。

――最初に出てくる4体の柱のボスは、レベル1だと全く歯が立ちませんよね。それなのに冒険を初めてすぐに戦えるため、泣きを見ました。これは意図的な「ウィザードリィの洗礼」のような物だったのかと思っていましたが、いかがでしょうか。

徳永序盤に死の怖さを与えたいと考えていたので、設定通りです。当初からレベル1では絶対に倒せないようにしてくれと、バランスメーカーに指示を入れました。

――途中に出てくるファイヤーゴーレムにも衝撃を受けました。私は倒したことが無いのですが、このボスを倒して進むとそのままラスボスに直行できると聞いています。このアイデアの発端などありますか。

徳永私の作品のスタイルには、「力こそ全て」、「力があればクエストなど無視できるだろ」という考えが根底にあります。そこから転じて、本編と異なるBルートを用意しました。

『ウィザードリィ』はゲームの性質上セカンドパーティを作ってエンディングを見ることができます。セカンドパーティはファーストパーティの資産を使ってパワーレベリングを行い、ファーストパーティでは倒せなかったモンスターを軽々と倒していくことができます。ならばそんなプレイヤーのために、ファーストパーティとは別の物語を用意しても良いのではないか、と考えて生まれたものです。

――個人的には中盤以降はこちらのレベルが上がるのに合わせて緩やかに難易度が下がっている印象でしたが、意図的なものだったのでしょうか。

徳永意図的だったかな?特に指示は出していませんでしたが……。不思議な迷宮を探索し、秘密を解き明かすという面を強調したかったのかもしれません。そのため、本編ではボス以外が弱く感じてしまったのかもしれませんね。最終ボスは設定上、存在自体が未完成なものなので、その雰囲気を出すために弱めに設定されています。

――今作はオリジナル版『ウィザードリィ』の『VI』以降に登場するフェアリーやムークなどの種族、アルケミストやモンクといった職業を取り込んで『ウィザードリィV』までのシステムに落とし込んでいますよね。オリジナルの『ウィザードリィ』とは異なる独自のアプローチとなったわけですが、その中に苦労などあったのではないでしょうか。

徳永オリジナルの『VI』以降のシステムも好きだったので、種族や職業は『外伝III』から徐々に登場させていました。

それぞれの職業については、例えば薬品をぶちまけるアルケミストは継続ダメージを与え続ける呪文、サイオニックは精神にダメージを与える超能力者などというように、先にイメージがあり、それを元に呪文や技能を構築していったため、バランスをとるのは大変でした。

苦心したのは新しい呪文名です。アルケミストに「オスロ」という呪文を作りましたが全く同じ名前の土地があるとは思ってもみませんでした。当初は誰も知らず、スタッフからも突っ込みは無かったのですが、今では誰でも知っている都市ですよね。

種族専用のアイテムを設定したいという開発側からの要望もあり、少ないアイテム群の中に数多い設定を組み上げるのは大変でした。アイテムの説明文が出来上がった後で、「こういう設定を入れたい」と相談があっても微調整が効きにくいという点も難点でした。

――裏ダンジョンである「ドラゴンの洞窟」は強烈でしたね。今でも語り草となるほどの高難易度でありながら、ちゃんとクリアできるようにするというバランス調整は大変な仕事だったのではありませんか。

徳永前提として、『ウィザードリィ』は本編でも低確率で強いアイテムを宝箱などから入手することができます。そういった装備を揃えた時に、ストーリーは抜きにして単に強くなった自分たちを試せる場所が欲しいという考えが元々ありました。そんな願望から、裏ダンジョンは生まれています。

まずは本編をクリアしたパーティが最初の戦闘で絶望を感じるような難易度にしてくれとお願いしました。そして得られる経験値を膨大にしてくれ、と。敵は強くていやらしい攻撃を仕掛けてくるが、倒せばガンガンレベルが上がる。その点を強調してほしいと依頼しましたね。

――ネットで調べると様々なやり込みで裏ボスのダイアモンドドレイクを倒す動画が上がっています。つい先日もマハマン無しでクリアする動画なども見つけましたが、20年たった今でもやり込みが更新されている状況をどのように捉えていらっしゃいますか。

徳永マスター前から開発陣のテストでギリギリのラインを探って調整していました。バランスメーカーが苦労に苦労を重ねて、最悪最強のボスに組み立ててくれたのだと思います。倒せないのも思い出だし、倒せたのも思い出、最悪の場合マハマンを使えば吹き飛ばせる。そんな最強のモンスターを生み出してくれたことに感謝しています。ただ、もう少しクリティカルやドレインを防ぐ効果のアイテムを用意できなかったのか、という心残りもありますね。

――『DIMGUIL』はそれまでの外伝シリーズと比較してUI面が非常に進化していました。宿でレベルアップするキャラが一目でわかったり、自動回復状態のキャラのHPは色付けされていたり。中でも武器の性能を比較するシステムは重宝しました。

