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『コール オブ デューティ ブラックオプス II』開発元Treyarchのシニアプロデューサーに聞く

11月22日に国内でも発売を迎えた『コール オブ デューティ ブラックオプス II』。本作の開発を担当したTreyarchでシニアプロデューサーを務めたPat Dwyer氏が来日。スクウェア・エニックス本社にてインタビューに答えてくれました。

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11月22日に国内でも発売を迎えた『コール オブ デューティ ブラックオプス II(Call of Duty: Black Ops 2)』。本作の開発を担当したTreyarchでシニアプロデューサーを務めたPat Dwyer氏が来日。スクウェア・エニックス本社にてインタビューに答えてくれました。

―――「コール オブ デューティ」シリーズは日本でも回を重ねる度に人気を増してきました。発売を迎えた今の心境を聞かせてください

Pat Dwyer: とても興奮しています。日本では字幕版だけでなく、吹き替え版も来月には発売される予定になっていますので、そちらも楽しみにしています。

―――米国では一足早く発売されましたが、ユーザーの反応はいかがでしょうか?

まだ発売されたばかりなので、語るのは少し早い気がしています。ただ、『コール オブ デューティ ブラックオプス II』ではどんな趣向のお客様に対しても満足いただけるような内容を盛り込めたのではないかと考えています。キャンペーンモード、マルチプレイモード、ゾンビモードの全てで新しく、革新的な新要素を導入しています。

―――全てのモードが大幅に強化され、非常にボリュームのあるゲームになったように感じます。開発期間やチームの規模を教えていただけますか?

Treyarchでは前作『コール オブ デューティ ブラックオプス』の開発が終わった直後から続編の開発に取り組んできました。ですので期間としては約2年ということになります。スタジオでは約250名のスタッフが本作に携わりました。


  ■悪者を描いたことで深みが出た
―――その続編はどのように構想されていったのでしょうか?

そうですね、まずは元々開発チームとして取り組みたいという方向性が幾つかありました。その一つが、記憶に残る悪者を描くということです。今までのシリーズでは無かった試みです。悪者を描くことによって、ゲームに幅が生まれ、物語には深みが生まれました。ストーリーを進めようというモチベーションになるのです。今回はシリーズ史上最凶の悪人ラウル・メネンデスがキャンペーンモードを牽引していきます。ゲームを進めていくとプレイヤーは彼が一体何者なのか、なぜこのような事をするのか、悪役なのに共感を抱いてしまうような、それくらい深くキャラクターを作り込みました。

―――脚本を書かれたデヴィッド・S・ゴイヤー氏(※)とはどのようにしながらストーリーを構築していったのでしょうか?

一番最初のストーリー構築の部分では、お互いにやりたいことやアイデアのピースを持ち寄って議論を繰り返すということを行いました。その後の開発段階でも、スクリプトやキャラクターが出来上がるのと平行して、開発中のゲームやそれを収めた映像を確認いただきながら、更にストーリーとして付加すべきことはあるのか、もっとストーリーを的確に伝えるためのアイデアはないのか、などアドバイスをもらったり、議論をしたりしながらストーリーを作り上げていきました。今回は様々な分岐が仕掛けとしてあり、プレイヤーの選択によって未来が変わっていきます。そこに深みをもたらすという点でデヴィッドさんと一緒に仕事をしたのは大きかったと感じています。

※デヴィッド・S・ゴイヤー氏 映画脚本家。「バットマン ビギンズ」の共同脚本、「ダークナイト」「ダークナイト ライジング」の原案など多数の映画脚本を手掛けた実力派

―――ストーリーとしては「家族」と「2つの冷戦」というテーマでしょうか

家族の物語というのはテーマとして確かにあります。80年代と2025年代という長い時間軸での家族の絆を、時間を超えて描くということです。そして2つの冷戦に代表されるように、背景にあるのは戦争です。非常にパーソナルな家族というテーマと、非常に大きな戦争というテーマが交差しています。戦争という時代の中で、個人は選びたくないような選択肢を迫られる場合も多くあります。その選択肢の重さを、分岐というゲームシステムで描いています。

―――ストーリーが分岐していくというアイデアはどのように生まれたのでしょうか?

分岐はキャンペーンモードをより良くしていく為には何が必要かという議論から生まれました。プレイヤーの選択によってストーリーが分岐していくと、選択は適当にやって良いものではなくなります。選択はゲームを左右し、プレイヤーにとって大事で真剣なものになります。真剣に考えることでプレイヤーはもっとストーリーに引きこまれていきます。本当にその世界を体験しているような感覚を得られるようになります。分岐を入れるというのは一つにこういう効果を狙いました。

もう一つは、何度も遊べるキャンペーンモードにしたかったということです。分岐していくということは、自分が選んだ未来とは異なる未来が存在し得るということです。そうすると何度も遊びたくなっちゃいますよね? 折角、お金を出して買ってもらったゲームですので、何度も何度も遊べるものにしたかったんです。

―――どのくらい楽しめるものなのでしょうか?

それは凄く複雑な計算が必要ですね(笑)。ただ言えるのは、分岐は単純に「Aを選べばこっち、Bを選べばこっち」という風に明確な選択肢として提示されるだけでなく、ステージ中に通るルートによって分岐するなど必ずしもプレイヤーには明確ではない形で分岐する場合もあります。そこがストーリーに深みを増していると思います。

―――80年代にプレイヤーが選んだことが2025年に大なり小なり影響を与えていくと

その通りです。前作では60年代から80年代の世界を描きました。今作ではその続きで80年代から未来へと繋がっていきます。その歴史は色々な人の選択によって紡がれてきたものです。プレイヤーには、その選択の重さを楽しんで貰いたいと思います。

―――シリーズとして初めて未来の世界を描きました。それはゲームにどのようなものをもたらすでしょうか?

