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【コラム】カオスでハードコアな『ディアブロ』の呪い

私のPCゲーマー人生において最も悔やまれる事柄のひとつは、1996年にBlizzardが世に放った初代『Diablo』のPC版をリアルタイムでプレイしていないことである。 最初に手に取ったのは、PC版から実に2年後に移植されたプレイステーションの『ディアブロ』日本語版だった。

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【コラム】カオスでハードコアな『ディアブロ』の呪い
  • 【コラム】カオスでハードコアな『ディアブロ』の呪い
私のPCゲーマー人生において最も悔やまれる事柄のひとつは、1996年にBlizzardが世に放った初代『Diablo』のPC版をリアルタイムでプレイしていないことである。 当時、『Tomb Raider』などのシングルプレイのPCゲームはかろうじてプレイしていたものの、自宅のネット環境が整って本格的にオンラインゲームに身を投じたのは『Ultima Online』あるいは『EverQuest』からで、機会を逃してしまったのだ。

そんな私が最初に手に取ったのは、PC版から実に2年後に移植されたプレイステーションの『ディアブロ』日本語版だった。 しかし、プレイした記憶は薄っすらとしか残っておらず、血だらけの拷問部屋から意表をついて突撃してきたブッチャーに腰を抜かして悲鳴をあげたことだけが今でもトラウマのように脳裏に焼き付いている。


■ 『Diablo II』の何がすごかったのか

2000年になり、MMORPG『EverQuest』のプレイを継続していた最中、仲間の間でも話題で持ちきりだった『Diablo II』が発売されて、サンクチュアリの世界に一歩足を踏み入れると、私はその呪いのような魅力に完全に取り憑かれ、そのまま帰らぬ人となった。

『Diablo II』の何がそれほど面白かったのだろうか。 一つのジャンルを確立したと言っても過言ではない、トレハン(アイテム集め)やスキルツリー、自動生成のマップからなる「ハックアンドスラッシュ」としての楽しさは既に言い尽くされている通りだが、私が最も気に入ってたのは、ほとんどのBlizzard作品に共通するアクションの「気持ちよさ」やビジュアル・サウンド面における「作り込み」の部分。

ゲームスタート地点のローグキャンプでプレイヤーが近づくと逃げていく鶏、プレイヤーが上に乗るとクチャっと音を立てて潰れる虫、風になびくソーサレスの長い黒髪、息づかいが聞こえてきそうな肩の動き。 アマゾンの放つユニークボウガン「Buriza-do Kyanon」の攻撃で凍結した敵を、バーバリアンが両手に持った棍棒で生々しい音を立てながら殴りつけると、バラバラの氷片に砕け散る……。これらがやや粗っぽい2Dのスプライトアニメーションでいきいきと描かれる様に衝撃を受けた。 とりわけグラフィック表現に関しては、当時の日本の2D格闘ゲームの影響も少なからずあったと感じるディテールの細かさだった。


■ カオス・サンクチュアリ

「クラシック」あるいは「バニラ」と呼ばれている初期の『Diablo II』は、やや不安定なゲームバランスとBattle.netのサーバー状況も手伝って、まさに混沌とした世界だったと記憶している。 私が初めてラスボスのディアブロ戦に挑んだ時も、パーティーメンバーだったアマゾンが乱射するマルチショットで敵はほとんど画面に現れる前に一掃され、その激しい画面処理により私の非力なスペックのPCはフリーズ。ラストステージ「カオスサンクチュアリ」の最後の広間にやっとの思いでたどり着くと、他のプレイヤーの姿は既になく、巨大なディアブロの亡骸といくつかのゴミアイテムが転がっているだけであった。

その頃、私が愛用していたクラスはパラディンで、ゲームを購入して最初に作ったのも、周囲のモンスターに連続で近接攻撃を繰り出すスキル「Zeal」を主体としたキャラ。 私が何も知らずに「Zeal」にスキルポイントを振りすぎたせいで、攻撃モーションが異様に長くなり、剣を振り終わる前に死んでしまうという使えないヤツに育ってしまう。 その後も、多種多様なスキルビルドのキャラクターを数えきれないほど作っては、「カオスサンクチュアリ」目指して新しい冒険を繰り返す日々。 ユーザーのゲーム配信がありふれていて、ネット上で検索すれば欲しい情報は何でも手に入る今の時代よりも、攻略の難度は高く、自分自身で体験したり発見する喜びが大きかったと感じる。

こうしたクラシック時代のカオスな様相も、度重なるパッチのアップデートや、今でもユーザーからの支持が高い2001年の拡張パック『Diablo II: Lord of Destruction』の登場により、徐々に整備されて完成度や奥深さが高まる一方、ゲームを知り尽くしたプレイヤーの遊び方にもセオリーが出来ていく。 私も拡張パックで新クラスのドルイドやアサシン、ルーンワードやシナジーといった要素を存分に楽しむことができたが、最も効率の良い「Baal run(拡張パックのラスボス手前にいる中ボスを狩り続けること)」を延々と繰り返すだけのプレイに、次第に熱が冷めていった。そんな折に、思いもよらず新たな呪いにかかってしまう。

