気づいていたか?伝説のADV『クーロンズ・ゲート』続編が発売していたことを…今すぐ『クーロンズリゾーム』の新たなる “ファイアの日”を目撃せよ【年末年始特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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気づいていたか?伝説のADV『クーロンズ・ゲート』続編が発売していたことを…今すぐ『クーロンズリゾーム』の新たなる “ファイアの日”を目撃せよ【年末年始特集】

1997年に発売された香港の九龍城砦をモデルにした、異形のADV『クーロンズ・ゲート』。長らく続編も待望されていたところ……なんとひっそり発売されていました。しかも意外な場所で。

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気づいていたか?伝説のADV『クーロンズ・ゲート』続編が発売していたことを…今すぐ『クーロンズリゾーム』の新たなる “ファイアの日”を目撃せよ【年末年始特集】
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最近は『ファイナルファンタジーVll』だとか『スーパーマリオRPG』だとか、いま30代~40代くらいの方が若い時にプレイした名作のリメイクやスピンオフが流行ってますよね。当時もメジャーだったタイトルがいまだに表舞台へ顔を覗かせるなかで、カルトなタイトルもしめやかに現代に蘇る事象が見受けられます。

そのひとつに『クーロンズ・ゲート』が挙げられるでしょう。あの香港の九龍城砦を舞台としたADVは異形というほかありませんでした。現実世界の裏の世界である “陰界”から来た取り壊されたはずの九龍城を風水によって正すという中国らしい世界観の上に、90年代当時の不気味なインターネット、サイバーパンク、そして現代思想などが(それこそ無計画な建築によって増大した九龍城砦のように)複合していたのですから。

混沌にははっきりとした答えがありません。ゆえに、あの世界にはまりこんだプレイヤーは“陰界”に捉われ続け、答えを探しています。そんな『クーロンズ・ゲート』の続編は長らく待望され、ついに2020年『クーロンズリゾーム』の制作が発表されています。以来、Game*Sparkでもいくつか開発の進捗を取り上げたニュースを取り上げていました。

が、ここ最近ではどうなっているかについてはどのゲームメディアでも扱われていません。一体どうなっているんだろう?ふと調べると、驚くべき事実が判明。なんと『クーロンズリゾーム』はすでに発売されていたのです。しかもPS5やニンテンドースイッチどころか、Steamのようなプラットフォームですらない場所で。

僕はびっくりしました。友人の『クーロンズ・ゲート』ファンやゲームライターなど、情報の感度がそれなりに高い人も本作の発売を誰も知りませんでした。とはいえ、まるで舞台から隠れるように、インターネットの路地裏で伝説の続きがひっそりと販売されている風景は『クーロンズ・ゲート』の続編らしいとも思いました。

今から『クーロンズ・ゲート』の続きを求めている皆さんに向け、『クーロンズリゾーム』がどんな内容か。どこで販売され、どうやってプレイするかを説明します。一人でも多く、新たなる “陰界”へ入りこんでゆく体験をしてほしいのです。

新たなファイアの日は7月。陰界が再び接近する

『クーロンズ・ゲート』にて、1997年に主人公の風水師の活躍により、九龍城を陰界へと封印してから28年もの月日が経ちました。現実世界では、もはやかつてのような陰界からの脅威はなくなった……かに思われていましたが、国家は決して陰界を無視しておらず、いつまた陽界を侵犯しないか監視を続けていました。

それから28年が過ぎた2025年。それが『クーロンズリゾーム』の舞台です。北京を本拠地とする中国調査委員会(China Reseach Board、以下CRB)は、陰界がいつまた陽界(現実世界)を浸食していないかを監視する組織として活動していました。

しばらく問題はないかと思われていましたが、2025年7月11日を皮切りに、再び陰界が現実世界に接近している動きを感知。CRBの祥冬冬(シュウ・トントン)少校と物理学者の巫雅各(フー・ヤークー)たちは香港最高風水会議(前作の主人公を召喚した機関ですね)らと連携しながら、新たなるファイアの日―7月18日、19日に陰界が陽界に接近するではないかと推測し、警戒を強めてました。

