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「eスポーツに参入できない業種はない」―群馬県eスポーツ連合 事務局長にeスポーツビジネスの可能性を聞く【eスポーツの裏側】

群馬県eスポーツ連合(gespo)で事務局長を務め、群馬県内でeスポーツ事業の支援を行うLANNERの代表取締役でもある倉林亜希子氏に取材を実施。eスポーツを活用したビジネスの「ハブ」になりたいという思い、そして二児の母という視点から見たeスポーツへの向き合い方につい…

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eスポーツに携わる「人」にフォーカスを当てて、これからのeスポーツシーンを担うキーパーソンをインタビュー形式で紹介していく【eスポーツの裏側】前回の連載では、リリースから8年を迎える『シャドウバース( Shadowverse )』を運営するCygamesのeスポーツ室 マネージャー 川上尚樹氏へインタビューを実施。5年目に突入するCygamesが主催する唯一のリーグ「Shadowverse University League」について、このタイミングでのルール変更に踏み切った狙いや今後のeスポーツの展開、Cygamesが描く学生とeスポーツの在り方について、その裏側について伺いました。

第44回目となる今回インタビューしたのは、群馬県eスポーツ連合(gespo)で事務局長を務め、群馬県内でeスポーツ事業の支援を行うLANNERの代表取締役でもある倉林亜希子氏。当初はまったくゲームに詳しくなかったという倉林氏ですが、地元企業や若い世代を巻き込みながら奔走し、群馬県のeスポーツシーンに活気をもたらしました。eスポーツを活用したビジネスの「ハブ」になりたいという思い、そして二児の母という立場から見たeスポーツへの向き合い方について、お話を伺いました。

倉林亜希子氏

[インタビュアー:森 元行]

——最初に経歴を含めて自己紹介をお願いします。

倉林亜希子氏(以下、倉林)2007年の8月に群馬県の地方新聞である上毛新聞社の100%子会社である上毛新聞TRという広告代理店に中途入社して、6年ほど県内向けフリーペーパーの編集を担当していました。副編集長を経て、2人目の育休復帰後は県内企業のプロモーション広告営業の担当となり、大小さまざまなイベントを企画する仕事もしていました。

幅広い世代が来場できるような複合イベント作りを手掛けており、ファミリー向けイベントや、総合展示会の企画などをしていました。歌のお兄さんを呼んで観覧エリアがパンクしそうになったこともありました。

——eスポーツに携わるようになったのはどのような経緯からでしょうか。

倉林2013年から新規事業を開発する部署に所属しており、2019年の年明けごろにeスポーツを扱う話が出てきたと記憶しています。そして春には群馬県eスポーツ連合(gespo)を立ち上げました。

翌年に一般社団法人化したのでその事務局長に就任しつつ、上毛新聞TRに勤めていましたが、昨年12月末で退職し、新しく株式会社LANNERを設立をしました。gespoの事務局長は引き続き務めています。

——社内でeスポーツの取り扱いがスタートした当時、倉林さんはゲームやeスポーツに詳しかったのでしょうか。

倉林まったく詳しくなくて、ゲームもプレイしたこと自体はありましたがあまり前向きではなかったですね。当時の私は2人の子供を育てるのも木製のおもちゃや本の読み聞かせが中心で、DVDすらあまり見せないという、今時珍しいくらいデジタルは遠ざけるようにしていました。

そもそもeスポーツを取り扱うという話もトップダウンで下りてきたものでした。当時の上毛新聞社TRの社長がeスポーツの将来性について耳にしたのがきっかけで新聞社で取り組めるか検討されたと聞いていますが、新聞社で扱うにはあまりにもeスポーツが分からない状態だったので、さまざまなことにチャレンジしていく土壌がある上毛新聞TRでやりましょうという話になったんです。

