Game*Sparkレビュー:『Cuphead The Delicious Last Course』―とってもデリシャスだが、おなかいっぱいにはなれないDLC | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『Cuphead The Delicious Last Course』―とってもデリシャスだが、おなかいっぱいにはなれないDLC

人気カートゥーンACT、待望のDLC『Cuphead The Delicious Last Course』をレビュー。

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Game*Sparkレビュー:『Cuphead The Delicious Last Course』―とってもデリシャスだが、おなかいっぱいにはなれないDLC
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生き生きと動くキュートなキャラクターが、攻撃時に見せるちょっと腹黒い表情、フィルムの汚れを再現したエフェクト、ノイズのかかったジャズBGM。1930年代のカートゥーンアニメの忠実なオマージュに『魂斗羅』や『ロックマン』といった1980年代のアクションシューティングを融合させたような『Cuphead』は、高い品質でゲーマーを驚かせ、そして高い難易度でゲーマーを悶絶させました。

2017年9月の発売(日本語版は2019年4月)から早くも5年が経とうとしていますが、『Cuphead』はインディーゲーム界の……いや、ビデオゲーム界のマスターピースとして色褪せず輝き続ける作品です。それから約5年、驚くべきクオリティのコンテンツを再び楽しめるDLCが登場しました。

本稿では、2022年6月30日にPC(Steam/GOG.com)/PS4/Xbox One/ニンテンドースイッチ向けに発売された『Cuphead』の追加DLC『Cuphead The Delicious Last Course』のGame*Sparkレビューをお届けします。本レビューを執筆するにあたっては、PC版を用いてプレイしています。

幽霊ガールのミス・チャリス参戦!ちょっとだけ初心者向けのキャラ

DLC冒頭でミス・チャリスに会いに行くため、とある島へと向かったカップヘッドとマグマン。そこで彼女がマグマンに不思議なクッキーを食べさせると、チャリスが現世に復活。その代わりに、マグマンは魂を交換され幽霊になってしまいました。

しかし、こうして生き返ることができるのは一時的で、時間が経つと幽霊に戻ってしまうのだそう。永久に生き返る(?)ためには、シェフ・ソルトベイカーが作る「ワンダー・タルト」を食べないといけません。その材料を集めるため、カップヘッドたちは今回の冒険に出発することとなります。

本コンテンツにアクセスするためには、本編で「霊廟I」ステージのクリアが必要。クリア済みであれば霊廟の下にボートが現れ、DLC部分である新たな島にアクセスできます。

ミス・チャリスは、装備の「お守り」欄からクッキーを選択することで使用できます。2段ジャンプや無敵状態で回避できるローリング、パリィを同時に行えるダッシュなどの新アクションを扱える上に、HPがデフォルトで「4」に設定されているなど、どちらかと言えば初心者向けのキャラクターです。

その一方で「ジャンプ力が低い」「お守り枠が使えない」といったデメリットも。少しは簡単になるものの、その操作感はカップヘッドたちと異なるため、DLCならではの上位互換的な“強キャラ”ではなく、あくまで別の戦い方ができるキャラクターとして作られています。

カップヘッドと同様、チャリスの表情やモーションは非常に豊かです。ミス時や射撃時のちょっとゲスい表情、死亡時の表情などは、カップヘッドたちとは少し異なる可愛さにあふれており、その愛らしさだけでも使いたい理由になります。

DLCのゲームの流れは、概ね本編と同一。ワールドマップである島を探索して各所に点在するボスステージに挑みます。新規に用意されたボスキャラたちは、カウガール風なウシや虫のギャング団、赤鼻の雪男と、本編と同様どれも個性的。フェーズごとに切り替わる展開もコミカルで、次に待ち受ける仕掛けが楽しみになります。

難易度ももちろん高く、「もうちょっとで撃破できたのに……!」という悔しさや、ボスを撃破してゴングが鳴ったときの安堵感は健在。ただし、一部ボスの攻撃には“視認性の悪い小さい弾”があり、若干のストレスを感じる局面もありました。しかし、死にながらパターンを覚えて徐々に敵の熾烈な攻撃に慣れていく『Cuphead』らしい体験は変わらず味わえます。

各フィールドやボスのBGMも優れており、激しいアクションを盛り上げるクールなジャズ楽曲たちが用意されています。個人的には、本編よりも少し落ち着いた曲調であるような印象を受けました。

