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【eスポーツの裏側】日本eスポーツを黎明期から支えてきた男が語るこれからーJeSU理事/VARREL鈴木文雄氏インタビュー

日本eスポーツ連合(JeSU)で理事を務め、eスポーツ事業を展開するVARRELの代表取締役社長でもある鈴木文雄氏にインタビューを実施。「LJL」を立ち上げるなど、日本のeスポーツ黎明期から携わる鈴木氏から見た日本のeスポーツシーンの変化やJeSUが開催する「日本eスポーツ…

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【e-Sportsの裏側】日本eスポーツを黎明期から支えてきた男が語るこれからーJeSU理事/VARREL鈴木文雄氏インタビュー
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eスポーツに携わる「人」にフォーカスを当てて、これからのeスポーツシーンを担うキーパーソンをインタビュー形式で紹介していく【eスポーツの裏側】前回の連載では、「Shadowverse University League」学生実行委員会で活動する大学4年生の渡邊氏と大学3年生の真木氏、また同大会を支援しているGALLERIA(ガレリア)担当者も交えてのインタビューを実施。大学生リーグの運営の裏側や企業の支援の方法、また大学生視点のeスポーツについての環境変化について話を伺いました。

第39回目となる今回は、一般社団法人日本eスポーツ連合(以下、JeSU)で理事を務め、横浜市をホームタウンとしてeスポーツ事業を展開するVARRELの代表取締役社長でもある鈴木文雄氏にインタビューを実施。「League of Legends Japan League」を立ち上げるなど、日本のeスポーツ黎明期から携わる鈴木氏から見た日本のeスポーツシーンの変化やJeSUが開催する「日本eスポーツアワード」の裏側に迫りました。

[インタビュアー:森 元行]


——鈴木様の自己紹介をお願いします。

鈴木 文雄氏(以下、鈴木)2006年から広告代理店のSANKOを経営していて、2011年に新規事業としてeスポーツ事業を立ち上げました。そのきっかけはたくさんあるのですが、アメリカでゲームの1億円プレイヤーが生まれたというニュースや韓国での盛り上がりをテレビで2010年に見て衝撃を受けました。

実際に現地に視察に行ってみると日本とはまるで違って、ゲームがプロスポーツ化されていて、そこにファンもついてスポンサーもついてエンターテイメントとして成り立っているということを知り、一度広告代理店をやっていた立場としてはこの世界を日本に持っていきたいと思って。ただ、当時日本ではeスポーツはほとんど知られていませんでした。

一番最初にやろうと思ったのが韓国におけるPCバン(日本で言うインターネットカフェに近い施設)を日本でテストマーケティング的に作ってみようということで、千葉県市川市のJR市川駅前に「e-sports SQUARE(eスク)」というゲーミングPC25台を置いた小さな施設を作ったのがはじまりです。

はじめは全然お客さんも入らなかったんですけど、現JCG 代表取締役CEOの松本順一さんはじめ、現DetonatioN FocusMe(DFM) CEOの梅崎伸幸さん、アルバイトには現在ゲームキャスターとして活動している岸大河さんと、現在eスポーツで活躍している人が集まってきてくれて、徐々にお店にファンが来るようになりました。

そのタイミングで2012年に『リーグ・オブ・レジェンド(以下『LoL』)』が全世界で流行り始めていて、まだ日本サーバーが無かったころにファンからも「eスクで『LoL』遊べますか?」と聞かれて、遊べますよと。人気があるんだなと思ってオンライン大会を開いてみたら出場者が100人くらい集まって、これはすごいなと感じました。

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『LoL』のプロ大会を作って欲しいという声があり、我々もプロリーグを作るのが一つの目標でもありました。2013年にRiot Gamesさんの本社に行き「日本での『LoL』のリーグ開催権をいただきたい」とお願いしたら「これから日本にも進出する予定があるからぜひ盛り上げてほしい」と言われて、2014年の2月9日に「League of Legends Japan League(以下、LJL)」を開幕しました。

eスクは市川で2年半営業し、2014年には秋葉原へ移転。秋葉原店のオープニングパーティーでは現KADOKAWA 社長の夏野剛さんにモデレーターを務めていただきました。毎週のように『World of Tanks』や『StarCraft』のeスポーツ大会を開催していましたね。そのタイミングでLJLもスタートしました。

