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桃太郎を倒すための試練とは―鬼が主人公のストーリーテリングアクション『ONI - 空と風の哀歌』プレイレポ

印象的なビジュアルと設定、それをいかしたアクションやストーリーがかなり好印象なタイトルを紹介していきます。

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桃太郎を倒すための試練とは―鬼が主人公のストーリーテリングアクション『ONI - 空と風の哀歌』プレイレポ
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KENEI DESIGNが開発し、集英社および集英社ゲームズとの共同事業として、クラウディッドレパードエンタテインメントが発売を手掛けるゲーム『ONI - 空と風の哀歌』(以下『ONI』)は、Steam/PS5/PS4/ニンテンドースイッチ向けに3月9日発売予定です。

これは童話の桃太郎を題材にした作品で、主人公は鬼ヶ島出身の小鬼の空太。仲間たちを討伐した桃太郎を倒すために、鬼世島というところで試練を受けて強くなる……という若干重い印象のストーリーです。

集英社のマンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」での漫画連載も行われている本作ですが、今回は一足早くプレイする機会に恵まれましたのでその模様をお届けします!

打倒・桃太郎

桃太郎ほど、様々な解釈ができる童話はないかもしれません。

「桃太郎は侵略者で、鬼はただ平和に暮らしていただけ」という解釈は昔からあります。芥川龍之介は、桃太郎とその一行をまさに恐怖の侵略者と解釈しました。その内容はあまりに生々しいためこの記事では書けませんが、青空文庫に掲載されているので一度目を通すことをお勧めします。

そして今回プレイする『ONI』も、鬼ヶ島での戦いでたったひとり生き残った鬼が主人公として登場します。小鬼の空太をTPP視点で操作し、鬼世島で「強くなるための試練」に臨むという内容になっています。

フィールド上に登場する敵は、空太と同じ鬼……というよりも、鬼の魂。彼らは鬼ヶ島で桃太郎に敗れ去った鬼の亡霊です。

戦闘システムはやや特殊で、敵を倒したらその位置に「心玉」というものが現れます。これは敵の魂というべきもので、心玉を破壊して初めて敵が完全消滅します。なお、敵を倒すための攻撃ボタンと心玉を破壊するための攻撃ボタンは、別れています。

こうして文章で書けば少しややこしくなってしまいますが、実際にプレイしてみるとリズミカルに操作できます。特に心玉は連続破壊が可能で(これがこのゲームのコンボになります)、操作に慣れさえすれば文字通りのサクサクプレイでゲームを進めることも。何となく、音ゲーに通じる操作感でしょうか?

PC版プレイには外付けコントローラー推奨

空太も敵も、基本的には「ちょこちょこ歩き」です。彼らの体型からして、足の長い人間のように颯爽と走ることはできません。

従って、戦闘の最初は「ちょこちょこ歩き」VS「ちょこちょこ歩き」という感じになり(俊敏に動く敵もいますが)、比較的ゆっくりとしたファーストコンタクトになります。ところが、空太の心玉破壊攻撃はまさに電撃のようなスピード感で、このおかげでテンポがサクサクしています。空太の回避行動も、案外俊敏だぞ!

また、空太の相棒の風丸も画面狭しの大活躍を果たしてくれます。

風丸は戦闘中に別個に操作が可能で、敵の心玉を抜き取れます。彼はこのゲームのファンネル役です。フィールド上に彷徨う鬼の魂を探し、それを導く役目も果たします(これは空太の最大HPを増やす作業でもあります)。

今回、筆者はこのゲームをPCでプレイしました。いざとなればキーボードだけでもできますが、戦闘中の風丸の操作を考えると、絶対にジョイスティック付きの外付けコントローラーを使ったほうがいい! それさえ用意していれば、操作に難儀することはあまりない……というのが筆者の感想です。

妥協のない製品

それにしても、このゲームは全体的にしんみりとしています。「暗い」と表現するのはまた違いますが、お世辞にも「明るい」とは言えない雰囲気が漂っています。

ただ、それは明け方の薄暗さのような「ほのかに希望を臨める静けさ」でもあります。

キャラクターデザインは可愛らしいタッチで、残酷描写は一切ありません。それでいながら、アクションの時の動作や挙動には粗が見当たらず、非常に丁寧な作りであることがすぐに分かります。

複数のメディアでガジェットレビュー記事も書く筆者は、「実際に取り寄せてみたら雑な作りの製品」に何度も巡り合っています。写真ではなかなかいい感じだったのに、実物は安っぽいプラスチック素材が使われていたり、テーブルの角にぶつけただけでバラバラになりそうなほど貧弱だったり……。

ゲームにもそのようなことが多々あって、前評判はよかったのにいざ配信が始まったら「何じゃこりゃ!?」というレベルの作品だった……なんてことも。しかし『ONI』に関して言えば、じっくり時間をかけて仕上げていったのだろうということが窺えます。画面の端に至るまで、一切の妥協を許していない感じです。

これだけでも一製品(ゲームも工業製品というのが筆者の考え方です)として大きな付加価値を有していることが分かりますが、さらに『ONI』はストーリーテリング作品としての値うちも含んでいます。

新しい「漫画」の形

上述の集英社「少年ジャンプ+」で配信されている漫画を読めば、この作品の桃太郎は正義の味方でもなければ、芥川版のような「残酷非道な殺戮者」でもないようです。

この先は、ぜひ漫画とゲーム両方で確認していただければと思います。少なくともこの作品は「誰が正義で誰が悪役」というような単純なものではないらしく、それ故に先の展開を予測しづらい物語です。

ゲームでここまで繊細なシナリオ表現ができるのか……!

集英社は小学館が筆頭株主の「一ツ橋グループ」に属する企業で、日本人なら誰しもが知っている娯楽誌出版社。しかし近年は母体の小学館と共に「メディア革命」の波に吞まれています。一言で言えば「漫画雑誌が以前より売れなくなっている時代」に突入してしまった、ということです。そのあたり、フリーランスのライターとして一ツ橋のメディアに関わっている筆者も気配として感じています。

その中で、どのようにして漫画を配信していくのか。いや、そもそも漫画は「漫画」のままであるべきなのか、或いは全く別の形態に生まれ変わるのか。そのような模索の最中に『ONI』があるとすれば、この作品は今後の娯楽コンテンツの方向性を決定づける記念碑になるかもしれません。

『ONI - 空と風の哀歌』は、Steam/PS5/PS4/ニンテンドースイッチ向けに3月9日発売予定です。

※ UPDATE(2023/03/07 08:35):一部表記を修正しました。


《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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