自動化ジャンルでは珍しいファンタジーの世界を採用した『Oddsparks: An Automation Adventure』は、スパークの愛らしい動きや比較的組みやすい生産ラインで、同ジャンル入門者にもおすすめの作品です。別の記事では需要供給と輸送の基本を取り上げましたが、今回はもう一歩進んで、物流の効率化を目指す応用編をお届けします。


物流の状況をモニターするのに必須なのが「カウンター」です。1分あたり(/min)にその地点を通過したアイテムの数量を計測して表示してくれるものです。生産拠点から離れた地点で生産数と同じ数値が出ていれば、理想通りの輸送が実現できている証になります。


60/minの資源を全てきりかぶスパークで輸送するのは、余裕のない限界値でしか達成できず、輸送途中に何か遅延の原因があると、渋滞が全体に波及して資源生産まで遅れてしまいます。試しに、途中で三叉のスプリッターを設置してみました。手前で計測するとおおよそ40以下/minの数値が出て、効率は2/3まで落ちていることが分かります。伐採施設の直下で計測してもほぼ同じ数値。ギチギチに詰まっているため遅延を吸収するバッファが無く、渋滞先頭の遅れが直接ここに響いてくるのです。

このようにスプリッターを設置すると40/minが輸送能力の限界になります。いわゆるボトルネックというやつですね。ということは、現状から輸送する数を減らさなければなりません。そこで見直すべきなのが木材を加工する位置です。最初の設計では遠隔ののこぎり台に輸送してから加工していました。のこぎり台では丸太を2本使って1本の角材を生産していますよね。では、輸送する前に加工を行なうとどうなるでしょう?

のこぎり台1台では丸太15本/minで角材7.5本/minを生産しています。つまり、加工が先なら丸太60/minから15/minを引いて角材7.5本を足す、輸送量を7.5本節約して52.5/minの輸送量に減らせるのです。これで1/8程余裕ができることになります。2台設置で45、3台で37.5になり、これでスプリッターで生じる40/minのボトルネックをクリアできました。

伐採施設側に目を戻すと、渋滞は解消されて60/minをきちんと維持していました。このように、資源の生産をあえて減らすのでなければ、長距離へ送り出す前に加工してスムーズな輸送を妨げないよう意識しましょう。
丸太を全て木板まで加工してから輸送すれば、輸送の労力は丸太に比べて1/4に圧縮できます。作る部材を1ラインに付き1種類にすれば分かりやすいと思うかもしれませんが、必要な組み立て品の数が増えていくほど部材を流すラインもどんどん増えていき、すぐにこんがらがるのがお約束。片付けるのも面倒で数十時間を無駄にして最初からやり直し、そんな経験ありませんか?
そこで今回は生産ラインをまとめる「混流」の方式を試します。個別のラインを組むよりも効率が良いとして実際の工場でも多く使われる手法です。需給は計画的に考える必要がありますが、見た目がとてもすっきりしているので動線が分かりやすくなります。
やり方は、加工施設で作ったものを、材料を下ろしたスパークに持たせるよう排出をもとのラインに繋げること。このように箱を介せば、集約した一つのラインに複数の部品が流れていく状態を作り出せます。……このようにすると何ができるか。複数の部材を使う組み立て系の工場をラインの脇にぽんと置くだけで、複雑な配線を組むこと無く必要な部材を積み入れてくれます。

混流を成功させるためには、流れている部材の量を把握した正確なバランス調整が肝心です。配分を間違えると後ろの施設で生産が行なわれず、余った部材がスタックを引き起こします。今回は先ほどのラインで構築した丸太60本→丸太15本、角材7.5本、木板7.5の配分を使い、後続の生産施設を置いていきましょう。

木材加工場で木製ブレードを生産すると、木板2、角材1の割合のため木板7.5/min、角材3.75/minを消費します。残りは丸太15本、角材3.75で、この2つで作れるものは梯子がありますが、1脚あたり丸太4本、角材10本を消費します。このままではバランスが悪いので、丸太のいくらかを角材に加工しましょう。

ここで注意したいのが、のこぎり台にスパーク2体を配置すると丸太15本全てを消費してしまう点です。そのため、スパーク1体の配置で丸太7.5/minの消費、角材3.75/minの生産に調整し、流れる量は丸太7.5本、角材3.75+3.75=7.5本になりました。

梯子の消費は4:10なので、角材7.5/minに対して丸太は3/min、余剰は4.5/minです。角材を使い切るために必要な梯子の生産は7.5÷10×2=2.66/minです。全体をまとめると以下の通り。
伐採施設:丸太60/min→
丸太7.5/min、角材11.25/min、木板7.5/min→
木製ブレード3.5/min、梯子2.66/min、丸太4.5/min

カウンターを見ると、木製ブレード4/min、梯子2/min、丸太2/minとほぼ計画通りの数値を達成しています。より効率的な輸送ができる石の道や、配達スパークに切り替えれば、より精度が高く理論値に近づけられるでしょう。終点に分類機能と保管庫、オプションでコンプレッサーを付け加えればラインの完成です。
終盤になると大量に物資が必要な施設も登場しますが、1分あたりの生産量を算出しておけばどれくらいの時間がかかるかも把握できます。リアルタイムで長時間かかるのであれば、生産拠点を増やすなどの対策も取れますよね。プランニングやシミュレーションで頭が煮えあがっても、「計画通り」に自動化できた快感もまた一入です。本作の最終局面には無計画では太刀打ちできないステージが待っているので、ロジスティクス的な思考を身に付けてトライしてください。