
ゲームクリエイター・小島秀夫監督のSNSの投稿写真を見ていると、必ずといっていいほど隣に誰かが写っていますよね。映画監督、俳優、ゲームクリエイター、そして時には謎の人物も。
この連載コーナー「となりのヒデオ」では、そんな小島秀夫監督の“隣にいる人々”を徹底解剖していきますが、今回は番外編をお届けします! 自分の姿が収められた写真以外にも「観た映画」「聴いている音楽」「読んでいる本」などなど様々にシェアしている小島監督の投稿から、今回は名作海外SF小説をご紹介します。
今回の「小島監督が買ったモノ」は「ウは宇宙船のウ / レイ・ブラッドベリ」!
小島監督が購入したこちらの小説は、海外SF作家レイ・ブラッドベリによる短編集「ウは宇宙船のウ」。収録されているのは、表題作を始めとする全17編です。英語版のタイトルは「R is for Rocket」で、“アールはロケットのアール”を“ウは宇宙船のウ”と翻訳するセンスが非常にグッドですね。
小島秀夫との関係
レイ・ブラッドベリの著作は「ハイテクなガジェットと武器を駆使して、ロボットや異生物と戦う」というような激しい展開はほとんどなく、叙情的な作風とそれでいてSF的な魅力が詰まった設定が特徴的です。2023年11月、小島監督はananwebの記事で下記のようにレイ・ブラッドベリ作品について言及していました。
イーロン・マスク氏がツイッター社を買収、「X」と名称を変えた際、ある噂が流れた。「10年以上前の投稿画像データは全て消される」と。幸いデマではあったが、それはいつ起こってもおかしくはない。
政変や紛争、大災害などでサーバーが沈黙したら、蛇口どころか、何も残らない。デジタル版『華氏451度』(注3)さえ現実になりかねない。しかし、化石や壁画、ピラミッド、彫刻などフィジカルなものは、風化しても何千年もの時を超えて残る。それらには歴史の残り香がある。肌触り、重量、匂いがある。デバイスを必要とせず、思いを馳せることができる。劉慈欣の『三体』の、“文明のなかで最も残るメディアは石に刻まれた文字だ”、という記述を思い出した。
(中略)
注3:レイ・ブラッドベリの小説で、本の所持や読書が禁じられた架空の社会が描かれている。
※ananweb 小島秀夫「僕のクローゼットは、映画や本や音楽たちとの“思い出”を保管する場所」より
「ウは宇宙船のウ」には、「太陽の金色(こんじき)のりんご」などレイ・ブラッドベリの著作としてキャッチーな短編が揃えられています。中でも「霧笛(むてき)」は、1953年のモノクロ特撮映画「原子怪獣現る」の原作でもあります。こちらの作品は『MGS3』『MGSΔ: SNAKE EATER』でパラメディックとの無線通信でも登場するので、もしかしたら見覚えのあるゲーマーも多いかもしれません。
ちなみに翻訳者の中村融さんはSF作品をメインとする超ベテランで、ウェルズの「宇宙戦争」なども担当されています(こちらも映画版がパラメディックとの通信で言及されてましたね)。
レイ・ブラッドベリは「火星年代記」「華氏451度」といった長編でも大きく作風が変わらないので、この短編集に興味が湧いた方はあわせてチェックしてみてもいいかもしれません。短編集「10月はたそがれの国」も翻訳のセンスが素晴らしく、ゲーム関連だと『ライフ イズ ストレンジ』の重要人物が作中で言及していることでも知られています。
小島秀夫の新作ゲームに登場する可能性は……?
レイ・ブラッドベリに関連するトピックが小島秀夫監督の新作ゲームに登場する可能性は、23%(スパくん考案の独自計算式で算出)です。
小島監督はゲームの中で、様々な作品を引用したりモチーフとして使ったりしていますよね。枚挙に暇がないのですが、直近ではネヴィル・シュートの小説「渚にて」がまず特筆すべき作品でしょう。なにせ原題はその名もズバリ「On the Beach」です。
そんな小島監督の作風から、レイ・ブラッドベリの作品がテーマ、モチーフ、引用元として使われる可能性はゼロではないと判断しました。なお、レイ・ブラッドベリは2012年6月に逝去されているため、本人登場の可能性はまず考えられません(ちなみに同氏は2001年に「ゲーム」について厳しく批判するメッセージも出していたそうです)。
何はともあれ「ウは宇宙船のウ」を始めとしたレイ・ブラッドベリの小説は、秋の夜長を過ごすときにぴったりな作風です。今のうちにチェックしておくと、もしかしたら彼の新作ゲームをプレイするときに「おっ!これは!」と驚ける日がやってくるかもしれませんね。
『OD』ならびに『PHYSINT(仮)』の続報は未だに届けられていませんが、ラジオ番組「KOJI10」やコジマプロダクション10周年記念イベント「Beyond The Strand」などなど、活発な動きが気になる昨今。まだかまだかと新情報を待ちつつも、思索にふける読書の秋を過ごしてみてはいかがでしょうか。







