巨女に射ぬかれ、そびえたった心臓を見上げる…『Eclipsium』はやればやるほど輪郭がぼやけていく怪作【プレイレポ】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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巨女に射ぬかれ、そびえたった心臓を見上げる…『Eclipsium』はやればやるほど輪郭がぼやけていく怪作【プレイレポ】

不気味な世界観と神秘的な映像が強烈な印象を与えます。

連載・特集 プレイレポート
巨女に射ぬかれ、そびえたった心臓を見上げる…『Eclipsium』はやればやるほど輪郭がぼやけていく怪作【プレイレポ】
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9月19日、ローレゾなグラフィックが特徴的な一人称アドベンチャー作品『Eclipsium』がリリースされました。

今作のパブリッシャーであるCRITICAL REFLEXは、先日9月16日に終末世界で怪物と人間を見分ける『No, I'm not a Human』や、トロリーバスの乗客を取り締まる『TROLEU』の話題作を続けてリリースしており、『Eclipsium』も上記の二作に続く形でリリースされました。

開発のHousefireはスウェーデンの職業訓練学校で出会ったメンバーから始まった、わずか6人で構成される小規模なインディー開発チームです。『Eclipsium』はHousefireの処女作ですが、本編のリリースに先立って公開されたDemo版では300件近くのレビューと「非常に好評」のステータスを獲得しています。

今ノリノリのパブリッシャーと新進気鋭の開発からリリースされた『Eclipsium』とはいったいどのような作品だったのか。本記事では『Eclipsium』のプレイレポートをお届けします。

※記事の制作にあたっては、CRITICAL REFLEXよりSteamキーの提供を受けています。

これは夢かはたまた幻覚か?脳を焼かれるトンだ世界観

ゲームを開始すると夢か現実か判然としない世界の終りのような映像が流れます。海にたたずむ巨大な存在、点滴される人の手、まるでランダムなモチーフが次々に映し出されているようなオープニングです。

どこかの部屋を俯瞰するような視点が映ったかと思えば…

気がつくとプレイヤーはやたらとリアルな質感を持つ右手を携えて病室のような場所にたたずんでいます。

どうも、ただの病室ではないようです。砂嵐の流れるモニターや扉に植物の根のようなものが這っています。

病室を探索していると医療用のハサミを発見。これを使ってあの根を取り除くのでしょうか?

扉の近くに立ち左クリックを押すと、先ほど見つけたハサミで自身の舌を切り取り、扉に備えられた天秤に差し出しました。扉は開き、プレイヤーは何事もなかったかのように歩き続けます。どういう世界観なんでしょうか。

あまりの唐突さに絶句

先へと進むと病院の待合室のような場所に辿り着きます。この場所は本作のリスポーン地点で、ゲームオーバーになるとここで復活することになります。

建物から外に出ると、そこには心臓が掲げられた巨大な石像が佇む異様な景色が広がっています。空は赤く、環境音がやけに響く不思議な空間です。

まるで邪神のようなたたずまい

また『Eclipsium』には多くの場面で女神信仰を思わせる石像が見られます。先ほどの邪神のような石像と何か関係があるのでしょうか?

何かを祈るような、慈悲を与えるような

足場がやたらと崩れるアスレチック然とした木像建築物に怯えながら、さらに歩みを進めると無数の斧が刺さった木に行き当たりました。

何かインタラクト出来るのかと木の前で左クリックを押すと唐突にムービーが流れ出しました

紅茶を注ぐ女性の両手。少し熱かったのか紅茶を脇に寄せ、目の前にある手紙に視線を移します。少し躊躇した末に手紙を読もうとしたその瞬間、大きな振動が。窓の外には爆発する街や撃ち抜かれる人間の姿が見えます。

気がつくとプレイヤーの右手の筋肉が、まるでノコギリの刃のように変化しています。なんで? わずか3回の手刀で大木を切り倒し先に進みます。

なかなかできない、手刀で伐採は

また、ある場面では右手に炎を灯す能力を得ることにもなります。これらの右手に宿る超常的な能力は徐々に増えていき、プレイヤーのゆく手を阻むギミックを取り除くのに役立つことになります。

プレイヤーは様々なロケーションを巡り続けます。テキストは殆ど登場せず、ゲームプレイとしても、とにかく前に進むことが目的となります。

そして前に進めば進むほどに『Eclipsium』は美しくも、不可思議な景色を見せ続けてくれます。

例えば、ボートで川に出る場面では雨が降ってきたと思ったら魚が降ってきました。よく見ると雨も赤く、ボートに叩きつけられた魚も血に染まっています。

また今作はビジュアルだけでなくサウンドも印象的で、この場面ではボトボトッと魚が木に叩きつけられる音を主役に、BGMでは土着信仰を思わせる宗教的なBGMがシーンが盛り上がりを見せます。

Demo版でも特に印象的だった、巨大な女性に見つめられ続けられる場面も強烈です。彼女に近づくとプレイヤーの視点移動は無効となり、彼女の丸い目に ”釘付け” にされます

視点が動かせないので背中で地形を把握しながら、視線を一切離すことなく彼女の視覚の外へと逃げ出します

彼女は大きな体と目でプレイヤーをどこまでも追ってきます。Demo版でも同じシーンを体験しましたが、同じ場面をプレイしてもその衝撃は薄れません。

綺麗な目をしています

『Eclipsium』において、プレイヤーの視点に干渉してくるような巧みな仕掛けは何度か見られ、それぞれの場面を印象的なものにしていました。


以上スクリーンショットを中心に『Eclipsium』のプレイレポートをお届けしました。

プレイの中で感じたのは「この世界をプレイヤーに見てほしい!」という開発の気概でした。

今作には超常的な能力を使ってギミックを解く場面もありますが、ほとんどは簡単な探索で自然に解ける難易度のものしか用意されていません。またアクションと呼べるような要素もほとんど存在しません。

今作が焦点を当てるのは、その色使い、アングル、モーション、そして音楽によって構築された奇妙な美しさにほかなりません。

一方で『Eclipsium』の呪術信仰的なモチーフの氾濫はプレイヤーに困惑をもたらします。この作品は何を表現しているのか?と頭を悩ませ、歩みを進めるごとに考察の輪郭はむしろボヤけていきます

しかし、それは決して投げっぱなしによる無秩序の産物ではない、とプレイを終えた今なら断言できます。「この世界をプレイヤーに見てほしい!」という開発のビジュアルに対する気概と同様に「この作品の伝えたいこと」はゲームを終えることで伝わってくるはずです。

美と困惑を喚起するこの奇妙な世界の結末を、ぜひ自身の目で見届けてほしいと強く思います。

『Eclipsium』は現在Steamで配信中です。

ライター:ようげ,編集:みお

ライター/3D空間を一人称視点で歩くのが好きです。 ようげ

隠れた宝石のようなゲームを日々探しています。 英日ゲーム翻訳者としても活動中。

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編集/取材も執筆もたくさんやる、半ライター半編集 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。

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