■ ハードコア中毒

何十時間も手塩にかけて育てたキャラクターが、一度でも死亡すると、所持アイテムと共に完全に消滅する。 ハードコアモードは、はじめは全く理解に苦しむコンセプトだったが、『Diablo II』熱も徐々に落ち着いていた私は、ふとハードコアキャラクターを作ってみることにした。

少しでも死ににくいキャラが良いと思い、盾になってくれるペットを引き連れた熊変身ビルドのドルイドを選択。 私はノーマルモードと何ら変わりないマップを危なげなく進めていく。 そして、自分の力を過信し、完全に油断しきっていた私に、Nightmare Act3のユニークBone Fetish(通称 骨チビ)爆死ダメージという形で最初の死が訪れる。 画面には「You Have Died」の赤い文字。途方も無い喪失感と絶望に襲われて私はしばらく画面を見つめたまま身動きできなかった。

それ以降、私はハードコアモードに心底没頭し、無数の死体の山を積み上げていった。 キャラクターの「死」が文字通り本当の終わりを意味するスリル。 特に難易度Hell以降の過酷な環境下では、自分のキャラクターがただ生きていること自体が喜びであり、それまでビデオゲームで決して味わったことのない感覚だった。

『Diablo II』のハードコアでは、アイテムの価値も人気のキャラクタービルドも、ノーマルモードとは大きく異なる。 また、プレイヤーの命を脅かすのは敵のモンスターだけではない。 自宅のネット回線やBattle.netサーバーの不調による「ラグ死」は日常茶飯事で、こればかりはどんな最強セット装備に身を包んだキャラクターであっても手の打ちようがない。 さらには、敵意のあるプレイヤーからのPK(Player Kill)行為にも警戒する必要がある。 NPCの敵ならまだしも、自分の分身であるキャラクターが他人に殺されて消滅する恐怖は計り知れない。 PKで死亡すると、そのキャラクターの「耳」がトロフィーとしてドロップするシステムも不気味だった。

ある時、私が数人の仲間とパーティーを組んでダンジョンを攻略中、部屋に参加してきたソーサレスが「TP PLZ~~~~~^^(タウンポータル開けてください~~~~~^^)」と陽気な顔文字入りのチャットで呼びかけてきた。 ハードコアの世界で、見ず知らずのプレイヤーとパーティーを組んで現在位置を知らせる行為は大きなリスクが伴う。 うっかり仲間の1人がパーティーに誘った瞬間、凄まじい勢いでテレポートしながら近づいてきたそのソーサレスに、我々はあっという間に殺されてしまった。

『Diablo II』では町の中にいれば他のプレイヤーに殺されることはないものの、ローグキャンプの入り口付近で、「無料でエンチャントしてあげる」と親しげに誘ってくるソーサレスや、高級ジェムを地面にばら撒いているバーバリアンにPKされたことは一度や二度ではない。 常に死が隣り合わせの殺伐としたハードコア・ライフは本当に呪いのように魅力的だった。


■ そして10年後…

『Diablo II』以降、「ディアブロクローン」と呼ばれる類似ゲームが数えきれないほど作られ、私は片っ端からそれらを遊んでみたが、元祖を超える作品には巡り合えなかった。 ようやくPC/Macの『Diablo III』がリリースがされたのは、前作『Diablo II』から実に12年という長い月日が流れた2012年のこと。 私は再び膨大な時間を費やしてプレイすることになる。本当にどれだけ待ちわびたことか。

『Diablo III』は、スキルツリーの廃止や全クラスが武器のDPS(※Damage Per Second/一秒間に与えられるダメージ。)に依存する設計など大幅な刷新が施されていて、これには長年『Diablo II』を親しんできたファンから賛否両論の声があがった。 アイテムオークションハウスやPvPアリーナの計画が変更になるといった開発面の紆余曲折もあった。 発売初期の悪夢のような難易度のInfernoモードにどれだけ苦しめられたことか。 私が思うに『Diablo III』は、単に『Diablo II』のノスタルジアを満たす作品ではなく、コンシューマー機への進出も視野に入れて新たなディアブロをデザインするという、Blizzardの挑戦だったのではないだろうか。

それでもゲームはアップデートを繰り返し、今ではゲームバランスもエンドゲームコンテンツも発売当時に比べれば洗練されつつある。 この仕様はプレイステーション3版にもしっかりと反映されているので、初めてでも安心してプレイできるはず。 私が『Diablo II』で挙げた、細かなディテール、いきいきと動くキャラクター、アクションの気持ちよさといったシリーズのエッセンスも本作に受け継がれている。

Blizzard作品としては、十数年ぶりに日本でローカライズされるプレイステーション3版『ディアブロIII』を、少しでも多くの日本のゲーマーにプレイしてもらい、あなた自身の「俺とディアブロ」ストーリーを作り出してほしいと思う。もちろん、ハードコアモードで!

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『ディアブロIII』の公式サイトでは、本記事以外にもゲーム業界関係者やゲームメディア編集部の担当者によるコラムが連載中。ユーザーからの投稿も受け付けられているので、ディアブロに思い入れのあるゲーマーは参加してみてはいかがでしょうか。

『ディアブロIII』は1月30日に日本国内でリリース予定。対応機種はPS3となります。
《Rio Tani》

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