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「VRゲームって今どんな感じなんですか?」TGA2025ノミネートから見るVRゲーム業界の現状をゲーム開発者が解説

TGAから見えるVRゲームの独自の文化と背景について解説。

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「VRゲームって今どんな感じなんですか?」TGA2025ノミネートから見るVRゲーム業界の現状をゲーム開発者が解説
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The Game Awardsのノミネート作品の発表が11月のゲーマー風物詩となって久しいですが、毎度のこと様々なノミネート作をめぐって論争が起こる一方で、とくに注目されない部門があります。それは、VR・AR部門です。現在いちVRゲーム開発者であり、ゲームライターとして10年にわたりVRゲームをプレイしつづけている筆者の視点から、TGAノミネート作から見えるVRゲーム業界の情報をお届けいたします。

そもそも、The Game AwardsのVR部門が始まったのは2016年からでした。ちょうど初代PS VRやOculus Rift、HTC VIVEといった一般向けVRデバイス第一世代が発売され、VR元年とよく呼ばれた年です。2016年から2024年にかけてのVR/AR部門受賞作は以下の通りです。

  • 2016年:『Rez Infinite』

  • 2017年:『バイオハザード7 レジデント イービル』

  • 2018年:『ASTRO BOT: RESCUE MISSION』

  • 2019年:『Beat Saber』

  • 2020年:『Half-Life: Alyx』

  • 2021年:『バイオハザード4』※

  • 2022年:『Moss: Book II』

  • 2023年:『バイオハザード ヴィレッジ』

  • 2024年:『Batman: Arkham Shadow』

※2021年の『バイオ4』はMeta傘下スタジオが作ったオリジナル作準拠のOculus Quest版であり、カプコン製の『RE:4』PS VR2版ではない。Quest版も本家に劣らぬ傑作のひとつ。

2016年から2018年までの受賞作は「これまでのゲームパッドで、これまでの操作性」の延長線上のVRゲームが中心でしたが、2019年からVR専用のモーションコントローラで操作するゲームが受賞するようになりました(こんな書き方をしましたが、筆者は『ASTRO BOT: RESCUE MISSION』が大好きです)。それに、『バイオハザード』とVRの縁の深さがうかがい知れます。

つぎに、The Game Awards 2025のノミネートは以下の5作です。

今回のコラムでは筆者未プレイの『The Midnight Walk』を除いた4本についてご紹介します。

『Alien Rogue Incursion』

『Alien Rogue Incursion』は、SFホラーを代表する映画「エイリアン」を原作とするVRホラーゲームです。本作を開発、販売するSurviosはVRで著名IPゲームを長年に作り続けてきた最古参VRゲームスタジオのひとつであり、本作もビジュアルにおける原作再現やVRで世界に入り込む没入感は一級品です。見えないところからガタガタと音が聞こえてきて「すぐそこにエイリアンがいるかもしれない」「見つかりたくない」という恐怖を味わえます。

脱出、ステルス、パズルを繰り返して、漂着した基地からの脱出を目指すというゲームプレイは、『エイリアン アイソレーション』をもっとマイルド・カジュアルにしたような感触です。

一方、SurviosスタジオのVRゲームはビジュアルこそ強いもののゲームデザインがやや薄味な傾向にあり、本作も例外ではありませんでした。本作のエイリアンはその高品質なビジュアルとは裏腹に挙動はワンパターンな傾向にあり、一本道なアトラクション感が悪い意味で強く出てしまっています。また、本作は事実上の2分割作品であるにも関わらず、発売前にとくに告知がなされなかったことがプレイヤーの間で論争となりました。本作発売から11か月後に、バランスを調整してVRデバイスなしでプレイできるようになった非VR版『Alien: Rogue Incursion Evolved Edition』がリリースされています。

『Arken Age』

『Arken Age』はVitruviusVRが開発、販売しているVRアクションアドベンチャーです。科学と自然が融合した廃墟のような世界で、主人公は背負った運命のため世界を冒険し、敵を相手に剣と銃で戦い、崖をクライミングし、廃墟を探索します。本作が評価されているのは特にバトルシステムがVRゲームのなかでもかなりレベルが高いという点があり、そしてそれ以上にインディー規模のスタジオがアクションアドベンチャーという大作ジャンルに挑んだ野心と高品質を実現したことを評価しているはずです。

VRゲームは市場規模の小ささや開発の難しさのためコンパクトさやミニマムさに焦点をあてがちで、小規模な開発者が生半可な体力と技術力で大作志向に挑んではクオリティの低さやいたらなさに埋もれていったVRゲームも数知れず。一方、資本力があるスタジオはともかく、資本も人数もないけれど執念と技術力はあるスタジオや個人が採算度外視で作りこみつづけ、市場規模のわりにどえらいクオリティとスケールのVRゲームが出てくることもあります(『Vertigo 2』は明らかにこれです)。本作もそんな一本なのです。

