先日の5月27日を以て、1986年の『ドラゴンクエスト』第1作から40年の節目を迎えました。「三本柱」のうち鳥山明氏、すぎやまこういち氏が故人となる中、両名の遺作となる『ドラゴンクエストXII 夢の彼方へ』の続報も公開され、「JRPG」の祖として歩んできた長い道にひとつの区切りが付けられると思うと、いくらか寂しさも感じますね。


『ドラゴンクエスト』の特徴と言えば、若年層にもわかりやすい易しめの表現ですが、英語版では思い切り雰囲気を変え、全編にわたってシェイクスピアを彷彿とさせる近代英語風にするという特別な翻訳になっています。大抵古典風は古のキャラ付けでワンポイントに使われるもの。しかしここでは一般市民もこの調子で喋るので、予習無しにいきなり英語にするとそれなりに読むのが大変になるでしょう。
『ドラゴンクエスト』シリーズは若年層でもわかりやすい言葉で書かれてきましたが、これに関しては英語ネイティブでも苦戦するようなゴリゴリの時代劇言葉。一部現代英語があるものの、下級民や遺物など例外扱いで、あくまでも基準は古典風です。(ちなみに当時のローカライズを担当したのは岩田聡氏)
アメリカからの難しすぎるという意見が多かったためか、後年の作品では古典調・英国調の要素は薄められていきましたが、HD-2Dのリメイクでも初代に準じた英訳を踏襲しています。今回はリメイク版のテキストから表現を見ていきましょう。
Dialogue/The first encount

Captain:Canst thou stand!? Speak to me!
Gwaelin's Guard:'Tis... 'Tis naught. I can yet fight.
Royal Guard:B-But we found ourselves surrounded!
Captain, all is surely lost!
Captain:We cannot permit it to be! For should we fall,
who shall remain to keep the fiends from our kith and kin?
隊長:立てるか!?しっかりせい!
ローラ姫の護衛:だ…大事無い、まだ戦えまする!
近衛兵:し、しかし包囲されました!隊長、このままでは全滅ですぞ!
隊長:させるものか!我らが倒れれば、友と子らを誰が魔物から守るのだ!

Captain:Who...? Thou art here to aid us?
We are in thy debt, stranger. Hadst thou not come to our aid,
we might well have perished.
Royal Guard:Indeed! To best a whole host of monsters
single-handedly is the work of no orinary warrior.
Gwaelin's Guard:If I might ask―what bringeth thee to the forest alone,
stranger Journey'st thou somewhere?
Captain:...Zounds! Thou art of the line of mighty Erdrick!?
Royal Guard:The hero of legend? Hence thy prowess with a blade!
Captain:And a voice heard in a dream
did truly tell the to make for Tantegal?
Gwaelin's Guard:Nonsense! Such talk is the stuff of faerie tales!
Captain:Hold thy tongue. Thou adressest our deliverer.
Stranger, we are guardsman of the king of that very realm.
Allows us to escort the hence. 'Tis the very least we can do.
Behold! Yonder lieth fair Tantegel!

隊長:お主は…助太刀するというのか?
借りができたな、旅の者よ。お主が助けに来ておらねば、我らは皆やれれていたであろう
近衛兵:まさしく!魔物どもを一ひねりで斬り伏せるとは、並の戦士の技ではござらぬな!
ローラ姫の護衛:差し障りなければ―貴殿は何故この森に一人で、どこかへの旅の道中で?
隊長:…なんと!偉大なるロトの末裔とな!
近衛兵:伝説の英雄の?見事な剣の腕前も合点がいきますな!
隊長:そして夢に聞きし声がラダトームに赴けと?
ローラ姫の護衛:馬鹿を申すな!そんなものはおとぎ話であろう
隊長:口を慎め、恩人の御前であるぞ
旅人よ、我らはこの領の王に仕える近衛である
それ故案内を致しましょうぞ。それくらいしかできませぬからな
見よ、あれに見えるは麗しきラダトームである!

-st:二人称単数現在形の活用
Speak to me:応えてくれ(緊急時)
Naught:無い、無駄
Kith and kin:親類縁者
-th:三人称単数現在形の活用
Zounds:驚き、罵りの間投詞(God's wounds/Gadswoons)
Hence:それ故に
Deliverer:恩人、救世主
Yonder:あそこに
Lieth:Lie-th(三単現)
これまでの「英語漬け」でも古典風英語は何度か取り上げてきましたが、『DQ1』はそれらと比較にならないほど難しい翻訳です。というのも、ほぼプレイヤーに話しかける場面になるので、二人称単数の活用を常に使っている、婉曲表現が多い、そもそも現代では使わない表現も出てくる、など「誰がそこまでやれと」と言わんばかりの凝りようです。

シェイクスピアの時代は日本だと戦国時代なので、雰囲気として大河ドラマのようなものでしょうか。今回の再訳はそれに準じてみました。ある意味最もチャレンジングなローカライズ、勇気のある方は是非挑戦してみて下さい。













