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学校の造形がハンパない!インドネシアの不良高校生として過ごすアウトローACT『Troublemaker』で知る現地事情【特集】

マップの観察も楽しい本作は、無料デモ版を配信中。操作も簡単で、気軽にインドネシアの高校生活を体験できます。

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学校の造形がハンパない!インドネシアの不良高校生として過ごすアウトローACT『Troublemaker』で知る現地事情【特集】
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インドネシアのGamecom Teamが開発した不良高校生アクションゲーム『Troublemaker』は、3月31日に発売を控えています。

これは日本の不良もの漫画によくある「校内での喧嘩大会」をテーマにした内容で、拳にバンテージを巻いた主人公の少年がライバルとの死闘に臨みます。校内一の猛者の座を賭ける喧嘩トーナメントに参加し、不良のチャンピオンになるのが目標です。

しかし、このゲームの開発者の所在はインドネシア。ということは、この『Troublemaker』の舞台も日本ではなくインドネシアです。インドネシアの高校生活を体験できる、極めて珍しいゲームでもあります。

お母さんに心配かけさせるな、ブディ!

本作の主人公である“ブディ”は高校生です。

彼は不愛想ですが決して悪い少年ではなく、何事もなければごくごく普通の高校生。しかし、煽り耐性が極端にないのが玉に傷。下校の途中で不良に絡まれると、容赦なくそれに応戦してしまいます。

チュートリアルでは引っ越しする前のブディの様子が描かれます。どうやら彼は喧嘩沙汰を次々に起こしているらしく、地元の警官にも「お前反省してねぇな」みたいなことを言われています。しかもコイツ、シングルマザー家庭の子供なんですよ!? 父親は何年か前に亡くなり、それからはお母さんが女手一つで育てています。だったらお母さんに心配かけさせるな!!!

お母さんのこの顔を見てください。心底疲れ果てています。警察の留置所からブディを引き取る時も、何度も警官に「Terima kasih」と言ってました(Terima kasihは「ありがとう」ですが、こういう状況での「ありがとう」は「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」という意味)。

「あなたも私と一緒に引っ越すのよ。新しい高校は、今までの高校と同じ学科があるから何の心配もないわ……ねぇ、約束して。もう喧嘩はしちゃダメよ?」

「分かったよ、ママ」

インドネシア語で母は「ibu」、けれどブディは「ママ」って言ってます。しかもコイツの一人称は普段は「gua(俺)」なんですが、ママの前になると「aku(僕)」になります。

このあたりはインドネシアの男の共通点というか、あるあるです。

筆者はかつて、ジャカルタ在住のMMA選手マックス・メティーノ先生に「家族で一番偉いのはパパじゃなくてママだ」と言われたことがあります。どうも上流家庭であればあるほど、この傾向は顕著らしく(マックス先生のファミリーは有力者一族で、従兄にバスキ・プルナマ前ジャカルタ州知事がいたりします)、屈強な格闘家だろうと大企業の社長だろうと不良だろうと他人の前で自分の母親を「ママ」と言ったりします。これはマザコンとかそういう話ではなく、それだけ母親を敬っているということ。

……てか、だったらなおさら喧嘩なんかするなよブディ!

ブディの高校は「SMK」

そんなこんなで、引っ越し先の地域の高校に転校することになったブディ。転校初日、一番最初に知り合った同級生のボビーに導かれて教室に行きます。

「ブディの学科ってどこなの?」

「ソフトウェアエンジニアリング」

そう、この高校はSMA(普通科高校)ではなくSMK(職業高校)。その中でもここは工業寄りらしく、ブディは何とソフトウェアエンジニアリング学科の生徒です。現代の花形学科ですよ!

にもかかわらず、コイツは国語の授業中に堂々と居眠りしてるんです。都市部のど真ん中のSMKでソフトウェアエンジニアリングを学んでいるということ自体、農村部や地方島嶼部の子供たちにとっては羨ましい限りなのに……。おいコラ、早く起きろ!