そこで新規事業を開発していく「営業開発課」からひとりの社員がやりたいと手を挙げてくれたんですが、なかなか進展せず……。このままでは彼が自らやりたいと言ってくれた事業がなくなってしまうと感じて、「しょうがないから一緒にやろうかな」という気持ちでした。課長という立場もありました。

——詳しくない状態でスタートして、最初は何から始めましたか。

倉林まずは視察です。とにかくeスポーツというものを間近で見たことがなく、何なのかもよく分からなかったので、2019年はまだコロナ禍の前だったのもありいろいろなイベントを見に行くところから始めました。一番最初に視察したのが「C4LAN」というLANパーティー(参加者がPCやゲーム機を持ち込み、ゲームをプレイするイベント)で、今思うと競技よりもカルチャー寄りのイベントと言えますが、当時は「これがeスポーツか」と思って見ていました。

その後は「STAGE:0」や「全国高校eスポーツ選手権」などの大会も視察しました。県内ではとにかく真面目にさまざまなゲームコミュニティに会いに行き、「今は何に困っていますか?何が助けられますか?」と聞きながら情報を集めていたのが最初の年でした。

上毛新聞社本体で開催した『ぷよぷよ』の大会の手伝いを経て『ぷよぷよ』が分かるようになったので、総合展示会の一角や地元大学の文化祭で大会を開いたり、小さな体験会を行ったりイベント開催も少しずつやり始めていました。

——スタートした時点では「こういう風にやれば売上が生まれるかも」というイメージはありましたか。

倉林もう何の想像もできない状態で、会社からは「3年やってみて駄目ならやめよう」と言われました。ですから、最初の3年間はまず“プラマイゼロ”に持っていくことを目指していました。

——その3年計画の中で、1年目はとにかく情報収集とリレーション作りに奔走したということですね。

倉林大きな動きがあったのは2020年の4月で、群馬県庁の中に「eスポーツ・新コンテンツ創出課(現:eスポーツ・クリエイティブ推進課)」という全国で初めてeスポーツと名のつく課が発足し、県主導の取り組みがスタートしました。2019年から県庁では「コンベンション推進課」というMICE事業の担当部署がeスポーツにも目を向けていて、視察先で会うことも多かったのでeスポーツについて話す機会もありました。

2020年は新しく「Gメッセ群馬(群馬コンベンションセンター)」という施設ができるタイミングで、そこに合わせてeスポーツで大きな事業を誘致したい考えがあったのだと思います。

——Gメッセ群馬は「U19eスポーツ選手権」の会場にもなっていますよね。

倉林そうです。それこそ2020年のこけら落としイベントをeスポーツに絡めて実施しようと、グルーブシンクの代表取締役である松井(悠)さんにも入っていただいて進めていました。結局コロナの影響で式典だけになり、規模が小さくなってeスポーツはなくなってしまったのですが。

——そうして2020年は1年目に培った情報やリレーションを活用して動き始める年になったのですね。

倉林県のプロポーザルを受けられる事業者もなかなか居ませんでしたし、当時はまだ私たちも『ぷよぷよ』など限られたタイトルの経験しかありませんでした。グルーブシンクさんを始めとして相談できる会社さんとの繋がりからプロポーザルを獲得していった、というのが2020年の動きですね。

——2020年はコロナの影響も大変な時期だったと思いますが。

倉林そうですね。ただ、eスポーツ・新コンテンツ創出課が発足する前からコミュニケーションを取ってきた方が県庁の中にもいて、なんとか形にしたい気持ちで結束していたような感覚もあります。対応も柔軟で「オフラインを想定していたけど、オンラインでもお願いできますか?」との相談を受けたりと色々チャレンジさせてもらえたので、すごく面白かったですね。

当時、私が上毛新聞TRで統括していた何万人も集まるような展示会は一気に中止になってしまった時期で、毎月回していたイベントも軒並みストップする中で「eスポーツは止まらずに続けられるんだ」という驚きと、すごくプラスの実感を得られた期間でもありました。

