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大学生の間でボードゲームがブーム! テープ販売からSteamまで、台湾ゲーム市場の歴史を辿る【異国ファストトラベル】

ひと昔までは海賊版であふれていた台湾のゲーム売り場も、現在では正規版のゲームばかりになりました。今回は台北ゲーム小売店の変遷の歴史やゲームセンター事情などについてお届けします。

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不定期連載記事「異国ファストトラベル」では、地球をワールドマップとして捉えたファストトラベル的な体験を読者の皆様に味わっていただくべく、世界各国のリアルなゲーム文化を紹介していきます。回数制限なし、(ほぼ)ロード時間なし、もちろんジャンプ中にも使用可能です。

第3回では、台湾のゲーム文化に詳しい現地ライターの声をお届けします。今回のレポーターは、Game*Sparkにて「中華ゲーム見聞録」を連載している渡辺仙州さん。ゲーム小売店が辿ってきた歴史やゲームセンターについて探っていきます。




ひと昔までは海賊版であふれていた台湾のゲーム売り場も、現在では正規版のゲームばかりになりました。取り締まりが厳しくなったのはもちろんのこと、ゲーマーの間で海賊版自体への印象が悪くなっているというのもあります。家に海賊版のゲームが置いてあると、面子的にも恥ずかしいですしね。

それに海賊版を売るような人に店舗を貸すと面倒が起こるというリスクもあるので、そもそも店を構えること自体が困難です。また、最近のゲームはオンラインによるアップデートが当たり前なので、正規版を買わないとサービスを受けることができません。Steamなどの登場もあって、わざわざ海賊版を選ぶ理由も薄れつつあります。オンライン化が進むと、今後はゲーム小売店自体が生き残れなくなる可能性もあるでしょう。

台湾のゲーム小売店は商売的に厳しくなってきてはいます。筆者の知っている店でも潰れてしまったところがありました。ここからは、台湾ゲーム小売店の変遷の歴史やゲームセンター事情などについてお届けします。

台湾ゲーム小売店の変遷ー中華商場


筆者が子供のころ、台北に住んでいる叔父がエンジニアで、「Apple II」というPCを持っていました。現代ではiPhoneやiPadなどで知られる、あのAppleの家庭用コンピュータです。キーボードとPC本体が一体となった形で、世界的にヒットしていました。


その当時の台北では、PCやゲームの小売店は「中華商場」に集まっていました。場所は現在の中華路一段のあたりです。二階建ての横長の建物がモールのように並んでいて、様々な小売店が軒を連ねていました。

その頃のPCゲームは、カセットテープでの販売が主流。昔はプログラムをカセットテープに録音して保存していました。そのため、ロードもセーブも分単位で時間が掛かります。

ただカセットテープだけに、ダビングが簡単です。そんな理由もあって、小売店で並べられているゲームのほとんどはダビングしただけのカセットテープでした。ゲーム特有の楽しげなパッケージなどもなく、カセットにペンでゲーム名が書かれているだけです。そのため、そもそもどんなゲームなのか分かりません。見ていて面白くもないので、子どもがこれらの店に集まるということはあまりありませんでした。値札も付いていないのでいくらかは分かりませんが、おそらくそれほど高くはなかったと思います。

当時の台湾で多くの人が遊んでいたPCゲームと言えば、やはり『カラテカ』でしょう。現在ではなぜかクソゲー扱いされていますが、当時としては画期的なゲームでした。ぬるぬるとリアルに動くキャラクターや映画的な演出、攻撃を上・中・下段と打ち分けることができたり、戦う前にお辞儀をしたりなど、斬新な要素が多かったのです。ラスボスを倒した後、救助するはずのマリコ姫に蹴りを入れようとすると、逆に蹴り返されて一発KOで死亡したのが印象的でした。


フロッピーディスクが主流になってからは、ゲーム画面がカラー印刷されたパッケージも付くようになってきました。『ポピュラス』や『Loom』など、見るからに楽しそうなゲームが売られていましたね。ただ世間的にはファミコンの方が流行っていましたので、PCゲームはマニア向けのものでした。

