2026年9月の「State of Play」にて、下層を目指してひたすらに落下していく体験が特徴の新タイトル『崩落の国』が発表されました。
同作はCygamesによる「尖った」タイトルを届けることを掲げた新ブランド「CygamesEdge」のローンチタイトル。先日大阪にて開催された「OSAKA INDIE GAMES SUMMIT 2026」では、世界初のプレイアブル出展が行われました。
本稿では注目の新タイトル『崩落の国』体験版のレポートと、CygamesEdgeのビジョンに迫るブランドプロデューサーへのインタビューをお届けします。
ヒヤリとしながらも落下に挑戦したくなる不思議なアクション
今回のデモは、主人公がさまざまなギミックを駆使して世界樹を下へ下へと進んでいくゲームの根幹システムが体験できる内容に。冒頭でも「高難易度ステージ」と明記されており、進むにつれて繊細なアクションが求められました。

基本は移動とジャンプの組み合わせで足場を渡っていくシンプルな構成で、高所から落下しすぎるとダメージを受け、一定以上の距離を落ちたり足場を踏み外して落下したりするとゲームオーバーに。

主人公は忌み子の力を借りることで空中でも短時間だけ「ふわふわ落ちる」能力や突風を起こして浮き上がる能力を発動可能で、これらとマップのギミックを駆使して険しい道のりを降り続けていきます。

キーボード&マウス、ゲームパッドの両方でプレイしてみましたが、どちらも微調整はなかなか難しく、適度な緊張感が漂う操作感に。うっかり足を滑らせるなど際どい場面では崖に掴まってくれるので、ヒヤッとしても落下に直結せず助かるシーンも多くありました。

特にゲームの難関となるのが要所で吹く風の存在で、短距離の落下でもかなり影響を受けて流されるため、何気ない高さも緊張感が漂います。時には突風を背に大ジャンプを狙うこともあり、ステージ内で変化をつける役割を担ってくれていました。

他にも忌み子の力によって時間制限のある足場を出現させる「こぶ」や、徘徊するエネミーを落下からの攻撃で倒しつつ衝撃を吸収させてノーダメージで着地するギミックなど、デモ版の範囲でも攻略要素は数多く登場。
中でもノーダメージの長距離落下を可能にする「フラワーダイブ」は自然落下時間が長く、安全と分かっていてもゾワっとする感覚から、ふわりと着地する快感へと繋がる、なんとも不思議な体験に。


カメラを下に向け続けているゲームのため、行く先を覗き込んでも目先の目的地以降ははっきりと見えないようになっているビジュアルも落下の恐怖を盛り上げるポイントで、遥かな道のりを感じさせてくれます。吊り橋を渡るような長いドキドキ感もありましたが、着地した衝撃で足場が揺れて砂煙が舞う演出など、一瞬のドキッとする感覚が強く印象に残りました。

BGMが流れないのも特徴で、定期的に風が吹き抜ける音だけに包まれているのも緊張感が高まる要因に。それでいて、背中の忌み子ちゃんが定期的に(言葉の意味は分かりませんが)リアクションを取ってくれるので、寂しさよりも心強さを感じました。

プレイを続けて慣れていくと次第にチャレンジ精神が緊張感を上回り始め、アクション性の高いエリアでは“攻めた”プレイにも挑戦できるように。落下後も近くの中間地点からすぐに再スタートできるので気軽さもあり、時間が経つにつれてプレイフィールは想像以上に爽快なものへと変わっていきました。
そうして筆者は約26分でデモ版のゴールへ。期せずしてショートカットを達成した箇所も、逆にルートは理解していても何度も落下してしまった箇所もあり、すぐにもう1周を始めてしまいました。タイムアタックなど「突き詰めるプレイ」が好きなゲーマーにも刺さる要素になっていそうです。

