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「広ければ良い」の時代は終わった。新生『セインツロウ』に見る“現代ものオープンワールドの街”のあるべき姿

現代を舞台としたオープンワールドゲームにおける街の理想像を探るコラム。

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「広ければ良い」の時代は終わった。新生『セインツロウ』に見る“現代ものオープンワールドの街”のあるべき姿
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新生『セインツロウ』のマップ

読者のみなさま、オープンワールドゲームはたくさんプレイしていますか?本稿では「クライムアクション」系のオープンワールドを主題に、その中でも“街”に焦点を当て、「理想のオープンワールドでの街とはなんであろうか」というトピックを追求していきたいと思います。願わくば共感が生まれますように。また事の発端は新生『セインツロウ』(2022年)で感じたことでもあります。

『Grand Theft Auto: San Andreas』(2005年)というひとつの頂点

『Grand Theft Auto: San Andreas』(2005年)

本記事における「広さにフォーカスしたクライムアクション・オープンワールドの頂点」は『Grand Theft Auto: San Andreas』(2005年)とします。広い街並みを走るだけで楽しかった純粋な思い出をお持ちの方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。物足りない話とは矛盾するようですが『GTA: SA』はただ広いだけでなく、入れる店も多ければ泥棒までできた逸品です。しかし最大の売りは広さにあるでしょう。そういった理由で、本記事では“広さの頂点”としています。本作の遺伝子はのちに『Grand Theft Auto V』が引き継いでおり、都市部と郊外の作り込みやマップ内での自由度が更に高められています。

プレイヤーの慣れによりただ広いだけでは物足りなくなった

しかしプレイヤーがオープンワールドに慣れてしまったゆえに、「広大さ」ばかりを意識したオープンワールドゲームを今プレイすると、物足りなさがあるのは間違っていないはず。ひるがえって新生『セインツロウ』は、『GTA』のポジションを奪えるだけのポテンシャルがありながらにして、手狭で入れる場所も少なく、オープンワールドの街としては物足りなさを強く感じました。新生『セインツロウ』は2022年に発売されたタイトルです。ですが、筆者としては物足りない。なぜならもう、オープンワールドでの街には理想を持つようになってしまったからです。

オープンワールドの街には理想がある

入れる店とアクティビティが敷き詰められた『セインツロウ 2』の街

ここでシリーズ過去作である『セインツロウ 2』を思い出してみましょう。『セインツロウ 2』(2009年)は歩いていて多様な発見ができるロケーションがあり、入れる店の数も多いのです。筆者としては、これをもってして理想型のひとつと見ています。「オープンワールドでの街には“発見”がほしい」と思うプレイヤーにはうってつけです。地下に向かう道路を走っていたら、観光名所である大きな湖と出くわしたりと、驚きを得られた経験もありました。理想として、とりわけ重要なのは「入れる家屋の数」で、そこに期待する人は多いのではないでしょうか。


理想の街は「歩いていて楽しい」

さらにモダンな形での理想を追い求めれば『サイバーパンク2077』(2020年)の街に行き着きます。『サイバーパンク2077』での街は「入れる店」が多いだけに留まらず広大で、歩いていて人種を含めた多様性に触れられる点でも筆者の“理想”を体現しています。この街作りにどれほどコストが掛かったか、それに見合う街が完成されています。

『サイバーパンク2077』(2020年)

『サイバーパンク2077』は「なるべく歩かせる」デザインを活かして、発見が多い街作りができているといえるでしょう。「歩くことで発見を取りこぼさない」というのはオープンワールド系アクションにとって重要な要素です。

歩いていて自動的にミッションが発生するものの、進めるかどうかはプレイヤー次第な点、自由度も高いところがナイトシティの姿をより魅力的に見せてくれます。街並みをただ歩いているだけでもゲームの進行があり、昼夜で街並みの様子を綺羅びやかに変えてくれるところも好印象です。

『ウォッチドッグス レギオン』(2020年)

オープンワールド系クライムアクションといえばドライブもつきもの。『ウォッチドッグス レギオン』(2020年)は自動運転が導入されていましたが、いかんせん監視の目などがあるため、筆者の中の“理想的な街”にはなっていません。しかしながら、自動運転にあたるシステムはすべてのオープンワールド系ゲームに導入されてほしいと思います。『Grand Theft Auto V』にもいえることです。

『スリーピングドッグス』(2012年)

「歩いていて楽しい」で思い出されるのが『スリーピングドッグス』(2012年)。本作は実際の香港を舞台に香港秘密警察の一員としてマフィアのファミリーに入り、その両方の間で右往左往する、というのが主題の作品です。

再現された香港の街並みを歩けるのに留まらず、露天商も多く、特に必要がなくてもバフとして食事ができたりする本作。徒歩でないと解放できない要素も備えており、あえてプレイヤーに街を歩かせるようなデザインが施されています。ゆえに街の躍動感を感じやすかったのです。また「夜の香港」を歩くことができる作品というのもなかなかユニーク。車で走っていてもつい降りて、その場所を歩いて景色を確認したくなる作品です。

理想は実現されれば更新され、“まだまだ進化していくんじゃないか”と思わされる

『サイバーパンク2077』(2020年)より。これほどアクティビティがあっても「まだなにかがあるんじゃないか」と思ってしまいます。

しかしなお、ゲームで追い求めたい“理想の街”の姿はあるはずです。たとえば「入れる建物の数が膨大で、街並みを歩く人種に多様性があり、店の数も多い。そのうえ歩いているだけでイベントが起こる。そのうえドライブしていても楽しい」と言えるようなもの。現代が舞台のオープンワールドを遊ぶゲーマーの多くは、きっと「街が持つ生命力」に期待しているところでしょう。街の生命力とは簡単に言えば“活気”であり、干渉できるもの/できないものに限らず、プレイヤーが得られる体験の豊穣さでもあります。

2022年のいま、オープンワールドの理想の街というのは「歩いていて楽しい」に収斂すると考えています(もちろん、ドライビングの楽しみもありますが)。クライムアクション系、または現代が舞台のオープンワールドゲームを好んで遊ぶ方の中にも、特に好きな街やそこで得た思い入れ深い経験はきっとあるはずです。広大なマップで様々な遊びを楽しめるゲームが改めて増えてきたところで、一度足を止めて「理想の街」について考えてみてはいかがでしょうか。


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《SHINJI-coo-K(池田伸次)》

FPSとADVを偏愛しつつネトゲにも造詣のあるフリーライター SHINJI-coo-K(池田伸次)

「Game*Spark」誌に寄稿しつつも「IGN JAPAN」誌と「GAMERS ZONE」誌にも寄稿。「インサイド」誌にも寄稿歴あり。今はなき「Alienware Zone」誌や「週刊Steam」誌にも寄稿していたフリーライター。 そしてヒップホップビートメイカー業も営む音楽家兼ゲームライターの兼業家。通称シンジ。

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