
『パタポン』の精神的後継作として、発表以来注目の的となっているリズムローグライクアクション『ラタタン』。ジャンル名通りリズムとローグライクを融合させ、「ラタタン♪」とリズムに乗って戦うゲーム性が特徴です。Kickstarterキャンペーンでは驚異的な成功を収め、多くのゲームファンの期待を背負っています。
そんな本作は、京都・みやこめっせにて2025年7月18日から開催している、日本最大級のインディーゲームの祭典「BitSummit the 13th(以下、BitSummit)」に出展中!
今回、Game*Sparkではプロデューサーの坂尻一人氏と、ゲームデザイナーの小谷浩之氏に会場にてインタビューを行いました。改めて“リズムローグライク”というジャンルを深堀りし、そしてユーザーと真摯に向き合う開発姿勢まで、詳しく聞いた内容をお届けします。

『ラタタン』は“お題に応える”リズムゲームじゃない。「自分が音楽を紡ぎ出す」楽しさを。
――本作はリズムゲームとローグライクを組み合わせた、珍しいジャンルだなと感じています。それぞれで作るのではなく、これら2つのジャンルを融合させようと思った経緯を教えてください。
坂尻氏:やはり『パタポン』の小谷が作るということで、リズムゲームであることは決まっていました。そこから、インディータイトルとして世界に挑戦するにあたり、どんなジャンルが良いか話し合う中で、「ローグライクにチャレンジしてみよう」となったのがきっかけです。
――リズムとローグライクの組み合わせというと、個人的には『クリプト・オブ・ネクロダンサー』を思い浮かべました。そういった既存タイトルや、やはり『パタポン』からは一線を画すような、全く異なるゲームにしようとは意識されましたか?
小谷氏:正直なところ、あまり意識はしていません。本作の一番大きな特徴として、プレイヤーがリズムに「従う」のではなく、プレイヤー自身が音楽を「作っていく」感覚というものがあるんです。
プレイヤーのアクションがコールとなり、ゲームからレスポンスが返ってくる。そのやり取りで音楽を紡ぎ出していくところが、既存タイトルとの本質的な違いです。リズムに乗って遊ぶだけでもすごく楽しいけれど、ちゃんと乗ったリズムに対してゲームがフィードバックしてくる。そういう意味でも、リズムとローグライクアクションを完全に融合できたかなと思っています。
『パラッパラッパー』をはじめ、多くのリズムゲームは出されたお題に正確に応えるという文法で作られていますが、『ラタタン』ではそれとはまた違う路線を目指したかった。
僕は音楽が好きだけれど、演奏はそんなに上手くないんですよ(笑)。なので、楽器が弾けない人でも、自分が音楽を奏でているような感覚をエンターテイメントにできないかと、PS2の時に作った『ブラボーミュージック』からずっと考えていました。そのひとつの答えが、この『ラタタン』や『パタポン』なんです。

目指したのはカラフルで新しい世界
――そうなんですね。『ラタタン』は一目見て「『パタポン』だ!」と思えるようなビジュアルですが、あえて『パタポン』を意識されてるのでしょうか?
坂尻氏:ビジュアル自体は、白黒のシルエットが基調だった『パタポン』とは全く違う、カラフルな世界を目指しました。キャラクターデザインはNelnalさんにお願いしているので、その持ち味を活かしたデザインになっています。
ただ、Nelnalさん自身が『パタポン』への強いリスペクトを持ってくださっていて、それがやっぱり強く伝わっているんじゃないかな。片目だけを見せるデザインなど、随所に現れています。
――『パタポン』ファンはもちろん、新規ユーザーもついつい惹かれてしまうビジュアルですね。新規といえば、近年はローグライク系が流行っているので、リズムゲームであまり遊ばないユーザーも本作に期待しているのではないかなと思うのですが、リズムとローグライク、どちらのファンをメインターゲットとして想定されていますか?
小谷氏:入り口としてはリズムゲームファンを意識しています。ですが、そこからローグライクの「プレイするたびに新しい体験ができる楽しさ」や「どこまで行けるか挑戦する楽しさ」も味わってほしいですね。
また、ローグライクというと「一度死んだらリセット」という側面もありますが、本作では軍団を育てていく楽しさも重要視していますね。冒険で得た報酬で武器が強くなったり、仲間が増えたりと、継続的な成長要素も用意しています。
ガチガチのローグライクに意気込むというよりは、ローグライクのおいしいエッセンスを取り入れつつ、ゲーム内でズラッと並ぶ小さいキャラクターたちによる自分の軍団を愛でて育てていってみてください。