2025年の世界を描くことはストーリーとしてもゲーム性としても面白いものが得られると考えました。ストーリーについては先程述べた通りで、一つ一つの選択が未来に繋がっていくことが描けました。

ゲーム性としては未来の兵器や機器を登場させることができました。ただし、2025年という約10年先の十分に想像可能な未来ですから、非常にリアリティを持って描くことに注力しました。例えば遮蔽物の向こうを覗くことを可能とする「ミリメートルウェーブスキャナー」、遠隔操作で空中を飛ぶ「クアッドローター」といったものは現在研究が進められていて、実際に10年後に存在し得るものです。

こうした近未来の軍事技術についてはワシントンDCで活動し、専門のコンサルタントとして著名なピーター・W・シンガー氏に協力を仰ぎました。彼は「Wired for War: The Robotics Revolution and Conflict in the 21st Century」(Wired for War: ロボットの革命と21世紀の紛争)という書籍もあるくらいこの分野に精通していて、彼と一緒に今後10〜15年後に開発されているだろう兵器について議論しました。


  ■マルチプレイモードも拡充
―――マルチプレイモードは前作の段階でかなり完成されている印象でしたが、今回更に一歩進むために取り組んだことはどのようなことでしょうか

もちろん前作で良かった点は残しつつではありますが、開発者としては常に新しい体験を導入していきたいと考えています。今回のポイントとしては「Pick10」というシステムが挙げられるでしょう。これは、様々な武器やアイテムにコストが発生し、プレイヤーは10ポイントまで好きな組み合わせで装備して戦えるというものです。これによって好きな武器や装備を組み合わせられるようになり、戦略性が増しました。

一方、マルチプレイモードは初心者には敷居が高いものです。その敷居をなるべく低くしたいと思い、「コンバットトレーニング」というモードも新設しました。こちらは初心者の方がマルチプレイモードに慣れるための内容を詰め込んでいます。過去の練習モードではNPCを相手にするだけでしたが、今回は初心者同士で一緒に練習するようなことが可能になりました。ここで練習をすることで経験値やレベルも一定まで上げることができますので、ここを登竜門にして是非他のモードにもチャレンジして欲しいですね。

―――初心者にとってはマルチプレイモードに入るのは勇気が要りますからね

僕もですから(笑)。開発チームの人たちはみんな上手くて・・・。

―――ゾンビモードについてはいかがでしょうか?

ゾンビモードでも幾つかのモードを追加しています。「トランジット」というモードでは、ストーリー性を重視したものになりました。一つのステージに留まるのではなく、バスを使って移動をしながらゾンビから生き残り、世界に隠された謎を探っていきます。ゾンビという世界観の中で、今までよりもっとストーリーがあり、遊びごたえのあるような深いゲームを実現しようと思ったんです。

「グリーフ」というモードでは最大8人まで対応し、4対4でゾンビと戦っていくモードです。こちらは、こんなパーティゲームがあったら楽しいなと考えながら作りました(笑)。

―――ゾンビモードをマルチプレイモードのエンジンに載せ替えることによって何が変わったのでしょうか? (前作まではキャンペーンモードのエンジンを使用していた)

ゾンビモードでも、もっとオンライン要素を強くしていきたいと考えました。「グリーフ」であれば最大8人までに対応しましたし、リーダーボードは全てのモードで利用できるようになりました。オンラインを強化するということを考えると、オンラインに強いマルチプレイモードのエンジンに切り替えるのが合理的だと考えました。

―――ゲーム全体のエンジンとして前作から進化したポイントがあれば教えて下さい

全体的に大きく進化したと思います。グラフィックも、Fast-Paceなオンラインプレイも、エンジンの進化なくしては実現できませんでした。技術面だけでなく、チームのメンバーもシリーズに対する理解が深まり、ツールの使い方の理解も深まってきました。各自がプライドを持って、自分の持ち場を良くしていくことでゲーム全体が大きく前に進んだと思います。

―――本作は超大作シリーズの最新作でありながら、数多くのチャレンジを行い成功しています。開発者として、こうした作品で革新を行なっていくために必要なのは何だと思われますか?

もちろん、非常に多くのユーザーに支持されているゲームでプレッシャーは非常に大きいものがあります。ただ、その緊張感はゲーム開発者としては常に持っている、あるいは持っているべきもので、その上で何か新しいものを提示することが求められると思います。当然、新しいチャレンジはリスクが付きものです。それでも、熟考し色々な人に意見を求めながら、新しいものを導入することが良いものを作ることに繋がると信じています。

―――最後に発売を楽しみにしている日本のユーザーにメッセージをお願いします

今回の作品も、楽しみにしているファンの皆様のために、開発現場のメンバー全員が特に心を込めて作ってきました。ぜひトライして貰いたいと思います。

―――ありがとうございました

約1時間のインタビューに答えてくれたPat Dwyer氏。実は約5年間、日本に住み、ゲーム開発を行なっていた経験があるとのこと。最後のメッセージは日本語で伝えてくれました。

『コール オブ デューティ ブラックオプス II 字幕版』はプレイステーション3、Xbox360、PCで発売中、『コール オブ デューティ ブラックオプスII 吹き替え版』はプレイステーション3、Xbox360、Wii Uで12月20日に発売予定です。

Pat Dwyer氏

Pat Dwyer氏


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