最新ゲームが毎日大量にリリースされる昨今。メーカーやストアのゲーム紹介だけでは「どんなゲームかわからない!」とお嘆きのGame*Spark読者も多いのではないでしょうか。そこで“なるべく早く”ゲームの生の内容をお届けするのが本企画「爆速プレイレポ」です。
今回はFusion Creators Studioによって、2021年10月26日に配信を開始した『SCP: Containment Breach Multiplayer』について生の内容をお届けしたいと思います。
『SCP:Containment Breach Multiplayer』とは?
本作を紹介するにあたり、まずはベースとなった『SCP:Containment Breach(以下、SCP:CB)』を知っておく必要があるでしょう。
『SCP:CB』は架空の組織「SCP財団」の設定を共有する大規模な共同創作を基にしたホラーゲームです。
自然法則に反した存在・物品・場所(SCPオブジェクト)を収容・研究する施設「サイト19」を舞台とし、Dクラス職員として収容違反によりアノマリー(異常存在)が脱走した状況下の施設から脱出を目指します。また、公式サイトにて無料配布しており、オープンソース化もされています。
2012年に公式サイトにて無料でリリースしてからは、高い人気を誇っており、オープンソース化もされているため派生作品が多く存在します。代表的なものには、同開発によるUnityエンジンでのリメイクや、VRに対応させた『SCP: Labrat』、オブジェクト・財団職員・要注意団体の3派に分かれてそれぞれが勝利を目指すマルチプレイ専用タイトル『SCP: Secret Laboratory(以下、SCP:SL)』などが挙げられます。
そして、『SCP:CB』をオンラインマルチプレイに対応させたものが、今回紹介する『SCP:Containment Breach Multiplayer』です。『SCP:SL』との大きな違いとして、こちらはリメイク前がベースとなっており、最大64人でプレイすることができます。
『SCP:CB』からゲームの骨組みはそのままに、財団側、SCP、Dクラスなどからなる勢力に別れ、それぞれの目標を遂行できれば勝利となります。それではさっそくプレイしていきましょう!
大人気ゲームのはずだった
さっそくですが、まずはこちらのツイートを見てください。
こちらは本作の配信開始を報せたツイートとなりますが、現在この記事を執筆している時点では1500以上のリツイートと2500以上のいいねを記録しており、本作の注目度の高さが表れていると言ってもいいでしょう。
また、今回はじめてゲームを開始したのがリリース初日の26日。「実況動画で観ていたあのゲームがマルチでできるなんて」「人が多すぎて参加出来なかったらどうしよう」などと、期待に胸を膨らませながらゲームを起動し、サーバーの様子を確認してみました。
中規模のサーバーはどれもそこそこ埋まっています。
小規模サーバーは不人気そうです。
あれ……?
最大64人を売りにしているゲームだと思ったのですが、なぜか誰もそのサーバーで遊んでいないのです。確認のため「SteamDB」にて最大同時接続数を見てみると3200人ほどを記録しており、インディーゲームにしては上々な数字です。おかしい、大人気ゲームのはずでは。これはもしかすると、集団心理が働いているという可能性もあるのかもしれません。「他の誰かがいたら参加しよう」「自分が最初に入らなくてもいいだろう」という心理です。この状態になると、たくさんの人がいるのに、誰も参加しないまま……。
とても恐ろしい集団心理である――。
とまあ戯言はこのへんにして、今回は主に20~32人サーバーで遊んでいきます。
ここは新人兵士研修会場
チュートリアルやルール説明も無くゲームは開始し、まずは財団陣営となる「MTF」に配属されました。目標は“科学者を隔離”すること。ゲーム内では唯一、この指示だけが表示されていますが、それ以外の手順などは一切不明。手探りでやっていくしかないようです。
ざっと見渡すと、10人ほどの味方兵士がいます。これは心強い。
しかし、少し進むと折り重なった兵士の死体が転がっていました。一体この先になにが待ち受けているのか。そんなことを考えていると、突然の爆発音。そして気づいたときには味方の“かぼちゃ型グレネード”により爆散していました。誰だ投げたやつ。
