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Game*Sparkレビュー:『スカル アンド ボーンズ』―ライブサービスとしては今ひとつな部分も多いが、独自の“味”は出せている

大荒れの海を越えてやってきた『スカル アンド ボーンズ』の出来栄えやいかに。

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Game*Sparkレビュー:『スカル アンド ボーンズ』―ライブサービスとしては今ひとつな部分も多いが、独自の“味”は出せている
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スカル アンド ボーンズ』はユービーアイソフト作品の中でも特に難航の歴史を辿った作品でした。一時期はユーザーからも「もうリリースされないのではないか……」という心配の声が上がりましたが、そんな荒波を乗り越え、ついに船出を迎えました。

本記事では、本作がリリースまでに辿ってきた難航の歴史と、ローンチ時点でのライブサービスとしてのレビューをお届けします。なお、執筆にあたってはユービーアイソフトから提供された『スカル アンド ボーンズ』PC版をXboxコントローラーでプレイしており、内容はシーズン1が始まる前のローンチ時点のコンテンツのみに絞っています。

長かった……大荒れの海を渡った『スカル アンド ボーンズ』延期の歴史

『スカル アンド ボーンズ』はユービーアイソフト作品の中でも開発が難航した作品のひとつで、およそ10年もの年月が費やされたといいます。まずは、その歴史を振り返ってみましょう。

『アサシン クリード IV ブラック フラッグ』

本作は、18世紀の西インド諸島を舞台とした『アサシン クリード IV ブラック フラッグ』海上パート担当の「Ubisoft Singapore」が、初めて開発を主導する作品です。当初は『アサクリ IV』の拡張版、その後はスピンオフMMOタイトルと開発状況が遷移していきましたが、最終的には同シリーズとは無関係の作品へと生まれ変わりました。

初披露を迎えたのは、2017年のE3です。1人もしくは複数人のプレイヤーと協力してクエストをこなしたり、他プレイヤーたちとPvPで戦ったりといった内容が紹介されており、発表当時は2018年秋のリリースが予定されていました。


その後、通年売上報告にて初めての延期が告げられます。この時は2019年度内の発売を目指して開発中であると予告されています。

2019年2月にはテレビドラマ化のニュースが報じられるなどIPとしての展開が見え始めてきましたが、同年5月には発売が無期延期に。ここから1年以上もの間、続報がない状態が続きます。



暗雲立ち込める中、光明が見え始めたのは2020年9月のこと。開発が新しいビジョンと共に本格化したことが伝えられました。一方で翌2021年5月12日にはリリースが“2022年度”へと延期されることが明かされ、2022年3月にはテスターの募集も行われました。

そして、2022年7月には4ヶ月後となる11月に発売されることが決定! 本格的なゲームプレイ映像なども披露され、再び期待が高まりました。しかしながらその後、「開発は終了したが、技術テストのフィードバックでさらに最高の体験を届けられる」として、2023年3月へと延期。


その後2023年1月には再度無期延期状態に。ユーザーの間でも「また延期か」というようなムードが漂い、発売できるのかすら疑念を抱く声も少なからず聞かれました。


そんな中、決算報告にて2023年度の第4四半期見込みであることが明かされ、その後TGA 2023にてついに2月16日へと発売が決定。ついに出航を迎えます。


振り返るのも大変なほど延期を繰り返し、大荒れの航海を記録した『スカル アンド ボーンズ』。ここまで延期したら、ちゃんと遊べるものになっているのか……?と心配になりますが、意外にもしっかりと楽しめる魅力を持っています。

一にも二にも海が主役

本作は、オープンワールドの大海原を航海して海賊として成り上がるMMOアクションRPGです。アフリカやインド洋などさまざまな地域を股にかけながら、海戦や略奪、密輸など海賊ならではのイベントを楽しめます。

物語は、大海戦に敗北した主人公が運良く岸に漂着するところからスタート。無一文となったプレイヤーは、ボロボロの船に乗りながらキャプテン・スカーロックという大海賊が牛耳る港「サント・アン」を目指して航海します。