徳永オリジナルの『ウィザードリィ』がすでに完成されたシステムであったため、それを壊していないかという不安はありました。とは言え、便利だと思う部分は遠慮なくスタッフで話し込んで、良いものは取り込んでいく方針で進めました。わかりやすさ、見やすさ、スピーディーさ。遊んでいるうちにコントローラーが体の一部に溶け込んでいくような感覚。そんな使い勝手を目指し、手を抜かずに試行錯誤を続けましたね。

『ウィザードリィ』における武器防具は、ゲーム中で実際に使用して「これは強い武器だ」、「これは期待してたほど強くないな」などと効果を体で感じるものだという前提がありました。そのため、余計な情報は伏せるという意向で進んでいたんです。そこをもっと、文字情報、数値情報で見せていこうという反対意見もありましたが……。最終的に、前提に従った上で、ちょっとわかりやすくなるように制作した形になっています。

――NPCたちとの掛け合いも本作の大きな魅力でした。面白いキャラばかりで、陰鬱になりがちなダンジョン探索の清涼剤になっていたように思います。

徳永元来『ウィザードリィ』の冒険は、自分たちのキャラクター約20名しか迷宮に潜っていないという状態でした。また、『DIMGUIL』が発売した当時は、現代のようなMMOのRPGの普及もまだまだで、迷宮内で別の誰かと出会うようなゲームは少なかったと記憶しています。

そこで、他のパーティが同じように攻略を進めていて途中で出会ったなら、どんな感じだろう、と考え、NPC専用のシナリオライターを用意し、プレイヤーキャラ以外のキャラクターたちにも物語を語らせる、というコンセプトでテキストを調整しました。戦っても良い、アイテム売買しても良し、という点にも注意を払ってもらいました。

――最初に出会う自称勇者のガイラルディアは、『ドラクエ』的な勇者像を相対化したようなイメージでしたし、フォンタナは明らかに桃太郎という風貌でした。他にも特定のキャラをモデルにしたNPCはいましたか。

徳永キャラクターたちは特徴強めで作成してくれとお願いしました。他には、専門に解析しながら進めている「(おバカな)学者」パーティを用意してくれとお願いした記憶がありますね。

――こちらのパーティメンバーが変わるとそれに合わせてNPCの会話も変化するのは非常にリアリティがあって面白かったです。こちらが全員新しいメンバーだとNPCは初対面の挨拶をしてくれるのも、「確かにそうだよな」と納得しました。

徳永初回に会った時と、二回目に会ったときでは当然会話も異なるでしょう。通常のNPCのように一つの会話だけを何度も言わせることも考えました。しかしそこにどうしても違和感があり、せめて挨拶だけでもちゃんとチェックしようと。そこから発展していった形です。

自分たちと異なるパーティがいるとどんな反応をするのか。事件に巻き込まれたり、救出してあげたり、他のNPCとの会話や反応を楽しむ。そんな世界観を作りたくて、その点を重視してくれと、パーティ専用シナリオライターにお願いしました。

――バルボというドワーフのNPCは最初に会ったときは荒々しい口調だったのに、途中からやけに丁寧な語り口に変わっていたように記憶しています。これは彼の属性が変化したことを現していたのでしょうか。

徳永ありがとうございます。気づいてくれて嬉しい限りです。『ウィザードリィ』の善・中立・悪の性格は、基本的に戦闘時の友好的な敵との対峙に関わる機能です。しかし、当然NPCとの会話でも反応が異なるはずと考え、NPCとの会話の中で属性が影響するようにしました。探索の途中で属性が変化してしまうという要素は、『ウィザードリィ』らしいキャラクターの変化の要素なので、バルボにその点を担ってもらいましたね。他にもこだわりポイントは色々あったのですが、過去の思い出となっていて、さすがに詳細まで思い出すことができませんね。

――本作の魅力を語るうえで中森明菜さんの歌う主題歌を外すわけにはいきません。個人的にも非常に意外な組み合わせだと思ったのですが、どのような経緯で中森明菜さんとのコラボが実現したのでしょうか。

徳永『DIMGUIL』でも作曲を行ってくれた藤原いくろうさんが中森さんと一緒に仕事をしていまして、無理を承知でお願いしました。「月の微笑み」は今聞いてもいい曲ですよね。酒場とエンディングで同じ歌詞ですが、演奏に違いを出して貰いました。

会社からは「何故、中森明菜さんなの?」と何度も忠告をいただきましたが……。「アイドルではダメなんです。大人の曲が必要なんです」と力説した思い出があります。世代的にも私がファンなので、ここで一曲ぶちかましたいという強い気持ちがありました。

サウンドはロシアまで行き、モスクワオーケストラさんに協力をいただき完成しました。ロシアはとにかく寒かったですが、その甲斐あって素晴らしい曲ができたと思います。

――そのほか、『DIMGUIL』を制作する上で工夫されたポイントや、今だからお話できることなどありましたら教えていただきたいと思います。

(古代文字について)