気を取り直して、次は「Chaos Soldier」に配属されました。目標は“Dクラス職員の隔離”です。
しばらく進むと、お馴染みの電気ゲートにたどり着きました。こちらは、近づくことで触れると即死する電気が発生する装置となっており、足元には無残にも散っていった同胞の遺品が転がっています。突破方法を知っていれば簡単に超えられるのですが、ここにいる多くは新参の兵士ということを忘れてはなりません。
残念ながらSCPの姿を見ることなく、約半数が電気ゲートの餌食になってしまいました…。
誰もルールを知らないのである
サーバーを変え、新たに「MTF」として科学者を救出するために施設に潜入する一行。そしてついにそこで出会います。
このキモカワマスコットのように見えるのは本作の顔とも言えるSCP-173(彫刻、イナミ)です。オブジェクトクラスはEuclid(通常はSafe・Euclid・Keterの順に危険度が高い)に設定されており、目を離すか瞬きをした瞬間に高速で動き、襲いかかってきます。そして、『SCP:CB』独自のシステムである「まばたきメーター」も、このSCP-173のためにあります。
画面左下に表示されている目のアイコンは、プレイヤーが次に瞬きするまでの時間を表しており、メーターがなくなると一瞬、画面が暗転します。また、任意のタイミングでまばたきすることもでき、スペースバーを押すことによってタイミングを調節できます。そのため、SCP-173と対面した時は常に2人以上での目視が推奨されており、見続けている限り動くことはできません。
しかし、回避方法がわかっても倒すことはできるのでしょうか。今回共に行動していたプレイヤーは4、5人いましたが、それぞれが手持ちの銃で攻撃を試みても一向に死ぬ気配がありません。それもそのはず、SCP-173のHPは5000に設定されており、倒すには相当の人員と時間を要します。ちなみに兵士1人あたりのHPは150です。『SCP:CB』では、MTFが持つ封じ込めボックスを使って捕獲することができるのですが、それらしきものも見当たりません。その結果、無残にもSCP-173によって全滅してしまうのでした。
さて、次に出会ったのは、直接、もしくは何らかの媒体を通して顔を見ると、どこにいても襲いかかってくるSCP-096(シャイガイ)。本作においてはプレイヤーが操作しているため、顔を見ようが見てなかろうが襲いかかってきます。基本的にどのSCPも攻撃が当たれば人間を一撃で殺せてしまうので、SCP-096においてはその理不尽さをより痛感できます。
今回プレイした限りでは、どのSCPに対してもプレイヤーは対抗手段が見つかりませんでした。そもそも倒すことが目的ではないのかもしれませんが、1回も人間側が勝利できないなんて絶対におかしい。何か方法があるに違いない…。
そう、なぜ勝てないかもうお分かりだろう…なぜなら、誰もルールを理解していないのである。SCP側の目的は人間側の全滅という至ってシンプルなものなのですが、人間側は脱出しろ、救出しろ、とだけ言われても手順が複雑すぎてほとんどの人が理解できていないのです。
この、あたかも味方かのように並走している、しぶい兵士でさえも、実は敵なのである。そう、まったくルールを理解していないのである!
本作にはボイスチャット機能が実装されているのですが、その使い方さえも間違っています。突然歌い出す者。Fワードを連呼する者。ロシア国歌を爆音で流しだす者。そう、ボイスチャットを使い、情報を共有して共に攻略しようという者はいないのです。なぜなら、誰もルールを理解していないからである!
ここまでプレイしてきた『SCP:Containment Breach Multiplayer』ですが、今回はあまり満足にプレイできない結果となってしまいました。ルールが不明瞭ということや多発するチームキルも原因のひとつなのですが、他にも進行不能バグやクラッシュが頻繁に発生しており、まだまだ未完成感が否めません。
また、敵味方入り混じったボイスチャットはひたすらカオスな様相を呈していましたが、無料FPS黎明期のようなどこか懐かしさを体感できます。現状はSCPのHPが高すぎて蹂躙されることがほとんどですが、それもまた本来のSCPのあり方として正しいのではないでしょうか。人数が多いことによる“お祭り感”はとても魅力的な点ではあるので、今後はプレイ方法が確立されて、64人サーバーが活気づくことを祈りましょう。