ファミコンですが、台湾でも大ヒットしたゲーム機です。台湾では「任天堂」と会社名で呼ばれていました。ゲームで特に流行っていたのは『スーパーマリオ』シリーズです。『魂斗羅』も流行っていました。なぜか中華圏は『魂斗羅』が好きな人が多いです。

小売店で売られているファミコンソフトのほとんどは海賊版でした。一本のソフトの中に複数のゲームが入っているというものもありましたし、そもそもファミコン本体自体も海賊版が出回っていて、バリエーションもやけに多かったです。正規版も混ぜこぜに売られているような状況で、店内はかなりカオスでした。

しかしメガドライブが発売されると、小売店はこぞって日本から正規版を輸入して販売を始めました。もちろんソフトも正規版です。やはり良い物は高くても売れます。


当時、メガドライブの存在はかなり衝撃的でした。『大魔界村』や『ゴールデンアックス』などアーケードでしか遊べないようなゲームが、基盤を買う必要もなく家庭で遊べてしまうのです。

中華商場では、製造番号によってメガドライブ本体の値段が違っていました。店主に理由を聞いたところ、「基盤に違いがあって、〇〇番の方が処理速度が速い」と言われ、証拠としてゲーム情報誌の記事を見せられました。中華商場のゲーム小売店は、質で値段が細かく決められている世界でした。

そんなマニアックな店の集まる中華商場も、老朽化や台北MRT(地下鉄)計画によって1992年には解体されてしまいます。あのときのゲーム小売店や店員さんが今どこで何をしているのかは分かりません。どこか別の場所で似たような商売をしているのかもしれませんね。

台湾ゲーム小売店の現状


初代PSやPS2が発売され、CDやDVDなどの光学メディアが主流になる頃には、台湾での家庭用ゲーム機熱はむしろ冷めてきたように思われます。筆者的には、台湾での家庭用ゲーム機のピークはファミコン時代だったと感じます。

それ以降はPCゲームの方が主流になってきました。台湾ではASUSやAcer、MSI、GIGABYTE、HTCなど、世界的にも有名なコンピュータメーカーが多数存在しますので、PCやパーツも手に入りやすい環境です。


現代、PC関係の小売店が集まっているところで有名なのは「光華商場」やその周辺でしょう。一種の電気街になっていますね。ただ地下鉄からのアクセスがあまりよくないので(一番近い「忠孝新生駅」からでもしばらく歩かないといけない)、筆者としては気軽に遊びに行けるような場所でもありません。ただ品揃えはいいので、買う物が明確に決まっているときに行くことにしています。


家庭用ゲーム機や玩具類など、ライトユーザー向けのホビーでしたら、「光華商場」へ行くよりも「台北地下街」へ行くのがいいでしょう。台北車駅と北門駅をつなぐ長い地下街に、ゲームやフィギュアなどホビー関係の店が並んでいます(本記事の冒頭の写真も台北地下街です)。駅を下りてすぐというのが魅力です。桃園国際空港行きの地下鉄も台北車駅か北門駅で乗れるので、日本に帰る前にちょっと見ていくということもできます。


地下街なのでホビー以外の小売店や飲食店も多数並んでいます。ただ家庭用ゲームの宣伝ポスターがかなり多く天井や壁に設置されていることから、全体的な印象がホビー街っぽくなってしまっています。一般客も多いので、ライトユーザーにとっては光華商場へ行くよりかは心理的にも楽だとは思います。


現在の台湾での家庭用ゲーム機の主流は、やはりニンテンドースイッチ。特に子どもには絶大な人気を誇っています。どこへでも持ち運んで遊べる利便性と気軽さは、現代の生活スタイルにマッチした作りになっています。またリージョンフリーというのも強みで、世界のどこでゲームを購入してもプレイできるというのがいいですね。ニンテンドー3DSのときはリージョン問題があって、輸入に頼る台湾にとっては面倒なことになっていました。

一方で、PS4やXbox Oneなどの据え置きゲーム機ですが、一部で熱狂的なファンがいる一方、昔のファミコンのような「家庭で気軽に」といった状況からは離れてきているような気がします。PCゲーム主流の台湾で、PCゲームと被るゲームが多いのも、据え置きゲーム機離れの原因になっているのかもしれません。ちなみに中国だと、PS4はiPhoneのように「社会的ステータス」として買っておくという人がいますね。どちらかと言えば高級品扱いです。