——2020年はGメッセ群馬のこけら落としイベント以外では、具体的にどのような動きがありましたか。

倉林「遠隔で大会ができるかどうか」「シニアに向けてはどうか」など、eスポーツに関する実証事業のような取り組みも含めていろいろなことをやりましたね。

——そして続く2021年はどのような活動をしていたのでしょうか。

倉林21年頃から群馬県内でもいろいろな事業者さんが出てきてgespo以外でも県の仕事を受けられる状況になってきていたので、私たちはどちらかと言えば「群馬県のプレイヤーに寄り添ったもの」に注力しました。

県が当初目指したのは「eスポーツを活用して群馬県を日本全国に、そして世界に発信したい」ということなのですが、私たちは「群馬県のプレイヤーを群馬の事業者が応援していく」ような流れを作りたいと考えていたんです。どちらもeスポーツの普及という目的は共通していますが見ているところは少し違っていて、私たちはプレイヤーさんと一緒に「大会の企画や運営など、可能な部分をコミュニティ主導でやっていく」ことをサポートする方向性で動いていました。

他にも、eスポーツが国体の文化プログラムに採用されていた(「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」)ので県予選開催などはやりましたし、事業者さんのお仕事を受託していく動きに変わってきたのが2021年でした。

——2021年までで、最初のタイムリミットだった3年が経過したということでしょうか。

倉林最初にgespoが任意団体として設立したのは2019年5月ですが、2019年はほぼ視察だけの活動で、私以外のメンバーも当然ながら広告代理業の片手間でしか取り組めてない状態でした。ですので、一般社団法人化した2020年2月をスタートとして捉え、2022年度の終わりまでが「3年」の区切りというスケジュールでした。

2022年度が終わってみるとそれなりに受託も増えてきていたので、次は2023年の3月1日付で上毛新聞社本社へと出向になり、人的なリソースも資金的にも豊富な本社でしっかり取り組んでいくことになりました。

——それは「もっと人とお金を使っていいよ」と期待されているように感じますね。

倉林私はそう受け取りました。本社に出向してからはしっかりと内容を精査して事業としてはプラスを出していける状態にはあったと思うのですが、トライしてみてダメなら引いてという文化の広告代理店と違い、新聞社という組織は伝統と信頼のもとに作られていて、朝に流れた情報が夕方には変化していくような状態のeスポーツがなかなかフィットしていかない状況を感じました。そこから独立へと向かっていく形になります。

——本社での取り組みではスピード感が出せなかったということでしょうか。

倉林そうですね。新聞社には色々な立場の人がいるので、しっかり稟議を上げて収支などの数字も見てOKが出たものをやる、という流れがあります。ですから私や一緒にやっているメンバーが現場判断をどんどん出していく必要のあるeスポーツのスピード感にも繋がらないですし、しっかりとした数字を明示できないのでGOが出づらいという背景もありました。

——そこで独自の判断でスピード感を持って動けた方が良い結果になると、独立に舵を切ったのですね。

倉林会社も事情をよく理解してくれて、後押ししてもらいました。今もgespoの理事には上毛新聞社の役員も名を連ねていますし、今後も手を取り合っていきましょうという話はお互いにしています。

——ここまでの取り組みについての反響についても伺います。他の自治体からはどのような反応がありましたか。

倉林群馬県は県庁がeスポーツを推進しているので当たり前のようになっているのですが、市町村単位ではシューティングゲームや格闘ゲームを扱うことへの問題意識もあると思いますし、どうしても就業中にゲームを触ることへの後ろめたさを持ちながらeスポーツに携わられていると感じます。

自治体からは「eスポーツが分からないので(代わりに)やってください」というアプローチをいただくこともありますが、私たちがすべて引き取ってしまうと結局その市町村に根付いていかないので「やれるところは自分たちでやりましょう。その方が安くなりますよ」と、出来るだけ触ってもらうようにはしています。すると自治体の職員の方はすごく真面目にeスポーツに取り組まれますし、中には最終的に『太鼓の達人』でパーフェクトを連発するぐらい一生懸命打ち込んでくださったケースもありました。

