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ESWC『FIFA16』日本代表参戦レポート―Mikey、パリに集結した猛者に挑む

「Electronic Sports World Cup」は、フランスを拠点に開催される10年以上の歴史を持つメジャーな国際的ゲーム大会だ。世界各国で開催される国内予選を勝ち抜いた猛者達がパリに集結し、世界一を決定するe-Sportsトーナメントである。

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Electronic Sports World Cup」(以下、ESWC)は、フランスを拠点に開催される10年以上の歴史を持つメジャーな国際的ゲーム大会だ。世界各国で開催される国内予選を勝ち抜いた猛者達がパリに集結し、世界一を決定するe-Sportsトーナメントである。

昨年に引き続き今年もゲーム大会サイト「CyAC」が、人気サッカーゲーム『FIFA16』の日本予選開催を執りしきり、Subaru "Mikey" Saganoが代表として本戦の開催地であるパリに赴く事となった。

Mikeyはこれまでも『FIFA』シリーズや『ウイニングイレブン(Pro Evolution Soccer)』で世界大会を経験している、日本のサッカーゲーム界のトッププレイヤーだ。海外のトップ層からすればまだ世界大会経験の浅いプレイヤーに分類されるが、国際大会への参加機会が少ない日本人の中では、群を抜いて高い経験値を持ったプレイヤーと言えるだろう。しかし、東アジアではトップと言える彼も、ヨーロッパで開催される国際大会では上位入賞を果たせていない。サッカーゲームでは、アジアよりもヨーロッパのほうが格段に競技人口も多く、はっきりとしたレベルの差があるのだ。

これまでの大会経験からも、彼はアジアとヨーロッパのプレイヤーレベルの差を痛感してきた。前回のESWCも日本代表として参戦したMikeyは、予選で圧倒され、決勝トーナメントに進むことは叶わなかった。

■2度目となるESWCへの挑戦

今回はCyACによるサポートもあり、現地に滞在しトッププレイヤー達と調整を行う集中合宿「ブートキャンプ」を行い、より良いコンディションで本戦に臨む事に。筆者は、このツアーに通訳及びブートキャンプの管理を行うマネージャとして同行した。Mikeyと筆者は、10月23日に成田を出発し、パリへと移動した。

▼大会前のブートキャンプ

海外での持ち込みブートキャンプは金銭的な困難だけでなく、物件の確保やインターネット、機材といった技術的なトラブルもつきものだ。我々も例外ではなく、到着から2日してようやく腰を据えて練習できる環境が整った。


よりよい環境を求め、高速インターネット回線を有するマンションを練習拠点に。

Xbox Oneの電源を入れ、試しにFIFA16のオンラインでの試合募集を行う。ものの数秒で相手が見つかり、対戦が始まる。そして、相手のスキルレベルも悪くない。日本で言えば、トップ層と言っても過言ではないレベルだ。朝から晩まで、レベルの高い相手と練習ができる。日本では数時間待っても対戦相手が見つからない事すらあった。理屈では分かっていても、実際に環境の差を肌で感じ、楽しくてたまらない。Mikeyは4時間ほど休憩なしでプレイをし続け、初日を全勝で締めくくった。


本戦までの3日間、あらかじめ連絡を取っていたヨーロッパのトッププレイヤー達や、大会サイト「Gfinity」で対戦相手を募り、密度の高い練習を行う。レベルの高いプレイヤーはみたことのない高い精度のクロスパスや、テクニックに満ちたドリブルやフェイントなど、思わず「いやー、うまい!」と声が漏れるような場面を見せ付けてくる。これまで想定していなかった戦術にも出会う事が出来た。本当に、ヨーロッパは強敵ぞろいだ。それでもMikeyは1試合ごとに分析を行い、ほぼ全勝で調整を終えた。

今回のブートキャンプでは新たなテクニックを得たという側面もあるが、何よりもヨーロッパのトップ層とも渡り合う事ができるという自信が、Mikeyにとって一番の収穫となった。本戦に赴くMikeyの表情は、これまでそうであった緊張感に満ちたものではなく、対戦が楽しみで仕方がないと言わんばかりの、自信にあふれるものになっていた。

▼ESWCグループリーグ1日目

ESWC FIFA16は決勝トーナメントと、予選に当たるグループステージが存在する。1グループあたり8人のプレイヤーが割り当てられ、上位4位に入賞すれば決勝トーナメント進出となる。昨年の通過ラインから見ても、3勝すればほぼ予選突破が決まるというものだ。Mikeyは昨年の王者であるイラン人プレイヤー「AdamanT」をはじめとした、ほぼ全てプロプレイヤーというグループで戦うこととなった。