徳永古代文字の解読というシステムも入れ込みました。異世界で古代文字を解析しながら探索を進める、という攻略の楽しみを入れたくて採用したんです。古代語の文字盤は、実はパソコンのキーボードの並びに近いものになっています。心残りはもっと長文を解読させるような場面を入れておけばよかったなと思うところですかね。

(超ミニサイズのモンスター「クリスタルマン」)

徳永私がミクロマンが好きなので、「小さくても強い敵!」としてクリスタルマンを作りました。*ワ*ザ*と小さな敵にしました。決してバグではありませんよ。

(巨大モンスターについて)

徳永巨大モンスターを、大きく見せるようにするアイデアも努力が必要でしたね。3D迷宮だったのでその仕組みも駆使し、アングルを変えるなどの工夫をして巨大モンスターを演出しました。

(モンスター辞典やアイテム辞典のコメント)

徳永これらのコメント文は知り合いにポケットマネーで作成してもらいました。一風変わった文章で、気に入っている部分です。

(酒場の様々な要素)

徳永酒場はパーティを組むための場所ですが、あそこをもっと盛り上げたいなと思いまして。自分で作ったキャラ以外に、酒場でスカウトできるキャラクターを20名ほど用意しました。知り合いやスタッフなども含まれています。

他にも、占い師を登場させて冒険のヒントを与えるシステムを加えたり、酒場で歌姫の歌を聴ける要素も導入しました。歌は、冒険で疲れた心をリフレッシュできたらいいなと、思いまして。あとはカードバトルの要素ですね。

アスキーの『ウィザードリィ』のおまけについているモンスターカード。あれをもっと活かせないか?という観点から、おまけのカードゲームの導入に至りました。カードゲームのクリアムービーが好きで、私から特に指示はせず、アート部隊に好きなように作ってもらいました。

酒場のこれらの要素はどれも余計な部分だと思われるかもしれませんが、『ウィザードリィ』特有の世界の肉付けをしたかったのです。ここはちゃんとした国家であり、そこには人々が暮らしています。そんな生きている人の実在感を作ろうという意図がありました。

(ローディングについて)

徳永スーパーファミコンからプレイステーションへの移行は、カセットROMから、CD-ROMへの転換ということでもありました。そのため、「ローディングを極力短くする」部分に力を入れスピーディーな展開を目指しました。

(ムービーの演出について)

徳永3Dの立体迷宮を用意する観点から、ムービーを使って面白い演出ができないかスタッフと話し合いながら調整しました。特にマーフィーズゴーストの出現ムービーがお気に入りでした。今となっては、当時なぜあそこまで拘ったのかちょっと理解できませんが……。

(その他、開発を通しての苦悩)

徳永何度も「開発をやめよう」と考えるポイントがありましたね。言えない事、後悔した事、鬱になりかけた事などたくさんありますが、言わないでおきます。全部自分が悪いのです。他人の悪口は言いたくないので……。

今は金田さん(編集部注:同じく『DIMGUIL』や『外伝』シリーズに関わっていた、金田剛氏のこと)のおかげで、自分の好きなように過去作のリメイクなどを作らせてもらっています。金田さんには本当に感謝しかありません。

最後に

――徳永様の関わる中で、『ウィザードリィ』の今後の展開などございますでしょうか。ちょうど先日、ドリコムによる版権取得や、『ウィザードリィVA(仮)』の発表などIPに動きがありましたね。

徳永10月末のあれこれもあって残念ながら具体的な日付は言えませんが、来年2021年の15周年内に間に合うように『ウィザードリィ外伝 五つの試練』の新版をSteamで出す予定です。

実のところ、『五つの試練』Windows 10対応版、としてお伝えしていたものはもう、5回ほど作り直しておりまして。完成したものの、開発環境の変化などの諸般の事情でもう一度作り直し……ということが何度かあり、ユーザーの皆様を長らくおまたせする結果になってしまいました。現在は2017年にリリースしたiOS版の『戦闘の監獄』のシステムをベースに、様々な面をPC向けに強化したバージョンの『五つの試練』を作成中です。

時代が変わるとハードも変わり、見せ方も変わる。その現実に心を折られながらも開発を続けています。ちなみに新版『五つの試練』は近年のUnityで開発しているので、モバイルの他、コンソールなどその他のハードウェアにも、ゲーム本体部分は移植可能となっています。もちろん、本作の特徴であるシナリオエディタにも力を入れていますよ。新版では、ユーザーの作成した画像データをモンスターとして登場させることも可能になるので、今の内から著作権に気を付けて色々描き込んで準備してお待ちいただきたいと思います。

(C) Wizardry(TM) is a trademark of Drecom Co.,Ltd..

※UPDATE(2020/12/31 15:35):文中の誤字脱字の修正など含め、調整を行いました。コメント欄でのご指摘ありがとうございます。

※UPDATE(2021/1/27 19:00):『ウィザードリィ外伝 五つの試練』Steam版の情報を含む、本文最終セクションを追加し、『ウィザードリィ』のコピーライト表記を追加しました。

《竜神橋わたる》
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