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まるでRPGのような世界観「ブライト」―多種族の共生を描く異色ファンタジー超大作【コントローラーを置く時間】

GameSparkスタッフが、ゲーマーにぜひオススメしたい映画/ドラマ/アニメ作品を1本紹介していきます。今回は、Netflixオリジナル映画「ブライト」です。

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ハードコアゲーマーのためのゲームメディアGame*Sparkでは、日々、様々なゲーム情報をご紹介しています。しかし、少し目線をずらしてみると、世の中にはゲーム以外にもご紹介したい作品が多数存在します。そこで本連載では、Game*Sparkスタッフが、ゲーマーにぜひオススメしたい映画/ドラマ/アニメ作品を1本紹介していきます。

今回ご紹介するのは、デヴィッド・エアー監督、ウィル・スミス主演によるNetflixオリジナル映画「ブライト(原題:Bright)」です。

現実世界の歪みを描く、寓話的ファンタジー


この映画のスゴいところは、ファンタジーの体裁を借りた社会派作品であるということ。一見すると珍奇な世界観の娯楽作なのですが、その中に隠れている真のテーマは“現代社会のゆがみ”で、いまの時代の実情に即した多岐の問題を提示しています。寓話的なテイストを加味し、ファンタジーの隠れみのを崩すことなく、リアルを融合させた傑作といえるでしょう。

どういうことかというと、この映画では、まるで“MMORPG”のような多種族の共生が描かれているのです。ただし、舞台となるのは現代のロサンゼルス。画面に映る繁華街だったり、近代的なビル群などは至って現代のそれと変わりがないのですが、街を行き交う人々にいざ目を向けると、その世界観の交錯に戸惑うことでしょう。

多くの人口を占める人間のほかに、高貴で裕福なエルフ、羽を持つ醜い妖精フェアリー、背丈の小さいドワーフ、そして差別対象のオーク。画面に映る現実と、非現実的の交わるイメージは、視覚的にもインパクト抜群……!

見慣れた街並みをキャンバスに、ファンタジーの住人たちの共生と対立を描く本作は、現代における異人種、あるいは異宗教徒への偏見、または移民問題にも相通ずる暗い部分を感じてしまいます。異なる種族がすし詰め状態に押し込まれている本作のロスは、多くの人種が住む現代アメリカの環境となにひとつ違わないのです。例えるならば、“現代版の指輪物語”でしょうか。

そして、プロットの核となる部分には実にファンタジックな設定を付与し、現代社会の縮図とする要素をすこし隠して描写しています。表向きには娯楽満点のファンタジー映画として仕上げている点は、まさにデヴィッド・エアー監督の手腕によるもの。近年における多様性(ダイバーシティ)の目指す未来こそ、この作品が提示している世界観なのかも知れません。Netflixはこうした名作を不意に放つので、本当に油断できませんね。

異種族コンビの信頼と友情


ロス市警はダイバーシティの一環として、差別の対象として虐げられてきたオーク族のニック(ジョエル・エドガートン)を採用し、人間の警官ダリル(ウィル・スミス)とバディを組ませることに。オーク族初の警官であるニックですが、周りの同僚からは疎ましく思われ、同族のオークからは冷やかされる毎日です。ある時、街の郊外からの通報に駆けつけた彼らは、強力な魔法を使った事件現場を目撃。そこにはエルフ族の少女ティッカ(ルーシー・フライ)と、魔法のワンド(杖)が残されていました。

およそ2,000年前、世界の9種族が団結し、邪悪なパワーの源である“ダーク・ロード”を封印。そして今、“インファーニ”と呼ばれる勢力がその復活を模索していると知った彼らは、それを阻止するべく奮闘。魔法を使う稀な存在は“ブライト”と呼ばれ、魔法のワンド(杖)はブライトだけが操れるものだったのです。そして、魔法のワンドを持つ2人の前に、次々と刺客が現れ……。

ファンタジー映画の定石を踏むストーリーは、いかにも単純明快。ただし、ブライトと呼ばれる魔法使いの逸話だったり、魔法の杖などの空想的アイテムを取り入れたプロットは、本作ではあまり重要ではありません。

ケレン味の効いた素晴らしい物語は、いうなれば“虚飾”であり、本作が本当に描きたいモノというのは、先の項でも述べているとおり、現実世界の負のバイアスだったり、ダリルとニックに見る異種族(異人種)の友情といった普遍的なもの。反りの合わない2人は、同じ目標に向かって進んでいく内に、最高のバディとして認め合うのです。

ウィル・スミス&デヴィッド・エアー、2度目のタッグ


メガホンを執るのは、DC映画「スーサイド・スクワッド」(2016)のデヴィッド・エアー監督。同作でタッグを組んだウィル・スミスとは、本作「ブライト」が2度目の競作となります。

ハリウッドを代表するドル箱俳優のウィル・スミスは、友人たちとヒップホップグループを結成し、ラッパーとしてキャリアをスタート。90年代に入ると俳優業に進出し、異星人による地球侵略を描いた「インデペンデンス・デイ」(1996)に出演。その名を世界に広めます。