台湾のゲームセンター事情


筆者が子どものころ、台湾では雑貨店やゲーム小売店にアーケードゲーム筐体が置かれていることが多かったです。またゲーム小売店ではテレビとファミコンが並べられていて「一時間いくらで店内のゲーム遊び放題」というサービスも行っていました。売られているゲームをそのまま借りてきてプレイするといった形です。ゲームを買う前に面白いかどうかのチェックもできるので、良いサービスだとは思いました。


現在の台湾ゲームセンターシーンの目玉はクレーンゲームです。基本的にこれしか置いていないというゲームセンターも多いです。夜市などでも、クレーンゲーム専門店などが多数存在します。ゲームとまったく関係なくても、とりあえず外にクレーンゲームを置いておくといった店もありますね。

店側にとって、クレーンゲームの回転効率の良さは魅力的でしょう。一般のアーケードゲームだと上手い人に長時間粘られて回転率が悪くなることもありますが、クレーンゲームはすぐに終わります。取れないとムキになってどんどんコインを入れてくれる優良客も多いことから、今後も廃れることはないものと思われます。

一方、一般的なアーケードゲームは、PCやゲーム機の発展とともに廃れてしまった感があります。ゲームの流行り廃りもありますし、利益が出るかどうかを事前につかみにくいという問題もあり、クレーンゲームと比べれば、店側のリスクはどうしても高くなります。リズムゲームはまだまだ人気がありますが、ビデオゲーム的なものを置いてある店はほとんど見かけなくなってしまいました。

中国の方では、ビデオゲーム的なものを置いてあるゲームセンターはまだまだ多いですが、乗り物筐体(バイク・車など)やガンシューティング、リズムゲームなど、家庭で体験できないような大型ゲームがメインになっています。以前筆者が住んでいた鄭州では、最新の格闘ゲームも多数置いてあるマニアックな店がありましたが、人気があるのはやはり『KOF’97』ですね。その店ではネット配信も行われていました。

また、中国ではコインゲームも人気です。というのも、日本でいうパチンコのように、実際に景品と交換することができるからです。店に並べられていた景品には高額な物もあり、ニンテンドースイッチやPS4などのゲーム機や、大型テレビに電動バイクまでありました。店内は撮影禁止になっているので、法律的にグレーのような気はします。台湾では、この手の店は見かけませんね。

今後の台湾のゲーム事情


最後に、今後の台湾のゲーム事情について。やはり、PCゲームとモバイルゲームが強くなっていく傾向にあると思われます。台湾はコンピュータメーカーが多いですし、プログラミングの学習にも力が入れられているので、PCユーザーは増えていくでしょう。一方、PCゲームはSteamなどでオンライン購入することから、ゲーム小売店は減っていくものと思われます。現在でもPCゲーム専門の小売店はあまり見なくなっています(あることはありますが)。

中国では『リーグ・オブ・レジェンド』専門のネットカフェなどが多くなってきていますが、台湾ではあまり見かけませんね。ネット環境が良くなったことから、ネットカフェ自体が少なくなっている気もします。


台湾では近年、アナログゲームが台頭してきています。特に大学生の間でボードゲームが流行ってきていますね。筆者の祖父の家の近くにもボードゲームスペースがありますが、昼間でも大学生や家族連れで賑わっています。留学生の姿も見かけますね。ゲームを遊ぶだけでなく、人とのコミュニケーションもあることから、学生たちが仲を深めるのにも適しているのでしょう。「会話は英語のみ」のような縛りを設けて、語学練習に使っているグループもあります。

現在ではデジタルゲームの目新しさも無くなってきたので、ボードゲームのようなコミュニケーションを伴うアナログゲームが見直されてくるかもしれません。デジタル・アナログ共に、今後の台湾のゲーム動向を注視していきたいと思います。

※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、繁体字を日本の漢字に置き換えています。

■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「中華ゲーム.com」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。新刊「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)。著者Twitter「マイナーゲーム.com」Twitter
《渡辺仙州》

歴史・シミュ・ボドゲ好き 渡辺仙州

主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。

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