『FFXVI』「羊飼い」の真意は?ベネディクタの心情を窺い知る教会の比喩表現【ゲームで英語漬け#121】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

ハードコアゲーマーのためのWebメディア

『FFXVI』「羊飼い」の真意は?ベネディクタの心情を窺い知る教会の比喩表現【ゲームで英語漬け#121】

彼女自身もまた「子羊」の一人でしかありませんでした。

連載・特集 特集
『FFXVI』「羊飼い」の真意は?ベネディクタの心情を窺い知る教会の比喩表現【ゲームで英語漬け#121】
  • 『FFXVI』「羊飼い」の真意は?ベネディクタの心情を窺い知る教会の比喩表現【ゲームで英語漬け#121】
  • 『FFXVI』「羊飼い」の真意は?ベネディクタの心情を窺い知る教会の比喩表現【ゲームで英語漬け#121】
  • 『FFXVI』「羊飼い」の真意は?ベネディクタの心情を窺い知る教会の比喩表現【ゲームで英語漬け#121】
  • 『FFXVI』「羊飼い」の真意は?ベネディクタの心情を窺い知る教会の比喩表現【ゲームで英語漬け#121】
  • 『FFXVI』「羊飼い」の真意は?ベネディクタの心情を窺い知る教会の比喩表現【ゲームで英語漬け#121】
  • 『FFXVI』「羊飼い」の真意は?ベネディクタの心情を窺い知る教会の比喩表現【ゲームで英語漬け#121】
  • 『FFXVI』「羊飼い」の真意は?ベネディクタの心情を窺い知る教会の比喩表現【ゲームで英語漬け#121】
  • 『FFXVI』「羊飼い」の真意は?ベネディクタの心情を窺い知る教会の比喩表現【ゲームで英語漬け#121】

『FF16』で最初の強敵となるベネディクタ・ハーマンは、かつての師であったシドに浅からぬ感情を抱いていました。シドがウォールードから離脱した理由についてははっきりと明かされませんが、ノルヴァーン砦の戦いでは教会で待ち受けていたベネディクタと対峙し、彼女のシドの間にある因縁を窺えます。

英語版の台詞ではいくつかニュアンスが変わっている部分があり、会話で鍵となるのが「教会」の文脈。比喩表現でベネディクタの孤独が際立っているのに注目です。

Dialouge/Caer Norvern

英語版
Cid:Little late for the prayer, isn’t it?
Benedikta:Do I seem so desperate as to grovel at the feet of a false god?
      I was waiting for you.
Cid:Not for too long I hope. All this for a midnight chat?

日本語訳
シド:祈るには少し遅い時間じゃないか?
ベネディクタ:邪神の足下に跪くほど、私が絶望しているように見えるのか?おまえを待っていたのさ。
シド:長く待たせてなきゃ良いが。わざわざ夜更けのお喋りか?

日本語で「頼んだ覚えはない」と素っ気ない態度だったシドが、こちらではデートの待ち合わせのように調子を合わせています。

Benedikta:King Barnabas saved you, and this is how you speak of him?
      Have you no shred of loyalty?
Cid:What, to a leader who’d use me? Like he uses you!?
Benedikta:You know nothing of me, Cidolfus!
Cid:You’re right. I don’t know who you are anymore. Or what you want.

   I only know what you used to say--that you were tired of running.
   That you just wanted to be free. Free of it all.
   You weren’t lying to me then, so what changed?
   What made you think you had sacrifice who you were to get what you wanted?
Benedikta:Sacrifice!? I use my talents to my advantage and you would tell me the is shame in that!?
Cid:If there is no shame, then why do you feel so sorry for yourself?
Benedikta:A rousing speech, Lord Commander.

       I was a fool to believe you might have changed.
      The only person I feel sorry for is you.

