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ギリシャ神話は古代ギリシャ人にとってのリアリティショーだった―『イモータルズ フィニクス ライジング』で深掘りしたかった物語

『イモータルズ フィニクス ライジング』パネルディスカッションの後編です。

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ギリシャ神話は古代ギリシャ人にとってのリアリティショーだった―『イモータルズ フィニクス ライジング』で深掘りしたかった物語
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11月23日に開催された『イモータルズ フィニクス ライジング』のオンラインパネルディスカッション。前半では開発初期の構想や、物語に込めた思いなどが語られました。

後半の第2部、第3部では、ギリシャ神話を現代に甦らせるための工夫や苦労などの裏話が披露されました。

「完璧」でないからこそ、人間は英雄になれる…なぜ『アサクリ オデッセイ』で描いたギリシャを再び『イモータルズ フィニクス ライジング』で扱うのか?―開発者インタビュー

第2部:本作におけるギリシャ神話(GREEK MYTHOLOGY - THE MYTHS AND LEGENDS IN IFR)

Julia Hardy:司会
Scott Phillips:ゲームディレクター
Jeffrey Yohalem:リードナラティブディレクター

Julia Hardy今回なぜギリシャ神話を選んだのですか?

Scott Phillips『オデッセイ』に取り組んだ3年間、ギリシャの神話や歴史について史学者に話を伺い、あらゆるものを学び直しました。『オデッセイ』でそれを全部出し切ったと思っていましたが、『オデッセイ』で扱ったのは主に史実面だったんです。ギリシャ神話についてはほとんど触れられませんでした。ギリシャ神話はたくさんの親近感が持てるエピソードがあり、子供たちでも音楽やTV番組、本などで触れる機会があります。『オデッセイ』で出来なかった部分をもっと深く掘り下げようと思いました。

Julia Hardy本作ではギリシャ神話にモダンなアレンジを加えていますよね。

Jeffrey Yohalemギリシャ神話には現代に通じる部分があると思います。古代ギリシャの人々にとっては娯楽の一種で、今で言うTV番組のリアリティショーのようなものです。神様でも完璧ではありませんし、とても人間くさい複雑な関係を持っています。物語は手本になるような教訓話ではなく、過ちはいかにして起こるか、どんなリアクションが起きるか、そしてやってはいけないことは何か、それは現代でも同じなのです。

フィニクスが救う神々は大きな家族の一員です。フィニクスが彼らを引き合わせたとき、コメディやドラマになる要素がそろっていて、見ていて楽しいですし、人生とは何たるかを知ることが出来るのです。

Julia Hardyギリシャ神話以外にイメージの基になったものはありますか?

Scott Phillips初期段階でJeffreyに脚本を見せてもらったとき、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」をイメージしたと言っていました。古代ギリシャの「GotG」と聞いてアイデアがどんどん湧いてきました。世界の危機が迫ってきている中、ジョークを交わしながら、登場人物たちは大冒険を楽しむんです。陽気さと壮大さが同居する本作のトーンを決めるもので、ギリシャ神話の中核を担うものだと思いました。

アクロポリスでギリシャ語の演劇を観に行ったんですが、それを翻訳していくと、喜劇あり、悲劇あり、達観しているかと思えば大人げなかったり、様々ものが混在していました。『イモータルズ フィニクス ライジング』ではそんなギリシャの文化に息を吹き込めたと思います。

Julia Hardyゲームにはどのようにして組み込んでいきましたか?

Jeffrey Yohalemこのゲームを神話の体裁にするために、重要なのは原典に忠実であることです。ティタノマキアという長い叙事詩があるのですが、ゼウス率いる神々と巨神族の戦いが描かれています。フィニクスの物語はティタノマキアと関連があります。各キャラクターの物語、関係がパズルや島全体と密接に繋がっており、その全てが神話の一部を成しているのです。神々のキャラクターを損なわず現代的にアップデートするのは大変でした。

影の部分はそのままでは現代人に通じませんから、それらの都合の悪い部分をうやむやにするのではなく、現代人の価値観を通して見せることにしました。例えばヘパイストスとアフロディテの結婚では、ヘパイストスはヘラを脅迫して結婚を強引に承諾させます。ですが結局アフロディテは兄弟に当たるアレスと浮気してしまうんです。今回はその物語を掘り下げています。

Julia Hardyまさに修羅場! 神話の生き物や英雄についても教えて頂けますか?

Scott Phillipsゲームの舞台としてギリシャ神話は素晴らしいですね。地獄の番犬ケルベロス、蛇のようなゴルゴン、空飛ぶグリフィンにハーピー、巨大なサイクロプス、最高な神話の戦いになるよう可能な限り詰め込みました。巨大な敵や飛んでいる敵を相手にずっと空中戦が出来るようになっています。

出会う敵の中には、闇に堕ちた英雄もいます。テュポンはたくさんの英雄を邪悪に染めて味方に付けました。例えばアキレウス、オデュッセウス、ヘラクレス、アタランテがいます。彼らは元々神々によって召喚されましたが、失敗してテュポンに取り込まれてしまったのです。そして新たな神の英雄であるフィニクスと対峙することになります。戦いを通じて彼らの本質が隠されている場所を発見し、解き放つのです。

Julia Hardyお二人ともとても研究されたのがよく分かります。特に気に入っているところはありますか?