ファイアの日とは、かつて1997年に陽界へ姿を現した九龍城の時には5月22日と定められていました、前作ではヒロインの小黒が「姉に出会える日」と考えているなど、特別な日として示唆されつづけていましたが、『クーロンズリゾーム』では、前作の主人公である風水師が九龍城を陰界へと送り返した日として解説されています。

新たなるファイアの日に予測される、陰界が陽界と交わることで世界の摂理が壊れる危機に対処するために、CRBは陰界の九龍城へエージェントを送り込む作戦を開始。祥冬冬が率いるエージェントの阿Mはチャイナグラフという機器を利用し、 “思念転移”によって陰界へ移動。

阿Mはまるで幽霊が他人にとり憑くかのように、陰界の住人の一人、レオン任に自らの思念を入れ、封印された九龍城への調査へ向かうことになります。九龍城では、28年前と同じように邪気が渦巻き、その中で路人たちは生活を続け、一部で “妄人”(ワンニン)と呼ばれるドアとか壁になってしまった人間が住み着いている風景が広がっていました。

九龍城の住人、 通称、“路人”。ほぼすべての路人がTV番組「月曜から夜ふかし」に取り上げられそうな異常なセリフを吐く。
陰界に渦巻く邪気に当てられ、物に対する強迫的な妄想に取りつかれ、物そのものになる “妄人(ワンニン)”は今作でも登場。1997年の時と違い、プロジェクションマッピングみたいに人間が物にとり憑いたようなクールな見た目に。
前作の謎の存在・ガタリも序盤から登場。モデルはフランスの精神科医のフェリックス・ガタリ。同国の哲学者ジル・ドゥルーズと共に、西洋の形而上学や心理学、資本主義を批判した『千のプラトー』などの著作を記す。そこで西洋哲学の知の体系に組み込まれないものを排除する姿勢に反抗するため、周縁の知も組み込む “リゾーム”という視点を提示したことも有名。『クーロンズ・ゲート』は明らかにガタリとドゥルーズの著作に影響を受けており、その影響は『クーロンズリゾーム』というタイトルにも及んでいる。

プレイヤーの立場はちょっとややこしいんですが、主に阿Mが思念転移したレオン任の視点として進めていきます。彼を通して、『クーロンズ・ゲート』では描かれなかった九龍城の新たな区域を調査していくのです。

CRBからは前任のエージェント・阿Jが調査に失敗し、陽界へ帰ってこれなかったことを聞かされるのですが、まずは任務の取っ掛かりとして阿Jの痕跡を追いかけることが、物語の始まりになります。

果たして、2025年の九龍城の姿とはなにか?まず1997年の時と比較すると、圧倒的に印象が変わったのは「人間の存在がなにもかもデータ化されたように見える」ことです。ブルーを基調とした静謐な空間のなか、路人たちはCGのワイヤーフレームみたいな実態のない存在として描かれ、会話をすると証明写真みたいな生気のない顔が出てきます。

これは『クーロンズ・ゲート』の生々しく、匂いさえ感じられた九龍城と対照的に、今回はSNSやメタバースが隆盛して以降のリアリズムに即していると感じられました。路人の冷たい写実的なビジュアルと対照的に、主人公を助けるメインキャラクターはややアニメ的・イラストレーション的な絵柄とビジュアルがバラバラなのもまた、データベース的な世界観を裏付けていると言えるでしょう。

陰界のクーロネットを利用してプレイされる「ガルギウス・オンライン」。『エルダースクロール」シリーズみたいな典型的な欧米RPGみたいなルックなんだが、本作では陰界で起きている問題に深くかかわるゲームでもある。