本作は、一にも二にも海と船が主役のゲームです。プレイヤーは多くの時間で海の上を漂い、探索や戦闘を繰り広げます。そのためか地上で人を操作するパートはそれほど多くなく、アイテムの売買やミッションの受注などができる停泊地のみ。プレイヤーのキャラクターメイキングは、現代のタイトルとしてはやや簡素です。

船を動かすには帆を張る必要があります。Aを押せば開く、Bを押せば閉じる……といった具合に、帆の張り具合を3段階ほどで調整できます。最大まで広げると素早く移動できますがスタミナを消費し、なくなると回復するまでスピードが落ちてしまいます。

船は左スティックで操作できます。風向きによる進みの速さ・遅さはありますが、基本的には思い通りの方向に動かせます。船には攻撃特化型からタンク型までさまざまな種類があり、それぞれ付与されている性能も異なります。

海戦では、船首・右舷・左舷・船尾などさまざまな方向に装備した武器を使って戦います。武器にも多数の種類が用意されていて、放物線を描く大砲や近距離で絶大な威力を発揮するデミカノン砲、海の中からじわりと迫る魚雷など装備によって戦い方が大きく変化します。船を炎上させる、回復させるなどの効果があるものも存在します。

敵船は船体を撃つのはもちろん、赤くハイライトされた部位を撃ってダメージを与えたり、帆を撃って破り一時的に移動不可にしたりと、戦略性が生まれています。弾速はいずれの弾も遅いので、着弾地点を予測して撃ついわゆる“偏差撃ち”も必要になります。

これらの操作は、比較的カジュアルに調整されているのが好印象です。風向きや船の曲がり方など、やろうと思えばいくらでもリアルに寄せられる要素ではあるかと思いますが、「向かい風でも遅くはなるが前進できる」「速度を落とせば急旋回できる」など、誰でも遊びやすいように調整されています。筆者は船を操るゲームをあまり経験していないため、海ならではの重みを感じつつも操作に戸惑わないカジュアルさは気に入っています。

ゲームの進行で重要になってくるのが、船の強化です。本作におけるレベルはプレイヤーではなく“船”についていて、装甲や装備した武器の強さによってレベルが上下していきます。

強い装備を製作するには通貨となるシルバーのほかに、素材が必要となります。素材はマップ上の採取地点で入手できるほか、ミッションを通じて入手したり、敵の船や拠点を襲って略奪することもできます。

ユニークな海賊プレイができるが、体験は画一的

本作でできることのほとんどには、航海海戦がついてまわります。「契約」と呼ばれるミッションのほとんどは海を渡って目的地で海戦に挑むことの繰り返しですし、略奪は敵船や監視塔を排除して拠点からアイテムをたくさん盗む、密輸は危険な交易路をわたって目的地に輸送する、などそれぞれ細かい違いはあれど、どれもベースには航海と海戦があります。

航海と海戦のシステム自体は本作ならではの体験であり、戦略性もあって面白いのですが、ほとんどのゲームプレイがそれを占めています。そのため、後になればなるほどやや単調に感じられる面があります。

メインミッションは、ちょっとしたストーリーを基に海戦に駆り出すものが多数です。ドでかい大物海賊の船と戦ったり、広大な海を横断して別の大陸に辿り着いたりとワクワクする場面はありますが、多くはストーリーを読みながら海戦を繰り返します。引き伸ばしも多く、スカーロックが作戦を思いつくまでサブミッションをプレイすることを強要される場面もあります。

筆者としては、地上での奥深い探索や船上での白兵戦がないのは残念です。すべてのバトルが船上で完結してしまうため駆け引きにバリエーションを出せておらず、どこか飽き飽きとしてしまいます。地上ではアイテム売買や宝探しなどができますが、いずれの停泊地もかなり狭く、おまけ程度にしかなっていません。

ある程度ダメージを与えると可能になる「敵船への乗り込みアクション」はただ短い演出が挿入されるのみですが、ここには白兵戦を入れる余地があったのではないか……と思ってしまいます。いずれにせよ、体験が画一的であることは本作がライブサービスとして展開していく上で大きな問題点であると考えます。

一方その中でも、エンドコンテンツとして用意された「工場運営」は今後増えていくであろうコンテンツを示す上で、ひとつの光といえるかもしれません。この要素は密輸品の工場を乗っ取って交易路を奪い、密輸品の取引で第二の通貨「スペイン銀貨」を稼ぐというものです。