ローカライズ品質の高さについても触れておかなければなりません。キャラクターの口調やレトロなフォントといった基本的な部分はよくできていますが、それだけではありません。ウシのボスには「モー喧嘩」「ぎゅーの音も出ない」といったダジャレや、「イスはすでに泥酔」「しなをつくるのもなし」といった回文まで登場。英和翻訳の品質の高さにも驚かされました。

さて、本編をプレイ済みの方はお気づきかと思いますが、ボス戦やBGM、ローカライズといった良い点は本編と共通するものであり、DLCならではの魅力ではありません。しかしながら、筆者は『Cuphead』の世界を新鮮な気持ちで再訪できることに、強い嬉しさを感じました。大幅な追加要素がなくとも、手間をかけてこだわり抜かれた新規コンテンツというだけで、十分な価値があると考えます。

ショップで購入できるお守りや武器のラインナップにも、新たなものが追加。画面全体に攻撃できる広範囲射撃や攻撃力と引き換えにライフが増加するアイテムが新規に購入でき、DLCのみでなく『Cuphead』本編でも使用できます。

ひとつ気になったのは、ゲームの難易度が非常に簡単になる「ハートの指輪」というお守りアイテム。パリィの1回目、3回目、6回目でライフを回復するという効果が付与されるものです。DLC発売前の『Cuphead』では、HP回復手段が無い、もしくは乏しかったのに対し、このお守りをつけるだけで最大3回もライフを増加できるようになるのです。これによって本作の醍醐味である「死んで覚える」というサイクルが崩壊してしまい、難しいはずのボス戦が非常に簡単になってしまいます。

とはいえ、その高い難易度が『Cuphead』の素晴らしいアートやBGMを落ち着いて楽しめなくする“ハードル”になってしまっていたのもまた事実ですし、この「ハートの指輪」は『Cuphead』の世界観を更にカジュアルに楽しみやすくしたいという意図が感じられます。また、そもそも難易度を下げたくなければ「ハートの指輪」を選ばなければ良いので、評価に悩むところです。

本DLCで筆者が最も気になったのは、「ボリューム不足」であること。DLCのボス戦では、メインと射撃やお守りが制限され、パリィのみで戦うサブがそれぞれ5体ずつ登場します。島が3つ(+ファイナルワールド)とメインボスが19体存在する本編と比べると、プレイ時間も約5時間ほどで、物足りない印象を抱きます。敵を倒しながらゴールに向かって進む2Dプラットフォーマー的なラン&ガンステージも廃止されているため、より一層物足りなさを感じました。

もちろん「本編レベルのボリューム」を求めるわけではありませんし、780円という安価な価格設定に見合うどころか、それ以上のクオリティの作品になっていることは間違いありません。IGN Japan誌のインタビューでは、本編に近い枚数のアニメーションに加えオーケストラの規模も大きくなっていることが明かされており、制作に多大な労力を費やしたことは想像に難くありません。とはいえ本編の発売から約5年経った現在発売されるDLCとして、あっさりと終わってしまい物足りなく感じたのは事実。お腹いっぱいになりたかった……というのも、『Cuphead』ファンとしての正直な心情です。

総評:★★★
良い点
・『Cuphead』本編同様、魅力的な演出とゲームデザイン
・とっても可愛い新キャラ、ミス・チャリス
・ファンにとっては新規コンテンツというだけで十分に価値アリ


悪い点
・ボリューム不足でお腹いっぱいになれず物足りない
・一部ステージに見られる、小さく視認性の悪い弾

Game*Sparkレビューのお約束
Cuphead|オンラインコード版
¥1,755
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
ジ・アート・オブ Cuphead (G-NOVELS)
¥4,400
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

《みお》

超雑食の若年ゲーマー みお

2021年3月よりフリーでゲームライターをしています。現在はGame*SparkとIGN JAPANで活動し、稀にINSIDEにてニュース記事を執筆しています。お仕事募集中。ゲームの趣味は雑食で、気になったものはクラシックゲームから新しいゲームまで何でも手を出します。主食はシューター、ADV、任天堂作品など。ジャンルやフランチャイズの歴史を辿るのも好きです。ゲーム以外では日本語のロックやアメコミ映画・コメディ映画、髪の長いお兄さんが好きです。

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