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——『LoL』以前はどのようなタイトルを扱っていたのでしょうか。

鈴木『StarCraft』や『FIFA』、いわゆる「洋ゲー」ですね。日本のメーカーも回ったのですが、海外では『鉄拳』とか『ストリートファイター』の人気はあったのですが、こと日本マーケットにおいてはあまりeスポーツに力を入れていなくて海外で流行っている人気のあるeスポーツタイトルを中心に当時は取り扱っていました。

——筆者もLogicoolのイベントで市川のe-sports SQUAREに足を運んだ記憶があります。

鈴木私も当時Logicoolで働いていた(現ウェルプレイド・ライゼスト代表取締役社長)古澤明仁さんとその時に初めてお会いしました。ちょうどゲーミングデバイスの「Gシリーズ」を出していこう、eスポーツに力を入れていこうと社内で意思決定されたらしく、初めてファンミーティングをやりましょうということに。

——現在はどのようなお仕事をしているのでしょうか。

鈴木2016年にLogicoolの古澤さんに代表をお願いし、eスポーツ事業を子会社する形でRIZeSTを立ち上げました。LJLやeスクに関わっていただいた方々と日本プロeスポーツ連盟(JPeF)を作り、2017年、ファミ通の浜村弘一さん(現JeSU理事)にお声がけ頂き、CESAの協力のもと日本eスポーツ連合(JeSU)を2018年に立ち上げました。2020年にSANKOグループをカヤックに譲渡して、ウェルプレイド・ライゼストができました。

その頃、ご縁があって以前から知り合いだったDONUTSの西村啓成代表から「プロゲーミングチームのUnsold Stuff Gaming(USG)を買収してeスポーツ事業に力をいれるから手伝ってほしい」と相談を受けて顧問という立場で関わったり、Riot Gamesもアドバイザーという形で一年間お手伝いしていたのですが、新しくチームを立て直すので代表になって欲しいと言われ、今年の3月からVARRELの代表になったという形です。

——今はJeSUの理事をやりながらVARRELの代表をやられているということですね。第1回「日本eスポーツアワード」をJeSUが主催で開催をすることになった運びを改めて教えていただけますか。

鈴木スポーツでも音楽でも映画でもアワードがあると思うのですが、それがeスポーツにはなくて「eスポーツでも作っていかなければいけないよね」という議論はJeSUの中でありました。なぜJeSUかと言えば、いちeスポーツ企業やチームというよりは、公益団体である一般社団法人として主催するのが望ましいのではと考えていたからです。2022年の東京ゲームショウで構想だけは発表しておりました。

——反響はどうでしたか。

鈴木その時の反響は大きいというほどのものではなかったですが、今年具体的に「2024年1月25日に開催します」と発表をして、そこからファン投票を始めてみると予想通りの反響だったなと。特に中間発表でトッププレイヤーやトップストリーマーの方の顔が見えてきたことで、一気に投票も進んできていると感じています。

——選手やチームからの反響もお聞かせください。

鈴木日本eスポーツアワードを中心となって動かすうえで一番不安だったのが、一番身近な業界の方の反応でした。JeSUの理事会の中で誰を審査委員会にしていくのか、というでいろいろな候補を出させていただきました。

大前提としてeスポーツ業界に長く携わっている方、ゲーム業界全般を見渡せるメディアの方々とか、現場で選手を見ているキャスターの方々が候補に挙がりまして、そこで審査委員会の候補を10名決めさせていただいてお声掛けさせて頂きました。はじめは反対意見もあるのかなと思っていたのですが、比較的みなさん賛同してくれて「遂にこういう取り組みをやるのか」と。

チームや選手の反応については正直分からないです。ほとんどのチームは掲載してもよいですか?と事前にお断りを入れましたが9割は「良いですよ」と。中にはゲームホルダーさんや選手が「是非私に投票してください」と前向きに活動してくださっている場合もあります。

