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【e-Sportsの裏側】「ここを撮ってほしかったんだよ!」に応えたい―老舗報道写真会社ゲッティイメージズがe-Sportsに参入する理由とは

e-Sports市場への参入を発表したリアルのスポーツ報道写真で定評のあるゲッティイメージズ ジャパン代表取締役の島本 久美子氏にインタビューを実施。なぜ、e-Sportsに参入するのか、また同社がどのようにe-Sportsシーンを捉えているのか。その裏側に迫りたいと思います。

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e-Sportsに携わる「人」にフォーカスを当てて、これからのe-Sportsシーンを担うキーパーソンをインタビュー形式で紹介していく【e-Sportsの裏側】。

前回の連載では老舗e-Sports運営会社JCGの代表取締役 松本順一氏にインタビューを実施。JCGの成り立ち、業界の変容、e-Sportsの未来についてお話を伺いました。

第30回目となる今回は、e-Sports市場への参入を発表したリアルのスポーツ報道写真で定評のあるゲッティイメージズ ジャパン代表取締役の島本 久美子氏にインタビューを実施。なぜ、今年で25周年を迎えるゲッティイメージズがe-Sportsに参入するのか、また同社がどのようにe-Sportsシーンを捉えているのか。その裏側に迫りたいと思います。

※なおインタビューはオンラインで実施しました。島本さんの写真は以前撮影したものを掲載しております。


――本日は宜しくお願い致します。まずは島本さんの自己紹介をお願い致します

島本ゲッティイメージズで東アジアと東南アジアの責任者をしている島本 久美子です。もともとはヨーロッパの国々を担当していて、11年前から日本に戻ってきまして、アジア全体において担当をしております。

実は昔、ゲーム会社に務めていたこともありましてマンチェスターでF1のゲームを作っていました。

――開発スタジオで務めていた時が2000年前後ということは、ドリームキャストやPlayStation2、ニンテンドー64などの時代ですね

島本そうですね。ハードがたくさんでていて、ゲームソフトの供給がまだまだ追いついていない時代でした。

――今回、ゲッティイメージズがe-Sports市場に参入する背景を教えてください

島本e-Sportsそのものを特別視しているわけではなく、どちらかと言うと「スポーツ」に対する情熱がものすごくある会社で「スポーツ業界を盛り上げる」、「スポーツ業界とともに成長していく」というマインドが強いです。特に報道部門に関しては、スポーツのおかげで成長してきたので、常に「どうすればスポーツを盛り上げられるか?」「どうすればもっといいビジュアルが撮影できるか?」という観点からいつも捉えています。世の中的にe-Sportsも盛り上がってきていますし、注目度も高いということもあり、ゲッティイメージズとしてもe-Sports市場においてどういうことが提供できるのだろう、ということから議論が始まりました。

(C)82226899,Clive Brunskill Getty Images

島本オリンピックでは、長い期間IOCのオフィシャルフォトエージェンシーとして活動しています。オリンピックは「綺麗に見えるよう」に本当にさまざまな工夫がされています。通常のスタジアムの光よりも何倍も明るくしたり、競技の背景にスポンサーの看板などがちゃがちゃしたものがないように配慮がされています。つまり「一番、綺麗に撮れる」ように環境が整えられているのです。

逆にF1などは、テレビで放映されるようになり、スポンサーがたくさんつくようになり…という市場ですので「スポンサーにとって、最大限のメリットを提供するためにはどうすればいいか?」という観点に注目して成功した市場と言えます。視聴者ももちろん重要なのは当たり前ですが、スポーツはお金もかかる分野ではありますので、スポンサーも重要な要素になっています。e-Sportsも同様に、今後成長をしていくなかでそういった形も増えていくと思います。ゲッティイメージズは全世界で85以上の大きいスポーツ団体と提携してきており、そういったノウハウをもとにe-Sportsの団体や大会と密に連携をして、どうすればビジュアル観点からe-Sportsを盛り上げることができるのか、メディアやスポンサーに取ってメリットをどう発揮していくのか、ということを一緒に考えていければと思います。

――e-Sportsを「どうスポーツとして、綺麗に撮影するか」という点を突き詰めているメディアはまだまだ多くないと思います。

島本やっぱり面白さが伝わらないとだめだと思います。

――取材の機会が得られにくくなっているのは、私も感じます

島本そうだと思います。逆に、そういったところに入り込ませてもらっている以上、「偏り」が出ないようにすることをとても意識しています。

例えば、海外サッカーリーグの試合などで日本人選手がベンチに座っている時など、現地ではそこまで注目はされないですが、日本では「ぜひ撮影してほしい」と言われたりします。そういったようになるべくあらゆる地域のあらゆるニーズをカバーできるように心がけています。