「CygamesEdge」のデビュー作は「構想10年」の集大成⁉
OIGSの会場では『崩落の国』プロデューサーも務めているCygamesEdgeのブランドプロデューサー濱田修一郎氏にインタビュー。タイトルと新ブランド、それぞれのテーマで質問に答えていただきました。
――最初に自己紹介をお願いします。
濱田:Cygamesの濱田と申します。ゲーム開発会社でプロジェクトマネージャーやディレクターなどを経験した後、映像制作会社でのディレクター経験を経て、2018年に入社しました。当時はコンシューマー事業立ち上げの時期で、制作のアシスタントとして『グランブルーファンタジー』関連等のコンシューマー作品に携わり、近年では『ウマ娘 プリティーダービー 熱血ハチャメチャ大感謝祭!』でプロデューサーを務めました。
現在は「CygamesEdge」全体のブランドプロデューサー、そして『崩落の国』のプロデューサーも務めております。

――まずは最新タイトル『崩落の国』について伺います。現在の落下していく体験にフォーカスしたゲーム内容が生まれるまでに、どのような経緯があったのでしょうか。
濱田:実は、このタイトルは社内で有志のチームや個人が参加して行われているゲームコンテストから生まれた作品なんです。業務時間外に制作したゲームを発表して優秀作品を決めていくもので、ブランド立ち上げの構想段階で「ゲームコンテストで社内評価が高かった作品をSteamで商品化できないか」という話が持ち上がり、タイミングも噛み合って実現に至りました。
――以前から社内のクリエイターさんの中にあったアイデアだったんですね。
濱田:原案者にとっては10年近く温めていたアイデアだったそうで、主人公が忌み子を背負っている設定や世界観、やりたいことなど、想いの詰まったファイルが3冊分はありました。個人開発段階のプロトタイプはグレーの背景で「ひたすら降りていく」ゲーム性だけを表現した非常にプリミティブなものでしたが、既に『崩落の国』というタイトルは決まっていましたね。
そこから商品の企画にするにあたって、原案者の想いを汲み取りながら尖らせるところは尖らせて、今の形に落ち着きました。
――「CygamesEdge」のデビュー作であると同時に、構想10年の大作なんですね。
濱田:そうですね。特に原案者本人にとっては間違いなく大作ですし、私たちもその気持ちです。

――その一方で、既にPVなどでも3時間程度でクリアできるボリュームであることを公表されていますが、この時間設定と公表の狙いについても教えていただけますか?
濱田:そこはかなり意識してPVに組み込んだ内容です。昨今はユーザーのゲームに対する価値観、ゲームとの向き合い方もかなり多様化してきていると感じています。私自身、仕事柄もありたくさんのゲームを遊びますが、もちろん仕事もあり、家庭もあり、元々エンタメが大好きなのでありとあらゆる動画配信サ-ビスを契約しており……まったくもって時間が足りないんですよね。
よほど期待している作品であれば「クリアまで50時間」と言われても頑張れるかもしれませんが、すべてのタイトルがそうではありませんし、捻出できる時間には限界があります。そんな中「ゲーム1本をしっかり最後までクリアする」という充足感や達成感のある経験をコンパクトに味わえないかと、こういった時間設定にしています。
――ゲーム以外も含めた娯楽の多様化が背景にあるのですね。
濱田:なかなか「この時間で遊び切れます」と打ち出しているタイトルは少ないとは思われますが、確実にそのニーズは高まってると感じています。ですので、最初からメッセージとして「ボリュームは3時間」と発表いたしました。
――まさに、自分も3時間と聞いて「手軽で嬉しいな」と感じました(笑)。
緊張感を高めるため、あえて「もっさり」させた
――続いてゲーム内容についてですが、落下を繰り返す特徴的な作品だからこその演出面のこだわりを聞かせてください。
濱田:コアとなる「常に降りていく」アクションは何がキーになるのか、開発チームでも色々とディスカッションをしました。
類似作品との関連性がSNSで指摘されていることも承知していますが、例えば「登れば登るほど自分が積み上げた時間が一瞬でチャラになってしまう緊張感が高まる」モデルを例に取ると、むしろ「降りるほど緊張感が薄れてしまう」ことになるので、同じロジックでは考えられないと思ったんです。
そこで我々は単純に「物理的な高さに対する恐怖感を最大化しよう」と考えました。キュッとする、ゾクッとする感覚で、開発チームでは「チンサブ感」と呼んでいるんですが、これを高めるために色々と試行錯誤をしましたね。

