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荒削りだが光るモノがある万里の長城建設シム『Chinese Frontiers』プレイテストに参加。危険な高所作業まで丁寧に再現

Steamでストアページを公開している万里の長城建築シム「Chinese Frontiers」。先頃、希望者向けにプレイテスト版を解禁しました。

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Steamでストアページを公開している万里の長城建築シム『Chinese Frontiers』が希望者向けにプレイテスト版を解禁しています。

中国を代表する巨大建造物・万里の長城を建てる職人として、コツコツコツコツコツコツコツひたすら木や石を積み上げハンマーを振るうという一人称視点のゲームです。これほどニッチな内容のタイトルも他にないのですが、やってみると非常に癖になる!

そして、このゲームを通して「芸術とは?」「職人の魂はどこに宿るのか?」というトピックを考察することもできます。

バイオームの境目の巨大建造物

読者の皆さんは、中国へ行ったことはあるでしょうか?

筆者は20代の頃、何度か中国を旅行しました。いわゆるバックパック旅行で、なるべく安い料金で鉄道や長距離バスに乗るスタイルです。北京から西安へ鉄道に乗って移動し、西安を観光した後は内モンゴル自治区へバス移動。エレンホトから国境を越えてモンゴル側の小さな町ザーミンウードに移り、そこから鉄道に乗ってゴビ砂漠を縦断し、モンゴルの首都ウランバートルへ……というルートも辿りました。

その最中、外の景色がガラリと変わります。少しずつ木々がなくなっていき、代わりに草原が広がるようになります。モンゴルでは今も、馬に乗った遊牧民が生活を営んでいます。

バイオームの境目に設けられた建造物、それが万里の長城です。

『Chinese Frontiers』の主人公は、名もない職人。木や竹、石を材料に使って万里の長城を少しずつ建てていきます。ただし、万里の長城を建てるにも職人たちの暮らす都市を建設しなければならず、さらにその都市を支配する王の宮廷も建てる必要があります。もちろん、職人が食べる食料や飲み水も重要です。「建物を造る」というのは、様々なインフラストラクチャーを構築するという意味でもあります。

まだまだ荒削り……

現時点での『Chinese Frontiers』は、ゲームとして見ればまだまだ荒削りです。マウスを下に移動し過ぎるとWindowsのタスクバーが出てきてしまい、ゲームプレイが著しく妨げられてしまいます。これは至急改善しなければならない点です。

また、チュートリアルも不親切で「次に何をしたらいいか」という細かい説明が少なく感じます。原始的なエレベーターを作る場面がありますが、そのエレベーターに資材を載せて上に運ぶ説明は小さな文字の短文で済ませていたり……。ある程度複雑な作業でも、そのあたりの説明をもっと詳しくしてくれたらと思います。「これからここをこうするから、今はこの作業が必要なんだよ」という具合に。

また、竹を組んで足場を建設する場面も、それを置く位置を間違えたら上手に移動できないという難点も。チュートリアルの段階でこういうことが発生してしまうのはさすがに……。

しかし、それらを改善すればゲームとしては非常にやり応えがあります。

師匠は「自然」

プレイテストとは、つまるところユーザーにバグや操作の難点を見つけてもらう段階です。言い換えれば、難点がたくさんあって当然と開発者も考えているということ。ですからここは、「既に完成されている点」にも目を向けるべきです。

石を積み上げ、ハンマーを振るってそれを削る様子はまさにかつての城塞職人を思わせます。「カツ、カツ」という石を叩く音が、非常に心地いい! 筆者も間近で見たことがある砂漠のど真ん中の城壁都市で生活しているという雰囲気もよく伝わっています。

作業自体も、それが上手く進行すれば非常に楽しいと感じます。きっと当時の職人も、自分の仕事を楽しみながらあれだけ巨大な建造物を建てていたのだろう……と考えてしまうほど。後世まで伝わる芸術品とは、結局はこのような作業の積み重ねではないかとも思います。

筆者の手元に「鄭板橋外伝(鳳書院 監修・小野勝也 訳・李恵然 李進守)」という本があります。これは清代の文人、鄭板橋のエピソードをまとめた内容です。監修を担当した東洋史研究家の小野勝也博士は、筆者の物書きの師匠でもあります。

その中に、こんな話が記載されています。とある商人が有名な画家の「闘牛図」という絵を手に入れ、それをみんなに自慢しています。しかし「闘牛図」を見た鄭先生が、

「私は農村育ちで牛もたくさん見ている。この絵に描かれた牛の動きは明らかにおかしい。この絵はダメダメだ!」

と、告げました。

怒った商人は鄭先生に対して、

「いや、これはあの有名な画家の作品だから……」

と、反論します。しかし鄭先生は、

「私は自然を師匠にしている。どの時代の名画家であろうと、いいものはいいし、ダメなものはダメなんだ!」

と、明るく笑いながら言い放ちました。

これは『Chinese Frontiers』にも通じる話です! 2年前に亡くなった小野博士が、あの世から筆者に教えてくれるようでもあります。

人類が歩んだ道

万里の長城にしろ宮廷にしろ、それを建てるのに消費する材料は石や木材、竹、石膏です。いずれも最初は粗雑な見た目の「自然のもの」。それを名もなき職人が時間をかけて形を整え、着色し、危険を覚悟で高所に運び、全身の力を振り絞って組み立てます。

特に『Chinese Frontiers』が落下の危険性がある高所作業を容赦なく再現しているという点は、脱帽せずにはいられません。現代のようなユニット工法に近い作業はあるものの、そのユニットを一からこしらえなければならない仕様です。それを実際にやるとしたら大勢の職人が必要で、もしかしたら戦争より大変かもしれません。

しかし、芸術的建造物とはいずれもこのような過程を辿るはず。自然を師匠にした職人たちが、自然のものを加工して少しずつ巨大な作品を築き上げる。我々人類がどの道を歩んできたのか、そしてこれからどこへ向かうかも考えさせられるゲームでもあります。

人類史上最も地味で最も偉大な仕事を追体験できる『Chinese Frontiers』は、2024年第2四半期に正式リリースを予定しています。



《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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