初日はフランス人有名プロプレイヤー「Anthox」。ボールはMikeyスタート。最初のワンプレーでシュートを決め、先制。試合開始わずか30秒の、筆者が一瞬目を離した隙の出来事であった。その後もボール支配率、シュート本数ともにMikeyが試合を支配するが、後半に1点を返され1-1の引き分けで試合終了となった。


対戦の様子。向かって左がMikey、右がプロゲーマーAnthoxである。

勝ちを逃したものの、これまで国際大会で初戦は一度も勝つことのできなかったMikeyにとって、この試合展開は大変な自信となった。

2戦目は昨年王者の「AdamanT」との一戦。開始3分ほどで再び先制点を挙げ、試合をリードする。しかし後半にはAdamanTのディフェンスが安定し、ディフェンダーが怪我で倒れている数十秒の間に追いつかれ1-1の引き分けに。オンライン対戦では発生しないアクシデントであり、完全に不運だった。2試合とも引き分けに終わってしまったが、完全にゲームをコントロールしていたMikeyの表情は明るい。初日に1勝できれば精神的にも楽になる。何としても1勝を挙げたいところだ。

3試合目はドイツ人プレイヤー「SaLz0r」との一戦。これまでとは展開が 全く異なり、SaLz0rが試合を完全にコントロールする展開に。SaLz0rはディフェンスに定評のあるドイツチームを選択しており、思うようにボールを進めることができない。なんとかボールを奪取するものの、パスの軌道を読まれたり、細かいパスミスを誘発され、0-1のビハインドで前半を折り返した。後半もSaLz0r主導の試合展開は変わらず、なんとかシュートに持ち込み枠内に入れるも、オフサイド判定によりノーゴールに。結局1点の点差を守りきられ、初日は1敗2分け、8人中6位の結果となった。

試合後の反省の一つに、会場のディスプレイの性能が悪く、細かいボールハンドリングが困難であり、特に最終試合のチーム相性によりその点が顕著に出てしまったという分析があった。初日は番狂わせがどのグループでも多く、この事も影響しているのかもしれない。

また、各選手のコントローラー使いなど画面には出ない情報をプレイ中に観察した結果、かなり力を入れて大胆に入力を行っている点などに気づく。格闘ゲームなどでは当たり前の知識だが、サッカーゲームに於いても画面外の情報は有益なのだ。紙一重な展開に悔しさを覚えつつも、再度ブートキャンプしている宿舎に戻り、より性能の悪いモニターを用いて意識的に調整を行った。

▼ESWCグループステージ2日目

二日目は4試合。初日の結果で番狂わせが続いたこともあり、会場の緊張感がより一層高まっている事が選手の所作を見ても分かる。4試合目はノーマークだったスウェーデン人プロプレイヤー「Erikzzon」との対戦だ。Erikzzonはこの時点で暫定1位であり、しかも全勝という好成績。しかし、試合開始直後にMikeyが先制点を挙げ、試合を圧倒してしまった。


向かって左がErikzzon選手。選手の多くは専用のユニフォームを着用していた。

2点差がつけば逆転が難しいと言われる『FIFA16』でありながら、前半を2-0で折り返し、後半終了間際に駄目押しの1点を決め3-0で試合が決した。念願の1勝を掴み取ることができた。しかも、最高の試合展開だ。暫定4位に浮上したMikey。初勝利はやはり嬉しい。


念願の一勝、自然と笑みもこぼれる。向かって左は筆者。


勝利を噛み締める暇もなく、次戦で使用するチーム選択を筆者らと話し合う。5試合目はスロベニア人プレイヤー「Elzan」だ。Elzanは初日の3試合を全敗で折り返しており、しかもMikeyが引き分けたAdmanTに0-5という大差で敗北している。一方2日目の第1試合は4-0という圧倒的スコアで勝利しており、全くつかみどころのないプレイヤーだ。この試合以降にベストチームを温存するという手もあったが、目の前の一勝を上げるべくElzanに残された手札でベストのチームを用いることに。この試合を勝つことができれば、仮に残りの試合を負けても決勝進出の可能性が残る。

これまでで一番の緊張に包まれる中、試合が開始された。Mikeyはボールを丁寧に回し、維持している。筆者の目にはかなり落ち着いているように映った。しかし、前半数分でElzanの豪快なミドルシュートがネットを揺らし、先制を許してしまう。他のプレイヤーでは見なかった、かなり距離のあるミドルシュート。明らかに対戦したことのないスタイルの相手だ。

このゴールからは立て続けに攻められる展開となり、同様の驚異的なミドルシュートで追加点を奪われてしまう。後半に入るも展開を持ち直すことができず、0-3で敗北。後味の悪い試合展開となってしまったが、次戦は1時間と待たずに始まってしまう。気持ちを切り替え、残りを全勝するために戦略を練ることに。

