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【特集】恐怖と笑いの海外ドラマ『死霊のはらわた リターンズ』を、『バイオハザード7』の川田プロデューサーが語り尽くす!

TVドラマ『死霊のはらわた リターンズ』のBlu-ray&DVD発売に合わせ、日本が誇るホラーゲームシリーズ最新作『バイオハザード7』でプロデューサーを務めるカプコンの川田将央氏に、その魅力をゲームクリエイターの視点でたっぷり語ってもらいました。

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1980年代に世界中でホラーブームを築いた、サム・ライミ監督とブルース・キャンベル主演によるスプラッターホラー映画の金字塔『死霊のはらわた(原題:The Evil Dead)』。それから実に35年の時を経て、舞台を映画からTVドラマに移し、『死霊のはらわた リターンズ』として復活しました。

本ドラマシリーズは2015年からアメリカで放送されると、ファンを虜にして人気を博し、ついに2016年12月2日、日本でもBlu-ray&DVDとしてリリースされます。その発売に合わせて、日本が誇るホラーゲームシリーズ最新作『バイオハザード7 レジデントイービル』でプロデューサーを務めるカプコンの川田将央氏に、恐ろしくもどこか可笑しい『死霊のはらわた リターンズ』の魅力を、ゲームクリエイターの視点でたっぷり語ってもらいました。

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――まずは川田さんの自己紹介をお願いします。

川田将央氏(以下、川田): カプコンでゲーム開発のプロデューサーをしている川田将央と申します。過去には、『バイオハザード5』のプロデューサーにはじまり、一貫して『バイオハザード』シリーズの開発に関わっており、現在はシリーズ最新作となる『バイオハザード7 レジデントイービル』のプロデューサーを担当しています。

――さっそくですが、『死霊のはらわた リターンズ』をご覧になった感想は?

川田: 映画の『死霊のはらわた』は、高校生の時にレンタルビデオで見たのが最初でした。あの時はそこまで感じていなかったのですが、『死霊のはらわた リターンズ』では主人公がすごくおバカで笑えるキャラになっているのが良いと思いました(笑)。当時も同じ役をやっていたブルース・キャンベルが出演していたので、懐かしさと、とにかく笑える設定が印象的です。ハードロック系の音楽が好きなのですが、ディープ・パープルやホワイトスネイクが劇中でガンガン流れてきたのが個人的にはツボにはまっています。あと、キャラ立てがしっかりとしているので、ストーリーに入りやすかったのも面白い部分でした。このキャラはこうするんだろうな、と思った通りに動くので安心して見ていられました。例えば、この人はここで失敗するんだろうなと思ってみていたらやっぱり失敗したり(笑)。第3話くらいで悪魔が登場しますが、今の時代はこんな風に見せるのかと思ったり、ちょっと『バイオハザード』チックなデザインだったりで、そういう点でも親近感を覚えましたし、ホラー表現としても面白いと思いましたね。悪魔自体の見せ方も凝っていて、体全体はぶれているのに口だけはぶれていなかったりとか、ゲーム作りにも似た細かいアイディアを入れているんだなあと興味深く感じました。


――ホラーゲームのクリエイターとして特に面白いと感じた部分はどこでしょうか。

川田: ゲームでも、「いかにプレイヤーを引き込むか」が重要ですが、『死霊のはらわた リターンズ』は1エピソード約30分(第1話は41分)という短い時間の中で、次はどうなるんだろうという引きのうまさや、原作映画を見たことがない人でもすんなりと入りやすい導入部からのストーリー構成、わかりやすい新キャラの登場シーンが印象的でした。キャラクターを大切に描いていて、没入感をすごく大切に考えているところがゲームにも通じていますね。アイディア1つ1つの情報量が多く、我々も頑張ろうと考えさせる要素もたくさんありました。個人的には、第1話の序盤に、アッシュがガーターベルトを体に巻いてナンパに行くところが最高です。昔の映画と同じキャラクターなのに、ものすごく歳を取ったんだなと感じられるので、そこで世界観にぐっと入り込めましたね。

――確かに『死霊のはらわた リターンズ』は、当時、映画版を見ていた人も全く知らない人も、すんなりと入り込めるような構成になっていますね。これは過去作をプレイしていなくても最新作だけで十分楽しめるという『バイオハザード』シリーズにも通じるものがあるのではないでしょうか。

