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【特集】映画『10 クローバーフィールド・レーン』に隠された『Portal』映画化の布石

6月17日に日本で公開されるJ.J.エイブラムス製作の映画『10 クローバーフィールド・レーン』。実はこの映画、Valveの傑作パズルFPS『Portal』と密接な関係にあることはご存じでしょうか。

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6月17日に日本で公開されるJ.J.エイブラムス製作の映画『10 クローバーフィールド・レーン』。実はこの映画、Valveの傑作パズルFPS『Portal』と密接な関係にあることはご存じでしょうか。

『10 クローバーフィールド・レーン』という映画を紹介する前に、まずJ.J.エイブラムス氏が手掛けた2008年のパニック映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』を説明する必要があります。この映画は、ハンディカムによる主観映像を主軸とした疑似ドキュメンタリー映画で、Youtubeやソーシャルメディアを活用したプロモーションが話題を集めました。プロモーションでは「日本企業タグルアト」や「スラショー」といった謎のキーワードが多く散りばめられていましたが、実は日本スタイルの怪獣映画であった、というギミックへとつながっていました。そして『10 クローバーフィールド・レーン』は、『クローバーフィールド/HAKAISHA』と世界観を共有しているかもしれないと宣伝されているのです。

実は筆者、3月の全米公開時にすでに鑑賞しておりオチもすべて知っているのですが、今記事では映画の核心部分には一切触れません。映画を楽しみにしている方もネタバレなく読める内容となっておりますのでご安心を。

さて、なぜこの『10 クローバーフィールド・レーン』がValveの『Portal』と関係があるかというと、本作の監督ダン・トラクテンバーグ氏がエイブラムス氏に見初められるきっかけとなったのがファンムービー『Portal: No Escape』だったことにあります。


1700万再生を誇るこの『Portal: No Escape』は、約7分と短い時間ながらも『Portal』という素材をうまく活かした密室劇や緊迫したドラマが表現されています。そして商業映画の初監督作品『10 クローバーフィールド・レーン』にも、核シェルターという数部屋だけの密室空間かつ外がどうなっているかわからない状況、ごく少数の登場人物による物語と、『Portal: No Escape』やゲーム本編と似たシチュエーションが多く登場します。中盤に主人公が見つける"あるもの"も、ゲームをプレイしたことがある人ならニヤリとすることでしょう。

もともと『Portal』はハリウッドの映画人の中でも魅了された者が多いのです。大ファンであると語る鬼才ギレルモ・デル・トロ監督が『パシフィック・リム』に登場する巨大ロボ「ジプシー・デンジャー」の音声アシスタントとして、ゲームのラスボス「GLaDOS」と同じ声優を起用していたことも有名な話です。また、ハリウッド資本による映画『Portal』の企画も実は数年前からすでに水面下では動いており、その映画化権を持っているのが何を隠そう『10 クローバーフィールド・レーン』のプロデューサーであるJ.J.エイブラムス氏なのです。

映画化権を持っているからといってすぐに映画にできるわけではありません。まず課題となるのが製作費で、ハリウッドの大作ともなると1億ドル以上の資金を集めなければならず、そのためには出資者を説得できる材料をそろえる必要があります。優れた脚本、優れた俳優、そして優れた監督です。


『10 クローバーフィールド・レーン』には、『Portal』のファンムービー出身の監督、『Portal』と類似した映画内容、『Portal』の映画化権を持っているプロデューサー、という偶然とは言い難い条件がそろっています。ここから推測できるのは、エイブラムス氏は大作のポテンシャルを持つ『Portal』の監督としてトラクテンバーグ氏を引き入れましたが、出資者を説得するためには優れた監督であることを証明する必要があったのではないかということ。それを立証するために、知名度もあってある程度収益が予想できる『クローバーフィールド/HAKAISHA』の関連作という土台を提供し、トラクテンバーグ氏が得意かつ『Portal』に近い密室劇『10 クローバーフィールド・レーン』を製作したのではないか、と想像できます。

結果として『10 クローバーフィールド・レーン』は、1500万ドルの製作費に対し、米国内だけで7000万ドル以上の興行収入をあげています。さらに映画レビューサイトRotten Tomatoesでも、90%の批評家の支持、82%の観客の支持を得ています。これにより、トラクテンバーグ氏が多くの批評家をも納得させる映画を作れると証明したことになります。また、3月のIGNによるインタビューでエイブラムス氏は、『Portal』と『Half-Life』の映画化企画は動いていると答えていることから、この『10 クローバーフィールド・レーン』のヒットにより映画化企画が前進したとみていいのかもしれません。あくまで仮定ではありますが。

もし、あなたが『Portal』の大ファンで、同時に映画ファンでもあるなら、6月17日公開の『10 クローバーフィールド・レーン』をぜひともチェックしてみてはいかがでしょうか。『Portal』の精神を、そこで観て取れるはずです。
《Daisuke Sato》
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