Scott Phillips私はヘラクレスです。彼はとても好戦的で、水の動きの担当が特別なアニメーションを用意してくれました。彼は身長が4メートルほどあり、巨大な棍棒を携えています。けれど戦ってる最中にも人柄の良さが現れるんです。20年前にケヴィン・ソルヴォが演じたヘラクレス(1995年から放映された実写ドラマ「ヘラクレス」)をイメージするかもしれませんが、今回の彼は違いますよ。

Jeffrey Yohalemナルキッソスとエコーの物語です。ナルキッソスはかの有名な「ナルシスト」で、他人を愛さなかったことへの罰として、水面に映る自分だけを愛するようにされてしまいます。妖精エコーが彼に恋をするのですが、エコーはヘラの嫉妬によって他者の言葉でしか話せなくなっていました。

エコーはナルキッソスに近づくも、水面を見つめる彼の側でただ黙っているほかありません。そして彼女の声(エコーはこだまの意)だけを残して、エコーはその身を滅ばしました。これは現代においても最悪な愛の形ですよね。(注:エコーを袖にした罰として自己愛の呪いをかけられた、など様々なバリエーションがある)

Julia Hardy本当に悲惨ですね。既存の物語からオリジナルのストーリーを作るに当たって、どのような苦労がありましたか?

Jeffrey Yohalemどの時代においてもその時々の時代性やテーマを取り込んでいるんだと思います。既存の物語であっても、時代のレンズを通して新しい視点から読み解きます。今私たちはギリシャ神話を面白おかしく読んでいますが、過去の時代にはシリアスにするため面白さを抜いたこともあったでしょう。今回コメディタッチにアレンジできたのは、他のゲームがダーク寄りだったためでもあります。

今の世相では人々は皆ストレスを抱えていて、ひとときでもそこから逃れたがっています。ですから私たちは陽気に行くべきだと思ったんです。とても新鮮でした。

Julia Hardyゼウスとプロメテウスをナレーションに選んだ理由は何ですか?

Jeffrey Yohalemオーディエンスはドラマチックな場面や対立の起こる場面を求めています。人間に火を与えた罰として、ゼウスはプロメテウスを絶壁に縛り付けました。二人は従兄弟同士であり、かつては巨神族を相手取って共に戦った仲でした。

とても親しかった二人でしたが、今は決裂しています。そんな中でゼウスはプロメテウスに助けを求めるのです。ですからやりとりにしても、過去を引き合いに出すにしてもけんか腰になっているわけです。呉越同舟のような状況ですね。

ゼウスは軽口を叩き、一方でプロメテウスはとても理知的で、理想的な漫才コンピのようですね。ゲームにナレーションが付くのはとても便利で、主人公の心の声、例えば「店に鍵がかかっていては入れない」のようなことも、ナレーターに代弁させてしまえるわけです。ジョークも入れられますしね。プレイヤーが実行する行動をコメディに仕立て上げられます。

Scott Phillipsナレーターを入れたことで、物語を単に伝えるだけでなく、スポーツの実況中継のように、プレイヤーが失敗したときにヒントを出すこともできます。やらされている感を減らし、物語に参加している感覚を出せるのです。二人のキャラクターに救われた部分も大いにありますね。

第3部:新たなアートスタイルを作り上げる(UNIQUE AND ACCOMPLISHED ARTSTYLE)

Thierry Dansereau:アートディレクター
Michelle Plourde:リードシネマティックディレクター

Julia Hardy本作の素晴らしいヴィジュアルはどのように作り上げたのかお聞かせください。

Thierry Dansereau『オデッセイ』が終わってすぐギリシャ神話をもっと深掘りすることが決まり、最初に決めたのは『オデッセイ』とどう差別化を図るかでした。そこで、宮崎駿の映画のようなゲームに出来ないかと考えたのです。安全策はやめて冒険をしてみようと思いました。

企画にゴーサインが出てから、テーマパークのようなゲームを目指しました。それぞれのエリアに違いがあり、そこに住む神に合わせた世界になっています。例えば、あるエリアでは川が流れ、大きな木々が生い茂っていて、これは愛の女神アフロディテの性質を反映させています。これと同じことを各地域で行いました。戦と知性を司る女神アテナはギリシャの英雄譚によく登場するので、彼女のエリアには人間の農場が置かれています。オリーブの木は有名なシンボルですし、青をあしらった古典的なギリシャ神殿もあります。

他にも、鍛冶の神ヘパイストスのエリアでは巨大な火事場や工芸品があります。エリア全体を鍛冶に使うとしたら、そこには水道や風車、伐り拓かれた森もあるでしょう。これは身の回りにあるものは何でも利用すると物語っています。ゲーム中で語られることは少なくとも、周囲の環境を見ていくと分かることもあるのです。