『Ghost Town』

『Ghost Town』はFireproof Gamesが開発、販売する脱出ゲーム風パズルアドベンチャーです。Fireproof Gamesは1000万本以上を売り上げた脱出ゲームシリーズ『The Room』を制作しており、2020年には同シリーズをVRにした『The Room VR: A Dark Matter』をリリースしています。『Ghost Town』は『The Room VR』のちょうどいい難易度の謎解きとインタラクションの楽しさ、空間的な演出をさらにブラッシュアップさせています。

1980年代のロンドンを舞台にエクソシストとして働く姉弟の別離と陰謀を題材としつつも、当時の一面緑のブラウン管のコンピュータも用いるサイバーエクソシスト的な要素も含まれる独特の雰囲気を醸し出しています。筆者としては終盤のストーリーの展開には気になるところがありましたが、ゲームプレイは急かされることなく落ち着いて誰でもクリアできるように作られているので、VRに興味はあるけどアクションは苦手という方にオススメです。

『デッドプール VR』

『デッドプール VR』はMeta傘下のゲームスタジオTwisted Pixel Studiosが開発した、Meta Quest 3専用のVRアクションゲームです。まさかのゲーム発売前にTGAノミネートが発表されたことで筆者はたいそう驚いたのですが(TGAの公式FAQによるとノミネート作品の発表から一週間以内の発売であればノミネート対象らしい)、プレイしてみたらそんな疑問がふっとぶ強烈なVRゲームです。

実はアメコミはVRゲームと相性がよく、VR黎明期から今にいたるまでアメコミVRゲームがいくつもリリースされています。誰しも憧れのヒーローになりたいという願望はもちろん、著名なアメコミヒーローのいくつかは身体的に秀でた特徴やギミックがあり、これをVRのモーションコントロールを通して「身体的な動きとゲームプレイを合わせてヒーローになりきる」という夢を実現しやすいのです。

スパイダーマンに影響を受けたVRのワイヤーアクションは定期的に登場し、2020年には『マーベルアイアンマン VR』がリリース、2024年の『バットマン:アーカム・シャドウ』はRocksteady製『アーカム』シリーズに並ぶ傑作VRアクションアドベンチャーでした(それもそのはず『アーカム』シリーズの元開発者が関わっています)。

デッドプールは身体的な特徴としては「不死身」という点がありますが、本作における特徴的な要素は身体性というよりもメタフィクションのユーモアをVRでやってのけるという点でしょうか(そもそもデッドプール主人公のビデオゲームが本作を含めて2本しかありません)。また、カットシーンでよく生首だけになります。例えば、冒頭のシーンではプロペラに巻き込まれたデッドプールの首と胴体がおさらばし、敵兵士に胴体が回収されています。プレイヤーにカットシーンを見せたいけど、プレイヤーをカットシーンではない場所に移動させない都合のための工夫ですね。

本作開発元の前作『Path of the Warrior』がベルトスクロールアクション風(正確には『ベア・ナックル』風)の「いろんな武器で敵キャラをタコなぐり」というゲームシステムがあり、これをもとにデッドプールというキャラクターと融合させて超リッチに発展させています。とにかく銃で人間を撃って刀で人間を斬りまくるラン&ガンで、グロテスクさとコミカルさの掛け合わせた爽快さが味わえます。一方、ゲームプレイの繰り返し感やテンポの悪さは否めませんが、そういったゲームの悪い点でさえデッドプールがすべてギャグにしてしまう他のIPでは見られない作り方も独特です(強いて言えば、『ボーダーランズ』のノリに近いでしょうか。)

批評で拾い切れないゲームジャンルの現場より

正直なところ、The Game Awardsに投票するメディアやユーザーのすべてがVRゲームをプレイしているかといえば、VRデバイスの普及率からいってそんなことはないはずです。とはいえ投票者も空欄で投票するわけにもいかないですから、そうなるとタイトル名やIPを知ってるゲームに投票してしまうのもムリはありません(あるいは、なにかしらショーケースの配信で見かけたとか)。版権が元になっているからといって価値が損なわれるなんてことはありませんが、オリジナルIPでノミネート入りした2作は知名度の壁を越えた批評的価値が高いVRゲームだと考えてしかるべきでしょう。

じゃあVRゲームやVRに批評的、商業的価値がないのかというと、そこまで極端な話でもありません。日本ではメタバースばかり取り上げられがちですが、VRのゲームにもロングセラーとかヒット作、新たなるジャンルの開拓といったものはれっきとして存在するからです。とはいえ、自分の視界に入らないものはやはり存在しないのと同じですから、こうして筆者がいちVRゲームライターとしてVRの話題をみなさんにお届けしています。

次回の記事では、The Game AwardsにノミネートされないVRゲームたちとその魅力についてご紹介させていただきます。こうご期待!


ライター:渋谷宣亮,編集:みお




ライター/ゲーム業界分析とVRが得意です。 渋谷宣亮

ゲーム開発者兼ゲームライター。VR元年こと2016年にゲームライターをはじめ、それからずっとVRゲームをプレイしつづけている。時折作っている。

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編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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