ここ10年で、日本のビデオゲームだけではなく、アナログゲームの世界でもテーブルゲームの傑作が数多く登場しています。そのひとつに『街コロ』が挙げられるでしょう。
本作はプレイヤーは企業のオーナーとなって、街を発展させ、ランドマークを他のプレイヤーはより早く建設することで勝利となるテーブルゲーム。シンプルなゲームデザインで初心者も覚えやすい間口の広さのほか、やりこめば複雑な戦略を組めることなどを特徴としています。その完成度の高さから、2015年のドイツ年間ゲーム大賞とフランス年間ゲーム大賞にそれぞれノミネートされた実績を持っています。
そんな本作が、ついにビデオゲームにも展開。それが『みんなで街コロ』です。実は『街コロ』がビデオゲーム化するということには数奇な運命があります。以前に筆者が2019年のCEDECにて、本作を制作した株式会社グランディングの菅沼正夫氏が参加したカンファレンスを取材したとき、「もともとデジタルの企画だったが、企画が通らず最後はテーブルゲームとして売った」ことが語られていました。つまり『みんなで街コロ』はとても回り道をして、当初のデジタルゲームとしての企画に戻ってきた形というわけです。
本作は原作のルールをしっかりビデオゲームでも再現しているのはもちろん、ビデオゲームならではの遊びやすくする仕様もいくつか入ったものとなっています。京都府みやこめっせにて行われたBitSummit Let’s Go!!にて本作が出展されており、試遊することができたため、その遊びやすさについて紹介していきましょう。
『街コロ』のおもしろさはビデオゲームでも健在!
あらためて『街コロ』とは、物件を購入し、街を発展させてお金を稼ぎ、先に4つのランドマークのカードを建設したプレイヤーが勝利となります。ビデオゲームである『みんなで街コロ』は、テーブルゲームゆえにおこる計算のミスや確認のし忘れなどが起きないため、よりスムーズにプレイできるものと言えるでしょう。
まず各ターンでプレイヤーはサイコロを振り、出た目によって所有している物件から収入を得ます。続いて物件カードを購入し、収入先を増やすことでターンを終える流れとなっています。
物件には「麦畑」や「パン屋」、「カフェ」などなどが用意されています。各物件カードには収入が得られる条件が書かれています。たとえば「麦畑」は「誰のターンでも銀行から1コインもらえる」という条件となっており、どのプレイヤーでもサイコロで1の目を出せば自分に収入が入る仕組み。少ないながらも、収入が入りやすい物件カードとなっています。その他に「カフェ」のカードなら、他のプレイヤーがサイコロで3の目を出した時、そのプレイヤーから1コインをもらえるなど、物件カードの組み合わせによってさまざまな戦略が可能となっています。
主にプレイヤーはサイコロの出目に対応した物件カードを購入していくことで、収入を得られる確率を増やしていくのです。
やがてランドマークの物件をいくつか買えるようになるほどゲームが進行すると、高価な物件カードも買えるようになるでしょう。そこでの物件カードはさらなる収入を得られる者も多く、ゲームが後半になるにつれすごい物件を抱えたプレイヤー同士のマネーバトルが展開されるのが本作の魅力といえるでしょう。
サイコロのランダム性に対応した、確率表示モードも
ただ、テーブルゲームの原作をプレイしていると、ゲームの後半になるとちょっと「あれ、どの物件カードの組み合わせなら効率よく収入が得られるんだっけ……」と悩むことも多いです。
そこで『みんなで街コロ』では、なんとサイコロの確率表示が搭載。ゲームの後半ではサイコロをふたつ振ることも珍しくありませんが、たくさんの物件カードがすでに手元にあるために「どの目がでれば稼げるんだろう?」と迷ってしまうことは、初心者なら特に多いでしょう。そこで確率表示システムを使えば、どの目を出した時にいちばん収入が得られるかという計画を立てやすくしてくれるわけです。
他にもゲーム中に絵文字のスタンプを出して、ゲームプレイ中のコミュニケーションができるなど、ビデオゲーム版ならではの仕掛けも数多く搭載されています。『みんなで街コロ』は今年2023年夏にリリースを予定。ストアページはまだ準備中の模様です。また、スイッチ版の展開も予定しているとのことです。