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『Hellblade: Seuna‘s Sacrifice』内なる囁き声に耳を澄ませ―立体音響のリスニング【ゲームで英語漬け#82】

「サウィン」の夜には死者の魂が現世に戻ってくると言います。

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『Hellblade: Seuna‘s Sacrifice』内なる囁き声に耳を澄ませ―立体音響のリスニング【ゲームで英語漬け#82】
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本日10月31日は皆さんお待ちかねのハロウィン本番ですね。ほかにもイギリスのガイ・フォークスデイやメキシコの死者の日と、今週は有名なお祭りが重なって行われます。ハロウィンがケルト文化の「サウィン」に由来するというのはもう耳タコでしょうが、夏の豊作と新年の到来を祝うと同時に、死者の魂や異界の魑魅魍魎が現世に溢れ出る恐ろしい夜でした。災いを防ぐために、生け贄を捧げて炎で燃やすこともありました。子供を仮装させるのも「チェンジリング」、いわゆる神隠しを防ぐために行うものです。

今回取り上げる『Hellblade:Sauna’s Sacrifice』は、ケルト人の女戦士Saunaの物語。死んだ恋人を救い出すために、北欧神話が織りなす恐ろしい世界に踏み入れます。ハロウィンの起源は本来死の世界を間近に感じるもの。現代は仮装パーティーイベントに性質を変えましたが、ゾンビの仮装に飽き飽きしているなら、悪霊が闊歩する冥界の冒険はいかがですか?

本作はヘッドホンによる疑似サラウンド「バイノーラルサウンド」が取り入れられており、Seunaを苦しめる幻聴をプレイヤーも体験できるようになっています。多重的な囁き声が四方八方から聞こえてきて、流行のASMRの効果もあります。この幻聴にも字幕は表示されますが、表記されるのは一部のみで、聞こえてくるもの全体を理解するには自力で聞き取るしかありません。ギミックのヒントにも直結するため、流してしまうのはとてももったいない部分です。

例えば、字幕が表示されないこの場面では、

You have to take a closer look to see!

Why isn’t she focusing?

She needs to focus now!

She needs to use her eyes...

数秒で複数の声が一斉に話しかけてきます。ここは「集中」の操作を初めて使う場面なので、視覚的なヒントはあるものの、「声」に従うことが重要だと示しているところです。字幕が下に出る「語り部」の声が一番目立ちますが、ゲームプレイの進行にはそれ以外の声が大きな役割を担っているのです。

バイノーラル音響をこのように使った作品は珍しいので、リスニング環境としてはかなり特殊です。声は全方位から突発的にささやいてきますが、これが聴覚を警戒モードにしてくれるので、普段よりも聴覚へ意識が向きやすくなります。ささやく声は重ならないようにしているので、映像や字幕に頼らず耳からの情報に集中する練習ができるでしょう。

表示されている字幕以外の文量がどのくらいになるのか、ヘルヘイムに到着したこの場面で見てみましょう。字幕上ではこのように表示されています。

But his soul is in Helheim. His soul still lives. She needs to lay him to rest. She’ll never save him. She can’t let him rot here. She’ll need to try.

これに、字幕で表示されていない声を足すとこうなります。

But his soul is in Helheim.

His soul still lives.

She wants to rescue him.

She needs to save his soul.

She wants his soul to be at peace.

She needs to lay him to rest.

He is dead.

He is already dead.

She can’t save him.

There’s nothing she can do.

このようにほぼ倍近くの声が実際には再生されています。不安を煽ったり、忠告したり、嘲ったり、最初のうちは鬱陶しく思えますが、危険に満ちたヘルヘイムの探険を見守ってくれる存在でもあります。先に進めなくなったときには、声に耳を澄ませば突破口が見いだせるかもしれません。

「語り部」とは別に、Seunaを北欧神話の世界に導くのが「Druth」という男の幻影です。ケルト側が「Northman」と呼ぶヴァイキングからDruthが聞いた北欧神話を、Seunaは彼の話を通じて知ります。Seunaが見る幻覚はDruthの話が大きく影響を与えています。

You must leave the Isles of Orkney across the Eastern sea and find a road that leads North and down through deep dark valleys.

After 9 nights of riding you will follow and great river and find a bridge covered in gold, the path to Helheim goes from there.

オークニーの島々から東の海を渡り、北に続く路を見つけた後は、暗く深い谷を下るのだ。
9つの夜の船旅の後は、大河を辿ると黄金に輝く橋が見つかるであろう。そこがヘルヘイムに至る道である。

オークニー諸島はイギリスの北端にある諸島で、指示通りそこから東へ向かうとスカンジナビア半島にたどり着きます。本編が始まる前にもかなり過酷な旅路を経ていることが分かりますね。

最近はUIを廃した没入型の作品が増えていることもあり、このタイプではプレイヤーに要求されるリスニング力も総じて高くなります。VRでは字幕を表示すること自体が視野を妨げるので、 耳を鍛えることが今後より重要になるでしょう。

練習問題:次の台詞を訳しなさい。

The fire-giants dwell in Muspellsheim, Niflheim is the world of ice and darkness.

Only the dead dwell in Helheim - and that is where you must travel.

Druthによる北欧神話世界の説明です。ゲムスパ読者には常識レベルでしょうが、原文に沿って訳しましょう。

《Skollfang》

好奇心と探究心 Skollfang

ゲームの世界をもっと好きになる「おいしい一粒」をお届けします。

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