川田: それはあるかもしれませんね。『死霊のはらわた リターンズ』を見た人が、これは過去に物語があるのかなというところから昔の映画を見てみようとか思わせる部分もありましたし、映画から続いている感じをうまく世界観の中に散らしている感じはしました。

――映画版の監督だったサム・ライミが、今作の製作総指揮と第1話の脚本を務めていますが、ライミ監督作で好きな映像作品などはありますか。

川田: 思い出深いという点では、やはり第1作目の『死霊のはらわた』ですね。続編も見ていますし、3作目にあたる『キャプテン・スーパーマーケット』のハチャメチャさも好きでした。ピーター・ジャクソン監督もそうですが、アメリカではスプラッター映画出身で出世されている監督は多いと思いますが、ビッグネームになって『スパイダーマン』シリーズなど超大作映画を撮った後に、またスプラッターに戻ってくるのがすごいなと思いますね。


――原作映画に続き今作でもアッシュを演じているブルース・キャンベルについてはどう思われましたか。

川田: 右手の義手をはじめ、過去作の要素をネタとしてしっかりと踏襲している部分がいいなと思ったのですが、ここまでイカれたキャラだったかなと(笑)。そういうところも、新しい魅力に繋がるキャラクター像として再構築しているのかと思いました。

――元祖『死霊のはらわた』や『死霊のはらわた リターンズ』をご覧になって、ご自身が影響を受けたり、今後のゲーム制作で参考にしたいと思った部分はありますか。

川田: 映画の『死霊のはらわた』は、ホラーを語るに外せないクラシック作品だと思います。当時はスプラッターシーンなどをストップモーションアニメで表現していましたが、技術的には古いのに逆に味が出ていて、学生時代は喜んで見ていました。

『バイオハザード7』チームでも、スタッフ全員で「死霊のはらわた」の鑑賞会を行いました。シンプルで低予算、だけどアイデア勝負で映画界に革命を巻き起こした、そんなサム・ライミ先生のパッションを受け取ってほしかったんです。

あの映画が持つ「エグさ」みたいなものは、我々もゲームでもっと描きたいですね。それと、『死霊のはらわた リターンズ』は、巻き込まれ系物語のうまい例だと思います。いわゆるおバカな設定があり、一方ではトレーラーハウスでのリアルな生活感があり、女性警察官アマンダのような現実的なキャラクターもいて、配置がうまいな、と。あの世界観をそのままゲームにするのは難しいですが、飛躍したものとリアルなものとのコントラストは非常に参考になりました。


――テレビシリーズといえば、川田さんがプロデューサーを担当した『バイオハザード リベレーションズ2』も、海外ドラマのようなエピソード配信形式の作りになっていましたね。

川田: 海外ドラマのような物語構成については、もっと勉強したいと思いました。全然違うシチュエーションが次から次に入ってきて、このキャラはどうなるんだろうと、常に引き付けられます。新しいキャラクターが出てくると、一体どういうキャラなんだと気になって仕方ないですし、前のエピソードで張られた伏線が気になって、さらに続きを見てしまうという。最初、『死霊のはらわた リターンズ』は1時間ドラマだと思っていたのですが、実際は約30分作品で、その尺が実はバランスが良いのかなと感じました。

――短くて中身が濃いからこそ、強く引き込ませると。

川田: そうなんですよ。あと、個人的には、ディープ・パープルの「ハイウェイ・スター」がBGMでかかりながら、実際に車の中でアクションをやっているところなど、笑ってしまいました。曲ともマッチングしていて本当にセンスがいいなと(笑)。

――欧米にはスプラッターを一般的に楽しむような文化もありますが、日本はそうではないように思います。国内だけでなく海外でも人気である『バイオハザード』シリーズを作る上で、スプラッター表現で注意している点というのはあるのでしょうか。

川田: 『死霊のはらわた リターンズ』のスプラッターシーンは、確かに血が飛び散っているのですが、良い意味で雑な感じで笑える部分もあるなと。よくある感染系ゾンビものは、ゾンビの血液に触れたらアウトというものがほとんどですが、今作では血が飛び散っても感染することなく大胆に血まみれになるので、そういう部分がスプラッターとして楽しめる要素になっているのかなと思います。逆に『バイオハザード』シリーズは、スプラッターではないという前段がありまして、出血が派手になりすぎないようにしています。『バイオハザード』はホラーであって出血などのスプラッター表現を前面に押し出すゲームではありません。怖いところに行かないといけないという肝試し感のほうが強い感じです。スプラッターのように、怖いものがエンターテイメント的に来る感じとは違うと思っています。