戦いの神アレスのエリアには巨神族との戦いで破壊された神殿があり、過去に戦争があったことが分かります。この土地は戦士のためにあるので、安心できる場所はどこにもありません。このように、それぞれのエリアに住んでいる神ごとに色彩や建築の特徴を持たせました。

「小さな世界」といえるファンタジーランドができましたが、高台に登ればそれを一気に見渡せます。これはメモリの制約を乗り越えるのが大変で、遠くにあるものを解像度を落として表示しなければなりません。雲や霧を重ねる必要がありますし、遠くの山々や建造物もしっかり見せます。その向こうに何があるのだろう、と探究心を呼び起こすのです。『オデッセイ』でも同じようなものはありましたが、私たちの目標はもっと探求しがいがある、もっと知りたくなるような世界にして、ゲームで過ごす時間を楽しんでもらうことです。

Julia Hardy先ほどインスピレーションの基について言及されましたが、他にアートスタイルの着想になったものはありますか?

Thierry Dansereau前述のように雰囲気は宮崎駿の映画を取り入れましたが、2Dから3Dにするため手を加える必要があります。スタイルを決めていく過程で、ピクサーの3Dキャラクターがベストだろうというところに落ち着きました。そこから映像にしていく際にシンプルな造形にしなければなりませんし、フィニクスはプレイヤー自身で創造することになりました。とにかくたくさんのインスピレーションを混ぜながら本作を制作しました。

Julia HardyシネマティックディレクターのMichelleは、このThierryのイメージをどのように映像にしていきましたか?

Michelle Plourdeアートスタイルを変えるという方向性が決まって、全体で何を作っているか各部門で摺り合わせをし続けなければと思いました。それは映像演出においても同様です。あるときは壮大さを、あるときはコミカルさを、その切り替えが必要で、『オデッセイ』の経験を生かしつつ違う方向性に挑戦しました。

Julia Hardy最近のゲームでは超現実的な表現が流行していますが、それについては意識していましたか?

Thierry Dansereauこのプロジェクトで注力していたのは、『アサシン クリード』とは全く違うものを作ろうということでした。ユービーアイソフトはこれまでたくさんのゲームを制作してきましたが、そのどれもがリアルさ重視のもので、マンネリ化していると思っていました。

Michelle Plourdeユービーアイソフトはリアル調のゲームが得意ですが、従業員にとっては変化に乏しい現場です。それはそれで得るものは多かったのですが、映像的にもっとできること、工夫を凝らせることを増やすのに挑戦しました。これまでリアル調に特化してきましたが、違うものを作れる機会を頂いて、私たちならやり遂げられると思ったのです。

Julia Hardyいちから作り上げるのは楽しい作業だったでしょうね。それと同時に困難もつきものです。思いもよらない苦労などあったのでは?

Michelle Plourde私のチームの場合は特に、コメディに寄りすぎていないか、または少なすぎるか、そのバランスをとるのが難しかったです。物語自体は結構重たいもので、プレイヤーに冒険感をきちんと与えなければなりません。重いギリシャ神話の物語とコミカルな部分が噛み合うようにバランスをとるのが大変でした。

Thierry Dansereau初めての経験でしたから困難はいくつもありました。新しいスタイルに慣れるための研究もする必要あります。ワールドの作り方もこれまでとは勝手が違いました。それぞれの区域に特徴的な環境があり、花畑から破壊し尽くされた廃墟というように、移行がとても極端なのです。

巨大な彫刻を峡谷に置いたとしても、現実的なことを一切気にしなくていいので、皆ファンタジーに熱中していて楽しかったです。海や文字、様々な造形を様式化、単純化していって、チームの全員に伝わるようにする作業も面白かったですね。このプロジェクトによって全員が経験を積めて、私自身もアーティストとして成長できたと思います。

Julia Hardyゲームのスケールや色彩は皆さんが心血を注いだ結果なのですね。私も絶対プレイします。本日はご参加ありがとうございました。


セッションの合間には、新型コロナウイルスによってオフィス閉鎖を余儀なくされたケベックスタジオの様子が放映されました。大勢のスタッフが関わるAAAゲームにおいて、1カ所に集まることが出来ない負担はかなり大きかったようです。会社と自宅の環境差もあり、当初は全員が戸惑っていましたが、急遽リモートワークの環境を整備し、専用のツールも新たに開発。『イモータルズ フィニクス ライジング』はアフターコロナにおけるゲーム制作の見本となりました。

辛いピンチの時だからこそ、いっそ大冒険を楽しんでしまえばいい。本作には今の時代に向けた制作陣のメッセージが秘められているのかもしれません。

『イモータルズ フィニクス ライジング』は、(Epic Gamesストア/Uplay)/PS5/PS4/Xbox Series X/Xbox One/ニンテンドースイッチ/Stadia(日本未展開)向けに12月3日発売予定です。

《Skollfang》

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