今では県内でもさまざまな市町村さんから次々とご相談をいただくフェーズに来ていまして、それもシニア向けや教育系、あるいはスポーツ関係などさまざまな内容になっているので、これは面白い動きだなと思います。

——群馬県内の企業からの反響はどうでしたか。

倉林県内では50を超える企業さんにgespoの賛助会員に参加いただいています。はじめは上毛新聞社で立ち上げていますので企業同士のお付き合いから関心を持っていただいた例もあるかと思いますが、それだけでなく「これからきっとeスポーツが来るであろう」「若い人たちにしっかりリーチできるのだろう」という期待から支援してくださっていると感じます。自社イベントの中にeスポーツエリアを少し設けていただくこともあれば、一緒にeスポーツ事業開発ができないかと相談いただくこともあり、実のある形でご一緒できているのではないかと考えています。

——賛助会員はgespoとして営業をかけたのか、あるいは自発的に入ってきたのか、どちらが多いでしょうか。

倉林こちらから営業をかけたところが大きいですね。会長はもちろん、最初の段階で旗を振ってくれた当時の上毛新聞TR顧問の副会長がすごく広いリレーションをお持ちで、私たちが働きかけた以上に多くの方々に伝わったと思います。ただ、その後なかなか営業まで手が回らなくなってからも、お問い合わせいただいて賛助会員に加わってくださる例も数多くありました。

gespoの賛助会員(公式サイトより)

——賛助会員を探す営業ではどういった基準で働きかけを行ったのでしょうか。

倉林まずはいろいろな事業に対して地域貢献をしていきたいという目標がありましたので、やはり大きな、パワーのある企業さんを回らせていただきました。他には理事の方の繋がりもありますし、教育分野やデジタル分野にも積極的に働きかけました。

——テック系や音楽系の企業も入っていますね。

倉林県のコンベンション事業に参加していた部署でもあったので、そのコンベンションやMICE事業を一緒に取り組もうとしていた事業者さんにはお声がけして、イベントの設営や映像関係をお願いしながら実際にeスポーツイベントを作っていきました。

——本当に多種多様な企業さんが名を連ねています。

倉林基本的に私たちはeスポーツの専門部隊ではなく、ハブのような形になりたいと考えています。たとえば「eスポーツのために防音ルームが必要」という案件が生まれた時、私たちが防音ルームを作れるわけではありませんが相談として受け取って、それを賛助会員の建築系や音楽系の企業さんに相談して事業として成り立たせていく流れができれば良いなと思います。

そうやって掛け算をしていけば「eスポーツにこの業種はない」と言えるものは存在しないとも思います。どんな業種でも“eスポーツとの掛け算”は可能ではないかと。

——全く異なる領域からeスポーツ事業への参加を考えている方にとっては「eスポーツに参入できない業種はない」という言葉は背中を押されるメッセージになると思います。

倉林プロeスポーツ選手やプロを目指して一生懸命取り組んでいる人からすると「それはeスポーツなのか?」と感じる部分もあるかも知れません。ただ、その議論は一旦置いておいて「eスポーツを活用した何か」であれば、どんな業種も可能だと思っています。

——倉林さんから見て「このコラボレーションは面白い」と感じた事例はありますか。

倉林「観光×eスポーツ」は地方ならではの良さが出るなと感じました。LANパーティーもそうですが、温泉地でゲームイベントをやると全国いろいろな地域から来場いただけて、東京とはまた違った楽しみが味わえる面白さがあったのではないでしょうか。観光に関する相談も増えてきていて、注目しているコラボレーションです。

