そういえば『ラビィとナビィ』シリーズって子供のころ遊んでたっけ……? 過去30年の擬似記憶を植え付けられるかのような展示の試みに心動かされた【デジゲー博2023】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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そういえば『ラビィとナビィ』シリーズって子供のころ遊んでたっけ……? 過去30年の擬似記憶を植え付けられるかのような展示の試みに心動かされた【デジゲー博2023】

2021年にSwitchでリリースされた『ラビィとナビィの大冒険』。それは実は90年代からファミコンやゲームボーイで続くシリーズだった……と錯覚してしまうような展示がデジゲー博で行われていました。

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そういえば『ラビィとナビィ』シリーズって子供のころ遊んでたっけ……? 過去30年の擬似記憶を植え付けられるかのような展示の試みに心動かされた【デジゲー博2023】
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オレ、こんなゲームのシリーズを子供のころにファミコンで遊んだことがあったかもしれない……。マリオやカービィにばかり目を向けていて、このシリーズを知らなかっただけかもしれない……。

古くからいままで膨大なゲームがリリースされ、そして大半のゲームが忘れ去られ続けています。いま30代の筆者ですが、幼いころに触れたファミコンやメガドライブといったハードのゲームをすべて遊べているわけではもちろんありません。だから秋葉原で有名な中古ソフトショップであるスーパーポテトに寄ったときだとか、「ああ、あの頃はこんなソフトもあったんだな」と初めて知るタイトルを見つけることは多いのです。

そんなかつてのゲームの知識が抜けた部分を突くかのようなアプローチを、自主制作ゲームに見事な形で行われると「昔こんなゲームあったっけ……あったかもしれない……」という錯覚が引き起こされるのも決して不思議ではないでしょう。

何がいいたいかと言えば、11月12日に行われた「デジゲー博2023」のなかで、そんな最大の錯覚を筆者に起こしたのが「ラビィとナビィ」シリーズです。ほら、このタイトル名からして「なんかそういうのあったかもしれない」感がありませんか?

こういうファミコンのソフトに出会った気もする……。

なんだろう、だんだん思い出してきたぞ。これコミックボンボンとかの広告ページで見た覚えがあるぞ。

わかった! 思い出した。『ラビィとナビィ』……それは90年代初頭にリリースされた、ファミコンのアクションゲームでした。プレイヤーは飛び道具を使うウサギ・ラビィを操作し、敵を倒しながら、フィールド上のニンジンをすべて集めることで次のステージへ進んでゆくゲームデザインとなっています。極めてシンプルな楽しさがあるデザインと言えるでしょう。

やがて「ラビィとナビィ」シリーズはゲームボーイにも手を広げ、あのファミコンの楽しさを携帯機でも実現。ファミコンでは1画面に収まっていたニンジン探しも、ゲームボーイでは4画面で表現され、広いフィールドでの探索を可能としてゆきました。

「ラビィとナビィ」は日本国内だけではなく、北米でもNintendo Entertainment System(NES)にてリリース。RPGやアドベンチャーと違い、言語に依存しないゲームデザインによって国籍の壁を乗り越えてゆく展開も見せていきました。

他にもファミコンのディスクシステム版、そして90年代半ばにはスーパーファミコン版とシリーズは展開していきました。が、やがて次世代機の時代が到来。ビデオゲームは2Dから3Dへ大きく進歩するのに伴い、かつてファミコンやメガドライブなどで活躍していたシリーズも方向転換を余儀なくされます。プレイステーションやセガサターン、ニンテンドウ64の時代へ移行するなかで、いったいどれだけの2Dゲームがシリーズの宿命を終えていったことでしょうか。「ラビィとナビィ」シリーズもその例に漏れませんでした。

それからおよそ30年近くの年月が経ち、なんと「ラビィとナビィ」シリーズがSwitchで復活。しかも、あの90年代半ばの次世代機が魅力としていた、3Dアクションの時代に対応した形で登場したのです。そんなことがあるとは思いませんでしたよね。なにせサンソフトの『へべれけ』シリーズがいま『へべれけ2』として30年近い時を経て発売される時代ですからね。90年代に忘れさられたかもしれないゲームが、まさかの復活を遂げる姿をデジゲー博で確認できるとは思いませんでしたよ。

僕の後ろで泣いてる人がいましたからね。40代くらいの男性だったかな……こんなことを言ってましたよ。「ラビィが……(号泣)、ラヴィがいま蘇ったなんて信じられない(号泣)。俺……蘇ってほしいってメーカーに当時ハガキ1000枚送ったから(鼻をすすり上げながら)。ガキのころテレビ番組『進め!電波少年』で雑誌の懸賞だけで生活する企画とか、『ウリナリ!』のポケットビスケッツ100万人署名とかあったから影響を受けて『ハガキを送ってさえいればもしもが起こってシリーズが復活したりするんじゃないかって思ってたから(鼻をすすり上げながら)。でも送っても送ってもなにも起こらなかった。世界は変わらなかった。……もうワギャンとか『スーパーチャイニーズ』のジャックとリュウとか『おでかけレスターれれれのれ』のレスターとか2度と会えないのがわかってるから、ラヴィの新作とももう会えないと思ってたから、よかった(号泣)」

擬似記憶を思い出してしまうことを楽しもう。そうしよう。

以上はすべてファミコンバージョンやゲームボーイバージョンの展示を目にした筆者が生み出した「ラビィとナビィ」シリーズの擬似記憶による歴史です。おい、ウソをレポートしてどうするんだって? 違います。そこそこの年代のゲーマーならこういう歴史的な経緯まで絶対に錯覚してしまうほど、完成度の高い展示だったんですよ。

ファミコンやゲームボーイで作られた本シリーズは、2021年にSwitchでリリースされた『ラビィとナビィの大冒険』を別の展開で開発したものであり、時系列でいえばさっきの擬似記憶でいえばほぼ逆順に作られたような流れのようです。

そんなことより、もっとも驚かされるのは「ラビィとナビィ」シリーズのクリエイターでしょう。本シリーズのクリエイターは藤澤秀彦さん。なんと現役の大学生です。シリーズの始まりとなる『ラビィとナビィの大冒険』をなんと高校生のころに開発しており、その後、明治大学へ進学し、学業とともにビデオゲーム開発を続けるなかで、今回のファミコン版やゲームボーイ版を作っていった模様です。

しかし待てよ? ということは、いわゆるZ世代の気鋭のクリエイターが30代~40代くらいのゲーマーに擬似記憶を植え付けるようなことをしているって構図になるのか? 若い世代が中年世代に対して違う記憶を植え付けている? 僕にはもうわけがわからないよ。ともかく失われた世代系ゲーマーが存在しない記憶を思い出すかのような体験ができる「ラビィとナビィ」シリーズ。次の展示は、12月3日の同人ゲームイベント「レトロクリエイターズ」にて行うことをX公式アカウントにてポストしています。「オレ、こんなゲームのシリーズを子供のころにファミコンで遊んだことがあったかもしれない……」そんな擬似記憶を植え付けられる貴重な機会となるでしょう。

あともちろん筆者の後ろにいた「ラビィとナビィ」復活で泣いてた人も擬似記憶で存在いたしません。


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《葛西 祝》

ジャンル複合ライティング 葛西 祝

ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代美術や格闘技などなどを横断したテキストをさまざまなメディアで企画・執筆。Game*SparkやInsideでは、シリアスなインタビューからIQを捨てたようなバカ企画まで横断した記事を制作している。

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