——スポンサーさんもたくさんついていると思いますが、その他の業種からの反応もおうかがいできればと思います。

鈴木初めてのイベントなのでなにも指針がない中で、全く異なる業界からもご協力頂いて非常に感謝しています。企業さんで共通しているのは、社長や代表の方がゲーム・eスポーツ好きというのがあるようです。

——表彰部門の選び方はどのように決めたのでしょうか。

鈴木理事会で大体の方向性を出し、最終的に審査委員会の方で決めさせていただきました。例えば「『VALORANT』部門」で誰々、というのではなくて、日本は海外と違ってeスポーツタイトルと呼ばれているものがすごく多い。ですので、表彰部門はゲームタイトルではなくジャンルで分けました。

15の表彰部門があるので、全てを網羅している人はそうそう居ないわけです。漏れなく意見を出していただけるよう、審査委員会の他に審査員というかたちで、いろいろな業界に携わっている方にに参画いただきました。

——LINEで1人1回投票できるんですよね。

鈴木そうです。ウェブだと不正に投票できてしまうのでLINEを選びました。対象投票者数は1,200人くらいですので、それだけの人が「投票された」ことになります。今実施している投票により、各部門で4~7名ほど候補を選出して、年明けの1月5日に各部門にノミネートされた方をファイナリストとして発表、そこから最優秀賞に誰がふさわしいのかをファン投票。審査員にも投票いただいて、最終的に選考会で決定していきます。

JAPAN eSPORTS AWARDS」(日本eスポーツアワード

——10年前と比べて、今の日本のeスポーツ市場をどう捉えていますか。またどのように変化したと見ていますか。

鈴木良い悪いはさておき、eスポーツを通した新たな文化、新たなビジネスモデルが生まれてきたなと思っています。先日、とある人気eスポーツチームの代表とお話する機会があり、「大会で勝つ」ことを目指すのはどこのチームもそうなのですが、「大会で勝った先に何があるのか?」という話になりました。ビジネス的にもチームを存続させるためにも、「その先」を考えていないチームが多いんじゃないかという話をしまして。

勝った瞬間は風が吹くけど、そこに風車がないと水は汲み取れない。勝って風を吹かせる、プラスでそこに風車を作ってマネタイズするなりビジネスにするなり、新たな文化を生み出すことが必要なんじゃないかという話をして、さすが人気のチームはそこのフィロソフィーが違うなと感じました。よく「eスポーツのエコシステム」と言っていますが、まさにエコシステムがきちっとしている。ビジネスモデルがしっかりしているチームや会社は自分たちなりにエコシステムを作っていますね。

LJLに影響されてeスポーツ業界を目指された方も多いと思うんですが、次にまた『VALORANT』のブームが来て、参入したチームが一気にeスポーツを新たなステージに持って行ってくれたなという気がします。FPS系の人たちが新たなステージを創ったなと。

——きっかけはゲーム配信などでしょうか。

鈴木コロナの影響で在宅時間が増えてインターネットの利用者数が上がって、ゲーム配信の数字が伸びました。そこでゲームを見る面白さを知った人が多いのではないかと考えています。企業さんが社内のコミュニケーションを活性化させるために、ウェビナーやZoomとゲームを上手く融合させた取り組みなどが始まったのも、ひとつeスポーツ・ゲームのやる楽しさ、見る楽しさが広まる大きなきっかけになったんじゃないかと思います。

——社内運動会の代わりにゲーム、というケースは多かったですよね。現在は海外の渡航者も増えてリアルでの大会実施も戻ってきていると思いますが、そこをどう繋ぎとめるかが重要なのではないでしょうか。

鈴木コロナ禍で、配信だけでeスポーツを知ったという人は、何千人何万人と集まって熱狂して大声を出して観戦することに馴染みがないのではないかと思っていて、実は競技シーンよりもストリーマーの方が人気が出ました。改めてコロナ前のように競技シーンが盛り上がりつつあるなかで、コロナ後は競技シーンがもう一度みんなに注目されるきっかけになれば良いなと。私は大会を主催運営する側でしたし、ファンの方が大声で叫んで応援してくれることになによりも幸福を感じるので、そうなってくれたらいいなと思います。