続いての試合はブラジル代表の「endyloco13」だ。Elzanに2-1で勝利し、前回王者AdamanTとも引き分けている強豪だ。もう負けることはできない。大敗の直後でもあり、メンタル面での不安を筆者は懸念していた。試合が始まり、数分でendyが先制点を決める。厳しいビハインドでのスタートだ。拮抗した試合展開が続くが、Mikeyのミスは少ない。丁寧なボール回しを続け、徐々にMikeyの攻撃が続く展開となった。細かい所作からも落ち着いている事がはっきりと分かる。さすがは日本代表のプレイヤーだ。

形勢が傾いて数分で、Mikeyが完璧なコースでパスを出し、ネットを揺らす。Mikeyが吠えた。終始冷静な印象のMikeyだったので、筆者も驚いた。その後もMikeyが畳み掛ける展開が続き、即座に2点目が入る。endyはうなだれた様子で、展開を持ち直すことができない。試合終了のホイッスルが響き、スクリーンには6-1という大差が映し出されていた。この時点で2勝2分2敗。暫定5位であり、あと1勝で予選通過が確定する展開だ。

最後の試合となる7試合目は、3勝2敗1分けのウクライナのプロプレイヤー「Tiko91」。暫定3位でありながら、Mikeyとの試合を落とせば予選通過が無くなるプレイヤーだ。お互いに負けることのできない試合に、張り詰めた空気が漂う。試合開始直後は拮抗した展開であったが、徐々にMikeyに主導権が移っていく。前半開始数分でMikeyが先制点を決める。そして数分と待たず、追加点が入る。2-0での折り返し。筆者らも勝利を確信していた。

お互いフォーメーションを変更して臨んだ後半戦。引き続きボール支配率はMikeyにあるが、ワンプレーでゴールまで持って行かれ、2-1に。追加点を取りたいMikeyだが攻めきることができない。インゲームのタイマーでの残り時間が5分を切ったあたりで、Tikoによる2点目が決まってしまう。もう時間がない。コート中盤で拮抗した競り合いが続き、試合終了のホイッスルが鳴ってしまった。Tikoが立ち上がり、ヘッドフォンを椅子に叩きつけ、吠える。Tikoはこの引き分けで辛くも決勝進出を果たしたのだ。

最終結果は、2勝3敗2分でグループ5位。Mikeyは紙一重のところで、決勝進出を逃した。その表情には、悔しさがにじみ出ていた。


グループ予選の最終結果表。最後の相手である「Tiko91」との明暗がはっきりと分かれた。

■次の大会に向けて

一旦会場から離れ、近くのカフェで休憩をすることに。絞り出すように発した、「悔しいです。」の一言が未だに耳に残っている。初日・二日目ともに紙一重と言える僅差の展開が多く、さらに不運により落とした試合もあったことから、筆者も悔しさを募らせた。本当にあと一歩だった。

しかし、Mikeyは手応えを感じていた。同じ予選敗退であっても、前回とは試合内容が全く異なっているのだ。ただただ圧倒されている間に大会が終わってしまったこれまでに対し、対等以上に渡り合う事が出来たという事実は、今回の戦績に刻まれている。オフラインでの試合経験が不足していることも、ひとつの敗因として筆者の目に映った。

アジアではオフラインの大会がなく、残念ながら今回のブートキャンプもオンライン中心なものであり、この経験差を埋める事が難しかった。ベスト4のプレイヤーたちは半数以上がプロチームに属し、事前に合宿練習を行っていた。こうした溝をどのように埋めていくかが、これからの課題になるだろう。こうした細かな反省点が出ることは、実力が拮抗してきている一つの証拠である。

ESWCのような、欧米を中心にプレイされているゲームの国際大会に出場する日本人プレイヤーは数多くいるが、複数回にわたり参戦したプレイヤーは数えるほどしかいない。Mikeyはその中でも着実に経験を積み、勝利に近づいている。

次回のESWCは来年を待つこととなるが、『FIFA16』の公式世界大会「FIWC」のアジア代表をかけた戦いがすでにはじまっている。一回り成長したMikeyが予選を突破し、3月にニューヨークで開催される本戦に駒を進めることを期待したい。月並みな言葉だが、本当に長く、それでいてあっという間の10日間であった。今回のツアーに応援をいただいた関係各所やファンのみなさんに感謝しつつ、筆者は筆を置くことにする。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

CyACでは、欧州や北米で新たなスポーツのジャンルとして確立され、近年では、日本でも広く認知されつつある「e-Sports」の コーディネーターとして、その発展を目的に、国内外問わず活動を行っています。
《Naonobu "uNleashed" Tahara》

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