――なるほど。例えば『LoL』などは俯瞰した撮影は可能ですが、キャラにフォーカスした撮影などは難しかったりします。ゲームの中に入り込んで任意の場所で撮影できるというのは面白いですね。

島本MOBAだけでなく、格闘ゲームやレーシングゲームなども同様だと考えています。プロや熟練のプレイヤーが扱うスキルなど、ゲームの中に入り込んで撮影することで「よくこのコーナーをこういう風に曲がれたな」とか「よくこの位置でこの技出せたな」など今までになかった視点でゲームを楽しむこともできると思います。なので撮影する側も単なる撮影者ではなく、そのゲームタイトルについて造詣が深い人でないとそのゲームタイトルの”ツボ”を抑えられないと思いますので、そういった点に気をつけています。

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(C)1264322159,Clive Rose Getty Images

また、撮影してから世の中に提供する「スピード感」も重要視しています。ゲームの大会など配信も増えてきており録画も可能となっていますが、「あとから録画を見直してキャプチャーすればいいや」ということをやっていては、本当の意味での報道としての価値を提供できないと考えています。常に報道としてe-Sportsの写真を圧倒的なスピードで提供しているということが大切になってきます。

――特にそのゲームに詳しいユーザーやファンから見たときのフィードバックに大きな違いででそうですね

島本その通りです。選手のことやゲームタイトルのことを熟知しているからこそ撮影できるシーンは必ずあります。「ここだよ!ここを撮ってほしかったんだよ!」とユーザーの方が熱狂できるシーンをたくさん提供したいですね。

――e-Sports市場参入はいつ頃から構想していたのですか?

島本本格的に検討をしはじめたのはここ5,6年でしょうか。こういったことは社内から「どうしてもやりたい!」というフォトグラファーが出てきて、そういったフォトグラファーがリードしていきます。例えば「水中でどうしても撮影をしたい」といった具合です。今回もクライブ・ローズというモータースポーツのフォトグラファーだった人間がいて「ゲームが大好き」「日本にどうしても行きたい」という想いを強くもっていて、彼がポリフォニー・デジタルとの関係を構築していきました。

――そういったことは多いのでしょうか

島本多いですね。例えばオリンピックで水中カメラで撮影をするようになったのはゲッティイメージズが最初なのですが、それも水泳が大好きなフォトグラファーが最初は自腹で水中撮影可能な機材を購入して、アテネオリンピックで撮影を開始しました。今では競技の前に事前にプール内にカメラを設置させてもらっていますが、当時は非常に画期的で誰もやっていない撮影手法でした。今では当たり前になっていますが、天井からの撮影をどうしてもしたいフォトグラファーがそういった撮影にチャレンジしたり…最初は採算が合うのか分からないけど、どうしてもやりたい、といった情熱から始まっていることが多いです。

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今回のポリフォニー・デジタルも、ゲーム内の普通は入れないエリアに入れてもらったり、ライティングを追加してもらったりと新しいことにチャレンジをしています。

――ボトムアップでそういったことが発生するのは、とても面白いですね。最近はバトルロイヤルゲームが人気なのですが、一人ひとりにフォーカスをするのが難しかったりするので、そういったゲームジャンルでも面白い撮影ができるかもしれません。中学校や高校の修学旅行の写真購入…のように、自分が欲しい写真や応援している選手の写真だけをユーザーが購入する、ということもできそうです

島本報道として、企業やメディアに撮影データを提供するだけでなく、そういった形でユーザーさんに提供したり、ソーシャルメディアなどを通じて拡散をしてもらったり…などいろいろなことにチャレンジしたいです。それはe-Sportsに限らず、他のスポーツにも通じるところがあります。今年からJリーグと契約をしているのですが、やはり従来の報道としての写真ということだけでなく、例えば実際にスタジアムに来た人だけが見れる撮影データと提供するなど、今までにない試みを考えています。

――今回提供するサービスの注目ポイントはどこになるのでしょうか

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島本やはり、報道機関であることです。撮影したデータをスピーディに世界中の新聞社などメディアにすぐ届けることができる、その仕組がすでにあるということは大きな強みだと捉えています。またゲームの撮影は、リアルだと危険が伴いできないこと、例えばもっと近づけば良い画が撮影できるけど危険だからできない、といったリスクが少ないので今までになかったような撮影もできると思います。一方で制約がない分どこでも取れてしまうので、「ここだったら、絶対に良い画が撮れる」というノウハウが撮影する際に必要になってくると考えており、ゲッティイメージズでは他のスポーツなどで培ったノウハウを活かしてそういった確実な撮影も可能になると思います。