――サム・ライミ作品は顕著ですが、過度なスプラッター表現は、逆に笑いに転化する場合があると思います。ゲームを作る上で、ホラー表現なのにやりすぎでギャグになってしまう境界線は意識しているのでしょうか。

川田: 個人的には、やりすぎたホラー表現によってハイになって笑いに転化するというのはあってもいいと思っています。お笑いを作っているわけではないので極端にやりすぎないようにはしていますが、人間って怖すぎると笑ってしまうと思うんですよね。東京ゲームショウやE3で『バイオハザード7』のVRデモを体験されている人の中にも、泣いているのか笑っているのかわからないような人もたくさんいらっしゃいましたので、感情がピークに達すると笑ってしまうのかなあと。そういうものがあってもいいと思いますし、ゲームの小ネタ的に、良く考えたらこれは変だろ、と笑ってしまうようなものがあってもいいとは思っています。サム・ライミ監督の作品はもっと大胆に笑わせようとするダイナミックなものが多いですが(笑)。


――『死霊のはらわた リターンズ』のような特殊メイクや特殊造形を多用したアナログ的な実写映像と、ゲームでのCG映像だと、ホラーの表現方法が大きく異なってくるように感じますが、いかがでしょうか。

川田: ゲームは実写ではないので、いかに最初に現実感を出すかが重要だと考えます。特にホラーに関していうと、臨死体験のような死を感じさせるイメージを作るためには、リアルなシチュエーションや映像を作らないといけないと思っています。その意味で、『バイオハザード』シリーズは昔からグラフィックにこだわって作っていて、最新作『バイオハザード7』でもリアルなシチュエーションを作るために、フォトリアルな映像を目指してゲームエンジンから作り直しています。ただ、キャラクターに関しては、映画やドラマと比較したときに学べることも多いと感じます。空を飛んだり体がバラバラになったりするのはゲームではむしろ簡単ですが、さらにリアルな恐怖体験に結び付くアイディアもあると思っています。実写映像は表現に制限があり、ゲームのように観客に行動の選択権があるわけでもありません。映画やドラマには物語に没入させるための引きの強さが求められますが、ゲームは逆に引きが強すぎるとプレイヤーにインタラクティブ性の薄い一方通行だと受け取られてしまいます。上手に物語の展開を選ばせて、作品に引き込むのではなく押してあげる感じ、そういった違いが両者にはあるかと思います。


――『バイオハザード7』では、アッシュのような強烈なキャラクターではなく、主観視点によるプレイヤー目線に近いキャラが主人公となるわけですが、そういった点でも常に三人称である映画とゲームでは見せ方に違いはあるということですか。

川田: 『バイオハザード7』ではアッシュのように強烈な個性を持たせるのではなく、あえて無個性なものにして、できるだけプレイヤーに等しい平均的なキャラクターで没入感をより作れるような設定にしています。主人公像という部分では、ゲームと映画・ドラマでは求められるものが明らかに異なるのではないでしょうか。特に『バイオハザード7』に関しては、これまでのクリスやレオンのようなヒーロー的キャラクターをあえて出さずに、より力のないキャラクターで、どうやって問題を解決していくのかを体験してもらえるように作っていいます。そういう点で、実写とゲームでは明確な違いはあると思いますね。

――最後に、ゲームファンに向けて、『死霊のはらわた リターンズ』のおすすめポイントを教えてください。

川田: お約束的な展開いっぱいあるのですが、見ていくと想像を超えた展開へと発展していくところが一番楽しい部分かなと思います。怖いけど楽しくて、スプラッターシーンでは爽快感を味わえるという稀有な作品だと思いますので是非観てください。オリジナルの『死霊のはらわた』は『バイオハザード7』の開発にも非常に影響を与えたタイトルですが、併せて見ていただくときっと『死霊のはらわた リターンズ』がもっと好きになると思います!

――本日はありがとうございました。


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「すべては恐怖のために。」シリーズ最新作『バイオハザード7 レジデントイービル』は、 PlayStation 4、Xbox One、PCに向けて2017年1月26日発売予定。PS4版は話題のPS VRにも完全対応。

『死霊のはらわた リターンズ』は、2016年12月2日に、ブルーレイBoxとDVDコレクターズBoxが発売予定。価格はブルーレイBox が8,000円(税別)、DVDコレクターズBoxが6,000円(税別)です。いずれも特典として非売品のポストカード5種セットが封入されます。

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《Daisuke Sato》
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