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(ネタバレあり)『Horizon Forbidden West』それは本当にエコなのか?生物資源を消費する「バイオマス燃料」の現在と課題【ゲームで世界を観る#34】

「エコ」は全体を見ないと落とし穴にはまります。

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(ネタバレあり)『Horizon Forbidden West』それは本当にエコなのか?生物資源を消費する「バイオマス燃料」の現在と課題【ゲームで世界を観る#34】
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『Horizon』の世界では、機械獣は「バイオマス転換」、植物や動物を捕食してエネルギー源に転換する仕組みで動いています。かつては軍事用自律ロボットに搭載された機構であり、暴走して全ての有機生命体を燃料にしてしまった「ファロの災禍」の元凶でもありました。「バイオマス燃料」は実際に化石燃料の代替として研究されていて、地球温暖化を抑える「エコ」なものというイメージが付けられていますが、それにはひとつの落とし穴があり、それを認識していないとかえって環境破壊を加速させると指摘があります。

バイオマス燃料の研究が進んでいる背景には主に2つの理由があります。1つは地中から汲み上げる化石燃料の採掘が枯渇する可能性があるため、もう1つは廃棄物として無駄に処理されていたものを有効活用するためです。

燃料を石油に依存していれば限度が来たとき、または世界情勢で供給が滞った場合に機械は全て止まってしまうため、水素燃料、合成燃料などそれを防ぐために代替できる燃料の開発を進めています。

化石燃料は古代の生物が分解された有機物が堆積したもので、生成には数百万年の時間が必要がかかります。現在私たちが消費している石油や石炭は約2億年から3億年前の地層からで、人類はこれを不可逆的に消費しているのが現状です。試算されている埋蔵量では後50年で枯渇するとされ(諸説あり)、それまでに全ての工業品を代替する必要性に迫られています。そのため、原料から増やすことができるバイオマス燃料や水素燃料が重要なのです。

ガソリンの代替になる「バイオエタノール」は、植物のデンプン質や糖分を発酵によってアルコール化し、それを蒸留したものを燃料として使います。原料はとうもろこしやサツマイモ、麦、サトウキビなど。これだけ並べるとまるで酒でも造るようですが、実はやっていることは酒造りと全く同じ。国内では複数の醸造会社が日本酒の酵母を応用したバイオエタノール醸造に取り組んでいます。というのも、日本酒は発酵過程に於いてデンプンの糖分への分解と、糖分のエタノール転換を同時に行うために、エタノールを効率よく醸せるのです。

また、ユーグレナという微生物と使用済みの食用油を合わせると軽油に近い成分が合成され、ジェット燃料、ディーゼル燃料にリサイクルできるようになりました。他にも廃棄される木材や食品の再利用も可能性があり、産業廃棄物の処分にも有効と見込まれています。

バイオ燃料の実用化は進んでおり、2021年に欧州委員会でガス排出削減に向けて策定された「フィットフォー55」では、飛行機燃料の置き換えを段階的に義務化、2050年までに全体の63%を持続可能燃料にすることを求めています。日本の国内線でも昨年に混合燃料の実証実験が行われました。

バイオマス燃料は二酸化炭素排出量を削減できるという説明、その根拠となっているのが「カーボンニュートラル」という捉え方です。植物を原料にした燃料の場合、その植物が光合成で二酸化炭素を吸収しているから、燃焼で出る二酸化炭素と相殺したことになる、という考え方です。カーボンニュートラルとされるバイオマス燃料はCO2排出量の計算から除外され、化石燃料から入れ替えることで排出量を抑えていく、というのが現在の地球温暖化対策のひとつです。

でもちょっと待ってください。そのカーボンニュートラルは、本当に地球温暖化を食い止められるのでしょうか?植物の光合成で相殺とは言いますが、それには年単位の時間が必要で、排出二酸化炭素量そのものが減っているのではありません。使った分相当をきちんと育てていくことが前提ですし、精製で使うエネルギーや燃焼効率などで増加した分を相殺できないことも指摘されています。

例えば、木くずを固めて作った「木質ペレット」もカーボンニュートラルとして排出量除外が認められていますが、乱暴に言ってしまえば「廃材を燃やしているだけ」であって、今燃やした分を植樹で相殺するのにどれだけの時間がかかるか想像してみてください。結局のところ、それはツケを後回しにしているだけではないでしょうか。

さらにFASのような世紀末倫理企業が上っ面だけのエコ、いわゆる「グリーンウォッシュ」をやれば、原料のために新たに森林を伐採し、ただ草木を燃やしていくだけで化石燃料以上に環境負荷の高いものになりかねません。食料用のトウモロコシがバイオ燃料に使われたことで穀物の価格が急上昇する事態も起きています。結果的に化石燃料の方がマシ、という皮肉な結果に終わるかもしれません。本当の意味で「エコロジーに適う」作り方、使い方をしていかないと、「ファロの災禍」も冗談では済まなくなってしまいます。

化石燃料の枯渇、地球温暖化、環境負荷、「エコ」を考える上では様々な側面を見ることが大事であり、どこか1点だけを観て極端にしていくと必ず他の点で歪みが生じるでしょう。1000年先の未来に地球の環境を残せるかは、私たち「古のもの」にかかっているのです。


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《Skollfang》

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