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――報道機関としてゲッティイメージズがゲームに関する写真を提供することで、権利周りも明確になって、世の中のゲームのニュースなども増えるような気がします

島本オリンピックなども同様ですね。テレビや新聞社が毎回IOCに連絡をしていたら許諾を得るのにとても時間がかかりますが、ゲッティイメージズからはスピーディに報道写真を入手できます。テレビや新聞などでゲームのニュースが増えると我々も嬉しいですね。

――e-Sportsチームのスポンサーも増えてきていますが、スポンサーのための撮影、ということもできそうです

(C)613062014,Clive Rose Getty Images

島本例えば、テニスの試合など、報道として撮影する写真はユニフォームなどのロゴをぼかして撮影をしますが、スポンサーのための撮影では、逆にユニフォームのロゴがはっきりと見えるような撮影をしています。選手がビックプレーや華麗なプレーをした際に、プレーの様子だけでなくユニフォームのロゴもきっちり綺麗に見える、といった具合です。そういったノウハウも溜まっていますので、今回のe-Sportsにも応用していきたいです。

――スポンサー視点で見ても、テレビや新聞といったメディアにスポンサーしたチームの写真が使われるかどうかは大きいですね

島本まだまだマスメディアの影響は大きかったりしますので、テレビや新聞などでゲームニュースが増加することで、スポンサー側のメリットも大きくなる可能性はあると思います。

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――『フォートナイト』などは単なるゲームタイトルではなく、コミュニケーションツール、ソーシャルメディア的な使われ方もしています。規模を問わずいろいろな大会も開催されていますので、参加記念の撮影や友達との記念撮影を欲しい、というユーザーも増えそうですね

島本東京マラソンのように、参加した人をランダムに撮影をして後から販売する、ということも技術的にはできるようになるかもしれません。またゲームに限らず、バーチャルな世界でのコミュニケーションは今後も増えていくと思います。バーチャル世界でのパパラッチなども登場するかもしれませんね。

――島本さんから見て、日本のe-Sports市場はどう見ていますか?

島本日本にはゲーム会社がたくさんあって、また国内だけでなくグローバルでの展開も増えてきています。ゲッティイメージズもグローバルで展開をしている会社なので、一緒に盛り上げていきたいな、と。また新型コロナウィルスで経済が停滞していますが、ゲーム産業は伸びているということでとても珍しい産業ですよね。

日本国内で言うと、規制がまだまだ整備されていないというところですかね。規制によって盛り上がりの速度がなかなか上がらないのであれば、その辺りの整備を進めて、さらなる盛り上がりを作れるといいのかな、と。

――日本と海外とで、e-Sportsに対する違いはいかがでしょうか

島本あくまで私が見える範囲の話になりますが、やっぱりゲームをやっている人口の数がまだまだ乖離があるかな、と思います。

例えば、日本では「e-Sportsをやっているから回線をもっとよくしないと」、「もっとハイスペックなPCにしないと」という話はあまり聞かないです。ロンドンやシアトルのオフィスにいた時などは、そういった会話が日常会話のなかで普通に出てきたりしていました。飲み会で「e-Sportsの大会に出るのだけど、チームメンバーが足りないから一緒に出てくれ!」といった話も海外ではよく聞いていましたが日本ではまだ聞いたことがありません。私の周りにいないだけかもしれませんが、まだまだ一般的では無い、もしくはゲームの人口が海外と比べるとまだ少ないのだと思います。新聞などでe-Sportsの大会で優勝した人が普通に報道されるようにしていきたいです。

――ありがとうございます。最後に、読者に対してメッセージをお願いします

島本今回の試みは、ゲッティイメージズとして第一歩であって報道機関としてより多くのe-Sportsのジャンルにおいて、取材をして報道をして世界中のメディアに配信をしたいと思っていますので、楽しみにしていてください。またゲーム関係会社の方も、ゲッティイメージズがスポーツで提供してきたサービスをe-Sportsでもうまく活用して頂きたいと思いますし、一緒にe-Sports業界を盛り上げていければと思います。

―――本日はありがとうございました

島本ありがとうございました。


報道写真の代表的な会社であるゲッティイメージズが今後e-Sportsやバーチャル世界での撮影手法にどういった革新をもたらすのか。新しいe-Sportsの楽しみ方をどのように提供をしてくれるのか、注目です。

《森元行》

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