そんなデータベース化された世界観は、物語の本編にも及びます。阿Mが調査を続ける中で、クーロネットで流行るMMORPG「ガルギウス・オンライン」が、まさかの陰界接近のキーになっていることが見えてきます。

さらにはVRやARなど、現実と虚構を繋げるXR技術も陰界の不条理として登場します。やがて陰界へ陽界からのインターネットを経由して、日本の食料危機や、ドイツの暗部といった他国の状況まで垣間見ることになります。

ネットワークを介して陽界(現実世界)の日本ともつながるシーンも。本作での日本は食糧危機に備え、新しい社会インフラを構築しようとしていた。

これらは外部と隔絶していた前作と比べ、安全地帯と思われた現実世界であってもネットを経由して暗黒世界に繋がっているという緊張感があります。

1997年の『クーロンズ・ゲート』では、まだ日本では広まり始めたころのインターネットのダークサイドを描いていました。『クーロンズリゾーム』の時代はすでにインターネットは当たり前のインフラになったようにも思えますが、ダークウェブが隆盛する時代に応答することでオンラインの暗黒世界にはある程度の説得力があるように思えます。

『クーロンズリゾーム』の世界を通せば、スマートに見えた現代の先端技術もまた、実はあの頃の九龍城のような混沌と変わりないのだ……と描かれる点が新鮮だと言えるでしょう。

実質的には前作のプレイフィールに近い。 “路人”の歪んだ発言も健在

本作はGame*Sparkでも報じられたように、ADVではなくムービーノベルという形式で構成されています。九龍城の3DCGによる風景を動画ファイルにて再生し、止め絵の時に登場人物の会話を読んでいくという構造ですが、これは前作『クーロンズ・ゲート』の “JPEGダンジョン”というプリレンダムービーの繋ぎ合わせとほぼ同じ構造と言えます。アイテムバトルやダンジョン探索を削り、物語体験に注力したものと言うべきでしょうか。

ムービーノベルへの仕様変更は、報道当時はやっぱり僕も「最初オープンワールドADVでやりますって言ってたのに、開発が難しいからダウングレードするのか……」という失望があったんですが、実際にプレイすると「スマートになったクーロンズ・ゲート」というフィーリングがあり、意外にも前作の延長としてプレイできると思います。

ただ残念ながら、『クーロンズ・ゲート』にもあった、JPEGダンジョンでの自由移動はなくなっています。街の探索パートは「全体マップについているマークをクリックすることで、住人の言葉を聞くことができる」という簡素なものにされています。

シークレットでは、たとえば “妄人”が前任者のエージェントが何を調べていたかを教えてくれるものや、他のキャラがメインキャラの背景について語ってくれるものなどがある。

とはいえ全体マップ上でマークが記されていない、シークレットとなった住人の言葉をマウスカーソルで探るという仕掛けが用意されており、そこでしか得られない物語や世界観の裏情報も多いのです。

簡素すぎる仕掛けとはいえ、謎だらけの物語を理解するためにけっこう隠された住人探しはやってしまうんですね。もちろんこうした仕様変更は本意ではないでしょうが、ただでは転ばずに前作の感覚に近づけているのは確かです。

あなたが新たな陰界へと入場するための方法

まずは新たなる九龍城のあらましはいかがでしたか。これはまだ触りに過ぎません。冒頭から立て続けに独自の専門用語が飛び交い、そして作中で解説もなくに進みます。これも「地上の道理が通用しない、陰界の異常な世界」を体験させるのに一役買っています(とはいえ、公式に用語集は用意されています)。

もちろん独自用語の連発なんて普通のゲームなら欠点になりえますが、『クーロンズゲート』ユニバースではすべて魅力へと反転するのです。街の汚れは美しさに。物語の不条理は感動に。人間の狂気は親しみに。それが陰界で起きる価値の転倒であり、『クーロンズリゾーム』でも継続しているのです。

