Game*Sparkレビュー『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』:通奏低音は“人の死”。新旧の登場人物が物語を鮮やかに彩る傑作ADV | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』:通奏低音は“人の死”。新旧の登場人物が物語を鮮やかに彩る傑作ADV

3年ぶりとなった『コーヒートーク』の続編『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』のレビューをお届けします。一読いただく前に1杯のコーヒーかココアでもどうぞ。

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Game*Sparkレビュー『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』:通奏低音は“人の死”。新旧の登場人物が物語を鮮やかに彩る傑作ADV
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読者のみなさま、あの鮮烈な珈琲の香りを覚えていますか?覚えがないという方は2020年に出た前作『コーヒートーク(Coffee Talk)』を今すぐに買いましょう。そのくらい前作との結びつきが強い今作ですし、前作のファンはきっと今作もとっておきの作品となるであろう高品質な仕上がりとなっています。また、前作の舞台は2020年の異世界シアトル、今作は少し時を経た2023年が舞台と同時代性も強い作風にもなっています。

本作のキーパーソンの1人「リオナ」

あらためて『コーヒートーク』ってどんな作品?

前作『コーヒートーク』は、プレイヤーがバリスタとなって夜な夜な店にやってくる客にコーヒーなどの飲み物を提供するというアドベンチャーゲームです。特徴的なのはネコ耳族やエルフなど異種族がひしめく世界観で、異種族間の結婚などさまざまな悩みが登場し、プレイヤーはバリスタとして飲み物で心を解きほぐし問題解決の一助となります。こうした基本的なゲームシステムは今作でも大きな変更はありません。



客が要求する正解の飲み物を作れると、人物たちのプロフィールがより深く読めるようになるため、作品世界に浸るためにはなるべく正解の飲み物を淹れる必要がありますが、作った飲み物は提供前であれば1日に5回まで入れ直せますし、そもそも失敗してもペナルティはありません。

『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』のメインストーリーに迫る

レギュラーメンバーの「ジョルジ巡査」

ある嵐の夜、前作から登場しているジョルジ巡査に、今作で初登場となる新しい紅茶「ハイビスカス」と、タイでは「アンチャン」と呼ばれている「バタフライピー」(ブルーピー)のどちらかを提供する流れになります。なんでも謎のタイヤパンク事件を追っているのだとか――。

「ルーカス」には抹茶を提供する流れに。

そこに“サテュロス”という種族の青年「ルーカス」がやって来ました。彼は現実世界でいう「インフルエンサー」のようなことをしている人物で、「ライフスタイルの評論家」と自称します。

続いて配送業者「グルーバー」の配達員をしている“バンシー”の女性「リオナ」がやってきます。「疲れた心に効くような喉にいい一杯」をくれないかという彼女のため、ブルーピーのラテを提供することに。ここでは、ラテアートを書くことができます。

リオナの激情。

リオナのシーケンスでは彼女がネット嫌いであることが激情とともに明かされます。彼女はオペラ歌手を目指していますが、現代のネットでは、匿名性に守られながら人を平気で傷つける発言をするような状況になっていることに憤りを隠しません。このようにネット社会が本作のキーワードの1つであり、ネットを使った人脈構築、ネットを使った動画での自己表現などなど、複数のお話が展開されます。

あたらしいシステムはあらたな会話を引き出す要素に

ジョルジ巡査の忘れ物。

「客の忘れ物・預かり物で任意の人物に渡せるアイテム」が登場し、客に飲み物を提供するタイミングで渡せます。これによって会話に分岐が生まれ、なおかつ難しすぎるような関連付けは行われていないので楽しみながら提供できます。このメカニクスは実にドラマに関与できるよう作用しているといえるでしょう。単に飲み物を提供するだけでなく、アイテムの受け渡しも店長からのメッセージともなるのです。

『コーヒートーク』節が光る風刺

日々の新聞で「未知の感染症の流行を受け、各国で入国制限を実施」という見出しが載っている号が現れます。物語の軸は「謎のタイヤパンク犯」と「リアナとルーカス」の2軸で、後者ではネット社会のなんたるかが主要なトピックとなっており、ネットを使って商売するルーカスと、ネットには馴染めないリオナの悩みなどが赤裸々に描かれます。

