【プレイレポート】姫殺しADV『Slay the Princess』の世界はシンプルかつ複雑怪奇。主人公は何を理解し、何を信じて、誰のために行動を選択するのか?【特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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【プレイレポート】姫殺しADV『Slay the Princess』の世界はシンプルかつ複雑怪奇。主人公は何を理解し、何を信じて、誰のために行動を選択するのか?【特集】

あなたは「ナレーター」に導かれ、森の小屋にいる「姫」を殺しに行きます。

連載・特集 プレイレポート
【プレイレポート】姫殺しADV『Slay the Princess』の世界はシンプルかつ複雑怪奇。主人公は何を理解し、何を信じて、誰のために行動を選択するのか?【特集】
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!注意! 本記事は『Slay the Princess』のネタバレ要素を含みます。
Steamストアページに記載されている以上の情報を含むため、閲覧の際にご留意ください。

Black Tabby Gamesは、アドベンチャーゲーム『Slay the Princess』をPC(Steam)向けに2023年10月23日リリースしました。

本作は、高評価アドベンチャー『Scarlet Hollow』の開発による最新作です。物語の舞台は、どこかの森の中にある小さな小屋の中。プレイヤーは、その小屋の地下にいるという「姫」を殺さなければなりません。なぜなら、そうしなければ世界が滅んでしまうというのです。

「姫」は自身が生きるために、あらゆる手段を講じてプレイヤーに干渉してきます。さらに、プレイヤーに“「姫」を殺せ”と語りかけてくる「ナレーター」などの存在も重要です。さまざまなルートやストーリーを体験し、何度も殺されながらもプレイヤーは目的を達成していかなければならないのです。

本稿では『Slay the Princess』のプレイレポートをお届けしていきます。

主人公はいかにして「姫」を殺すのか?

本作の物語はチャプター制で、主人公が「姫」を殺すために森の小屋に向かうシーンから始まります。ゲーム内の「ナレーター」は主人公を導くポジションであると同時に、主人公の質問に答えてくれる存在でもあります。

まずは物語の目的を尋ねたりしながら、主人公には“小屋に向かう”“帰る”という選択肢が与えられます。ちなみに“小屋に向かう”だけでも「ナレーター」の言うことに従って意気揚々と向かったり、黙って向かったりと、いくつかのパターンが選択可能です。

筆者は天邪鬼な性格なので、さっそく“帰る”を選択しました。驚いた「ナレーター」に説得され、それでも頑固に帰ろうとしたのですが、どうやっても奇妙なことに目的の小屋へと導かれてしまいます。観念して小屋に入ると、地下の部屋に向かう前にナイフが置かれている机があります。これ幸いと拾い、さっそく地下へと向かいます。

しかし、そこに広がっていたのは無限に続く回廊のような地下階段。なんとか正しい道を探しながら階段を降り、ようやく「姫」の元へたどり着きました。主人公が「姫」と会話していくと、突如として姫が何人にも分裂し、そのうちひとつにまとまろうと異形の姿に変貌していきます。

恐怖のあまり手にしたナイフを「姫」に突き立てる主人公ですが、やがてさらなる奇妙な出来事に巻き込まれ、気がつけば森の小屋に向かう最初のシーンに。進んでいたはずのチャプターも1へと戻されます。こうして、主人公の『Slay the Princess』の物語が幕を開けていくのです。

あらゆる選択に可能性がある

今回で最初に体験したのは、あくまで筆者の天邪鬼における優柔不断さが招いた結末のひとつつ。オーソドックスに小屋に向かったり、あえて「ナレーター」の言うことを信じずに「姫」へのアプローチを変えてみたりと、そこにはさまざまなプレイスタイルが用意されています。

本作は、ちょっとした会話(それが「姫」相手でも「ナレーター」相手でも、さらに「それ以外」相手だとしても)や行動のひとつひとつに大きな意味があり、物語の分岐へと繋がります。その分岐の数だけ、いつもと違う小屋が登場したり、その中にいる「姫」の様子や見た目も異なっていくのです。

何より驚くのは、その自由度の高さ。ストーリーはあくまで【姫を殺す(あるいは別の行動を取る)】という一点に絞った内容なのですが、選択肢は無数にあり、同じような状況でもまったく結末が変わることが珍しくありません。ちなみに、気がつけば「ナレーター」の他にも、気がつけば「Contrarian(逆張り男)」など、知らない声が増えていることもありますよ。