——イベントがあれば飲食事業との関わりも生まれますし、思っているより幅広い業種に可能性があるのですね。

倉林そうですね。飲食で言いますと、群馬では「登利平」の「鳥めし弁当」がすごく有名で、県民なら小さい時から何度も食べて育っているソウルフードなんです。その登利平さんも賛助会員に参加いただいていてイベントにお弁当が並ぶこともありますが、これが別の都道府県に行けば全く違う地元の食が出てくる可能性もありますよね。その地方ごとのオリジナルな要素が出るというのは飲食の面白さかなと思います。

——地域の方からの反響はいかがでしょうか。

倉林はじめはeスポーツの団体が群馬県内にできたことを、ゲームコミュニティの方たちがとにかく喜んでくれました。立ち上げたばかりの頃は私ともうひとりの社員もほとんど素人の状態でしたから、分からないことは彼らに聞いて教えてもらい、手伝ってもらいながら一緒に大会を作っていくこともありました。

これからは教育の領域に踏み込んでいきたいのですが、やはり保護者からは否定的な姿勢を感じています。ただ、私自身もはじめはゲームに対して良い印象がない母親だったところから始まっていて、その時の気持ちは共感していただけることも多いので、新年度からは「お母さん仲間」を作っていきたいなとも考えてはいます。

私はビデオ予約もできなくて息子にやってもらうくらい機械に詳しくないのですが、そういう立場でも問題ないんです。自分はそのままお母さんの立場として、ゲーマーにとって良い環境を作れたらと思っています。

——ありがとうございます。話は戻りますが、改めてgespoと新会社「LANNER」が目指している姿を教えてください。

倉林LANNERは、経済活動のカラーが強くてgespoが一般社団法人として取り扱いにくいものを引き取っていくイメージで、基本的にはgespoとしての活動が中心になります。そのgespoも自分たちで営利事業を行う訳ではないので、たとえば「教育系に振り切って商品開発して普及させよう」「シニアに向けて介護施設にこういうことをやろう」というのは事業者さんにお任せすればいいと思っています。

gespoとしては国体の文化プログラム「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」や「ねんりんピック」に強い県代表選手を送り出すのもひとつの目標ではありますが、その傍らでeスポーツに少しでも興味を持った方が教育でも介護でも福祉でも何でも、ちょっと相談をしたいタイミングで一旦受けて専門家にきちんとつないでいくような場所でありたいと思っています。自分たちが表に出て何かをするのではなく、群馬県のeスポーツシーンの下支えとなる「困った時のgespo」であればいいかなと。

——「ハブになりたい」という言葉にはそのような意味が込められているのですね。

倉林あとは年齢や背負っているもの、立場などをすべて取っ払ってゲームのために集まれる場を作るということはやりたいと思っています。

2020年の7月に新前橋駅前にgespoの事務所ができた頃は誰でも来られる場所として解放していて、60代の女性が毎日『太鼓の達人』の練習に通ってくれたこともありました。通い詰めてスコアも伸び、60歳以上のeスポーツ大会「LEGEND CUP」では県代表として全国2位にもなったんですよ。ただ次第に案件が増えすぎて、場として開放できなくなってしまったんです。

——今もその事務所で活動されているのでしょうか。

倉林LANNERとして事務局を引き取るにあたって新しい事務所に移りまして、こちらもイベント的に開放することは考えてはいますが、まだ普段通える場にはなっていません。ただ、その「場」はリアルな場所である必要があるかと言えばそうでもなく、DiscordのサーバーでもSNSでもやり取りできる場所があれば良いのかなとは思っています。

——リアルでもオンラインでも、そういう場作りを目標のひとつとして持っているということですね。

倉林そうですね。今はgespoファンが集まるdiscordサーバーに130人ほど参加していただいていますし、リアルの場もいつか持てたらと思っています。

——Discordサーバーではどういった活動が行われているのでしょうか。

倉林いろいろなゲームチャンネルに分かれていて、自分がプレイしているゲームの仲間とコミュニケーションすることができますし、gespoがアルバイトを募集する時に「今回このゲームで配信や運営ができる人いますか?」と探す場所にもなっています。なるべくプレイヤーの人に手伝ってもらう方が間違いないですから。