――どういった変遷があったのでしょうか。
濱田:一度、30分程度遊べるアルファ版ができあがったのですが、操作に慣れているスタッフがプレイしていることを差し引いても、あまり怖さが感じられず面白くなかったんです。
企画チームで色々と話し合ってみたのですが、開発会社のゼレオさんがその段階でかなり小気味よく精密に動かせる、すごく操作感の良いアクションを作ってくださっていたんですよ。ただ、それだと狙った通りに制御できすぎて、足場が細くなっても恐怖感に繋がらないのではと考えました。
そこからアクション制御のパラメーターをかなりいじくり回して、試行錯誤の末にあえて「生身っぽい」、ちょっとネガティブに取るなら「もさっとした」アクションへと調整をしたんです。すると途端に同じレベルでもヒヤッとする感じが違ってきて、この方向性で行こうと定まりました。
――生身っぽいアクションを突き詰めることで、恐怖感に繋げたんですね。ビジュアル面はいかがですか?
濱田:ビジュアル面ですと、背景にもキャラクターにも静止画だと絵画っぽく見えるフィルターがかかっているんですが、遠景ではそれを強めない作り方になっています。
昨今、リアルな頭身のキャラクターが登場する3Dのゲームでは人物をパキッとさせつつディティールを深く作り込み、背景などに被写界深度を浅くすることで、そのギャップで綺麗に見せる手法が一般的だと思います。
ですが、この『崩落の国』の遠景においては被写界深度などで浅くすると、高さの概念がすごく薄れて逆効果になってしまうんです。ですので、そこでフィルターをかけない選択肢を取るなど、総合的な調整によって「落ちていく緊張感」を最大化できるよう取り組みました。

――遠くまで見えて非常に高いことは分かりつつもゴールが見通せる訳ではない、絶妙な遠景の見え方ですよね。
濱田:そうですね。すごくこだわって作っています。
実験的で尖った体験を世へ。既に複数タイトルが始動中
――ここからは「CygamesEdge」ブランド全体についても質問させていただきます。設立の発表では「小中規模開発」で、そして「尖ったゲーム体験」をというコンセプトを打ち出されていたのが印象的でした。改めてこの部分について紹介いただけますか?
濱田:我々Cygamesはこれまで『ウマ娘』や『グランブルーファンタジー』など、大規模な開発体制による長期開発を経てユーザーの皆様に喜んでいただける最高のコンテンツを追求してきました。
その一方で、ゲーム市場やユーザーの価値観はどんどんと変化・多様化してきていて、ゲーム作りもこれまで以上に柔軟な発想、そして変化に対応するスピード感が求められているという考えもあります。
――先ほどのプレイ時間に関する考え方もそのひとつですよね。
濱田:その通りです。こうした市場の変化、ユーザーの価値観の変化の中で、Cygamesが培ってきた開発力を背景に、小中規模タイトルならではの機動力を発揮し、実験的でちょっと尖ったゲーム体験を生み出すため立ち上げた新たなゲームブランドが「CygamesEdge」です。
大規模プロジェクトの影に埋もれがちなチャレンジングな企画を掘り出し、若手のクリエイターにもチャンスが回るような循環を生み出すことで、Cygames全体としても盛り上がっていく効果を期待しています。
――新しい技術は積極的に取り入れてチャレンジしていきたいという方針でしょうか。
濱田:そうですね。もちろん予算や開発期間はCygames本体と比べると抑えめになりますので、新しい技術なども積極的に取り入れていくことをモットーにやっています。社内でも「CygamesEdgeでどうでしょうか……」と相談して特例で協力してもらうケースもあります。
――そうして新しい手法や技術を検証し、またCygames全体へと還元していく流れも考えられますよね。
濱田:実現すればとても良いですよね。CygamesEdgeでは3つのコアバリューを掲げておりまして、その1つに「Creativity & Reach」というものがあります。ジャンルだったり言語だったり、あるいは地域だったりといったものにあまり縛られず、より多くのお客様に多様なものを届けたいという思いを表しています。
Cygamesは「剣と魔法が登場する王道RPG」や「キャラクターコンテンツ」という分かりやすいイメージも固まっていますし、それが強みでもあるのですが、まだこの中にまったくないジャンルにもCygamesEdgeでチャレンジしていくことで、Cygames全体の幅を広げられるのではないかと考えています。