幸いゲーム内にはクイックセーブ/クイックロードや、一度見たテキストのスキップといった機能も搭載。また、ひとつの物語の区切りではSteam実績もアンロックされるため、自分が今どのようなルートを辿ったのか、このルートはもうプレイしたのか、そういった部分はわかりやすくなっています。

ただし、前述の通り同じような状況でもその中の選択によって大きく物語が変わっていきます。「姫」を殺すことは一筋縄では行きません。ストーリーを進めていくことで、彼女のことが理解できてくるとそれはより顕著になっていきます。

複雑怪奇かつ「選択がダイレクトに伝わる」物語

あまりにも多くの選択肢が用意されている本作ですが、プレイしてみるとストーリーの複雑怪奇さはあるものの、主人公(プレイヤー)の選択に対する世界のリアクションはかなり素直な部分が多めです。

例えば「姫」を殺すのではなく会話しようとするとき、最初に彼女にどう挨拶したのかで大きく相手の警戒度が変わったりします。「こんにちは、あなたを殺しに来ました!!!」と会いに行けば怖がられるのは当然ですね。しかし、フレンドリーならその態度はどうなるでしょう。

しかし、ジョークが上手かったり、素直であれば警戒されてもどうにかなるのかもしれません。上手く行けば誰よりも「姫」に信用され、進むべき新しい道や可能性が拓けるかも。その上でやっぱり殺され、気がつけば小屋への道で目覚めるのかもしれませんね。

『Slay the Princess』の物語は理不尽ですし、驚くべきことばかりですし、なによりSteamストアページ内でもほのめかされているように「とある存在」自体を信用していいかわからない作品です。しかし、その中で主人公の行動だけは、間違いなくプレイヤーにとって信頼に足る“誠実”そのものなのです。

何度も何度も死を体験し、やがて本当に目的が達成できる道を探し出すのが本作の醍醐味。「姫」の、「ナレーター」の、またまた「別のなにか」の声に耳を傾け、自身で判断し、あなたは“姫を殺すこと”ができるのでしょうか?


ここまで紹介してきた『Slay the Princess』。“世界を救うために姫を殺す”というシンプルな目的のストーリーを実に複雑怪奇に、そして面白く作り上げています。プレイヤーが行える行動はとても幅広く、そのレスポンスもさまざまなパターンが用意され、色々なアプローチを試しているだけでも楽しめます。基本的にモノクロームな世界なのですが、ときに登場する“赤”などの効果的な色の使い方も印象的です。

殺す対象でありヒロイン(?)でもある「姫」や物語を導く「ナレーター」などの存在も、プレイしていくことで理解が深まっていきます。『The Stanley Parable』シリーズのような、導きとプレイヤー自身、どちらの行動を信じるか、信念はどうあるか、そういった作品が好きな人であれば、必ず満足できる作品ではないかと思います。

なお、現時点で本作は英語のみのプレイが可能ですが、筆者の拙い英語力でも単語を拾い、分からない表現は翻訳しながらでもしっかりと正解を導いてエンディングまでたどり着くことはできました。なお、Steamストアページでは本作の追加言語に関するアンケートのリンクも設置されています。



いかにして「姫」を殺すかという目的までの模索と驚きの展開、そしてやがて訪れる無数の結末。すべてがプレイヤーに委ねられている、複雑でシンプルな傑作ADVスパ!


タイトル:Slay the Princess
対応機種:PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:PC(Steam)
発売日:2023年10月23日
記事執筆時の著者プレイ時間:5時間
価格:2,000円



《Mr.Katoh》

酒と雑学をこよなく愛するゲーマー Mr.Katoh

サイドクエストに手を染めて本編がなかなか進まない系。ゲーマー幼少時から親の蔵書の影響でオカルト・都市伝説系に強い興味を持つほか、大学で民俗学を学ぶ。ライター活動以前にはリカーショップ店長経験があり、酒にも詳しい。好きなゲームジャンルはサバイバル、経営シミュレーション、育成シミュレーション、野球ゲームなど。日々のニュース記事だけでなく、ゲームのレビューや趣味や経歴を活かした特集記事なども掲載中。

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