——2019年から事業としてeスポーツに携わってきた倉林さんの視点では、ここ数年での日本eスポーツの変化はどのように映りますか。

倉林私自身が何においても前向きに捉える性格なのもあって、ポジティブに感じています。最近は「eスポーツってもうオワコンだよね」という声も聞かれますが、それはeスポーツという言葉が出てきたときに「お金儲けができるんじゃないか」と考えて集まってきた人が「何年もやっているのに駄目じゃないか」と思っているのではないかなと。

ゲーマーが減っているのかと言えばまったく減っていなくて、以前にも増して「ゲームをしていない子」が探せないくらい、生活の一部として日常にゲームが組み込まれていると思います。eスポーツ選手を輩出していこうにも人口ピラミッドの上の部分だけを作るのは難しくて、やはり下の部分が広がっていく必要があるはずですが、それが当たり前のように広がっているのを感じます。

eスポーツを活用した何かで商売をしようという人が増えているのも、それまではゲーマーだけのものだったeスポーツが一般に認知された状態まで広がったと言えると思います。都市部では今でも大きな大会がありますが地方はまだまだそういった機会が少ないので、まだまだ可能性がある、むしろここからじゃないかなと感じています。

——地方でのeスポーツはブルーオーシャンであると。

倉林たとえばミュージシャンの大きなコンサートは基本的に都市部で開催されますよね。じゃあそのコンサートを群馬でやりましょうとなった時、そこに群馬の事業者が入るかと言えば、ほんの一部です。東京から事業者がやってきて、イベントをやって帰ってしまいます。

eスポーツも同じで、大きい大会を誘致したところで地元の事業者が触れる産業になるかと言えばそうではないので、もっと地元の子たちを対象にした事業が成り立っていくとか、そういったレベルで良いのではないかと思います。

——これからeスポーツはこうなって欲しい、という展望はありますか。

倉林私がeスポーツに明るくない立場だからかも知れませんが、これからは本当に「お母さん」がキーになると思っています。これからの子供たちは生まれたときからデジタルのものが身の回りにあって何でもできる環境で育っているのに、保護者が、特に母親がそれに置いていかれてしまっている状態があると感じているので、親世代もしっかり学ぶべきだと思います。

そこで親がしっかり理解せず“分からないもの”のままでは、結局遅れっぱなしで進んでしまいます。親が子供に何かを聞かれた時に答えられる状態になっていくと、eスポーツが教育の分野も含めて一層取り組んでいけるものになっていくような気がします。

今は「母親からの理解」が一番最後になってしまっているような気がするのですが、子供の夢をすぐそばで応援するべき存在である親が、そして女性がもっともっとeスポーツについて理解できる状態になれば、教育の現場にも波及していくのではないでしょうか。

——保護者や学校の先生などが理解できる環境は必要になりますね。

倉林今後はお子さんがいる人が運営側にも増えて、そういう視点も大事にされていくと良いなと思います。

——ありがとうございます。最後に今後への展望をお願いします。

倉林事業としてeスポーツをやれない企業はないという話もしましたが、同時にリクルーティングとしてeスポーツを使わない手もないとも思っていて、若い世代と群馬の企業とのマッチングの場にeスポーツを活用していきたいと考えています。

スーツを着た状態でインターネット上にある情報をお互いにやり取りする面接ではなく、自分らしいカジュアルな格好で参加して一緒のチームでゲーム大会を戦ってみれば、負けたときに会社の偉い人がどんなフォローをするのか、学生がリーダータイプなのか後方支援タイプなのか、お互いの姿がよく見えると思います。新年度もいろいろな事業をやっていきますが、まずは企業さんと学生さんマッチングの場作りをひとつの柱としてやっていければと思っています。

《ハル飯田》
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