以降は、スミスのヒットシリーズとなる「メン・イン・ブラック」(1997)、息子ジェイデン・スミスとの親子共演が話題となった「アフター・アース」(2013)など、多くのSF映画で顔を覗かせるようになります。「素晴らしきかな、人生」(2016)といった硬派なヒューマンドラマにも挑みつつ、再びアクションに舞い戻った今回の「ブライト」は、スミスファン必見です。

さて、監督を務めるデヴィッド・エアーは、麻薬捜査官の戦いを描く「サボタージュ」(2014)でアーノルド・シュワルツェネッガーと、戦争映画「フューリー」(2014)ではブラッド・ピットと組むなど、経験はすこぶる豊富。ウィル・スミスと再タッグを果たす本作では、コメディとアクションの両方を追及し、スミスの魅力を最大限に引き出しています。ドル箱スターとスゴ腕監督による、異彩を放つSFファンタジーをぜひご覧ください。



映画「ブライト」は、Netflixにて独占配信中。ビデオゲームの精神を感じつつ、硬派なポリスアクションも見せ、なおかつファンタジーの要素すらあわせ持つ、ハイブリッドな1作です。続編企画も進行中!
《Hayato Otsuki》
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  • スパくんのお友達 2018-11-26 10:54:27
    >>23
    ネタバレはやめろ
    最低やぞ
    0 Good
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  • スパくんのお友達 2018-11-25 22:44:24
    最後の主人公が実はブライトだった!逆転大勝利!の流れが陳腐すぎて笑ったわ
    世界観も煮詰まってなくて終始微妙な空気でキツかった
    0 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2018-11-25 6:19:23
    ネットフリックスのドラマ・映画は決められた本数を決められた予算で作るという目標ありきで作られている感じがします。
    やはり興行成績の良し悪しでシビアに評価される劇場公開映画より質が落ちます
    ずっとネットフリックス契約していますが最近そう思うようになりました
    3 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2018-11-25 1:37:15
    >>20
    いや実際アントワン・フークアと作風近い所はあるから正直自分もごっちゃになる時がある。
    フークアはベテランだし多作だから作品の平均レベルも高いと思うけど、エアー監督もどんどん映画撮るうちに「これぞ!」って傑作を作りそうな気がする。
    0 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2018-11-25 1:18:57
    >>19
    失礼、関わってなかった
    今の今まで、ずっとデヴィット・エアー脚本だと思ってた
    てか、wiki見たら名前さえ載ってなかった・・何を勘違いしてたんだろう。。
    3 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2018-11-25 1:00:47
    >>18
    『トレーニング・デイ』で脚本は書いてたけど『クロッシング』ってデヴィッド・エアー関わってた?
    テーマは分かるがどうも硬過ぎる印象が拭えんのよなあ、この監督さん。
    上記2作のアントワン・フークア監督みたいなハードアクション路線ならしっくりくるんだけど。
    3 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2018-11-25 0:22:50
    デヴィット・エアー監督の映画は社会的、特に末端の人間模様を描くことが多いから好きだ
    警察者だと、3人の刑事(退職間近初老の警察官、離婚と仲間との葛藤に喘ぐ潜入捜査官、
    低い賃金と妻の病気に悩む機動隊員)の模様を描いた「クロッシング」や
    ベテランだが汚職しまくりの刑事と新米刑事とのバディムービー(とは言っても次第に溝が深まっていく二人)を描いた「トレーニングデイ」、
    正義感が強いが、同時に組織の下っ端であるが故一定のラインを超えられない
    歯がゆさに喘ぐ警察官二人を描いたPOV「エンド・オブ・ウォッチ」
    いずれもに共通しているのは、貧困層と人種問題、警察組織の影の部分にスポットを当てていること
    この「ブライト」は、正直ストーリー的には個人的に面白くなかったが、
    それらのテーマがおもいきり描かれてて、設定的には大好きだった
    さながらエイリアンが地球に遭難してから、以降人間と共存するようになった世界を舞台に
    人間の警官とエイリアンの警官のバディムービーを描いた「エイリアン・ネイション」のようだった
    ※似た流れで言うと「第9地区」もそうだが・・
    個人的に「ブライト」で好きだったシーンは、オークに対する差別や、
    それを訴える街中のグラフィティと共に、ラップが流れるイントロのシーン
    現実を描写したかのような魅せ方に、いきなり引き込まれた

    ちなみに言うと、この監督のお気に入りなのか、実際のギャング(Bloodsなど)を起用してくれる元ギャングの役者が毎回登場している
    序盤、主人公が家の庭に出た時に話しかけてくる黒人がそう
    この人は、前に挙げた同監督の作品全てに登場している
    4 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2018-11-24 13:28:42
    >>5
    硬派な軍事アクションは得意だけど、『ブライト』でも『スーサイド・スクワッド』でも思ったのは、ユーモアをまじえたエンタメアクション撮れるタイプの人じゃないなって。
    0 Good
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  • スパくんのお友達 2018-11-24 3:21:16
    netflixに金渡されたか?
    0 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2018-11-23 21:16:29
    サウンドトラックがいいんだよなこれ
    すげー豪華
    2 Good
    返信

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