【更新:レビュー点数を「8/10」から「10/10」に変更】
記事公開時、レビュー版を使用して「最高クラスの映像美だが、不具合解消が急務」と評価しましたが、改めて正式リリース版で検証したところ、記事執筆時点で発生していたクラッシュや表示異常が解消されていることが確認できました。(本文は変更せず注釈を加えています。)ラン終了時にフリーズが起きたものの、プレイ中の支障は無いものとし、不具合による減点を取り消した「10/10」に変更します。
PS4最後の傑作か、はたまた大問題作か。今もなお賛否分かれた議論が続く『The Last of Us Part II』の『Remasterd』版が、日本時間4月4日にPCへ登場します。
本稿では、そんな同作のレビューをお届け。なお、ゲームプレイには株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントから提供されたSteam版のコードを使用しています。
物語のあれこれについては今更なので多くは書きません。せっかくなので個人的な解釈を述べるなら、エレクトロな80年代の映画や音楽が、この理不尽な世界を生き抜くための「希望」「未来」として用いられることに注目。
裏を返せば『The Last of Us』の世界はその希望の80年代に到達していない70年代、つまり暴力と死に充ちた日本で言うところの「アメリカンニューシネマ」なのです。銃を持った2人の逃避行とか、そんな雰囲気ありますよね。ラストシーンの喪失感は「ディア・ハンター」を彷彿とさせます。


組織一つ潰しておいてのうのうと生き存えられる程このアメリカは甘くないし、報復の連鎖は簡単に終わらない。そして暴力はいつも理不尽にやってくる。そんな「70年代の映画」であればこそ、前作の主人公としてジョエルは「無法」の報いを受け、無残な死に様を晒さなければならなかった、とメタ的に受け止めています。
それによって、多くのプレイヤーが劇中のエリーとシンクロするように理不尽と憎悪を感じたのは、プレイヤーが役者として演技するゲームの「表現」において、本作は歴史的な事件だったのかも知れません。間もなく放送されるドラマ版「The Last of US」シーズン2では、『Part II』の内容に入っていくので、脚本の是非についてはそちらを観てから今一度問い直しても良さそうです。



先行のPS5版と同様に、ランダムステージを攻略する「NO RETURN」モード、未公開ステージやオーディオコメンタリーが収録されており、サバイバルゲームと製作の裏側を楽しめます。また、PC版のリリースに合わせてNO RETURNではステージのバリエーションとキャラクターが追加され、キャラクターは前作『Part I』からビル、マーリーンが登場します。
マーリーンはギャンビットの報酬が倍に増える代わりに、達成できなかったステージでは報酬が一切手に入らない「リスクテイカー」。初期装備に強力な連射ライフルがありますが、最初の弾薬数は少なく、ラン開始のステージではステルスか確実なヘッドショットで凌ぎましょう。テクニックに自信がある上級者向けの性能です。

ビルはボックス納品の報酬が多い「運び屋」で、ラン開始段階で工作用の物資をある程度持っています。そのため、最初のエンカウンターでは治療キットを即座に納品できます。武器やサバイバルブックを入手しやすい分、ランが進むと納品アイテムの種類も増えるので、工作レシピを早めに収集して備える必要があります。


グラフィックに関しては、光源が多いところは多少落ちるものの滑らかさはしっかり出ています。レビューで使用したGPUは、公式PC要件のHIGH設定に準ずるRTX3070で、映像の品質はPS5と遜色ないレベルです。1440pでグラフィックのプリセット「高」、アップスケールを「品質」に設定して60FPSは達成されていました。射撃には向きませんが30FPSに制限すれば最高設定の「非常に高い」も綺麗に写り、カットシーンでの陰影の美しさは格別です。
他のゲームでは影の荒さ、とくにセルフシャドウの粗が目立つことが多いので、ここまで完成された映像美はなかなか観られないでしょう。ただしReflexを付けていると大きく落ち込むので、グローバル設定でオンにしている場合はご注意を。

残念ながらレビューの時点ではクラッシュが発生しやすく、特にNO RETURNモードで頻発し、今のところ一度のランも完走できないままです。1080pに下げると多少は減りますが、時折引っかかるように描画が止まることがあります。ストーリーの方でもオーウェンの表示がブレるなど異常が時々発生し、今のところ動作は不具合が多いと言わざるを得ません。
メイキングで2時間のドキュメンタリー「GROUNDED II」も収録されているのですが、その視聴中にも強制終了が発生。早送り巻き戻しがないので大変困ります(配信でも観られますがこれはこれで)。
NVIDIA製グラフィックカードで発生している問題もあるため、ソフト側の原因かどうかは不明ですが、ドライバやソフトウェアのアップデートで早急な対応が望まれます。
※UPDATE:冒頭での注意書きの通り、上記は事前プレイの内容を記載したものです。正式版では発売時から上記不具合は解消されています。

今回のプレイで感じたのは、今後PS5世代のソフトをPCで遊ぶには、これからはビデオメモリが12GB以上あるGPUでないと厳しいということです。
VRAMが8GのRTX3070の場合、PS4世代のタイトルであれば4K60FPSで動作させることも難しくありませんでした。しかし、本作ではVRAM使用が6500Mに近い状況も多く、アップスケールをパフォーマンスに寄せるとかなりボケがかかってきます。それでも映像のグレードダウンが目立たなかったのはPS4世代で完成していたためです。
本作はAAA級において「8GBで美麗さを維持できる最後の作品」になるかもしれません。

本作はフィルム映画に基づいたフォトリアル志向なので、描写力が上がってより精密になるほど映像は良くなります。コンソールを越えた強化の余地を入れてPCに移植することで、長きにわたって色褪せない作品になることは間違いないでしょう。
しかしコンソールと違って多様な環境に提供されるが故に、均一な「映像体験」が不具合や性能不足で保障できないのが悩ましいところ。なるべく多くの人に「体験」を届けるためにも、没入感を削いでしまう不具合をまずは解消してもらいたいですね。
Game*Spark レビュー 『The Last of Us Part II Remastered』PC版 PC(Epic Games Store/Steam) 2025年04月04日リリース
PCの性能強化で今後も「成長していく」映像美に期待
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GOOD
- フォトリアルを追求したPS4世代最高級の映像美
- 役者として憎悪と苦痛に耐えながらプレイする、映画さながらの感覚
BAD
- 最適化にやや不安あり(正式版では解消済)
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