ベネディクタ:バルナバス王に救われておきながらその態度か?おまえには忠義の欠片もないのか?
シド:俺を利用する主とやらにか?おまえが使われているように?
ベネディクタ:おまえに何が分かる!
シド:ああ、そうさ、おまえが何者か、何が望みか分からないね。

   唯一分かるのは、おまえがこう言ってたことだ――逃げるのはもう疲れたってな。
   おまえは自由になりたがってた、何もかもからな。あれは嘘じゃなかったはずだ。どうして変わった?
   立場を得るためには自分をも捧げる、一体何がそうさせた?
ベネディクタ:捧げるだと?私の才覚を生かすのが恥ずべき事だとでも言いたいのか?
シド:恥じていないのなら、何故自分を憐れむんだ?
ベネディクタ:説教のつもりか?隊長殿。変わっていると期待した私が愚かだった。私が唯一憐れむのはおまえだ!

シドの“who you were to get what you wanted?”は、「人が人として」にあたる“it doesn’t matter what you are, but who you are”を前提にしている台詞です。日本語版でベネディクタの言葉を受けた「人として死にたいと」の部分は、“Free of it all.”になっていて、切迫感が若干違う印象を受けます。

Benedikta:I confess, I expected more from the old man. And less from you.
      This is second time you’ve bested my sisters.
      Men of your talents are rare indeed.

       Why cast your lot with such undesirables?
      If it is a hearth you long for, you will find more than enough warmth under my wings.
Clive:You know exactly what I want. Hand over the Dominant and I’ll leave you in peace.
Benedikta:You would dare to make demands of me? Know your place, little lamb.
      Fool is the shepherd who heed every bleat of the flock, and I will suffer yours no longer.
      Must I spell it out for you, Branded?
      No one is listening. No one at all!
      Come, little lamb... To the slaughter with you!

  • Confess:告白する、懺悔する

  • Shepherd:羊飼い

  • Lamb:子羊

  • Cast in one's lot with:生死を共にする

  • In peace:無事に

ベネディクタ:正直、あいつにはもっと期待していた。おまえの方も見くびっていたよ。私の分身を倒したのはこれで2度目だ。
       それだけの才があるのは珍しい。何故あんな奴のために命を張るんだ?
       居心地が良いというのなら、私の翼の下で十分に暖まれるのだがな。
クライヴ:俺の望みは分かっているだろう。ドミナントを渡せば見逃してやる。
ベネディクタ:おまえが私に要求だと?分を弁えろ、子羊ごときが。
       群れの鳴き声を逐一聞いている羊飼いは愚かだ。もうおまえには構っていられないんだよ。
       はっきり言ってやろうか、印持ち?
       誰も聞きやしない。誰ひとりとしてな!
       来い、子羊……屠殺場へな!

ノルヴァーン砦におけるベネディクタの台詞には、「Save」「Confess」「Lamb」など、教会を起点にした信仰に関わる単語が出てきます。これまでに様々な暗躍を見せてきた彼女ですが、その行動の根底にあるのがバルナバスに対する敬虔であると暗示しているのです。キリスト教の文脈では「羊飼い」は救い主その人、子羊はその信徒を表します。ベネディクタはバルナバスに「救われた」立場なので、「Shepherd」はバルナバスであり、「Lamb」はベネディクタ自身にも当てはまります。そして「救い主」はもう一人……。

“Fool is the shepherd ~”の下りは一見クライヴを見下しているようですが、彼女自身の過去、そして現在のバルナバスに利用されているにすぎない孤独を反映しているとも取れます。この先に本当の救いはない、だからこそ“Do I seem so desperate as to grovel at the feet of a false god?”と自嘲気味に言っているのですね。

クラウドの“Not interested”など、英語版には独自の比喩やネタ台詞があるので、2周目は是非言語切り替えに挑戦してください。


FINAL FANTASY XVI(ファイナルファンタジー16) - PS5
¥7,374
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《Skollfang》

好奇心と探究心 Skollfang

ゲームの世界をもっと好きになる「おいしい一粒」をお届けします。

+ 続きを読む
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

連載・特集 アクセスランキング

アクセスランキングをもっと見る

page top