言葉を選ぶことは、誰かと向き合うこと。相手に合わせて人格を切り替える会話ADV『Burden Street Station』【プレイレポ】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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言葉を選ぶことは、誰かと向き合うこと。相手に合わせて人格を切り替える会話ADV『Burden Street Station』【プレイレポ】

サイケデリックでドリームコアなローポリの世界に、アンビエントなジャズが心地良い。

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その次元では、定命の人生が抽出され、意志ある本へと変換される。上位存在に消費されるべく。下級司書と人生なき書物が、失われた神の謎に巻き込まれる。

Buckshot Roulette』や『Arctic Eggs』『No, I'm not a Human』など、尖ったビジュアルとその強烈さに、プレイしたら誰かに話したくなるようなゲームをリリースし続けている注目のパブリッシャー「CRITICAL REFLEX」から、5月21日に『Burden Street Station』が発売されました。

手描きのカートゥン調のキャラクターたちに、現実と非現実が入り乱れるようなサイケデリックでドリームコアなローポリの世界……とこれまた目を引くビジュアル表現な本作。では、実際のゲームはどのような内容なのでしょうか?

本記事では、この可愛らしくも不気味で温かい本作の魅力を、ストーリーのネタバレは控えつつお届けします。

タイトル画面から、既にオシャレ。

指令 第7条――。

ゲームが始まると、この世界の「指令」がブラウン管に映し出されます。背景に映る次々と切り替わる実写の映像と、希望へ向かうような音楽に心地良さを感じている――と、突然テレビが消え、プレイヤーである「司書」は現実へ引き戻される。目の前には配置を待っている「本」と本棚があり、プレイヤーは本の内容から「瞬感」を分類します。

この世界では、定命の者たちの人生が「瞬感」として抽出され、意志のある本へと変換されます。それは上位存在の「天人」に消費され、その供給を常に待っている……。司書である主人公は、天人のために本を分類しているのです。

左側がプレイヤーである「司書」です。

いつものように本を分類していると、なんと瞬感の無い本が出てきてしまいます。これは異常事態だ、と上司の「コレクター」に報告に行きますが、どうやら本だけでなく世界のネットワーク自体が止まり「神」すらもいなくなっている様子

丁度いいタイミングで報告に行ってしまった主人公と、瞬感の無い本「メモ」は、この事態の解決をコレクターから任されることに。そこから2人(?)は、大書庫の外と異変が起きた理由を知ることになる――。というのが本作のあらすじです。

見た目だけでなく、世界観も独特な本作。あらすじの時点でも背景やキャラクターの“作り込み具合”と個性を感じられ、大書庫内を移動するだけでも、幻想的で異世界らしくありながらもどこかノスタルジーを感じる色使いや構図にうっとりとしてしまいました。

“人間”らしくない見た目のキャラクターたちは、表情豊かなアニメーションつきで会話をしてくれるので、見ているだけでも楽しくなります。特に初めて話しかける時だけに見られる登場演出的なアニメは印象的。

音も合わさって、見ていて非常に楽しいアニメーション!

音楽も幻想的で切ない気持ちにさせるアンビエントなジャズに、ロービットなシンセサウンドと、まさに本作にぴったりなものになっており、雰囲気は抜群。こちらの音楽は、制作者のIODINE氏がみずから手がけています。

「人格」を選択し、「会話」せよ

異常事態の調査へと外の世界に向かった主人公とメモは、世界を探索しながら人々(定命たち)と「会話」をする事で情報と「人格」を得ていきます。プレイヤーは、会話の際に相手がさらに話したくなるような返答を持った「人格」に切り替えて会話をし、相手の興味や関心を惹ければ会話が続き、頓珍漢な返答をすれば会話は止まってしまいます。

手書きのかわいいマップつき。

人格は「頭部」と「胴体」、「」(に見える)3つのパーツに分けられており、これらは最初「観察者」と「お人好し」「自由人」の3つしかありません。ですが、会話を続けてその人の瞬感に触れ、抽出することで新たな人格を得、人格……つまり会話に使える返答のバリエーションが増えていくのです。

ユーモアある「人格」のテキストも読んでいて面白い。
「瞬感抽出」では何か不穏なものが見えて……。

また、会話をしていくと「洞察」が溜まり、徐々に左側の蝋燭が伸びて眼が開いていきます。こちらを使用すると、会話の「正解」が見えるようになるのですが、そのかわり燃え尽きてしまいます。燃え尽きると洞察が溜まりづらくなりますが、ベンチやホテルで休息すればスッキリと回復。