続編としての『コーヒートーク』は馴染みとなった客とのやり取りが温かい

主人公キャラクターはプレイヤーであり、実際名前も自由に決められます(日本語入力にも対応)。そんなプレイヤーに心を開いて話してくれる人物たちには心動かされるものがあります。たとえばどうやって結婚式を挙げようか悩んでいるカップルの話を聞き、適切な飲み物を出したときにさりげなく褒めてくれるときなど本当に嬉しくなってしまいます。

前作では人物のプロフィールが見られることに留まっていたスマホアプリ「トモダチル」にはSNSの要素が加わっており、画面左下のスマホから各登場人物のつぶやきなどが見られます。客の話を聞いている最中にも更新があるので、バックグラウンドでのストーリーテリングもあるわけです。没入をそがない程度の更新しかないことも好印象でした。

サウンドとローカライズは相変わらず素晴らしい

特殊カット。

代わり映えのしないサウンドトラックがむしろ懐かしさを与えているため、プラスに働いているのは喜ばしいことでしょう。アートは特殊なカットが加わっており新鮮味があります。

ローカライズの出来は絶好調で、現代日本の言葉に上手く置き換えられています。たとえば「八百万の神に誓って」や「つらたん」に「激おこ」などなど……。ネットに馴染めていないリオナからは「亀レス」という時代後れの発言が出るなど、きちんと日本仕様になっているのが素晴らしいです。

本作の通奏低音「人の死」

本作中盤まで進めると、バンシーのように霊的な種族は死ぬとき消滅し、人の記憶からも消えてしまうのだということが明らかになります。ここで本作の通奏低音としてズンと響いていたものがやはり、前作・今作の主要開発者モハメド・ファーミ・ハスニ氏の夭折にあるのだということが突き刺さります。実際にファーミ氏は隠しエンディングにも関わってきますし、スタッフロールでも触れられます。

しかしながら、モハメド・ファーミ・ハスニ氏の死を適切な形できちんと本作のシナリオに落とし込みながらも、普遍的なメッセージに変えている手腕はゲーマーにとって誠意のある行為として受けとめることができ、氏の訃報を知っていても知らなくても問題ないよう物語を編んだのは感動的ですらあります。

まとめ

本作の良さは思わず人にエピソードを話してしまいたくなるような良好な群像劇にあり、実際に筆者が仲のよい人にコーヒートークの人物エピソードを語っていたら、その人が欲しくなって買ったという実体験もあります。しかしそんな逸話とは無関係に、エピローグ近くになってくるとトモダチルのストーリーに映る人物たちすべての発言、写真に「いいね」を押したくなるほど登場人物たちに愛着を持てます。

前作から3年という時を経て変わりゆくもの、人。「人から忘れられたときに存在も消える」という設定など死生観にまつわる話が中盤の要になっていること。モハメド・ファーミ氏の夭折……。すべてが有機的に絡まる今作は、前作をプレイしている人にとっては決定版のような仕上がりとなっています。

総評:★★★

良い点
・すぐれた現代社会の風刺
・前作のプレイヤーをバリスタという立場とは反対にもてなしてくれる客の数々
・モハメド・ファーミ氏の夭折を作品に落とし込んでいる手腕
悪い点
・前作のプレイ経験が完全に前提となっている点



タイトル:コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ
対応機種:PlayStation 4/PlayStation 5/Xbox One/Xbox Series/Nintendo Switch/Windows
発売日:2023年04月20日
記事におけるプレイ機種:PC(Steam
今回の記事執筆に限定したプレイ時間:31.6時間(通常プレイなら1周10時間で済みますし既読スキップもできます)
価格:1,700円


SW版 コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ
¥2,903
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
Game*Sparkレビューのお約束
《SHINJI-coo-K(池田伸次)》

FPSとADVを偏愛しつつネトゲにも造詣のあるフリーライター SHINJI-coo-K(池田伸次)

「Game*Spark」誌に寄稿しつつも「IGN JAPAN」誌と「GAMERS ZONE」誌にも寄稿。「インサイド」誌にも寄稿歴あり。今はなき「Alienware Zone」誌や「週刊Steam」誌にも寄稿していたフリーライター。 そしてヒップホップビートメイカー業も営む音楽家兼ゲームライターの兼業家。通称シンジ。

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