そんな本作を遊ぶためのプロセス自体も、噂やツテを頼りに、陰界へ繋がる隠された扉を探すかのようでした。本作が販売されているのはビデオゲームをはじめ、漫画や小説などの自主制作作品の販売サイトであるBooth。そこで1章ずつエピソードを600円で販売するかたちとなっています。現在は3章まで配信。全8章を予定しています。

ありがちなフィクションでは、マフィアだとか地下テロ組織だとかダークサイドのコミュニティに繋がるために情報料を支払い、門番に教えられた暗号を伝えるみたいな話がありますが、『クーロンズリゾーム』をプレイする過程はそんな流れに似ているかもしれません。

なにしろBoothにてエピソードを購入後も、「zipをダウンロードして解凍し、実行ファイルをクリックしてゲームをプレイできます」という形ではありませんから。

本作を起動するのにいくつかの手順があります。公式にも説明されているのですが、現代のPCゲームから考えると相当な手続きを踏むことになります。ざっくり説明しますと複数のファイルをダウンロード後、ファイル名から「拡張子を消すとファイルが使えなくなります」というエラーを無視してzip部分を削除。それから解答結合用の実行ファイルを起動することで、ようやく本編の実行ファイルへとたどり着ける……というかたちです。

“プレイヤーへのおもてなし”が同人や自主制作のレベルでも徹底している現代のゲームから考えると、本作の販売プラットフォームからゲーム起動までのプロセスはその流れから真逆というほかありません。

しかし僕は入り組んだ手続きを経て、ようやく『クーロンズリゾーム』第1章に触れたとき謎の地下組織に初めて潜入したジャーナリストみたいな興奮を覚えていました。繰り返します。陰界ではすべての価値が反転するのです。異様な手間は、現実世界と違う暗黒世界に触れるための手続きなのです。

あなたがダウンロードしたファイル名からzipを消す作業を始めた瞬間から『クーロンズリゾーム』のプレイが始まっているのです。

「クーロンズ」シリーズのクリエイター、木村央志の混沌

僕がなにより本作で感動するのは、ゲームの全面にクリエイターである木村央志氏の情熱が迸っているからに他なりません

いま「作りたいものを作るぜ」みたいな名目のインディーゲームですらも、ビジネスとしてのおもてなしで溢れかえっています。ところが『クーロンズリゾーム』は違う。そうした方向と真逆なんじゃないかということです。

本作は、近年の「大企業の著名クリエイターが独立してからの自主制作作品」というケースに近いのですが、ここまで商業的ではなく木村氏自身のクリエイティブそのものに突き動かされているものは異例だと思います。

稲船敬二氏や五十嵐孝司氏が独立後のプロジェクトでは、大企業に所属していた時代の『ロックマン』シリーズだとか『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』を思わせる新作を発表することで資金調達やファンの関心を煽っていたものです。しかし、木村氏の『クーロンズリゾーム』はそれらと一線を画しています。

木村央志氏はかつて旧ソニー・ミュージックエンターテインメントに所属し、ビデオゲームのキャリアはプレイステーションで積んできました。その後、株式会社 Donutsにて『デモンズゲート 帝都審神大戦 ~東京黙示録編~』などのソーシャルゲームに関わってきた人物です。

ところが本作についてはビジネスでの戦略をほぼ度外視しており、どこまでも木村氏自身が見出しているビジョンを生み出すことに徹底している。そこに敬意さえ覚えます。 “元大企業所属クリエイターによるインディーゲーム”という観点でも、考えさせられる一作ではないでしょうか

本作のリリース自体の情報だってそうです。おそらく本作の発売や、分冊で販売していくという情報が各ゲームメディアにプレスリリースで伝えられていない。本記事を書くにあたり、Game*Spark編集部に『クーロンズリゾーム』第1章の発売を伝えるプレスリリースが来たかどうか伺ったところ、なかったと聞きました。