——いままでオンラインで楽しんでいたユーザーがオフラインの会場に行くと、きっと驚くでしょうね。「リアルはこんなに盛り上がるんだ!」と。

鈴木私が一番凄いと感じたのは、2013年の『LoL』のWorld Championshipを現場で観戦してSK Telecom T1が優勝した時ですね。「なにこれ!?」ととても興奮しました。NBAのロサンゼルス・レイカーズの本拠地(現クリプト・ドットコム・アリーナ)におよそ2万人もの観戦者が集まっており、こんなに盛り上がるんだ、と。

——逆に、コロナ禍でカジュアルにゲームやeスポーツに興味を持つ人たちが増えて、その人たちにもっと強くアピールをしていくというのも課題になっていくと思います。

鈴木チーム同士がもっと協力し合って日本の競技シーンのスタンダードやルールを作っていくといいと思います。アワードもそうですが、受賞されるされないに関わらず、自分のチームだけ良しではなく業界全体がどうやったらもっと底上げできるのかを、人気の有無や強い/弱いという尺度とは別に考える場所があっても良いのではないでしょうか。

——タイトルが複数あるというのも、他のスポーツとは違ったところです。

鈴木今回の日本eスポーツアワードでは、『beatmania』をeスポーツタイトルとして扱っているのですが、コミュニティがとても盛り上がって、多くの投票が行われています。あの盛り上がりと、いかに相手に勝つかということに取り込んでいる姿があれば、eスポーツか否かという議論は不要かなと。

盛り上がりを後押しするという観点で言えば、トップ選手のスーパープレイなどを映像で流していきたいと考えています。そうすればシューティングしか知らなかったファン・選手がeモータースポーツやリズムゲームでも競技シーンがあるんだと知る。そういった横の繋がり、お隣さんの魅力を知っていただく良い機会になればといいですね。東京ゲームショウでは様々なゲームが見られますけど、eスポーツでそういう舞台は多くはないので新しく作っていきたいです。

——野球選手がテニスやバレーなど他のスポーツを見て「こういう動きがあるんだ」と本業に生かすような、そういう感覚ですよね。他ジャンルのeスポーツプレイヤー同士あまり交わっているイメージは無いかもしれません。

鈴木eスポーツの場合は企業が著作権を持っているなどの制約で致し方ないところもありますが、そこで何か科学反応が起きて、お互いの配信に出てくるとか、そういったことも面白いと思います。たとえばVARRELでは、VALORANT部門の選手と西武ライオンズのVALORANT好きのプロ野球選手が対談を行いました。

——それは面白いですね。

鈴木アワードは公益性・権威性を高めていきたいという想いもあります。毎年、回を重ねることでアワードの価値を高めていきたいし、大会で優勝する以外にその一年で一番活躍した輝かしい選手が賞をもらうということは、他の業界で言えばものすごく価値のあることじゃないですか。他の業界と同様にアワードの価値を上げていくことが必要だと思うのですが、その中でいろんなタイトルがあって取り組みを知ってもらえたら良いなと思います。

——来年もアワードがあることを糧として頑張れる選手もいるでしょうし、応援する人も出てきそうです。

鈴木そのときに輝いた選手をちゃんとみんなで認めてあげて讃えあって、メディアにもちゃんと残って、アワードという毎年行われるイベントの中で記録されていく。その人の将来的なキャリアに残るんじゃないかなと思いますし、形に残して行けたらと思います。。

——最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

鈴木初めての試みですが、eスポーツでその年に輝いた選手をみんなで讃えあって、しっかりと歴史として刻んでいきたいという想いから日本eスポーツアワードが立ち上がっています。ノミネートとアワードの投票は無料ですので参加して頂けると嬉しいです。そして発表の瞬間には、配信でも、できれば会場に足を運んで、みんなでノミネートされた選手や関係者、受賞された選手、そして最高栄誉のMVPを取った選手を会場でぜひ見届けて欲しいです。きっと皆さんが知っている選手やストリーマーが会場に登場して頂けると思っているので、eスポーツ大会とはまた違った魅力のあるイベントにしていきたいです。

ーーありがとうございました。

「JAPAN eSPORTS AWARDS」(日本eスポーツアワード)

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《ハル飯田》
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