――では、今後も扱うタイトルはオリジナルのIPになっていくのでしょうか。
濱田:基本的にはその方針です。明確に「既存IPのスピンオフは絶対にないです」とまでは言い切れませんが、現時点では想定していないですね。むしろ将来的にはCygamesEdgeから生まれたIPが逆にCygamesを代表するような規模にまで育っていく展開があってもいいんじゃないかと、私はそういう夢を描いていますね。
――なるほど。そういった可能性もありますね。今後はパブリッシングや共同開発も視野に入るとのことですが、既に『崩落の国』と並行して進行しているプロジェクトもあるのでしょうか。
濱田:はい。まず開発タイトルでは、すでに並行して複数のタイトルが動いています。パブリッシングについても、CygamesEdgeは完成した企画や作品を受け取ってただ発売するだけのブランドにするつもりはなく、作品をパートナーに応じた形で展開できればいいなとも思っています。
完全にCygames社内だけのスモールチームで完結するような内製のタイトルもあるかもしれませんし、今回の『崩落の国』のように開発会社様と協業する形式も取り入れていきます。開発の形自体はいくつか考えられますが、限られた予算と期間の中でも尖ったものを最大限まで作りたいと思ってくださるパートナーの企業さま、もしくは個人開発者の方々と、ぜひ一緒にやっていきたいと考えています。
――今回のように、社内の個人クリエイターさんのアイデアが発端で外部の開発会社さんと協力してゲームになっていく形も独特ですよね。
濱田:今後も同様の形もあるかもしれませんし、開発会社さんからピッチを受けて一緒に作っていく形も十分にあり得ると思います。技術の発展もあって少人数でも開発チームを回せるようになってきてはいるものの、やはり1本のタイトルを最後までガチっと作れる開発会社さんはそう多くありませんし、それができることは強みですよね。
その強みを最大化しつつ、我々がその他の部分を補完するようなイメージでうまくパートナーシップを組んで作っていけると、すごく良い作品ができあがっていくのではないでしょうか。
――今日もOIGSの会場には数多くのタイトルが出展されていますし、インディーゲーム業界は活況にあると感じます。その中で「CygamesEdge」さんが注目しているポイントや、あるいは「こういった存在になっていきたい」というビジョンがあれば教えてください。
濱田:前提として、「CygamesEdge」は「インディーゲームを作る」ブランドとは考えていません。ただ、やはり小中規模のタイトルにフォーカスしたブランドですので、メインとなる市場はSteamがベースになり、個人のインディーゲーム開発者さんからAAAタイトルまでがひしめく市場での戦いになると思います。
必然的にジャンル、あるいはゲーム性もインディーゲームライクなものになっていくと思いますし、この盛り上がっている会場のような熱気あるインディーコミュニティの皆さんとは本当に仲良くやっていきたいですね。
Cygamesとしてもゲームを発表して市場が活性化することによって業界全体が恩恵を受ける流れづくりを目指していきたいと考えていますし、今後もイベント等に積極的に参加していきます。ぜひ我々を「うまく使っていただく」ような気持ちで、良いコミュニティを作っていけたらなと思います。
――『崩落の国』、そして「CygamesEdge」の今後の展開を楽しみにしています。本日はありがとうございました!