――100体以上のキャラクターが、わらわらと動く軍団のビジュアルは圧巻ですね。
坂尻氏:まさに、ちっこいキャラクターたちが群れをなしてぶつかり合う、というのが最初のイメージでした。実はこれ、小谷が『パタポン』でやりたくても実現できなかったコンセプトなんです。
小谷氏:実は『パタポン4』のコンセプトアートみたいなものがあります(笑)。


ユーザーの声が開発の羅針盤。フィードバックに応えるための早期アクセス延期
――ええ! それは重要情報ですね。ますます『パタポン』ファンが楽しみにしていそうな中ですが、先日には早期アクセスの延期が発表されました。残念ではありましたが、延期理由を見て、非常に真摯にユーザーと向き合っていると感じています。今回のような出展やデモ版配信を経て、そんなユーザーからの反響はいかがですか?
坂尻氏:Steam Nextフェスではデモ版をリリースし、25万以上ダウンロードしていただき、アンケートにも3,000件を超える好評の声と要望のフィードバックが寄せられました。そのひとつずつに目を通し、応えていこうとすると、やはり当初予定していたスケジュールでは時間が足りない。
特に、『パタポン』からではない、本作からの新規ユーザーの方から「ゲームのルールが分かりにくい」という声が多く、せっかく興味を持ってくれた方を序盤でつまずかせるわけにはいかない、という思いが強くありました。
小谷氏:新規のユーザーさんが混乱されている部分を、まずはなんとかしたかった。ファンの皆さんからの要望に応えるのはもちろんですが、早期アクセス開始までにゲームの入り口を分かりやすく整備することが最優先だと判断しました。
坂尻氏:Kickstarterから始まったプロジェクトなので、バッカーの皆さんはもちろん、これから遊んでくださる方々も「開発チームの一員」と捉え、一緒にゲームを良くしていきたいと考えています。

――そんなKickstarterではストレッチゴールも達成され、ミニゲーム追加が決定していますよね。そのミニゲームも楽しみです。すでにどのようなものかなどは決まっているのでしょうか?
小谷氏:ちょっとまだハッキリしたことは言えないですね……。本当に、ゲーム本編を長く遊んでいただくための整備に注力しています。
坂尻氏:お約束したものは、なんとかして達成しなければと思っています。ただ、まずはベースとなるゲーム本編の完成度を上げ、皆さんに満足してもらうことが第一です。現在はそこに全力を注いでいますので、期待してお待ちいただければと思います。
――同じくまだ詳細が見えてこないストーリーは、明るいや壮大なスケールになるなど、どのような雰囲気になりそうでしょうか?
小谷氏:あまりストーリーを前面に押し出すのではなく、プレイヤーに「こうだったのかな?」と想像してもらえるような形にしたいですね。キャラクターたちの会話から、さりげなく世界観を読み取ってもらう。クリアしたら終わりのゲームではなく、ずっとその世界に居たいと思ってもらえるような、キャラクターたちが生きていると感じられるゲームを目指しています。
――リズムはノリを求めて、ローグライクはやり込みを求めて。まさに融合したジャンルは両方とも無限に遊び続けてしまうものだと思います。私も音楽が聴きたくて、フルコンプした後も何度もリズムゲームで遊んでしまうことがあります。ずっと遊びたくなるようにするための難易度は、どのようなレベルですか?
坂尻氏:実は、かなりアクション性が高いゲームになっています。
小谷氏:もちろん、誰でも気軽に楽しめるように調整していますが、プレイヤーが自ら遊び方に“縛りプレイ”を設けることもできる。遊び方次第では、リズムゲームとしてより高い難易度とリターンに挑戦できるようになっています。
オプションで設定を変えるのではなく、遊びの中で自然に高難易度に挑めるような仕組みです。腕に覚えのあるプレイヤーも、きっと満足できる手応えになっているはずです。

――リズムとローグライク、『パタポン』を求めるユーザー、そして気楽に手を出せるだけでなく縛りプレイまで楽しめる。誰でも長く深く遊べる作品になりそうですね。本日はありがとうございました!
今回、開発者インタビューをお届けした『ラタタン』は、PC(Steam)にて配信予定です。まずは早期アクセス開始を楽しみに待ちましょう!『ラタタン』試遊もできる「BitSummit the 13th」は、7月20日まで京都・みやこめっせにて開催中です。