休息もただ休むだけ、とはいきません。

会話に失敗し続けてもペナルティがあったり、話を最後まで見られなくなるわけでは無いので、気負わず選択して大丈夫。どう答えればいいか分からない時に洞察を使うのもよし。自分で答えを見つけるのもよしです。
あまりにもズレた返答をするとメモがアドバイスしてくれますし、筆者は会話の失敗パターンを見るのも好きなので、わざと違う答えを選んでみることも。進んでしまうと戻れないので、失敗を見るつもりが逆に正解してしまう、というアクシデントもありました。

筆者のお気に入り「グッドボーイ」、とても可愛らしいキャラクターです。

ちなみに、画面右に出ている数字は「発想」で、人々と会話をしたり人格を選択して返答すると溜まっていきます。こちらは休息を取るためにホテルで泊まる時の通貨になったり、人格の色を変えることができたりします。

自分好みの人格色に染め上げちゃおう。

出会いは「知ること」と、「選ぶこと」

人々と会話をすることで外の世界やそれぞれの人生を知り、人格も増えていく。人格が増えていけば話も広がり、今まで聞けなかった事を教えてくれるようになったり、新たな人と出会ったり、自分の世界も開かれるように。しかし、最初は少ない中から選べば良い“単純”だった会話も、増えれば増えるほど何を返せばいいのかすぐには分からない“複雑”なものになり、会う前の人格は話し終えた後に見る影もなくなっている――。

本作は、「知識」を得ることと「話す」ことをビジュアルとゲームプレイで表現しています。主人公は最初、作中のカテゴリで「積極」や「希望」、「皮肉」に分類される人格しか持っていません。ですが、外に出ると「不安」や「滑稽」に攻撃的な人格も増えていきます。そんな人格を、ちぐはぐに付け替えながら人と話していく。それは私たちも同じなのではないでしょうか。

現実では会話は一度きりしか出来ず止まってしまえばそこまでで、突拍子も無いことや傷付けるようなことを発することは中々できません。ですが、ゲームでやり直しがきくのならそれを試すこともできます。

しかし、最初はつい“反応”が見たくて攻撃的な選択肢を選んでいたものの、彼ら彼女らを知っていくとそれをしたくなくなる。会話を重ねていくうちに、いくつもの選択肢の中から「この人にはこう言えばいい」と自然に分かっていく相手もいれば、最後まで何を言えばよいのか掴めない相手もいる。プレイしながら、そんな“自分”とキャラクター達にも関係の違いがあることに気付きました。

例え思っていたことを言わなくても、本当にそうは思っていなくても、自分の中には様々な「人格」があります。人に合わせて「人格」を変えるのも、「会話」をし、「交流」し続ける上で必要、または「知る」ことで培われていくものなのではないか――。と、筆者はそう感じました。

このように捉えられたのは、生き生きとしたキャラクター達のアニメーション、楽しくも切ない心に沁みる音楽、登場人物たちの抱えるものや人との繋がりを丁寧に描いた本作のシナリオと、それらが伝わるように翻訳されたテキストの魅力があるからではないのでしょうか。
こちらの日本語ローカライズは、CRITICAL REFLEXのタイトルを多く担当するnicolith氏が手がけています。

本作は、同レーベルの『No, I'm not a Human』や『Mouthwashing』のような「ホラー」ではありません。同じく「会話」を重視したシステムの『No, I'm not a Human』が、相手を人間かどうか「判断」し「排除」するゲームだったのに対し、本作は他者との関係を築き、維持するための「言葉の選択」、繋がりの「継続」や「修復」に焦点を当てています。

ローポリ風のグラフィックやホラー、一風変わったビジュアルなど、パブリッシャーのCRITICAL REFLEXには独自の“トーン”があります。それらの要素は作品ごとに異なりますが、どれを遊んでもたしかに「CRITICAL REFLEXらしい」と感じさせる何かが通底しています。

本作を経て、その何かには「プレイを通して自分自身を問う」体験がひとつの大きな核にあるのではないかと感じました。


プレイヤーが選択した会話によって、目を逸らして蓋をしていたものと向き合う人たち。何故、突然「神」はいなくなってしまったのか。その真相を知ると、本作が会話に重きを置いたシステムである理由も分かるはずです。

『Burden Street Station』はPC(Steam)向けに配信中です。

ライター:もぐ水

ライター/カントウ25区 もぐ水

主にアクション・シューター・ADVなどジャンル気にせずいろいろ遊びます。 サウンドがカッコいいゲームやロボットが出てくるゲーム、血みどろなゲームが特に好きです。

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