交易網を広げるために海戦をこなす必要はありますが、各地の工場に生産させてお金を稼ぐというプレイは経営シムのような雰囲気もあり、ひたすら海戦するだけだったメインストーリーと比べて新たな遊びを提示できています。今後ライブサービスとしてコンテンツを増やすのであれば、こうしたひねりのある要素が求められそうです。

また、ライブサービスならではの魅力として「充実したコスメティック要素」も挙げられます。船は船体に取り付ける装飾アイテムや帆の色、プレイヤーキャラクターは衣装を変え、立派な海賊のようにアクセサリーや服を身につけることができます。

また、発売半月も経たない中ですが、プレイ人口はあまり多くないように感じました。メインストーリーを駆け抜けてエンドコンテンツまで辿り着く中、サント・アン以外でプレイヤーに出会うことは数えるほどしかありませんでした。

本作はその仕組み上、Co-opもPvPもシームレスに行えます。しかしながら、PvPvEコンテンツや巨大な商船を襲うワールドイベントに挑んでみても他のプレイヤーはなかなか集まらず、NPCとの戦闘が中心となってしまいました。もちろん時間帯や地域によるとは思いますが、他プレイヤーとの交流はほとんど楽しめませんでした。

グラフィックやサウンドは良い仕上がりで、海の上の臨場感を味あわせてくれる

ライブサービスゲームとしては今ひとつな部分もある本作ですが、海賊らしいユニークな体験ができます。そしてその体験を彩るように、グラフィックやフレーバー要素、サウンドなどは良い仕上がりです。

プレイヤーはさまざまな地域の海をわたりますが、本作で求められているであろう海や波の表現、そして水平線の向こうから射す陽の光は思わずうっとりするほどの美しさです。キャラクターグラフィックや船の装飾のテクスチャなどはやや気になる品質のものもありますが、感動できる瞬間は間違いなく存在します。波の音や海鳥の声、海上での声の反響などもこだわって作られていて、海の上にいる臨場感は抜群です。

NPCの日本語ボイスは多様な出自の人間が集う海賊の表現として、「〇〇さ」「〇〇やざ」など沖縄弁や福井弁などがセリフに取り入れられているところが大きな特徴です。多様な人種が集うことでの“なまり”表現としてふさわしいかはわかりませんが、筆者はお気に入りの要素のひとつです。


大荒れの海に飲まれかけながらもリリースに漕ぎ着けた『スカル アンド ボーンズ』は、「海賊として成り上がる!」というコンセプトをしっかりと楽しめるゲームです。船員を引き連れて大海原に漕ぎ出し、海戦や略奪を繰り返しながら徐々に強く、お金持ちになっていくという体験を、カジュアルなゲームプレイで楽しむことができます。

一方ライブサービスのゲームとしては単調になってしまっているので、今後どのようにひねりのある要素を加えられるかが大きなカギとなりそう。欠点もいろいろ挙げられますが、筆者としては今後も見守っていきたいと思えるタイトルでした。

総評:★★☆
良い点
・“海賊”と聞いて思い浮かべる海戦や略奪はしっかり楽しめる
・風向きや大砲の偏差撃ちなど本作ならではのメカニクスがカジュアルに仕上がっている
・美しい海のグラフィックや臨場感のあるサウンド

悪い点
・ゲームプレイがどのコンテンツも画一的
・他のプレイヤーとあまり遭遇しない



スカル アンド ボーンズ -PS5
¥7,555
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

《みお》

超雑食の若年ゲーマー みお

2021年3月よりフリーでゲームライターをしています。現在はGame*SparkとIGN JAPANで活動し、稀にINSIDEにてニュース記事を執筆しています。お仕事募集中。ゲームの趣味は雑食で、気になったものはクラシックゲームから新しいゲームまで何でも手を出します。主食はシューター、ADV、任天堂作品など。ジャンルやフランチャイズの歴史を辿るのも好きです。ゲーム以外では日本語のロックやアメコミ映画・コメディ映画、髪の長いお兄さんが好きです。

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