ファンのみなさんが首を長くして待っているであろう『ライフ イズ ストレンジ 2』の日本語版が、3月26日に発売されました。英語版のエピソード1が配信されてから1年以上が経過しているので「フレッシュな新作」という印象はあまりないのですが、全編吹き替えのリリース(もちろん英語音声も選択可能です)ということもあって期待は高まるところ!今回はそんな国内PS4版『ライフ イズ ストレンジ 2』を体験してきましたので、「エピソード1」部分のレポートを、シリーズの特徴でもある「音楽」に注目しつつお届けします。
なお、これからプレイする人のために物語そのものについてはあまり触れないようにはしますが、公式サイトやトレイラーで見るようなあらすじ、収録曲や展開が分かるような小さなネタバレは含みますので、ご注意ください!
本作の主人公はショーン・ディアスという少年。メキシコからの移民二世で、父と弟のダニエルと三人暮らしをしています。意中の女の子とパーティでイイ感じになりたいがために親友のライラにアドバイスを求めたりするのですが、選択によっては親の貯金箱から小銭を盗んだりもするなど、やんちゃな面も。個人的に好感が持てるキャラクターでした。続編とは言え主人公が異なる全く別のお話ですので、前作をプレイしていない方でも普通に遊べるかと思います(もちろん前作の物語が関係してきたりもしますが)。
ゲームエンジンの進歩もあって、グラフィックは前作よりかなり美しくなりました。独特なトゥーン感のある表現が細部まで徹底されていて世界観に浸りやすくなっています。ローカライズにも力を入れており、特にフォントには目を向けていただきたいところ。心情のセリフではキャラクターにあったフォントが使われ、ゲームプレイにも自然に溶け込んでいます。吹き替えの品質も非常に高く(もともとそういう狙いの作品ですが)まるで海外ドラマを見ているかのように没入できます。
物語は冒頭からかなり衝撃的な展開を迎えることになり、ショーンとダニエルの二人はメキシコを目指す旅に出ます。川辺で野宿をするシーンでは、雄大な自然の中に二人きり……という孤独感を味わえます。
こういった孤独感や寄る辺のなさ、先行きが分からないことの不安感などは本作の大きな特徴になっており、兄弟に感情移入をすればするほどプレイしている側もなかなか辛い心境になっていきます。もちろん悪いことばかりが起こるわけではなく、善人だって登場しないわけではないのですが、(エピソード1に限って言えば)基本的にシリアスな展開が続くので、ある程度覚悟をして遊ぶことをおすすめします。
さて、そんな重たいテイストの本作を要所で彩り、ときには息抜きを与えてくれる重要な役割を果たしているのが「音楽」です。本作では多くの著名な楽曲が引用されているので、洋楽ファンならニヤリとしてしまうこと間違いありません。
オープニングシークエンスで使われているのは(開発担当のDontnod Entertainmentの本拠でもある)フランスのバンドPhoenixの2009年の楽曲「Lisztomania」。Phoenixは2000年にデビューアルバムをリリースしたインディー・ポップのバンドで、日本でもちょっと前のロックファンにとってはおなじみの存在です。「Liztomania」に限らず、本作サウンドトラックで用いられている楽曲は2020年の今からするとちょっと懐メロという感じなので、制作陣の年齢がなんとなく察せますね。
ちなみに「Lisztomania」とはピアニストであり、作曲家でもあったフランツ・リストの熱狂的なファンのこと、転じて「何かに熱狂する人」、またはその「熱狂」自体を指す言葉のようです。ちょっと憂いがあり、ポップな雰囲気ながらも小洒落ていて、映像とマッチしています。
こと洋楽において「インディー」という言葉は、単にメジャーレーベルからのリリースでないという意味だけではなく、ちょっと非主流的な、王道のポップスでない独特な雰囲気を指す語としても用いられます。おそらく、自主制作の作品が傾向としてそうなりやすいのでしょう(もちろん「インディーゲーム」にも通ずるところはありますね)。『ライフ イズ ストレンジ 2』はスクウェア・エニックスという大手がパブリッシャーを担当していますが、どこか「インディー」な雰囲気をまとった作品だと感じます。
エピソード1終盤のダンスシーンでは、イギリスのロックバンドBloc Partyが2004年に発売したデビュー・アルバム「Silent Alarm」から楽曲「Banquet」が用いられています。Bloc Partyはダンサブルなビートが特徴の技巧派バンドで、Phoenixと同じく日本でもかなりの人気があったバンドです。先述したようにかなりの「懐メロ」ですし、主人公兄弟の年齢からすると相当昔の楽曲なわけですが、会話から察するにどうやら音ゲー(『ギターヒーロー』と思わしい)に収録されていたので知っているようでした。
エピソード1で特にフィーチャーされたモノは4曲。今回取り上げた2曲以外にも、Whitney「No Woman」、The Streets「On the Flip of a Coin」が印象的に使われています。アメリカが舞台のゲームであるにも関わらず、4曲中3曲がアメリカではない国のアーティストによるものです。主人公は移民二世なわけですから(前述したように開発元がフランスにあるということもあるでしょうが)楽曲の選択にテーマが見え隠れしているようにも感じられます。
素晴らしい音楽と前作から進化したグラフィックス、そしてシリアスながらも物語への興味が止まらない『ライフ イズ ストレンジ 2』。英語版のリリースから時間が経過したとは言えど、フルローカライズで全エピソードを一気に遊べる日本語版は、かなり贅沢な本作の楽しみ方かもしれません。そしてこんな感じで、作中に登場する音楽なんかにも注目して『ライフ イズ ストレンジ』の世界観に思いを巡らせてみるのもオススメですよ!
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