また、ちょっと専門的な話になるんですが、本作はビジュアルノベル開発用ゲームエンジンであるティラノビルダーPROを使用していることも、全世界に向けた広いビジネスを考える上でリスキーなことをしていると思います。

というのも、個人でも開発が容易なエンジンである一方、(2023年12月現在のバージョンでは)他言語のローカライズや他プラットフォームへの移植がとても難しいエンジンでもあるからです。そのため現段階では、PCの日本語以外でプレイできる環境が広がる見込みが薄いと思われるのです(それだけに、本作は国内の『クーロンズ・ゲート』ファンだけでも全員やっておくべきだと感じています)。

なにより本作のクレジットにも驚きました。かなりの部分を木村央志氏ひとりで作っている。音楽は前作から引き続き、蓜島邦明氏が担当しているほか、キャラクターの立ち絵やCGなどは他のスタッフが関わっているとはいえ、ゲームデザインや脚本だけではなくグラフィックスなど多くの部分を木村氏自身で開発している。ティラノビルダーPROの使用もそういうことかと思いました。

それゆえか、『クーロンズリゾーム』には木村氏の作家性がジントニックやウォッカの原液のように濃縮されています。これは、原液をそのまま飲むような体験なのです。

ただ、気になるのは前作でキャラクターデザインを務めた、株式会社ジェットマン代表である井上幸喜氏の不在です。井上氏は木村氏と共に『クーロンズ・ゲート』のキーマンとして活躍しており、インタビューでもふたりが取材されることが多かったものでした。なので『クーロンズリゾーム』での不参加は意外でした。

『クーロンズリゾーム』がクラウドファンディングを興した当時、井上氏は異形キャラの原画として参加していたことが書かれていましたが、現在のスタッフロールを観るに名前は見受けられません。そういえば昨年の『クーロンズ・ゲート』25周年イベントも井上氏が不在だったことに、僕は他のファンと共になにがあったんだろうねと話したことを思い出しました。

株式会社ジェットマンにメールしたところ、「弊社は開発当初より、開発には関係はありません。制作にかかわる予定もありませんでした」と解答。同社は現在『クーロンズゲートVR朱雀』をスイッチ向けに作り直しており、販売時期は未定とのことです。井上氏は井上氏で、そして木村氏は木村氏で、それぞれが『クーロンズ・ゲート』のその後を追いかけているということなのかもしれません。

いずれにせよ、『クーロンズゲート』の陰界はいまだ継続しています。それは映画「ブレードランナー」に対する「ブレードランナー2049」のような、ドラマ「ツインピークス」に対する「ツイン・ピークス The Return」のような、伝説のカルト作品が残した謎に解答するような続編に近いのです。『クーロンズリゾーム』とは誰もが忘れがたい混沌が、現代でも継続していることを痛感させてくれる体験なのです。

『クーロンズ・ゲート』を遊んだ後、現実の街を歩いても「あの場所はまるで九龍城みたいじゃないか」と思うことはよくありました。そうした効果は『クーロンズリゾーム』でも存在しています。今度はインターネットのSNSでもメタバースでも拡張現実空間のいくつかを観ると「あの場所は新たな九龍城みたいじゃないか」と僕は感じるようになりました。どれだけ時代は変わっても混沌は消えず、どこかで形を変えて存在し続けるのです。

『クーロンズリゾーム』はBoothにて3章まで配信中。また公式Xによれば、2024年に全8章をまとめたUSBと、フォトブックやサントラアプリなどのグッズがまとまった限定版「特装陰陽ボックスセット」をBoothにて100部販売を予定しています

さあ、忘れていたはずの陰界へ再び向かう時が来ました。我々はファイアの日に、また会えます

《葛西 祝》

ジャンル複合ライティング 葛西 祝

ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代美術や格闘技などなどを横断したテキストをさまざまなメディアで企画・執筆。Game*SparkやInsideでは、シリアスなインタビューからIQを捨てたようなバカ企画まで横断した記事を制作している。

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