そんでもって食堂に行って昼飯を食べて、ついでに戦闘中に使用できるアイテムを購入し、再び教室に戻って勉強し、ついにやって来た下校時間。ところが校門付近で、ボビーが不良に絡まれてしまいます。

「おいおい、税金払ってくれねぇと困るなぁ」

「ひ、ひえええぇぇぇぇぇ!」

気弱な少年ボビーは、不良共に立ち向かうなどということはできません。哀れ不良のパンチがボビーの顔に……。しかしそこへ、ブディが不良の手を掴みます。さあ、戦闘開始です!

不良でなくともバイク通学は当たり前

今回はマウスとキーボードを使ってプレイしましたが、操作自体は決して難しくありません。パンチ、キックは基本的に左右のクリックのみで繰り出すことができます。防御やフットワークに関する操作も特段難しいものではなく、今はまだデモ版のみの配信とはいえ致命的なバグも見受けられません。

戦闘のテンポも軽快そのもので、ストレスを感じさせない仕上がりです。アクションは格闘技としての現実性を持たせつつも、豪快な回し蹴りや追撃のストンピングや凶器攻撃が実装されています。

そして、それ以上に高校の造形がハンパない!

校門からブディたちのクラスまではかなり離れていて、ブディ自身も「結構遠いよな」とか愚痴っていたりします。ですが、その間にインドネシアの高校の様子を観察できるのです。日本人にとっては新鮮な光景ですね。

また、この高校の駐輪場には自転車ではなくエンジンのついたバイクが何台も停まっています。ブディもバイク通学していますが、これは決して「不良だから」というわけではありません。インドネシアでは、バンドゥンでもジャカルタでもスラバヤでもスマランでもジョグジャカルタでも、公共交通機関は日本ほど発達しておらず、最低限バイクがなければ生活そのものに支障をきたしてしまいます。「だったら自転車に乗ればいいのでは?」と日本人は考えがちですが、自転車は鍵をかけていても盗まれやすいため、どのみちバイクが高校生にとっての重要な足になるというわけです。

インドネシアにもいる「鳥居甲斐守」

インドネシアでも、日本の漫画作品やアニメが市民の間で広く共有されています。

日本で人気の漫画なら、インドネシアに行っても現地の言語でそれを読むことができるほど。そもそもインドネシアにおける「manga」や「anime」という単語は、それだけで「日本の作品」を指します。従って、「日本の漫画」と言うとそれは「武士の侍、馬から落馬」というような二重表現と見なされてしまいます。

日本の不良高校生を主人公にした漫画やアニメ、ゲームがインドネシアのクリエイターに多大な影響を与えているというのは、至って自然な流れとも言えます。それを「不道徳な文化で、自粛するべき」と感じているインドネシア人は、もちろん存在するでしょう。

かつて、インドネシア放送委員会(KPI)が「クレヨンしんちゃんは不道徳。放送局に改善を求める」という警告を出したことがあります。「いやらしい服を着た女性が登場するアニメだ。これはポルノ同様だ」という理屈です。

しかしそれに糾合したのは、いろいろな利害にまみれた「偉い人」か、道徳を振りかざして弱者に厳しく当たる鳥居甲斐守のような人のみ。江戸時代の天保の改革もそうでしたが、このような綱紀粛正令を出すと殆どの庶民は怒り狂います。綱紀粛正が庶民の楽しみを奪う行為であることを、中途半端な意識高い系でもある知識人や上の人々はまったく気づきません。

SNSでは、クレヨンしんちゃん放送禁止令に対する反発が巻き起こります。「我々の弟をいじめるな!」という声もありました。クレしんを始めとした日本のアニメが現地でどれほど愛されているのか、計り知ることができる騒動です。

そんな『Troublemaker』のデモ版でプレイできるのは、あくまでもストーリーの冒頭のみ。ブディが転校初日を終えたところで終わってしまいます。本編では彼女との恋愛や友達との交流もできるということなので、3月31日の発売を正座しながら待ちましょう!


《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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